第百話 畏怖瞳々
ありがとうございます!
ついに百回を迎える事となりました。
引き続き毎日投稿と完結を目指していきますので、
よろしくお願いいたします。
「お、おお! 皆さんご無事で……」
丁度そこへランタナ男爵が数名の護衛を引き連れ駆けつけて来た。
ランタナ男爵は倒れている男達に目をやりつつ、こちらに歩いてくると笑みを浮かべた。
「いや、国会議事堂に賊が入り込んだと聞いて、慌てて皆さんを探していたところだったのですよ」
そうしてにこやかにこっちに来るが……。
「そこで止まって!」
マリーが声を上げた。
その刺すような鋭い声にびくりと男爵が体をすくめ足を止める。
続けて、
「貴方の言葉には不可解な点が多すぎる。 怪しいから近寄らないで」
「はい? 不可解とは?」
ランタナ男爵が首を傾げる……が、さすがに私もおかしいと感じ始めていた。
大体これだけの人数が地面に倒れているにも関わらず、驚きの一つもない。
普通なら『この人達は?』とかあっても良さそうだが……。
『賊が~』とは言っていたが、だからと言ってこの人達が賊である確証もないはずだし……。
それにこの状況で平然とこちらに歩いてくる。
それにいきなり現れて『私達が全員無事』と言い出す事も怪しい。
まずは『ご無事でしたか?』とかじゃないだろうか?
「つまり……僕達が無事って知っていた。 見てたんだよね?」
ランタナ男爵の顔に焦りが浮かぶ。
「そ、そんなことは! 一目見て皆さんが立っていたのでてっきりご無事かと……」
「それでも怪我などを考えていれば声を掛けるはず。 貴方はそれすらしなかった」
マリーがランタナ男爵に杖を向けて牽制する。
ランタナ男爵の目が泳ぎ、オドオドし始めた。
しかし、キッとマリーを睨みつけると、
「……もう良い。 分かっているなら結論から言おう。 そこにいるストケシアの王子を渡せ!」
男爵はカンナを指さしながら叫ぶ。
男爵の言葉に護衛の者達が素早く私達を取り囲んだ。
先程の傭兵達より数は少ないが動きは機敏で手強そうに思える。
「大体カンナをどうするつもりよ!」
私がランタナ男爵に叫ぶと、
「私の妹と結婚させるのだ! そして俺がストケシアを影から操ってやる」
勝ち誇ったようなランタナ男爵。
「貴方みたいな人がストケシアに来ると思うと吐き気がしますわ」
リアが侮蔑の目で見ている。
「う、うるさい! 俺はもっと偉くなるべき男なんだ!」
ランタナ男爵が手を上げると、護衛達が武器を構える。
「俺の邪魔はさせない。 邪魔するならトラノ同様……」
ランタナ男爵がしまったとばかりに口を閉じる。
しかし……、
「……私同様?」
トラノがそれを聞いて呟く、自分に繰り返し聞かせるように呟くと、
「……まさか……貴様が娘を?」
「違う! 俺は……ちょっと遊んでやれば良いって言ったのに」
ランタナ男爵が顔を青くして後ずさる。
「娘の相手はどこだ?」
「い、いない……もういない。 死んだ、死んだんだ!」
ランタナ男爵が喚き散らす。
「くそっ! 遊んで捨ててやれって言ったのに……あいつも本気になりやがって!! 俺の言う事を聞かない奴はみんな死ねばいい!!」
「貴方……まさかトラノさんの娘の彼氏を……」
私の中で怒りがふつふつ沸き上がる。
「ああ、殺したよ! 殺してやったんだ!! 俺の言う事を聞かない一市民の癖に!! なぁ~にが『本当に好きになった』だの『彼女を裏切れない』だの」
喚くランタナ男爵の目は正気には見えない。
「顔がいいだけの優男の分際で! 大人しくトラノの娘を追い詰めてやればいいのに」
唾を飛ばして叫んでいたランタナ男爵だったが……急に静かになってニヤリとすると、
「まぁ……どちらにしろトラノの娘は死んだんだ。 よく考えれば結果的には良かったのか」
「貴様私の娘をなんだと!! 私が狙いか!?」
トラノが……私達には優しく微笑んでいた彼が、怒りをむき出しに今にも飛び掛からんとしている。
「ああ、そうだよ! お前が邪魔だったからだ。 そしてここまで話してやったんだ、メイドの土産はもういいな? ……王子以外全員殺せ」
ランタナ男爵が私達に背中を向ける。
と、同時に護衛が私達に斬りかかってきた!!
