外出計画と交渉契約 2
男性は少年達に会釈をすると、目の前の墓へ歩みを進めた。
墓前に花を手向けるため、片膝をつき、黙祷を捧げる。
ウォルガはアルバートを連れて立ち去ろうとした。
この場所だけは、自分達以外入れないよう調整されたはずだった。誰にも会わない様に、ジェスタが。
「油断したか?しかし、ミッドランドの小倅が、アルバート殿の護衛係になっているとは意外だったな。」
体格の良い隙のない所作で立ち上がった男は、立ち去ろうとする2人に声をかける。
ウォルガは軽く溜息をつくと、男性に向き合った。小さい頃から知っている。友達の爺様だ。ここでの出会いは仕組まれたようだ。
「護衛係ではなくお友達です、グエルお祖父上。いつ前線から戻られたのですか?」
「昨日だ。隣国との一時休戦が決まった、5回目だが。そんなことより、アルバート殿に御挨拶をさせていただきたい。私は、グエル オースティン。国防軍長官を務めております。以後お見知りおきを。」
グエルは臣下の礼をとった。
「…はい。」
おそらく初対面である人間に対し戸惑うアルバート。
「グエルお祖父上とは、小さい頃ノアの家で知り合いになりました。悪い方ではありません。しかし、こんなところで、アルバート様にどういったご用があるのですか?」
誰何するウォルガに対し、アルバートを見つめ、返答した。
「アルバート殿、今の王都は嵐の前の静けさです。ルーベンス王は、最近になって、臣下の妻もしくは年頃の娘を人質として差し出すよう圧力をかけています。我々もその内、従わざるを得ないでしょう。我が家系でも、既に孫イスタが正妃としてとらわれているので 受けるしかないのです。これは全て我が国の王の命令でもなく第一王妃すなわち大国の指示なのです。大国の属国化は免れない。それでは、我々軍部は何の為に今まで隣国との戦いに明け暮れてきたのか。」
静かに悔しさを滲ませながら、話を続ける。
「我々は一時休戦中、王都にいます。その間にあなたが本気で決断する時が来たら、手を貸しましょう。ただし、その見返りとして、人質になったものの解放と、この国が独立国家として存続することを希望します。非常に真っ当な条件だと思いませんか?」
求める者は家族の解放で私利私欲ではない。だが、聞いた内容は一度持ち帰らないと落ち着いて考えられない。
「いきなり神輿として担ぎ上げ者ができたとばかりに、寄ってきたお祖父様に問題がないとは言えません」
「そうだろうな。だが、アルバート殿は方向性を示された。事態は動き始め、いろんな形であなたに接触してくる者が増えてくる。話を聞く聞かない、受ける受けないはご自身で判断をしながら、お味方を増やし、力をつけないと、なかなか将来は難しいだろう。近い将来の話だ。」
アルバートはグエルに手を伸ばした。それに気づき、お互い握手を交わした。
「あなた方の手を取るタイミングはよく考えます。」




