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第二十一話 実戦確認


「場所はここかな?」

私は渡されたメモを片手に辺りを見回した。


テッセンの街の外れのほうにある教会。

その裏に私は来ていた。


教会の裏はちょっとした庭になっており、教会に来た人がくつろげるようにベンチなども準備されている。

近くには林もあるようで木々が風にざわめく。



私は一人その場に立って待つことにする。

……本当はカンナ王子も来たがっていたが夜も遅く何が起こるか分からない。

不安だがリアとマリーに任せて来た。


まぁあちらもお互いを見張るだろうし、下手な事はしないだろう……と信じたい。




夜遅くという事もあり、すでに陽は落ち空には星が瞬いている。

新月なのか月は出ておらず、教会に面した通りの街灯(宿の人に名称を教えてもらった)の明るさだけが視界を保ってくれている。


教会の少し先は冒険者ギルドがあり、夜更けにも拘らず喧噪が聞こえてくる。


近所迷惑になりそうだけど……大丈夫なのかしら?



そう思いつつ周りの音に耳を傾ける。

物静かな場所に近付いてくる足音、それを私の耳は捉えていた。




「お待たせしたしました」


(先程の四人組じゃない?)

遠くの街灯から照らし出された人物は女性だった。


黒が濃い灰色の髪に同じ色の瞳、髪型は肩までのセミロングでストレート。

体型としては私と同じような身長体重だろうか?


皮鎧をきっちり着こんでおり背中には短めの槍が背負われている。


「確認ですが貴方で宜しいでしょうか? ダリアが言っていた腕の立つ方と言うのは」


相手が私の体を値踏みする様に見回している……実力を図っているのかもしれない。


「たぶんね。 貴方が四人組からのお使い役かしら?」

相手のぶしつけな視線に私はぶっきらぼうに返答する。


「あら? これは失礼、私としたことが……。 私はユリと言います」

私の態度を見て優雅にお辞儀をしてくる……しかしその間も隙は全く見せない。


「私はライラよ」


「ライラさんですね。 わかりました」


そうして相手は背中から槍を取り出し、私に向かって構えた。


「何のつもりかしら?」

私は両手を広げて見せる……まぁ凡そ分かってるんだけどね。


「ライラさんの実力を見せて頂きたく……」


ほら?やっぱりこう来た……四人組も実力がどうとか言ってたし……頼むからには確認しに来ると思っていたわよ。


私は腰のデュランダルを引き抜く。


「……良い剣ですね」


「あら? この剣を褒められたのは初めてよ。 ありがとう」


そう言いながら剣を構える。


ユリの隙のない構え、そして気迫のこもった槍先。


(この人強いわ……)

剣を握る手に力が入る。




私とユリ、剣と槍……お互いに武器を構えると微妙だにせず向かい合う。



ガサガサ!


小動物がいたのか近くの草むらが音を立てた。


瞬間!


「はぁ!」

「やぁ!」


私と同時に相手も地面を蹴る!


ユリの武器はショートスピア。 短めの槍だがそれでも私の剣よりリーチは長い!


正確に突き出される槍を剣で払いつつ前に出る!


ユリは後退しつつも素早く槍を引き戻しながら穂先で私に斬りつけて来た!!


「くっ!」

ギリギリ体を捻って躱す!

私の頬を穂先が掠めていった!



一旦後方に下がり距離を取る!



すぐに引き戻すためのショートスピア……おかげで槍の戻りが早い!

槍を躱されることを想定しての戦い方。


(結構面倒ね……さて、どうしようかしら?)


ユリは穂先をこちらに向けたまま微笑むと、


「初見で今のを躱されるのは初めてです」


「貴方の槍の引き方微妙に傾いていたしね」


槍を戻すなら真っ直ぐ引き戻すはず……彼女は突き出した後斜めに引き戻していた。

その為気づけたのだが……。


「さすがです。 もう少し本気で宜しいかしら?」

微笑みは変わらず……少し空気が変わった。


「全く……テッセンの街も落ち着かないわね」

私も改めて剣を構える。



「はっ!!」

仕掛けて来たのはユリ。


叢雨流槍術むらさめりゅうそうじゅつ  一雨ひとあめ


私の胸を狙って突き出される素早い突き!!


剣で受け流そうと刃を合わせるが……剣が弾かれた!!


「!!」


咄嗟に左腕を軌道に割り込ませる!!


ズンッ!!


左腕を槍が貫いた!!


すぐさま槍が抜かれる……私も同時に下がる!


(叩きつけた剣が弾かれるなんて……)


傷む左腕が垂れさがる……運よく動脈は外れているようだが……。


「あらあら? 大丈夫ですか? もうやめておきます?」


心配するような……それでいて癪触るような言い方だ。


「……別に……まだ平気よ」


ハンカチを強く巻き付け止血する……しかし早く決着をつけたいところだ。


私は再度剣を構える……ユリもそれを見て槍を構え直す。


その槍には私の血が付いている……。



「行きますよ? もう一度! 叢雨流槍術 一雨!!」


再度真っ直ぐ槍が突き出される!!



その時……、


「!?」


槍に付いていた私の血が周りに飛び散る!!


(そう言う事ね!!)


「華月流 三斬華!」


私は再度剣を槍に叩きつける!!


今度は弾かれず……槍の軌道がそれた!!



「!?」


ユリが驚いた表情を浮かべ……槍を躱した私はそのままユリに接近して首に剣を突きつけた!


「これでいいかしら?」


私の言葉に動きを止めると……。



「ふぅ……負けてしまいました。 お見事です」


私の方を見てニッコリ笑う。


「どうも」


私は剣を鞘に納めつつ返答する。



『一雨』……槍を回転させながら突き出して、受け流す剣を弾いてしまう。


それに気付いたのは槍に付いた私の血が周りに飛び散ったからだ。


真っ直ぐ突き出された軌道で、槍の血が周りに飛び散るという事は……つまり回転があったから。


そこで回転に負けない強度……『三斬華』で押し切った。




ユリは私の方を見て、


「合格です。 それでは改めて頼みたいことを話させて頂きます」


「あ、あの? 出来れば怪我を治してからとか……」


「あら? 先ほど大丈夫とおっしゃいませんでしたか?」


ニッコリ微笑む……これ負けたこと根に持ってるでしょ!?


「えぇ~……」

私がげんなりしていると、


「ふふっ、嘘ですよ。 どうぞこちらへ……私の仲間がいるので回復して頂きましょう」


そう言うと私に背中を向けて歩き始めた。



私は痛む腕を押さえながらその後に付いていくのであった。


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