第85話 悪魔の事を調べる事にしました。
夜会の翌日、俺はゲオルククからの依頼である国宝であり魔王の象徴にもなる物を作るためのエレノールの敷地内にある工房を訪れた。
「おはようございます」
「おぅ、坊主か、今日はどうした?」
工房には既にガルフがおり道具の手入れをしていた。
俺はガルフにメルテツシナ魔王国で受けた依頼の話をする。
「って事なんで今日は一日工房にいるつもりなんですけど良いですか?」
「そりゃ構わねぇが、まさか国宝になる物を作れって依頼を持って来るとは思わなかったぞ」
「俺もこんな話しが来るとは思いませんでしたよ、それでさっそく試作を作ってみたいんですけどいいですか?」
「わかった、好きに使ってくれ」
「ありがとうございます」
「それで、何を作るつもりなんだ?」
「そうですね」
俺は腕を組み少し考える。
「やっぱり剣を作ろうかと、それでガルフさんには今から作る試作に対して意見が欲しいんですけど」
「わかった」
それから一時間程がたち出来上がった物をガルフに見せる。
「どうですか?」
「どうもなにも、こいつはすげーぞ、まさかこんな短時間でここまでの物を作り出すとは、ここまでの物を作ろうとしたら短くても一週間はかかるぞ」
ガルフは驚きながら試作の剣を手に取りいろんな角度に変えながら見ている。
「魔法と魔道具を使ってますからかなり時間の短縮ができるんです」
「時間の短縮って簡単に言うがな、不純物を別けそれを溶かし成型し頑丈にするため叩き装飾して鞘を作り研がなきゃならねぇ、しかも材料がオリハルコンにミスリルそれに竜の素材ってありえねぇだろ、それも試作の段階で軽々しく使うもんでもねぇ、これで十分国宝級だ」
「でもこのままではただの剣ですよ」
「ただの剣ってこれに何を」
「魔法の付与をします」
「なぁ坊主よ、もうこれを渡せばいいんじゃないか?」
「さすがにそれは」
苦笑いをする俺にガルフは剣を机に置き呆れながら椅子に座る。
俺は魔方陣を布に書き剣の下に引く、そして魔核を剣につけ魔法陣に魔力を流し発動させる。
「よし、出来ました」
「なに!もう付与が終わったのか!」
「では試しに使ってみましょうか」
俺はゲートを開きそこを通る、その後ろをガルフがついてくる。
「ここはどこだ?」
「俺の修行場です」
「グギャー!」
「な、なんだ!?」
「さっそく試し切りする相手が現れたようですね」
声のする方を向くとかなり大きな鳥形の魔物が空から迫ってきている。
「あれは、コカトリスか!」
「そのようですね」
俺は試作の剣に魔力を流し空に向けて放つ。
ズバッっと音がした後にコカトリスの羽が切り離されそのまま地面に落下する。
「なぁ!お、おい、今何を」
「剣に風の魔法を付与してあるのでそれで切ったんですけど、思った以上に威力がありましたね」
驚くガルフの横で俺も驚く、まさかここまでの物が出来るなんて思わなかった。
「ギャー!」
地面に落ちたコカトリスは暴れまわり羽や血、砂が舞う。
俺は剣を構え身体を魔法で強化する。
「ん?」
少し違和感を感じながら素早く動きコカトリスの首を切り落とした。
「なんて切れ味してやがる」
「うん、なかなか良い剣です、それよりも」
自分の状態がおかしい、悪い訳じゃなく良すぎるのだ、力が有り余っている。
これが一部とは言え記憶と力を取り戻した影響なのか、正直恐いほどだ。
「コカトリスをこんなあっさり倒すとは、なぁ坊主、お前いろいろおかしいんじゃないか?」
「その反応は酷いですよ!」
コカトリスはAランクの魔物だ、以前なら倒せはするもののもう少し時間がかかっただろうが今の俺の状態からするとたいしたことはなかった。
