第十一話 頂上到着
「う~ん! 良い天気だぁ!!」
天気がいいと気分がいいよね!!
すっかり霧もはれ陽が明るく顔を出す街道で私は大きく背伸びをした。
大きく息を吸い込み新鮮な空気を取り込む。
(うん! 空気も美味しい!!)
「ライラ何してるの?」
「しっ! カンナは見てはいけません。 あれは変人の行動です」
「そうなの? ライラって変人なの?」
「そうですよ。 すでに手遅れですので近付いては……」
テントからこちらを見ているカンナとリアが話をしている。
っていうかリアってば何を言おうとしてるのよ!
「こら、リア! 誰が変人よ! カンナも信じないでいいですからね!」
「??」
カンナはどちらを信じていいか分からず混乱しているようだ。
「ライラ姉、リア姉……朝から何をしているの? 暇なら朝食手伝いなよ」
マリーが焚き火で焙っている肉を指さす。
見ておいてって事らしい。
マリーはパンに切れ目を入れてレタスを挟んでいる。
どうやらあれに焙った肉を挟み込んで朝食とするようだ……美味しそう!
ぐぅぅ……
私のお腹が勝手に声を出す。
「ライラ姉……」
「……」
ジーと見てくるマリーと、無言で『それはないわ……』みたいな目を向けるリア。
出ちゃったのは仕方ないじゃない!
カンナがトコトコ私の元に来て見上げると、
「ライラお腹すいたの? マリーが作ってるからもう少し我慢してね」
「カンナ!」
何て優しい子……涙が出そうだわ!
勢いあまって抱きしめようとした瞬間、カンナがリアに引かれて私の前から遠ざかる……。
そうして私の両腕はカンナをすり抜け自分自身を抱きしめ……もの凄いアホな格好になる。
「……」
「……ふふ」
(何その笑い? リアがカンナを引っ張るからこうなったのに!)
相変わらず見た目だけは天使の様な微笑みをするリアに私はジト目を向けるのだった。
今日はいよいよブルースター霊峰の迂回路であるルートを通る。
昨日から始まった坂道はどんどん角度を増していき、歩くのがきつくなってくる。
また、高度が上がっている為か寒さも増して息も荒くなってきた……私以外は。
私は鍛えているからかこれぐらいはまだまだ平気だ。
「ほらカンナ、押してあげますから……」
「はぁ、はぁ、あ、ありがとう、はぁ、ライラ」
息を荒くしてお礼を言うカンナ。
その服装はモコモコのふわふわだ。
一番遅れているカンナの後ろに回り込み、背中を押してあげる。
道が整備されていないせいか、足を取られつつ歩いて行く。
雪が降っていない事は幸いだったが、このまま登って行けばその内雪も積もってくるだろう。
なるべく早めにここの迂回路は抜けたかった。
こういった場所には特有の魔族たちもいるからだ。
例えば……。
ギェェェェェ……
上空から奇怪な鳴き声がとどろく。
上を見上げると急降下してくる猛禽類……小柄なカンナを狙っている!!
「カンナ!」
私はカンナを背後に回し剣で鉤爪を受け止める!
クェェェェェ!
邪魔をするな!とばかりに声を上げる大型の猛禽類……その顔には目が四つある。
「こいつ魔獣のヘルゲイズだわ!」
魔族達の偵察用に生み出された魔獣でヘルゲイズ(見つける者)の意を持つ。
魔族達との戦いで大量に世界に放たれており、その内の一匹だろう。
主に高い場所に生息する習性があり、高所から敵を見つけて見張る事をしている。
剣で鉤爪を振り払うと再度上空へ飛びあがる!
流石に剣は届かない!
「マリー!」
「分かってる!」
息を整えていたマリーが杖をかざすと、
「『重力』」
ヘルゲイズに掛かる重力が倍加する……飛ぶことが出来ず地面に落ちてきた!
