第84話 夜会の挨拶をしました。
オークションでは宝石等の装飾品や書物、武器や防具等様々な物が売り出された、俺の作った物も出てきたわけだが全てなかなかの高額で落札されていた。
良いものを作ったつもりではあるが周りがどれだけの価値を見いだしてくれるかは未知数であった為少し不安もあったが最初に提示された金額からどんどん値が上がるにつれ顔がにやけていくのを感じた。
これでフォルク達の入学金だけじゃなく卒業までの学費も手に入った。
「・・・テンリ嬉しそう」
「まさかこんなに金額が上がると思いませんでしたからね」
「・・・テンリだから当然の結果」
リリナはうんうんと頷く。
「しかし気軽に売り出すのは良くはないな」
「何故ですか?」
「装飾品にしろ武器や防具にしろあんな物が出回れば職人が一気に職を無くすからな、売るときは相手を選んで売り出す物も厳選するべきだ」
「作りはそこそこの物ですが使っている材料などはたかが知れてますよ、普通に買えるものばかりですし、そこまでする必要がありますか?」
「ある!だからもし販売するときは相談をしろ!よいな?」
「わ、わかりました」
クロナの迫力に負け俺は頷いた。
「な、なぁテンリ、俺達が貰った武器や防具って」
「ひょっとして今売り出された物と同じような物だったりしますか?」
フォルクとナユユは自分達が身に付けている武器や防具を指差し聞いてきた。
「そんなわけないですよ」
「そうだよな、まさか俺達にあんな凄い額がつく物を」
「今作れるなかで最高の素材を使った最上の出来の物ですからあの程度と一緒にしないでください」
俺の言葉にフォルクとナユユは笑顔のまま固まった。
「大切に保管させていただきます」
「ちゃんと使ってください、武器や防具なんて所詮消耗品なんですから」
俺の言葉にソーシャルは残念そうに頷いた。
そしてオークションが終了しお金を受け取る為に換金所に向かおうとVIPルームを出ようとしたらその前に扉がノックされる。
ゲルナが扉を開けるとドオルククが立っている。
「失礼します」
「おや、ドオルククどうかなさいましたか?後ろにはゲオルククもいますね」
「はい、お金の受け渡しをするためにお伺いさせていただきました」
ドオルククが横にずれるとゲオルククが頭を下げて部屋に入って来る。
「失礼致します、テンリ様のお金をお持ちしました」
「わざわざ持ってきてくれたんですね、ありがとうございます」
「いえいえ、さぁ、どうぞお座りください」
俺達はソファーに座り直す。
「さて、こちらが落札された物の金額になります」
ゲオルククはそう言って小さな袋をテーブルの上に置く。
「白金貨が8枚と大金貨が6枚ですね」
「はい、以前売って頂いた物もオークションに掛ければかなり値がはった事でしょう」
「確かにそうですね」
それを聞いたクロナがゲオルククを睨む。
「どういうことだ?」
「この前来たときにオークションに出品する物を買い取りたいと言われて売ったんですよ」
「ほぅ、いくらだ?」
「20点程で白金貨4枚です」
「あれほどの品をそれだけ売ってたったの白金貨4枚だと!」
クロナは勢いよく立ち上がる。
「魔王様落ち着いてください」
「これには理由があるのです」
「我々のお話をお聞きください」
ゲルナ、ゲオルクク、ドオルククがクロナに落ち着くよう声を掛ける。
「理由だと?それを聞く必要など」
「クロナまずは話しを聞きましょう」
「だが」
「そもそも俺は納得して売ったので今更文句を言っても仕方ないですよ」
クロナはイラつきながらもソファーに座り直した。
「兄上説明を」
「そうですね、これには魔王陛下とテンリ様も関わっておられます」
「なに、我とテンリが?」
「俺もですか!?」
「はい、魔王陛下が国宝であり魔王の象徴でもあるコクロウをテンリ様にお渡しになった事で新たな象徴になるような物を探しておりました、しかしあれほど人の目を惹き力強い物の代わりなど早々見つかる訳もなくいろいろな手段で探していました」
確かに俺とクロナが関わっている。
「それでなぜテンリが作った物を買う必要があるんだ?」
「テンリ様が持ち込んだ武器や防具、装飾品の数々の出来が素晴らしくそれをご自分でお作りになったと聞きいろいろ調べる為に買わせていただいたのです」
「調べるですか?」
「はい、材料は一般的に手に入る物ばかりでしたが技術に関しては最高峰と判断させていただきました」
「それで、安く買い叩いた理由はなんだ?」
「正直無名の人物であるテンリ様の作品があれだけ白熱した競り合いになるとは思っていなく、いろいろと御売りしていただいたあの時は少々値を高くし買い取らせていただいたつもりだったのです」
確かにゲオルククに売った時でさえ金額に驚いたがゲオルククに売った物の半分がオークションでそれ以上の値になるとは思っても見なかった。
