第二十二話 世界侵略
ユリに案内されて連れていかれたのは、なんと冒険者ギルドだった。
「ここって……」
私が冒険者ギルドを見上げながら呟く。
三階建ての建物で、これもストケシア同様木造作りでテッセンの建物の中では浮いている外観だ。
「こっちよ」
ユリに呼ばれて冒険者ギルドの扉を開けて中にはいる。
中も全て木造で、正面と右奥にカウンター、左奥は階段になっている。
まるで酒場を思わせる様な木の丸テーブルやら椅子、壁にはギルドへの依頼書が何枚も貼られている。
私がユリとギルドに入ると、中にいた人達が一斉にこちらを向いた。
どいつも冒険者らしい恰好をしており、前衛職はガタイが良く後衛職は落ち着きがあり物静かだ。
(へぇ……こんな街だけど、冒険者はそれなりにベテランなのかしら?)
カウンターの奥にいる受付嬢が私に向かって一礼する。
ユリは受付嬢に、
「奥の部屋を使わせて頂きます。 それと治癒術師を一人お願いして宜しいかしら?」
「分かりました。 部屋は二階の二号室をお使い下さい」
「ありがとう」
ユリは左奥の階段から上へと足を進め、冒険者達からの視線を感じつつ私もその後に付いていく。
「どうぞ」
部屋に案内され中にはいると、そこは応接室様な感じであった。
城でも似たような部屋があったが、あちらよりは質素な感じだ。
その後、ギルド所属の治癒術師が私の腕を治してくれて、両者椅子に腰を降ろした所でようやく本題が始まった。
「まずは最初の無礼をお許し下さい。 これからの頼みごとは危険が伴いますのである程度の実力者が必要なのです」
ユリは頭を下げると、
「まず、私はテッセンの冒険者ギルド、ギルド長補佐ユリと申します」
改めて挨拶される。
「私はライラ。 ストケシア王国から今日この国に来たばかりよ」
「そうでしたか……長旅の後にも関わらずあの剣技。 見事でございました」
ユリはライラの実力が良かったのか満足気に称賛すると、
「早速本題に入りますが、受けて頂くかどうかはお任せいたします。 ただどちらにしろここでの話は他言無用でお願いいたします」
そうしてユリは少し前に身を寄せると小声で話し始めた。
「実はこのテッセンの街はある者に領府を奪われつつ、そして同時に街中の機械も掌握しつつあります」
「途中の村で聞いた話だと、機械が暴走して冒険者を集めているとか?」
「いえ、その話自体がすでに罠なのです」
「わ、罠?」
「私達冒険者も気付くのが遅れてかなりの被害を出してしまいまして……」
「ちょ、ちょっと待って! いまいち飲み込めないんだけど?」
「ああ、そうでございますね。 では一からご説明いたします」
そう言ってユリが話始めた内容は、かなりの大事だった。
「このテッセンは領府によって収められています。 領府と言うのは国中から選ばれた方、そしてそれを補佐する部門から成り立ちます。 商業部門、開発部門、外交部門、経済部門、医療部門……など、数多くの部門がございまして、それらを取りまとめているのが国のトップとなる方、領府長です」
「うんうん、理解したわ」
「そしてその内の軍事部門と開発部門が手を組んでクーデターを起こしたのです」
「なんですって!?」
「それにより領府長……つまり国のトップは捕獲され監禁されてしまい、この国は先の二部門が実質権力を握ってしまいました。 そうして動いているのが世界侵略です」
「え?」
「機械の軍を増長させて、世界全てに宣戦布告するつもりなのです」
「いやいや! 大事過ぎるでしょ!! 何だってこんなことに……」
「そして、国民はほとんどがこの事を知りません。 私達さえも知るのが遅れてしまい……」
「貴方達はどうやって知ったの?」
「私達のギルドに属する冒険者です。 二部門が支配した領府から冒険者ギルドに大量の冒険者を準備してほしいと連絡がありました。 そこで冒険者ギルドはギルド所属、そしてそれ以外の冒険者に領府に向かうよう依頼をかけました。 そしてその結果……」
ユリは拳をギュっと握る。
「冒険者達は戻って来なくて……領府に確認するも未だ依頼中の一点張りでした。 そうしているうちに一人の冒険者が傷だらけで戻ったのです」
「……」
「その方から聞かされた話……先ほどの領府占領の話や領府長監禁。 そして冒険者達は、機械製造やその材料の鉱石取りで四六時中無理矢理働かされているという事でした。 その人はそこから抜け出して、それだけ伝えると息を引き取りました……」
「そんな……。 でも、どうしてわざわざ冒険者を……?」
「冒険者は体を鍛えておりますので四六時中働かせることに向いてると思ったのかもしれません。 怪我には治癒術師、そして鉱石加工には魔術師の力を使っている様です」
「前衛職に労働、後衛は補佐や加工などをさせているのね……」
「それを聞いたギルド長は領府に乗り込んでいって……二日後遺体になって街の外に捨てられて……」
ユリが俯く……両膝の腕で拳が強く握られている。
「領府は……私達がこの事を掴んだと知ると、国外の冒険者を呼び寄せ労働力としているそうです。 そうして軍備を進めていってるのです」
ユリは顔を上げて私をジッと見つめると、
「私達はクーデターを起こした人達を鎮圧して領府と領府長、そして冒険者達を解放するべく動こうとしています。 しかし冒険者ギルドのほとんどは捕まってしまい……だから……」
ユリは私の手を握る。
「お願いいたします! クーデターを起こした反乱軍を倒すために、我が冒険者ギルドと一緒に戦ってはもらえませんでしょうか!?」
涙に潤んだ瞳で見つめられる。
私は思案しつつも『カンナ王子の返答は決まっているだろうな~?』と思うのだった。




