第十九話 宿屋到着
「うわっ!」
思わず声が出た。
後ろにいるリアやマリーも言葉を失っているようだ。
「うわぁ! 凄いねーこの部屋!」
カンナは物怖じしないのか目を輝かせて周りをキョロキョロしている。
あれから私達は一休みしようと宿を借りに来ていた。
だが街と同様に宿の外観や内装も私達の知っているものとは大きくかけ離れていた。
広く磨き上げられてピカピカな石床。
高級感溢れるソファや椅子。
豪華なシャンデリア……あれ城のより豪華じゃない?
「いらっしゃいませ、ようこそ」
オシャレな制服に身を包んだ女性が笑顔で頭を下げる。
が、私を見ると顔を少し引つらせた。
そう言えばガラの悪そうな格好してたわ……。
それでもプロらしく、すぐに笑顔を浮かべて、
「ご宿泊でしょうか?」
「あ、はい」
私が宿の人とやり取りをする間も、カンナやリア、マリーは物珍しそうに辺りのものを見ていた。
宿泊の手続きを終えて宿の人に案内され部屋に向かう。
部屋に向かいながらリアが尋ねてきた。
「どんな部屋とりましたの?」
「全員個人部屋。 階は低めね、高層階は高いみたいだから」
二人部屋は王子が色々危ない。
私は平気だが、それはそれで後の二人が納得しないだろう。
それに王子も年頃である。
同世代の女性と一緒だと気が引けるだろう……性格的にもそう思う。
「ふ〜ん、まぁ良いですわ」
なぜか手続きをしていなかったリアから了承のような返事が返ってくる。
「こちらでございます」
宿の人が扉の前で足を止めると振り返る。
「こちらから、手前四部屋がご宿泊のお部屋となります。 こちらは鍵となっています」
「ありがとうございます」
見た目に反して言葉使いが良かったからか、宿の人も少し安心した様子を見せる。
宿の人が戻って行くと、
「では一旦荷物を置いてお風呂に行こう、綺麗にしたいし」
私が言うと、マリーが宿の説明書を見ながら、
「どうやら各部屋にお風呂があるみたい」
「ええ! そうなの!?」
そんなのまであるんだ……テッセンの宿屋ってすごいわ!
ストケシアだと、王都でも各家庭や宿に風呂はなく、共同の入浴施設があるような感じだ。
さすがに王城にはあったけど……。
「じゃあ早く部屋でお風呂に入ろうよ! 僕もう早く着替えたいし!」
カンナが急かす……たぶん化粧も早くおとしたいんだろうなぁ。
私も早く化粧落としたい。
そしてこの提案は旅をしていたリアとマリーも同意見であり、夕飯迄は各々ゆっくり休む事になったのであった。
(ん……?)
どうやら風呂に入ってベッドに横になっているうちに少し寝ていたらしい。
私が体を起こすとベッドが軽く軋む。
(このベッドフカフカ過ぎてやばい。 速攻寝ちゃったわ)
そうして枕元の時計を見る。
夕飯迄は少しある。
何とこの宿は各部屋に時計があるようだ。
ストケシアだと王都でも広場などにしかない。
改めて部屋を見回す。
床は綺麗に磨かれた石(宿の説明書によると、大理石とか言う石らしい)が敷き詰められており、足音も響かない。
机や椅子も高価までは行かなくとも安物ではないのが分かる。
形としてはシンプルだがしっかりした造りのようだ。
ベッドも紺を基調としたシーツが丁寧に敷かれており、フカフカして布団もベッドも柔らかい。
窓は一つだが大きく取られており、窓からは夕陽に照らされているテッセンの街が見える。
大きな建物の窓に陽光が反射して少し眩しい。
私はベッドから立ち上がるとベッドと同じく紺色をしたカーテンを締めた。
そうして夕飯までの時間を道具を整理しながら潰したのだった。
「ライラ!」
宿の一階では既にカンナとマリーが待っていた。
私を見つけたカンナが嬉しそうに私を呼ぶ。
(ふっふっふっ……やっぱりカンナ王子に呼ばれると嬉しいなぁ〜)
「二人とも早いね」
「僕は男だし準備簡単だから」
「僕は服ってローブしかないからね。 大して化粧とかもすること無いし」
二人とも私と似たような感じみたい。
後はリアだが……。
「リア姉は少し掛かるかもね」
マリーが手近にあったのか雑誌に目を落としながら呟く。
リアは聖女の血筋もあるのか、『聖女たるもの清潔できちんとあらねばいけません』と、いつも身なりにはこだわっていた。
だから準備も私達より少し遅くなる。
それから20分程して、
「遅くなりましたわ」
リアが現れる……いつもの聖女らしい格好だ。
夕飯を食べるだけなのにキッチリ身なりを整えてきている……って言うと、また色々言われそうなので黙っておく。
「じゃあ夕飯に行こうか」
私が言うと、
「この近くに美味しいステーキのお店があるみたい」
マリーが見ていた雑誌をこちらに見せながら教えてくれる。
私もチラリと雑誌を見ると確かに美味しそうに見える。
「私はお肉そんなに食べ無いのですが……まぁ、たまには良いですわ」
「僕はお肉好き〜」
ひとまず全員賛成とのことで、早速そのお店に向かう事にしたのだった。




