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若手官僚と講師契約 3

右の耳につけているピアスが、3度微弱に震え、透明から緑色に変わった。

執務室にいたジェスタは、クロムウェストの執事ダンテを下がらせると、カードを取り出し、指で簡単な呪を描く。すると、薄く緑色に光ったカードを通し、頭の中にダイレクトに声が響く。

「アルバートに会いに行け、ですか。さすが…仕事早いな。巻き込まれて仕方なくやってこのレベル?」

手元にあるアルバートからの呼び出しのお手紙といい、公爵達の見る目は確かだなと思い、ジェスタは軽く笑った。

前にあったときに、連絡用にと使い捨て通信呪具を数枚渡してあった。

中立というより権力に興味のない、勉強のできる育ちの良い青年。その内、本気にならざるを得ないだろう。

「明日にでも、訪ねて見ましょうか」

執事を呼び、明日の予定を変更した。


久々に訪れた王宮の東館は人気が少ないが、最低限の掃除は行き届いている、とジェスタはまわりを何気なく見ながら歩いていた。

アルバートは以前侍女達を毒混入の危険性を鑑みて下がらせていたのだが、今は配置を戻している。

ノックをして、返事があったので、部屋に入っていく。ソファに腰掛けていた少年と挨拶を交わす。

「アルバート様、お久しぶりですね。」

呼び出しを受けたジェスタが、アルバートの元にやってきた。

ジェスタは席を勧められ、腰を下ろした。侍従は飲み物をセットすると、部屋から下がっていったので、2人きりになった。

新しい講師に与えられているギリギリの課題をクリアすべく、睡眠不足の表情が隠しきれないアルバートは、手元のカップに口をつけた。

「…来てくれて。ジェスタと1度きちんと話がしたかった。時間ある?」

「もちろん。時間のことでしたら十二分に。」

自分の目を見て話すアルバートに、柔らかい表情で返事を返した。すこし和んだようだった。

「…亡き父王が無理を言って、私の近くにいてくれたんだろうと思う。でも、ジェスタが薬や食べ物を手配してくれていたから、生きてこれたと思う。今まで、当然の様にしてくれていたから、あらためて礼を言いたい。ありがとう、ジェスタ」

心からの言葉と表情を見て、ジェスタは素直に受け取る事にした。悪い気はしない。

「そのお言葉、ジェスタとしてありがたく受け取らせていただきます。クロムウェスト家の人間としては当然のことですから。」

「ありがとう。ジェスタに言いたかったんだ。それだけは伝えたかった。」

会話止まった。一瞬だけ目を逸らし、今度は何かを決意し、目線を合わせ会話を続ける。

「これからのこと考えた。私は、殺されたくない。お母様達を後宮から出して差し上げたい。私に関わっている者の安全を守りたいんだ。私が生きていくためだけに、クロムウェストの力を貸してもらえるだろうか?」

三大公爵家の役目を教えてもらったのだろう。そうでなければ、私個人に話を持ってきただろう。

「個人的な願いでも、クロムウェスト家の力を求めるあなたに力を貸すことは可能です。但し、代わりの対価を求めます。」

「私は何の力も持っていない。だから…」

無理な願いだったんだなと思った。

「ありますよ、アルバート。あなたは正統な王位継承権をお持ちですね。我々は、あなたが王位を取る事を対価とし、それを支えます。」

「なぜ、兄王のままではなく、王を交代させるようなことを望んでいる?」

「ルーベンス現国王は、大国のいいなりになっているので、重要な情報を渡す事はできません。前国王の死亡にも関わっている。これがあなたに王位を望む理由です。これから先、現国王ではダメなのでは?ぐらいは思っていたでしょう?」

アルバートは何も答えなかった。勉強していく中で、このままでいいとは思えなかったからだ。

「我々は、国王に流す情報をある程度規制することができます。それだけでも、貴方も周りの者にもある程度の安全を確保できますよ。」

「王は常に護衛官を配置して国内を監視しているのでは?」

「王国護衛官の諜報部隊を把握する事により、王国内全ての情報を得ていると思い込んでいるんです。我々クロムウェスト家は、その上にいます。我々の助けを求めますか。アルバート様?」

これは、人のためでも国のためでもない。自分の生命と自分の世界を守りたいが為だけに、兄王を王座から引きづり降ろす契約だ。

「力を貸して欲しい」

クロムウェスト公爵子息ジェスタはうやうやしく臣下の礼をとった。














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