「そして今からテンリ様にお願いがございます」
「な、なんですか?」
「材料は全てこちらが負担します、なので我が国の国宝であり象徴になる物を作って頂きたいのです」
「え!俺なんかよりちゃんとした職人の方に作って貰った方が」
「我が国にいる職人達にテンリ様がお作りになった物を見せたところその辺に売っている材料であれ程の物が作れる人物がいるならその人物に任せるべきだと言われました、更には店をたたんで弟子入りしたいとかなりしつこく聞かれる始末でして」
「そ、そうなんですか!?」
「ですから是非テンリ様にお願いしたく」
「うーん」
悩むな、確かにコクロウの件は俺もクロナも関わっている、それにコクロウを返す気は更々ない、だがラウスヴェル学園の準備もしなくてはいけないし。
まぁ全てではないが記憶が戻った事もあり短期間でかなり良いものを作る自信はある。
「勿論報酬もそれなりの額を用意させていただきます」
ゲオルククはスッと袋を出す。
「こちらは前金になります、出来上がり次第同じ額をお渡しするつもりでおります」
その袋には白金貨がどっさりと入っていた。
「やりましょう!」
俺の即決にクロナは呆れた顔をする。
「テンリ、ラウスヴェル学園の準備はよいのか?」
「わかっています、ですがどのみちコクロウの代わりを用意しないといけないのでしょう」
「そうだが」
「ならいいんじゃないですか」
「期間も聞かずに決めるのはどうかと思うぞ」
クロナの言葉は最もだ。
「何時までに納品しますか?」
「クルウィル様が魔王になるときに必要になるので」
「成る程、大丈夫です、間に合います」
今の俺なら直ぐに作れる、なんせ戻った記憶の中には良いものを早く作るための技術や魔法の知識があるからだ。
「なにか必要な物があれば仰ってください」
「いえ、大丈夫です、材料は持っているので、作る物もイメージ出来ました」
アイテムボックスの中にある物を素早く把握しどんな物を作るか決めた。
「さて、それではさっそく戻って製作しましょう」
そう言ってゲートを開こうとしたがそこでゲルナから待ったがかかった。
「テンリ様、さっそくやる気になっていただいたのですがその前に今夜開かれるパーティーに出席して頂きたいのです」
夜会?そう言われ俺は動きを止める。
「夜会に出席される魔王国の者達、そして今日会った各国の方々以外にも多くの者達が来ております、そこで顔見せと挨拶を」
「そうですか、わかりました」
こうしてコクロウの代わりを製作する作業を明日に回す事にし夜会に出ることになった。
それにしてもオークションに出るだけのはずがどんどん大事になっている気がする。
夜会が始まるまで休もうと魔王城に戻り案内された部屋で休む事にした。
俺がソファーに座りその両脇にクロナとリリナが座る、するとソーシャルが直ぐにお茶の準備を始めてテーブルに置いていく。
「ありがとう、3人共休憩していいよ」
俺の言葉にフォルクとナユユはその場に座り込む、それを見たソーシャルは2人を睨みつけるが俺が手でそれを遮る。
「ソーシャルさんも休んでください」
「ですが、いえ、わかりました」
「2人もそんなところに座らずにソファーに座ってください」
フォルクとナユユはゾンビのようにソファーまで動き座る。
「まったく、あの程度で疲れを見せるなんて情けない」
「しょうがないだろ、初めての経験なんだから」
「まさかいきなり他国のしかもお城に向かうなんて思ってなかった、最初はエレノールの街で護衛の訓練するかと思ってた」
ソーシャルは溜め息をつきながらも2人にお茶を出す。
「サンキュー」
「ありがとう」
お茶を飲み少し落ち着いた2人は俺達を見る。
「テンリから話は聞いていたけどリリナ様やクロナ様が王族なんだって改めて実感したな」
「うん、しかも2人共に序列一位だなんて、私達みたいなのがこの場にいるのって場違いじゃない?」
「まぁ、そうじゃな」
「「肯定された!」」
クロナの言葉にフォルクとナユユは肩を落とす。
「・・・事実だから仕方がない、もっと頑張る」
「最低でもソロでSランクの魔物を討伐出来るようになってもらわんとな」
「・・・うんうん」
「Sランクの魔物をソロで!」
「む、む、む、無理ですよ!」
リリナとクロナの言葉にフォルクもナユユも動揺する。
「・・・遅くても後10年くらいで」
「死に物狂いでやれば出来るだろう」
フォルクとナユユは俺を見る、それを笑顔で返しておく。
「・・・ソーシャル、出来るよね?」
リリナの言葉にソーシャルに注目が集まる。
「当然です、むしろ10年なんて必要ないかと、もし期間内にソロでSランクの討伐が出来ない者がいたら私が魚の餌にします」
フォルクとナユユは震え上がる。