「かげつりゅ……」
私が動くより早く、私の横を影が走り抜ける!!
「ランタナァ!!!」
トラノさんだった。
「と、トラノさん!」
私が慌てて止めようとするも、既に護衛がトラノに向かって襲い掛かっていた!
護衛三人が同時に剣を振り下ろす!!
「!?」
しかし、三人の振り下ろした剣が空を切る!!
(抜けた!?)
トラノは恐るべき速度で刃を交わしつつ三人の横を抜けた……私から見てもかなり早い。
その動きの正体は……私が思うに足運びだ。
体を回転させ軽くステップを踏む様にふわりと抜ける……風にあおられた葉のように、時には緩く時には鋭く動き緩急と回転による動きで護衛達を翻弄していた。
「な、何ですの? 一体……」
リアも私の隣で唖然となっている。
と、護衛達を抜いたトラノがランタナ男爵に詰め寄る!!
しかしそんなトラノを見てもランタナ男爵は余裕を崩さない。
「……お前は俺には勝てない」
トラノがランタナ男爵を殴ろうと腕を引く、そしてその顔目掛け拳を繰り出した!!
「!!」
……トラノの拳が……止まった。
見るとランタナがトラノに腕を突き出し……その手から何か紐の様な物が垂れている。
それに陽の光が当たりキラリと輝いた。
それはロケットペンダントで蓋が開かれており……中には写真がみえる。
「イ……イブキ」
その中の写真が見えたのか……恐る恐るペンダントに手を伸ばすトラノ。
ドン!!
……その胸から銀色の刃が生えた。
「ト、トラノさん!!」
私が叫ぶが……さらに二本目が背中から突き入れられ胸から剣先が生える。
胸から飛び出た剣により血が噴き出た。
それでもトラノは震える手を伸ばしペンダントを握りしめた。
「よかったなぁ? 土産に持っていくがいい。 お前用に持っていた甲斐があったからな」
ランタナ男爵は顔に跳ねたトラノの血を拭き取りながら、
「クックック……娘とその彼氏によろしくな?」
その言葉と共に剣が引き抜かれ、トラノは膝を落とし……そのまま前のめりに突っ伏した。
地面に赤い色が広がっていく。
「り、リア! お願い!!」
私が慌ててリアに声を掛けるが……リアは悲しそうな顔で首を振った。
「……心臓を……もう、彼は……」
リアの魔法は死んでなければ回復できる。
しかし死んでいる者を生き返らせるなんて事は……どんな者にも無理な事だ。
「心配するな。 お前達もすぐに会わせてやる。 そしてお前達を殺した賊を退治したとして、私の名声は更に高まるだろう!」
両手を広げて天を仰ぐランタナ男爵。
護衛達が私達の方を再度囲み始める。
「……」
私は無言で剣を抜いた。
スッと音も無く歩き出し……剣を左の腰位置で寝かせて構える。
そして剣の柄をクロスして握った。
「……華月流」
護衛達が私を止めようと、剣を突き出してきた。
「……咲」
護衛達の目には私の姿が消えたように見えただろう。
他の者達からは護衛達の前からその背後に一瞬で移動した様に見えたはずだ。
華月流……朔
元は東邦の『居合』がベースの様だが、それを父ハーデンが剣用にアレンジしたものだ。
居合と違い鞘から出した状態で腰位置で構える。
そして瞬間的に神速を使用し、敵を一閃で斬り捨てながら通り過ぎる。
私は父ハーデン程力が無いため、剣の柄をクロスして持ち梃子の要領で威力をあげて斬りつける。
自分なりにアレンジした為、名前を「朔」から「咲」に変えていた。
すれ違った護衛達はそのまま無言で地面に折り重なって倒れた。
「は?」
ランタナ男爵の抜けたような声。
「ええ!」
「は、早すぎ」
「すごい……」
カンナ達からも驚愕の声が漏れる。
瞬間的に神速を使用する為、いつもより早く見える様だ。
「お、お前達! 何してる? 早くコイツを!!」
ランタナ男爵が焦って残りの護衛達に指示を飛ばす!
