第83話 オークションが始まりました。
「ゲルナ、各国の者達はどうなっておるのだ?」
「無事に到着しております、クルウィル様が全て対応致しました、今は来賓用の部屋でお寛ぎしていただけてるかと」
「そうか」
「本来魔王陛下が挨拶をしなければいけないことではありますが今回の各お国のご来賓の方々はいろいろと事情を知っている方々ですので助かりました」
「さっさとクルウィルが魔王を引き継げば良いものを」
「準備がいろいろありますからな」
クロナとゲルナは気軽に話ながら前を歩く。
「そうそう、テンリ様」
「なんでしょうか?」
「今回のオークションで来賓方にテンリ様が訪れる事をお伝えしたところ皆様が一度挨拶したいと申しておりましたがどうなさいますか?」
「俺に挨拶ですか?」
「はい」
「クロナやリリナじゃなくて?」
「そうです」
ゲルナに話を振られたかと思ったらまさかその内容が各国のお偉いさん達から挨拶をしたいと言うものだとは、気軽にお小遣い稼ぎに来ただけのつもりだったのに。
「あの、会った方が良いですよね?」
「会わないと言う選択肢はないでしょうな」
「ですよね、いつ会えばいいでしょうか?」
「早ければ早いうちがよろしいでしょう、幸いオークションまでまだ時間がありますからクルウィル様にお会いした後すぐに各国の方々がおられるお部屋にご案内致しますがどうなさいますか?」
「お願いします」
「承知しました、ではこちらがクルウィル様のお部屋になります」
話している内にクルウィルの部屋に着いたようだゲルナは部屋の前に立つ兵士に声をかけて扉を開けさせる、前回来たときとは違う者達ではあるがやはり顔を強張らせていた。
「それでは私はご来賓の方々にテンリ様の事をお伝えしてきます」
ゲルナは頭を軽く下げてこの場を離れた。
「こ、こ、こちらへどうぞ」
兵士は緊張の余りとてもガチガチだ。
「テンリ、あの兵士達はどうなってるんだ?」
兵士の余りの動揺にフォルクが困惑して耳打ちをしてくる、ナユユも気になるようでオロオロしている、ただソーシャルは普段どうりである。
「あぁ、どうやらクロナが怖いみたいですよ」
「怖いって、どうやったらあんなに怯えさせれるんだよ」
「きっといろいろあったんですよ」
「いろいろって、一体何が」
「聞いてみますか?」
「いや、やめとく」
「それが良いでしょう、世の中知らない方が良いことも多々ありますから」
フォルクとナユユはその言葉に頷いた。
「クルウィル帰って来たぞ」
「姉上、お帰りなさい」
「うむ」
「兄上にリリナお姉様もよくお越しくださいました」
「今日はよろしくお願いします」
「・・・ん」
クロナの後に俺とリリナも挨拶を交わす、リリナは挨拶なのか?