「・・・ん、よく言った、期待してる」
「楽しみだな」
ソーシャルの言葉にリリナとクロナは満足したように頷きフォルクとナユユは顔を青くさせた。
話しをしていると気づけばかなりの時間が経っておりゲルナが声を掛けに来た、夜会に出る準備をし夜会をする会場に向かう。
「思っていたより人数が多いような気がするんですが」
会場につき二階に案内されそこから一階を覗いていたのだが時間がたつにつれどんどん人が増えていく、そして夜会が始まる頃には予想していた人数より多く人が集まっていた、気付けば握った手が汗で湿っている。
「・・・緊張する?」
「はい」
雰囲気に馴れていない事もあり自分が緊張しているのがよくわかる。
「なに堂々としていればよい」
「ちょっと無理です」
正直帰りたい気持ちで一杯だ。
そして今からクロナの言葉で夜会が始まる。
「では行って来る」
「・・・先に行くね」
「行ってらっしゃい」
クロナとリリナは二階から一階に降りていき話しをしていた人達がピタリと話しを止め二人に注目する。
クロナが会場にいる者達を見る、後ろにはクルウィルが立つ。
「皆の者この度は我が魔王国にお越しいただき感謝する」
そう言ってクロナは話始める、堂々としていて実にカッコイイ、次にクルウィルが話しをする。
この二人の話の後はドラグニア王国の女王であるトリアネーゼの挨拶だ、トリアネーゼはクロナの隣に移動する、ドラグニア王国の王女であるリリナはトリアネーゼの斜め後ろに移動した。
トリアネーゼの話が終わりデイステン王国の代表としてドルメインがジュマ獣王国の代表としてルトアーナが話をした。
各国の代表の挨拶が終わりこの後に俺が呼ばれるのだが必要あるのだろうか?
何よりこの後に俺が話すと考えると心臓バクバクである。
「さて、この場にいる者は皆が国々の同盟を望み平和のために集まっている者達だ、そして我等の絆を深く結び付ける為その象徴でもある我の婚約者に挨拶をしてもらおう」
気づけば各国の代表が挨拶を終えクロナがまた話しをしていた、もうそろそろ呼ばれるのだろう、それにしてもクロナの言葉のせいでいろいろなハードルが一気に上がった気がする、勘弁してほしい。
「それではテンリ、皆に挨拶を」
俺は皆の前に立つとクロナとリリナがすぐ後ろに付いてくれる、しかし皆が俺を見ているせいで緊張がピークを迎えている、何より話す内容を今更ながら考えていなかった事に気付き焦る、夜会の挨拶ってなに言えばいいんだ?あぁ帰りたい。
俺は深呼吸して話しを始める。
「ただいまご紹介に預かりましたテンリ=エレノールです、この度各国々が同盟を結び平和の為に尽力を尽くしていることとても喜ばしくそしてその素晴らしい出来事に私自身が関われている事が誇りです。今後問題も多く出てくる事とは思いますが我々ならそれを乗り越え今以上の結び付き、そしてこの世界を発展することが出来ることでしょう、何故なら天が神がそれを望み我々を見守ってくれているからです!」
俺は真剣な顔をしながらその場で思い付いた言葉を適当に話す、だが皆何の反応もく俺を見つめて動かない、ひょっとして変な事言ってしまったのか?やはりその場で思い付いた言葉を話すべきではなかったか。
「まだまだ若輩の身ですがよろしくお願いします」
俺はさっさと話しを切り上げて頭を下げた。
するとパチパチと少しずつ拍手の音が聞こえ直ぐにそれが会場中に響く。
「あれが天にそして神に認められた少年か!」
「いやいや、なんとも素晴らしい!」
「我が国の姫はなんと素晴らしい伴侶を見つけた事だ」
「それは我々の国も同じですとも」
「確か来年からラウスヴェル学園に入学するとか」
「我が国からも留学するものがいるから是非仲良くしていただきたいものだ」
「我が国も留学するものがおりますな」
会場が静まり返った時はドキドキしたがどうやら上手くできたようだ。
そして夜会が始まり俺の側にはクロナとリリナがいる、今いる者達に仲が良いとアピールする為だそうだ、はっきり言って何時もとかわらない状況だ、違うとすればここが夜会の会場であることだろう、個人的な挨拶をしようと多くの人達が押し寄せてくる。
クロナがほぼ一人で対応し俺が少し話しリリナは置物状態だ、クロナが側に居てくれて助かった、この人数を捌くのは俺では無理だ。
話しをする時に魔王国側は若干ビクビクしていたが機嫌の良いクロナを見て胸を撫で下ろしていた。
そしてこの挨拶ラッシュの状態は夜会が終わるまで続くのだった。
いつもお読みくださりありがとうございます。
何とか投稿することが出来ました。
ここ最近コロナの影響で振り回されている状態です、早くコロナ終息してほしいです。
さて次の投稿ですが3週間以内にはしたいと思っております、今後ともよろしくお願いします。




