第二十五話 制圧開始
「こっちよ!」
ユリが先導する冒険者達を追いかけ建物内に侵入する。
ドアを開けて入ったそこはロビーになっており、通路や上下に向かう階段がある。
すでに何体かの警備用ガーディアンが倒されており、一人の男性が冒険者達に捕まっている所だった。
「何だお前達は! ここは領府内だぞ!! 分かっているのか?」
首を締めあげられつつも気丈に怒鳴り散らす男性。
その男性にユリが色々尋ねているようだ。
「貴方ここの職員ですよね? 冒険者達と領府長、そして軍事部門と開発部門のやつらがどこにいるか教えてもらえませんか?」
言葉は穏やかだが、男性職員の首には冒険者の剣が突きつけられている。
「俺は知らん。 俺は商業部門担当であいつらとは関りが無い!」
「……私嘘は嫌いですよ?」
職員のポケットに隠されている職員証を引っ張り出す。
「やはりそうですよね? 開発部門のモカラさん」
「くそっ!」
「ふふ……さぁ? 冒険者達と領府長はどこにいるのですか?」
「……」
「今度はだんまりですか……仕方ありません。 急いでいるのでお許しを……」
ユリが槍を男の顔目掛けて突き出した!!
「!?」
恐怖で動けない男の……顔のすぐ横を通過する!
「い、いたぁぁ!」
男が大声で叫ぶ!
「ほんの少し耳を切り裂いただけです。 大袈裟な……」
「うぅ、お前等こんな事をしてただですむと思っているのか!」
「モカラさんはご自身の心配をなさった方が宜しいですよ?」
再度モカラの首元に剣が突きつけられる。
「次は耳だけで済まないかもしれません」
「……いいだろう。 教えてやる! どうせお前ら全員皆殺しにされるだろうしな!」
モカラは耳を押さえながら血走った目でユリを睨みつけると、
「領府長は建物の四階。 冒険者達は鉱山に送られていて誰もいない!」
「では軍事部門と開発部門はどこですか?」
「軍事部門はここの六階。 開発部門は地下二階だ」
「そうですか、それはどうも」
ユリはモカラの職員証を奪うと、モカラをグルグルに縛って隅に転がしておく。
「冒険者達の手が借りれない以上、迅速に領府長を助けて二部門を押さえましょう」
ユリの言葉に、
「急いだほうがいいかも~そろそろマリーの方にガーディアンを送っている奴も気付くと思う」
カンナも時間が無いと思っているようだ。
(時間が無いって言っても……)
「どうするの? 戦力分散なんてこの状況じゃ出来ないよ?」
「開発部門が近いからそちらを押さえて上にあがりましょう。 四階で領府長を救助して、そのまま六階へ」
ユリは即決すると、全員に声を掛けて地下に向かう。
まだ迎撃態勢が整っていなかったのか開発部門は早々に制圧出来た。
そうして一階に戻ってきたのだが……。
「ユリ! 敵の増援だ! かなり数が多い」
冒険者の一人がロビーを見ながらユリに叫ぶ!
「ここで食い止められる?」
「分からんが……暫くはやってやるよ! 領府長を頼む!」
冒険者の言葉にユリが頷く。
「ライラ、ここは彼らに任せて行きましょう。 上の階に!」
その時!
「伏せろ!!」
声と共にいくつもの矢が飛んできた!!
私はカンナとリアの前に出ると、
「神速! 華月流 明月」
円を描くように剣で矢を巻き込みつつ叩き落す!
「カンナ! リア! 大丈夫?」
私が振り返ると二人とも頷く。
良かった……。
しかし……、
「ダリア! 大丈夫か! おい? しっかりしろ!」
あの四人組の一人、ダリアが腹に矢を受けて倒れている。
「さ、最後にユリを守って死ねるなら本望よ……」
キザったらしく口の端を持ち上げて、支えている仲間達にそう呟いている。
ユリは虚ろな目で「ありがとう」と言いつつも、
「余裕で躱せたんだけどなぁ……」
小声で呟く。
(何というか……ダリア……不憫な子)
そう思っている私の後ろからリアがトコトコ歩いてくる。
そうして三人組を押しのけダリアの元にしゃがみ込むと……。
「フン!」
矢を引き抜いた!!
「いたぁぁぁぁ!」
叫ぶダリアの頭をパシッと叩き、
「うるさい!!」
一喝!
そうして、
「『回復』 はい、治ったわね? それじゃさっさとロビーで冒険者達の壁となってきなさい!」
傷を治すなりダリア達を蹴っ飛ばして前線に送り込む。
「ほら! 私達もさっさと行きましょう」
歩き出すリア。
唖然と見ていた私達は我に返ると慌てて追いかけた。
私の隣に並んだユリが遠慮がちに、
「あの……彼女って聖女かと思ってましたが……違うのですか?」
私に小声で訊いてくるが……。
「私にも分からないけど……多分半分は悪魔かも」
私の言葉にユリが目を丸くする……そして、
「ストケシア王国って何か良く分からないのですね……貴方は強いし聖女は悪魔だし……」
何故がユリの中で私達がストケシア王国の評価に繋がっているようだ。
(リアのせいで風評被害が……)
ちらりとカンナを見ると……。
「?」
未来のストケシア王はあんまり分かっていない様だ。
クリっとした瞳で私を見上げて来た。
(可愛い……可愛い!!)
なんか知らないけどやる気が出たかも!
私は無駄に全力疾走で階段を駆けのぼって行った。




