第十六話 激走逃走
「う、嘘でしょ!」
その数に私も思わず声が漏れる。
先程は五体だったので何とかなったけど……今度は50近くいる様だ。
そしてそのどれもが、
「カンナ王子発見」
「カンナ王子発見」
「カンナ王子発見」
……
……
……
どう見てもカンナ狙い!
「マリー!さっきの『雷撃』って範囲化出来る?」
「出来ないよ! 一体ずつじゃないと……」
流石に私もこの数が一気に来たらカンナを守り切れない。
『三斬華』でないと斬ることも出来ない程硬いし、何より相手の武器に電流も流れている。
ずっと神速が使えれば可能だが……不可能なので全て躱すのは無理だ!
「こ、こうなったら!!」
「「こうなったら?」」
リアとマリーがこちらを見る。
カンナは恐怖ですくんでいるようだ。
あれだけの人型機械が見つめてきたら……それは怖い。
「逃げるわよ!!」
私はすくんでいるカンナを抱きかかえて走り出した!!
「わわっ!」
慌ててリアとマリーも私に続いて走り出す。
「目標逃走。 追跡モード」
「目標逃走。 追跡モード」
「目標逃走。 追跡モード」
……
……
……
ガーディアン達も走り出した私達を追いかけ始めた!!
灯りのおかげで夜でも街道を走ることが出来る。
私達は必死に走るが……。
「ら、ライラ姉! 無理だよ、追いつかれちゃう!」
「あちらの方が早いですわ!」
後ろの二人から言われて振り返ると……。
(何あれめっちゃ早い!!)
車輪なせいか凄い速さで追いかけてくる!
いくら私の体力が持っても……追いつかれてしまえばどうしようもない!!
(どうしよう? どうする??)
どこか建物はないか!
穴でもいい!! 対決する数を減らして立てこもれれば……。
しかし見渡す限り草原が続き、反対側は川が続く。
橋でもあれば良いがそれも見当たらない!
(……ん?)
そうか! その手が!!
私は街道をそれると……、
「ちょっとライラ姉様、どちらにいきなさるの?」
慌ててリア達も追ってくる。
川は……そんなに深くない!
「そこで待ってて!!」
二人に川岸にいるよう叫ぶと私はカンナを抱えたまま川を渡っていく……。
アイツらの狙いはカンナのはず、であれば二人には危害を与えないだろう。
(うっきゃぁ! つ、冷たい!!)
ブルースター霊峰からの雪解け水が川に流れ込んでいるようで、刺すような冷たさだ。
しかしカンナを濡らさないよう、必死に掲げて川を渡る。
ライラ自身の腰までが水につかる……幸い深さとしてはここまでの様だ。
そうして川を渡り切った。
「ライラ姉! ガーディアンが!!」
ガーディアン達は川岸で止まり一旦躊躇したが……側にいるリアとマリーには目もくれず川に入ってきた!
(やっぱりこっちに来た! だけど……)
川底は石などでゴロゴロしている……下が車輪ならここは通れないはず!
しかし、私の考えが甘かったことを思い知らされた。
「うそぉ!!!」
なんとガーディアン達は足の裏の車輪を引っ込めて二足歩行で渡り始めた!!
(何その万能性!?)
冷たい水も気にしないようでざぶざぶ川を渡ってくる!
(ど、どうしよう……)
うろたる私にカンナが囁いた。
「ライラ、雷だよ」
「!?」
そうか!
私は川岸のマリーに叫んだ!!
「マリー!! 川に『雷撃』!」
ハッとしたマリーが素早く魔法を飛ばす!!
『雷撃』は川に命中し……水を伝って……川を渡っていた全てのガーディアン達に電気が流れ込む!!
川に入っていたガーディアン達がバチバチ音を立てながら動きを止める。
そして川の流れによってひとつ残らず流されていった……。
「ぅぅ……さ、寒い!」
私は火に当たりつつブルブル震えていた。
体を拭いて服も着替えて毛布に包まっていたが……それでも寒くて体が震える。
「ライラ、大丈夫?」
カンナが心配そうに見てくる……可愛いけど寒い! 可愛いけど寒い!!
「これは……重症ですわね」
カンナを見ても反応が薄い私にリアが呟く。
「ライラ姉、これ飲んで……温まるから」
マリーから暖かいスープを手渡された。
手でカップを挟み込む……暖かい~……でも体は寒い!
スープを飲むと体の中が暖かくなる……しかしそれでも震えが止まらない。
「これは……」
リアが私の顔をのぞき込む……と、私のおでこに手を当てた。
「ライラ姉様、熱出てますわ。 信じられませんが……風邪……ですわね」
「そんな……」
それを聞いて心配そうなカンナ。
「そんな! ライラ姉が風邪だなんて……何とかは風邪ひかないって……」
「私も信じられません! 元気だけが取り柄なライラ姉様なのに!」
(う~何気にひどぃ! でも寒くて……)
「二人とも駄目だよ。 ライラ病気なんだから、酷い事言わないの」
カンナが少し咎めるように言うと、二人して少しシュンとなる。
(やーい、怒られてんの! でも寒い~!)
「仕方ないですわね。 ライラ姉様は早めにお休みになって下さい」
「そうだね。 疲れも出てたんだろうし、休んだ方がいいね」
カンナに言われたためか、二人は大人しくなって私をテントの中に連れていく。
「はい、氷嚢」
おでこに水の入った革袋を乗せてくれる……寒いはずだけどおでこが気持ちいい。
「ありがと……みんな」
私が弱々しく告げると、三人して顔を赤らめる。
「べ、別にですわ。 こうなったらパフェをデラックスにして頂かないと」
「そ、そうだね。 僕もそれで」
「いいから。 ライラ、早く良くなってね」
三人が話している……私はその声を聞きながら深い眠りに落ちていったのであった。