残りの護衛達が私に殺到する!
が、
「……死ぬの?」
私が護衛達をひと睨みして呟くと、それだけで全員が動きを止めた。
いつもの私の声じゃない様に聞こえる。
深く……暗く……闇の中に沈んでいくような声。
その声を聞いた護衛の中には、その場に力なく崩れ落ちる者もいる。
(……実力差が分からないわけではないだろうし、死にたくないなら掛かって来るな……)
私は冷静にそう考える。
そう……私は冷静……まるで冷や水を掛けられたように澄み切っている感覚だ。
でも心はドロドロした怒りに埋めつくされている。
トラノの娘、その恋人、そしてトラノ自身……更にはカンナを狙いストケシアも狙う。
欲深く業深いこの男に私は怒りの目を向けた。
「ヒッ!」
ランタナ男爵は腰を抜かしたように尻もちを着くと、そのままずりずり後退し始めた。
私はそんなランタナ男爵を……一歩……一歩……一歩……ゆっくり追いかけてゆく。
ゴッ!
ランタナ男爵が壁にぶつかった。
壁にぶつかっているのに尚も下がろうとバタバタしている。
私はゆっくり追い詰めていき……ついにはランタナ男爵の目の前に立った。
哀れに尻もちをついている男を冷たく見下ろす。
そして剣を振り上げた!
「た、頼む! 助けてくれ。 何でもする! 金! 金ならいくらでもやる!!」
私の足に縋りつくように這いよるランタナ男爵。
私は……それを見ても何の感情もわかなかった。
ただ、無言で剣を振り下ろす__
「ライラぁ!!!!」
「!?」
ハッとして剣を壁側に押し出す!!
ガガガッ!!
剣先が壁を擦り勢いが落ちて……ランタナ男爵の頭上スレスレで止まった。
(あ、あれ? 私って??)
ガバッ!!
私の腰に抱き着いて来た小さな影。
「カ、カンナ?」
「ライラ! 大丈夫? 目~覚めた?」
「あれ? 私は……」
私の中から熱が引くような感じだ。
前に目を向けると白目をむいて気絶しているランタナ男爵。
大きく股を開き、空いている口からは涎が垂れている。
その股間は濡れてズボンを濡らしている。
私は……頭を振りながら、
「よく覚えてないけど……カンナに助けられたみたい?」
「……」
カンナは私の腰に顔をうずめてギューと抱き着いている。
リア達を見る。
リアもマリーも何と言っていいか分からない様な顔をこちらに向けている。
私は目を逸らす……地面に物言わぬ体となったトラノが横たわっている。
その手には鈍く光るロケットペンダントがしっかりと握られていたのだった……。
らいら「やったね百回!」
りあ 「まぁ続いて何よりですわ」
まりー「最初は読者さん0人だとどうしようか心配してたとか……」
らいら「ああーっとそこはメタくなるのでカットです! カット!」
かんな「ええと……それ自体があれかな~って思うけど」
らいら「意見とかあります?」
ふぇん『吾輩は出番が少なくて不満なのじゃ』
りあ 「畜生はお黙りですわ」
ふぇん『神獣なのに! わお~ん』
かんな「まぁまぁ、きっとみんな活躍できるよ! がんばろうね」
全員 「と言う訳で、引き続きお楽しみ下さい~(ですわ)(なのじゃ)」