「とりあえず素材の回収をします」
「手伝うぜ」
俺はガルフとコカトリスの解体を始めた。
「これで終わりだな」
「そうですね」
コカトリスの解体を終え一度工房に戻ることにしゲートを開いた。
工房に戻ると剣を机に置く。
「ガルフさん、どこか変なとこありましたか?」
「変なとこ?坊主以外にはないな」
「酷い!」
「ガハハッ、まぁ気の済むようにやるこった、それが職人ってもんだからな」
そしてそこから半日を掛けて一本の剣を作り上げた。
「完成です」
「こりゃまたスゲーもんを作ったもんだな」
「さっそく試し切りをしましょう」
ゲートを開きそこを通る。
「さて、手頃な魔物を探さないと」
「またコカトリスか?」
「いえ、もう少し強いのを」
「そ、そうか」
ガルフは若干顔をひきつらせながら答えた。
魔法で辺りの魔物の強さを調べる。
「向こうに強そうなのがいるみたいなので行ってみましょう」
俺の言葉に頷き強い魔物の気配がある方に向かう。
「あれか?」
「ツインウルフですね」
顔が二つあるデカイ狼の魔物だ。
「うーん、もっと強い気配が有ったと思ったんですが」
俺は首を傾げる。
「あれもAランクの魔物だぞ、個体によってはSランクと同等の者がいるって話だ、十分過ぎるだろうに」
「それもそうですね」
俺は武器を構えるがその瞬間ツインウルフの首が飛び血が周りに飛び散る。
「なんだ!」
「思った以上にやばそうなのがいるみたいです」
ツインウルフの首を跳ねたそれは恐ろしい顔をしている、そしてゆっくりこちらを向いて微笑む。
その瞬間全力で魔気混合術を発動させ能力を最大値にまで底上げする。
「な、なんだ!」
ガルフは驚いているが俺はそれどころではない。
「ミ、ツ、ケ、タ」
距離はそれなりに離れているのにその言葉がはっきりと耳に聞こえ心臓が跳ね上がる。
俺はガルフの下にゲートを開き落とし穴の要領で工房に逃がす。
「おゎ!」
ガルフは驚いていたがゲートを通ったのを確認しすぐゲートを閉じた。
すぐに俺がそれを視界に戻すと既に目の前に迫り鎌を振り下ろす所だった。
「くっ!」
手元に握っていた作りたての剣でなんとかそれを受け止める。
「ホゥ、サスガダ、アノカタハ、サゾヨロコブダロウ」
あの方って誰だよ!
俺は内心で叫ぶ。
「マズワ、ソノタマシイヲ、ヒキズリダスカ」
そう言ってそれは鎌に力を込め俺を吹き飛ばす。
「ちっ!」
俺は舌打ちしながら空中で体勢を整える。
「なっ!」
勢いよく吹き飛ばされそれなりの距離ができた筈なのに既に俺の目の前に来て手を伸ばしていた。
これは不味いと吹き飛ばされている俺の後ろにゲートを開きそれの反対側に出て剣を振り下ろす。
「ナニ!」
驚いてくれたものの剣を鎌で受け止める。
「ッ!不意をつけたと思ったのに、このまま斬られてくれないですか?」
「ククッ、セッカク、コチラガワニデレタノダ、モウスコシ、タノシマセテクレ」
「嫌です!」
俺は距離をとり剣を構え直す。
「少し、お聞きしたいことがあるんですが」
話しに応じることはないと思いながらも俺は疑問に思っていることをどうしても確認したくて話しかける。
「キキタイコト?ナンダ?」
この得体の知れない相手に話が通じると思っていなかったので俺は内心ですごく驚く、しかしこの状況を逃す手はないと思い疑問をぶつける。
「あなたは、悪魔ですよね」
「ククッ、ソウダ」
ドクンと心臓が跳ねる音が聞こえる。
悪魔、前世の俺を殺した存在だ。
「キキタイコトハ、ソレダケカ?」
「まだあります、あの方とは誰ですか?」
「ソレハ、ムゥ?」
悪魔の存在がノイズが起きたかのように歪んだかと思うとゆっくり薄れていく。
