第3王弟と解除契約 1
女性の柔らかい感触や温もりを十分に確かめる。
首元に顔を埋め、噛み付くように激しいキスをする。
お互いに甘い香りと、衝動に駆られて、激しい一時を過ごす。
終わると嘘のように冷静に戻る。
しばらくの間、戻っていることを相手に悟らせないように戯れる。
刹那的な出会いを求め、やってくる大人達。
この場では、名前も身分もわからない事になっている。
公然の秘密ということだ。
しかし、身元が確かな人物しか、会員になることはできない。
ここでは、男性も女性も、それなりの身分が必要だった。
軍属である父親や兄が、何も知らない子どもだった俺を連れてきたのが始まりだった。
軍の訓練を受け、がっしりとした体格になってきたが、まだ少年の初々しいさが残る雰囲気に年上の女性から気に入られている。
出入りをしていると、当然ながら知り合いや親しい者もできてくる。
同じ士官学校卒業した先輩や、酒を飲みながら世間話をする大人の知り合い、訓練されて動きがスマートすぎる者も多かった。
士官学校では、規則厳しい男子寮生活を送り、ストイックさを要求される。
特に実地訓練と称して戦場に連れて行かれる。無理やり命の賭けをさせられ、理性やモラルが引きちぎられると、ここに入り浸る。
動物のようにやりたい時に行為だけをする。
恋とか愛以前の本能的な欲求。
自分の中の欲求が満たされると、すぐに元の自分に切り替わる。
いつものように、今日の相手とこの後の駆け引きをしていると、斜めから視線を感じた。
自然に少し目線を変えると、このような場には珍しい人物がこっちを見ていた。
驚愕の表情を浮かべたギルバードがこちらを凝視していた。
女性達と話しをしているノアを見つけ、手慣れた様子に驚いているようだ。
しかし、ここで不躾に人の顔を見るのは、あまりよろしくない。
ー今日は、これ以上無理だな。
ノアは、この場からギルバードを連れ出すため、女性にやんわり断りを告げた。
「おまえはまだ未成年だろ?」
まるで保護者のような言葉を口にする男。育ちがよすぎるため、この店では若干浮いて見える。
夜の時間帯に開いていた居酒屋で、3人は軽く食事を注文した。
「そこはあまり関係ありません」
「み、未成年って…ははははっ」
「ケイン先輩は、何故この方を連れてきたのですか?」
未成年という言葉がつぼにハマったらしいケインは、不機嫌そうなノアを見てあっさり答えた。
「連れて行くだけのバイト。金が欲しかったからだけど。ちなみに、こいつはかなり前から出入りしています。」
士官学校のOBだと言った男は、あっさり動機を口にした。
「かなり前って…いや、いい。」
いつからなんだと聞くのも恐ろしい。
「何を知りたいのかはわかりませんが、この後輩は使えると思いますよ。」
仕事で役に立つか試してみたかったケイトは、上級貴族である青年にそう提案した。




