第十話 対男爵戦
戦闘にて怪我描写シーン有ります。 暴力シーンとして注意です。
ギィン!!
馬上からの剣をデュランダルで受け止める。
(この人! 『双刃葵』で剣が流されない様に計算して打ち込んできている……)
しかも馬上からの振り下ろしにより力も強い!
受け止めたものの押し切られる形で後退して剣を受け流した。
「『火炎』」
火球がネーブル男爵目掛けて放たれるが、男爵は馬を巧みに操り器用に避ける。
「危ない危ない……あやうく髪が燃えてしまう所でしたよ」
マリーにニヤリとする。
「くっ! だったら!!」
マリーが男爵に杖を向ける!
男爵もマリーに向かって駆け出した!
「そちらには行かせない!!」
私が間に入ろうとするも駆けだした男爵には剣が届かない……ごめんねと思いつつ馬の体を斬りつける!!
しかし、男爵は馬上から剣を突き出して私の剣を弾いた!
(しまった、止められない!)
そのまま男爵がマリーに向かって行く!!
「『雷撃』」
マリーの手から雷が迸る!!
バシィ!!
放たれた雷は……男爵がマリーに向かって投げつけたコインに直撃する!
「そんな!?」
その隙に男爵がマリーに駆け寄り剣を振り下ろした!
横にいたリアが杖を突きだして防ごうとするも、その杖を切断しつつマリーの肩から刃が入り袈裟懸けに斬られる!
「あぁぁ」
私の目にマリーの崩れ落ちる姿が映る。
「マリーーーーーーー!!」
私の絶叫が響き渡った!!
(よくも!!! 絶対許さない!!)
私は全速力で駆け寄り二撃目を加えようとしている男爵に剣を突き出した!!
キィン!
高い金属音を立てて私の剣は男爵に打ち払われる。
お互いに剣を弾かれ距離を取りつつにらみ合う。
そうしつつも後ろにリアとマリーを庇うと、
「リア……マリーは?」
私は男爵から目を逸らさず、後ろにいるリアに声を掛ける。
「『回復』 ……大丈夫、杖のおかげで思ったよりは浅くなってくれましたわ」
後ろに目は向けられないが、リアの安心する声が聞こえる。
リアは聖女の血を引くだけあって回復魔法に秀でている……彼女が大丈夫と言うなら信じていいだろう。
(であれば私のやるべきことは……)
目の前にいる馬上のネーブル男爵を睨みつける。
「よくもマリーを! 覚悟してもらうわ」
男爵はニヤリと笑うと、
「それはこちらのセリフだと思うがね」
お互いに剣を構える。
そして両者ともに駆け出した!
男爵が馬上から剣を振り下ろす!!
「死ね!」
私は剣を抜刀するように下段に構え、そして……下から上に剣を振り上げる!!
甲高い金属音がして両者の剣がぶつかり合い激しく火花を散らした!!
互いの剣が重なり合いせめぎ合う!
やはり男爵は受け流した剣が馬に流れない様に角度を踏まえて振り下ろしているようだ。
これでは『双刃葵』は使えない。
二人の剣が交差したまま……拮抗する!
(でも……地に足を付けている私の方が押し切れる!)
私は大地を踏みしめる様に力を入れデュランダルを男爵に向けて押し込んだ!!
金属がこすり合い、交差したまま私の剣が男爵目掛けて突き出される!
「うぉ!」
思わず男爵がのけ反り、お互いの剣がせめぎ合いから離れた!!
(今だ!!)
その瞬間私は体を低くして馬の腹の下を通り抜ける!!
のけ反っていた男爵はほんの一瞬私を見失った。
単純にしゃがんだと思ったのだろう。
(華月流 一輪刺し)
馬の反対側に回り込んだ私は低い姿勢から剣を突き出した!!
狙うは膝!
鐙に足を置いている為、膝から太ももまでが直線になっている。
ザシュ!!
膝から入った刃が太ももに掛けて突きぬける!!
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
馬上でネーブル男爵が絶叫を上げる!
「フン!!」
私はそのまま剣を横に薙ぐ! 差し込まれた剣が太ももを切り裂きながら現れた!
「あああ……わ、私の、私の足がぁぁぁぁぁ!!!」
血だらけの太ももを手で押さえつつ半狂乱になったネーブル男爵は、
「嫌だ! 死にたくない!! うわぁぁぁ!!!」
口から唾を飛ばしつつ叫ぶと、馬を駆け王都の方へ戻って行ってしまった……叫び声が徐々に小さくなっていき、姿も霧に覆われて見えなくなってしまった。
(マリー!)
私はすぐにリアの元に駆け寄る!
そこにはリアに抱きかかえられたマリーが顔を苦しそうに歪めている。
カンナも心配そうにマリーをのぞき込んでいた。
「マリー! しっかり!! マリーー!」
マリーはゆっくり目を開くと、
「ライラ姉……」
「ああ、マリー。 大丈夫!? どんな……」
感じ……と言う前に、
「声大きい。 頭に響く……」
「えぇ?」
マリーは抱きかかえられている状態から身を起こすと、
「もう平気。 リア姉の回復魔法もあったから傷も治ってる」
そう言うと、
「むしろ耳元で叫ぶライラ姉の声で鼓膜が破れそう」
(え? え? えと、ナニコレ? 傷は大丈夫なの??)
私があまりの展開に混乱していると、マリーは顔を伏せて隠し、
「……でも、ありがとう。 二人とも」
「あ、う、うん」
「まぁ良いですわ! 杖は今度弁償してもらいますわよ」
私はいきなりのデレに唖然としつつ頷き、リアは目を擦りつつそっぽを向いた。
カンナ王子も泣きつつもホッとしているようだ。
その後、私達はこのままここでキャンプをとる事となった。
リアのおかげでマリーの傷は治ったが、斬られた服までは戻らない。
着替えや疲労などもあるだろうし、霧も深くなっている為だった。
私はテントを建てつつキャンプの準備をし始める。
そうしている間にも霧がどんどん辺りを覆っていく。
その霧を見ながら私は不安になってしまった。
(女性だけでなく男性もカンナ王子を狙っている……自国でもこれだけ襲われるのに他国ではどうなるのか……)
王子を狙う者はどれほどいるのか……。
(お父さん……)
深い霧の様な不安を振り払う様に、私はデュランダルの柄を握ったのだった。