「たぁ!!」
私がそのタイミングを見計らって剣を振るうとヘルゲイズの首が胴体と分かれて転がって行った。
「ありがとう、マリー」
「別に……魔獣は魔獣だし」
何故かマリーは不機嫌そうにそう答えた……その視線は私の後ろに向けられている。
その視線の先を見るとリアがカンナを庇う様に抱きしめていた。
そしてヘルゲイズが倒れたのを見ると、
「カンナ、もう平気ですよ」
カンナが抱きしめられたままリアから顔を上げると、
「ありがとう、リア」
リアがニコニコしながら「いえいえ」とか言っている。
(ちょぉぉぉ! そんなのあり!?)
何故かリアが一番おいしい所を持って行っている……マリーも不満そうな顔をしていた。
いや、私も不満だから!
まぁ分かるんだけど……私は前衛だし。
でもなんか納得いかないー!
ひとまずヘルゲイズを倒したことで再び歩き始める。
途中でも魔獣が何度か出たが特に問題なく倒していくことが出来た。
そうしてやはりと言うか高度が上がるにつれ雪が降り始め、足元も雪に覆われる。
迂回路の頂上付近は常に雪と氷に覆われているのだ。
そうしてようやく迂回路の頂上までたどり着くことが出来たのだった。
「よっし! ここからは楽になるかもね」
嬉しそうな私に?を浮かべる他三人。
大きなビニールシートを広げ、そこに木の板を敷いて……。
「ま、まさか……嘘だよね? ライラ姉」
察したのかマリーが顔を引きつらせる。
「ううん、多分正解!」
「あぁ……そんな! こんなので大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」
嬉々として言う私に信じられないと言った顔をするマリー。
でもこれを使えば早くなると思うしなぁ……。
「マリーはライラ姉様が何しているか分かっているのですか?」
リアの言葉に、
「これソリ作ってるんだ……ここから滑って下るつもりなんだよ。 ライラ姉は!」
「ソリって~?」
ソリを知らないカンナが訊いてくる。
「ん~ソリはね、楽しい物なんだよ」
私が答えると嬉しそうに顔を輝かせる。
そして約五分ほどで簡易的なソリが完成した。
幸いほとんど人が通っていないので雪道が荒れている事もない……このまま道を下ってしまおう。
「はい、乗って~」
私の言葉に嬉しそうに乗ったのはカンナ。
リアとマリーは何故か動かなかった。
「どうしたの二人とも?」
「いや……『どうしたの?』って言われても……」
「ねぇ?」
リアとマリーが二人して顔を見合わせる。
でも、あんまりちんたらしていると、雪が吹雪になる可能性もある。
「ほらほら、早く!」
私が二人と押すようにして乗せる。
並びとしては先頭に一番背が低いマリー、次いでカンナ、そしてリア、私と続く。
みんなで簡易ソリに密着する様に乗ると、私はソリの後ろに立った。
「じゃあ、いくよー!」
私が走りながら後ろから押して……そしてある程度スピードが出た所で私も飛び乗る!
「うわわぁ」
「ひゃぁぁぁ」
「だ、大丈夫なんですの、これ~?」
「あはは、行け行けー!」
下りという事もありぐんぐんスピードが上がる。
私は付けた紐を右左と引っ張りつつソリの向きを変えて道なりに滑っていく。
そして、
「わぁぁぁぁ止めてぇぇぇ」
「きゅぅぅぅ」
「早すぎですわぁぁぁぁ」
「おーー早~い!」
ソリの速度が速くなり、周りの木々が一瞬で過ぎていき遠ざかる。
そこで私は大事な事を思い出した。
「あ、ブレーキ付けるの忘れてた」
「……はぁぁぁぁぁぁ?」
「……」
「何してくれてるのですかぁーー!!」
マリーとリアの叫び声が響き渡るも、ソリは猛スピードで山道を下って行ったのであった。




