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第二十話 偶然再会


「あ、ライラ姉様、ここではないですか?」

賑わう街の中、一軒の店の前でリアが足を止めてた。


少し先を歩いていた私は、戻ってリアの指す建物を見てみる。

確かに店の看板に『ステーキ万歳』と店の名前が入っている……雑誌に載っていた名前だ。


「確かにここだね。 空いてるかな?」

チラリと店内に目を向けると、少し早めに出てきた事もあり空席はあるが、それでも席の半分ぐらい埋まっている。


「大丈夫そうだね、んじゃ入ろう」

みんなに声を掛けて店に入る。



店の中は円卓のテーブルと椅子がいくつも並べてあり、いくつかのテーブルでは客が食事をとっている。


テッセンの街並と違いストケシアにもあるような食堂の雰囲気であり、少しだけ落ち着く。


「いらっしゃい!」

カウンターの方にいた店員がにこやかにこちらに向かってくると、


「4名様で宜しいでしょうか?」

「はい」

「それではお席の方までご案内いたしますね」


店員に連れられ奥の方にあるテーブル席まで案内される。

「こちらの席でお願いします、後ほど注文を取りに参りますね」


そう告げて戻って行った。



「カンナ、メニューです。 マリーもほら」

二つあるメニューをカンナとマリーに渡す。 


「ありがとう」

「うん」


二人がそれぞれ返事して受け取ると、メニューをパラパラめくり始める。



そうしていると、私の後ろの席にいると思われる客の話が聞こえてきた。


「ったく、さっきは酷い目にあったぜ!」

「ああ、目つきも悪かったし。 あれは絶対人をバラしたことのあるやつだ」

「おお怖……いくら可愛い姉ちゃんがいたとはいえ、命は大事だからな」

「全くだ!」


なんだろう? 聞いた事のある声の様な……?


「しかしあのゴリラ女の力は本物だ。 もしかしたら例の件を話してみても良いかもしれん」

「馬鹿! あの事はここで話すな!」

「いや、しかしそれはありかも知れん。 俺たち四人をあそこ迄ぶっ飛ばすわけだし……」

「なんか言ってたな……華月流とかなんとか」


ん? 華月流と言い四人組をふっ飛ばしたと言い……。


私が声のした方に目を向けると……偶然だろうが、向こうの一人もこちらを見た。


「あ……」

「あ!」


私が驚いて立ち上がると、向こうも同じく立ち上がった!



「お、おい! ダリア、急に立ち上がってどうしたんだよ?」

男の仲間の一人がそいつに声を掛けている。


「ら、ライラどうしたの?」

こちらではカンナが私に声をかけていた。


そうして両グループ共、私とダリアの視線の先に目を向けると……。


「あーお前達!!」

「あ、あなた達!」

「なんでこんなとこに」

「なんでいるのさ!」

「ゴリラ女!」

「うわあ」


お互いに叫びまくる!


って言うか『ゴリラ女』って私のことじゃないだろうな!



お互いのグループが指差し合って喚く中……、


「お客様……お静かにお願いいたします」


青筋を立てて、張り付いたような笑顔の店員が私達の方を見ている。


「あ、す、すみません!!」

「すまねぇ!」

「ごめんなさい」

「申し訳ない」


お互い店員に謝りつつ席に腰を下ろす。



私は四人組を睨みながら、

「どうしてここにいるのよ!?」


「あぁ? ただの飯食いだ! 飯食い」


ダリアと呼ばれた男がぶっきらぼうに返す。


見ているとテーブルには料理が並んており、私達より先に来ていたようだ。


「言っておくけど、またさっきみたいな事するなら、今度はもっと吹っ飛ばすから!」


「しねーよ! 俺たちゃ飯食いに来ただけだ。 誰かさんのせいで体中痛いからな!」


「ふ〜ん、まぁ、何もしないんだったら良いけどね」


私は自分のテーブルに向く。


「はい、ライラ。 僕はメニュー決めたよ」

「ありがとう」


メニューをカンナから受け取りつつ横を見ると、リアがメニューを広げている。

マリーの方も決まって、リアにメニューを渡したようだ。



それから私達は注文を済ませると、雑談しながら料理を待つ。

そうして先程の店員が料理を運んできた。


「うわぁ、大きいね」

カンナが目の前のステーキを見て子供の様に目を輝かせる。


私の前にもジュウジュウ激しい音を立てる分厚いステーキが並べられる。

マリーは二回りほど小さいステーキの様だ。


……リアの料理はなんだろう?


「リアのそれ何?」


一見するとステーキの様だが湯気も出ていないしジュウジュウ音も出ていない。


「これですの? 野菜のスープみたいなものですわ」

「え? これが?」


形としてはステーキみたいだけど……。


「野菜を刻んで出汁と一緒にゼラチンでステーキの形に固めてあるのですわ」


ステーキ屋だけあって、ステーキの形にこだわりがあるのかも知れない。

肉が好きではないリアにとっては良かったようで嬉しそうだ。




そうして私達が食事をとっていると……、


「おい、お前達」


ダリアのグループが私達の隣に立っていた。


「なに?」


私が少し怖い声で返事すると、少しビビりながら、


「お前達に少し話があってな」

「こっちには無いけど?」


私のニベも無い態度に口をつぐむが……。


「ライラ」


カンナ王子が少し責めるような口調で私の名前を呼んだ。


(う、そうだった。 カンナ王子って誰にでも優しいんだった)


私は心でため息を付きつつ、

「悪かったわ。 ごめんなさい」


「いや、さっきの事を考えると無理もないからな」

私が態度を和らげると、少しホッとした様に話してくる。


「先程の強さ。 凄いものだった」

「ありがと」

「そしてそんな強さを見込んで頼みがある」


殊勝な態度だが……、


「頼みが何かは分からないけど……でも」


私がリアとマリー、そしてカンナの方を見る。


私だけが勝手に決めるのもね……。



「僕としては厄介事に頭を突っ込みたく無いんだけどね」

マリーはステーキを切り分けつつ返事をする……あんまり乗り気では無さそうだ。


「私としても同感ですわ。 この旅は何の旅なのかを考えると……」

リアもあまり良い返事では無い……って言うか、聖女候補としてその考えは良いのだろうか?


まぁ、リアは聖女の皮を被った悪女だし……。



しかしカンナは、


「僕は話を聞いてみて……困っている様なら助けてあげて欲しいかも」


マリーとリアの返事を聞いて、すがる様な顔で私を見てくる。


もう! カンナにそんな風にお願いされて私が断れるわけ無いじゃない!



「ひ、ひとまず話を聞くだけよ? 内容にもよると思うし……」


「あ、ありがてぇ」


「フン! カンナの頼みだから仕方なくだからね!」

と、そっぽを向く。


するとカンナと目が合って……嬉しそうにお辞儀してくれた。


(カンナ王子が喜んでるならいっかな?)

私は単純かもしれない……。



「じゃあ、待ち合わせの時間と場所を……」

ダリアが紙にサラサラとメモ書きすると渡してくる。



「すまないが宜しく頼む」

そう告げると四人組は急ぎ足で店を出ていった。



(カンナ王子の頼みとは言え、変な事にならなければ良いけどねぇ……)

私はステーキを口に運びつつ思うのだった。


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