「ドウヤラ、ジカンノヨウダ、モウスコシ、アソベルト、オモッテイタノダガナ」
「な!まだ答えを聞いていません」
「イズレワカル」
悪魔は答えるつもりがないようだ、身体が薄くなるにつれ存在感も薄くなっていく。
俺は少しでも情報を引き出すため先程焦って使えなかった神眼を使いステータスを見る。
名前:マモン
ランク:SSS
年齢:表示不能
性別:男
種族:悪魔族
称号:七大罪・強欲
HP:30000/30000
MP:15000/15000
攻撃:2100
防御:2100
魔力:1380
敏捷:2400
幸運:1900
技能:闇魔法 無属性魔法 詠唱破棄 剣術 槍術 格闘術 双剣術 気功術 魔功術 魔気混合術 縮地 状態異常無効
PS:ー
どうやら悪魔と言う存在はこの世界で種族としても取り入れられているようだ、そしてランクはSSSランク、つまりリリナやクロナ並の強さを持っている。
さらに称号と名前だ、七大罪・強欲、マモン、この情報でこの悪魔と同等の強さを持つ者が後6体もいるのがわかる。
「ホカノ、モノタチニ、カラレナイヨウ、キオツケルコトダ」
そう言い残しこの悪魔は消えた。
どうやら俺は狙われているようだ。
早急に悪魔の事を調べる必要があるな、それにもっと強くならないと。
俺は自分のステータスを確認する。
名前:テンリ=エレノール
年齢:9歳?
性別:男
種族:表示不能
称号:貴族の次男 転生者 神の使徒 神殺し 超越者
HP:34000/34000
MP:50000/50000
攻撃:2000
防御:1720
魔力:2800
敏捷:2140
幸運:2300
技能:言語理解 アイテムボックス 神眼 全魔法習得可 全技能習得可 状態異常無効
PS:ー
一部の記憶を取り戻し能力がかなり上がったもののそれを使いこなせていない状態だ、それに今のままではSSSランクの能力がある相手が複数出てきた時に負けてしまう。
早急にどうにかしよう。
俺は手に持っていた剣を鞘に納める。
気持ちを切り替えて当初の目的である剣の性能の確認だ、このまま数体の魔物で試し切りをする。
「さて、この剣の性能は良さそうですね」
イレギュラーはあったものの予想以上の出来なので満足である。
俺はゲートを開き工房に戻った。
工房に戻るとガルフが勢いよく肩を掴む。
「無事か!?」
「はい、どこも怪我はないですよ」
「そ、そうか」
ガルフは安心したようで椅子に座った。
「あれは何だったんだ?」
「そうですね、あれは」
俺はガルフに起こった事の説明をした。
「あれが悪魔か、まさか実在したなんてな」
「そんなことよりこの剣ですが」
「そんなことって」
俺の言葉にガルフは呆れている。
「完成しました」
「そうか、良かったじゃねぇか」
「はい、ありがとうございます」
俺はガルフに挨拶をして屋敷に戻る。
汗をかいたのでお風呂に入りさっぱりした後自分の部屋に向かう。
部屋の扉を開けるとクロナとリリナが出迎えてくれる。
「ただいま」
「あぁ、お帰り」
「・・・お帰り」
2人はとても真剣な顔で俺を見ている。
「どうかしましたか?」
「わかっているのだろう」
その言葉に俺は苦笑いをした。
別に隠す事でもないので俺はクロナとリリナに悪魔の事を話す、突然現れたことなぜか俺を狙っていること、そして突然いなくなった事。
「っとそんなわけです」
クロナもリリナも難しい顔をしている。
「俺は明日アトレイアに会うつもりです、出来上がった剣を魔王国に届けた後になりますけど」
「・・・それが良い」
「もちろん我等もついていくからな」
こうして俺の明日の予定が決まった。
いつもお読み下さりありがとうございます。