「その者達は?」
「俺達の護衛兼世話役です、こちらからソーシャル、フォルク、ナユユです」
ソーシャルは頭を下げそれを見たフォルクとナユユも急いで頭を下げる。
「また随分と若いですね」
「はい、今日が初仕事です、一通りの事は教育してありますが至らない所もあると思いますのでその時は言ってください」
その後クルウィル達と今日の予定を話し合い部屋を出る。
扉を開けるとゲルナが待っていた。
「お待ちしておりました、まず最初にテンリ様のお国であるデイステン王国の方々がいるお部屋に案内させていただきます」
「わかりました」
ゲルナに案内されるまま着いていく。
部屋の前につきゲルナがデイステンの騎士に声をかける。
「テンリ様をお連れ致しました」
「わかりました、どうぞこちらです」
2人いる騎士のうち1人が扉を開け俺達は中に入る。
中に入ると威圧感と殺気がすごい、ソーシャル、フォルク、ナユユの3人は素早く俺達の前に出て武器を構える。
「クックッ、久しいなテンリ」
そこにはデイステン王国の宰相であるドルメイン=デイステンがニヤリと笑い待ち構えていた。
「お久しぶりですドルメイン様」
「相変わらず肝が据わっているな、いや、ここ数年で更に強くなったとみえる、それにそこの少年等も中々に優秀なようだ」
「お褒めに預り光栄です、3人共武器を下げてください、ドルメイン様も威圧や殺気止めてください」
「すまんすまん」
ソーシャル達はゆっくりと武器を下げドルメインも威圧や殺気を解いた。
「それと彼等から武器を下げてください」
すると空間が歪みメイドが2人姿を現す。
「空間魔法!?」
「気づかなかった!」
「嘘!」
ソーシャル、フォルク、ナユユが驚いた顔で固まる。
「ハッハッハッ、うちのメイド達も中々やるだろ」
2人のメイドは武器を下げるとドルメインの後ろにさがる。
「まぁ驚いていたのはそこの少年等だけだったみたいだがな」
「なんで他国でそんな試すような事をしたんですか?敵対行動ととられますよ」
「安心しろ、ちゃんとそこにいるゲルナ殿に許可を貰ってある」
俺達はゲルナを見る。
「フォフォ、ちょっとしたお茶目です」
どこの世界に他国で威圧や殺気を出す者やそれを許可する者がいるのか、しかも相手はまだ現役の魔王であるクロナや第一王女であるリリナもいるのにだ、やる方も許可する方も頭おかしいだろ。
「国際問題になりますよ、そもそも宰相である貴方がなぜここに?外交ならドルイット様が来るのでは?」
「事務仕事が忙しくてな、気晴らしがてらドルイット達に押し付けて代わりに来た!」
「そんなことして大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だ!」
俺がメイドを見ると一人のメイドは青い顔をさせ涙目で首をフルフル降っていた、もう1人は諦めた顔をして遠い目をしていた。
「大丈夫じゃなさそうですよ」
「今は大丈夫だ!」
「帰ったら怒られますよ」
「大丈夫だ、ドルイット達では途中でダメになるのはわかっているからその時は俺の妻が何とかするだろ」
「それでいいんですか」
「俺がいなくてもあいつが何とかするからな」
なんて他力本願な、宰相がこんなんでいいのだろうか。
「ん?達にって言いました?それって今回来る筈だった人達全員に宰相の仕事を投げたって事ですか?」
「全員ではないぞ、手練れの護衛を5人程連れてきたし俺とは別で外交要員で1人連れてきたからな」
「そ、そうですか、護衛の方は扉の前に2人とそこにいるメイドさんが2人ですね後の方は?」
「奥の部屋いる、ただ外交する奴が極端に人見知りでな、もう一人の護衛は説得中だ」
「外交官なのに人見知りって!それって人選ミスなのでは?」
「優秀ではあるんだがな、とりあえず引っ張り出すか、おい」
1人のメイドが奥の扉を開く。
「や、うぁ、止めてください~、眼鏡が壊れてるんです~」
無理やり連れて来られた女性があたふたしている。
「はぁー、おい」
メイドは頷き眼鏡をかけさせる、すると先程までのが嘘のようにスッと立ち上がり眼鏡をクイッと上げる。
「まったく、予備の眼鏡があるなら先に言ってください!」
しかもいきなりキレた。
「こいつめんどくさいだろ」
「めんどくさいとは失礼な、第一宰相であられるドルメイン様がここに居られるのが」
「おい」
メイドが素早く眼鏡を外すと。
「ヒィィィィィ」
顔を真っ赤にさせてうずくまる。
「こいつはシャイールってんだ、ラウスヴェル学園で見つけてな、出は平民だがかなり能力が高い、欠点と言えば眼鏡を外すとこんな感じになることだな」
メイドがシャイールに眼鏡をかける。
「コホン、初めまして、シャイールと申します、この度外交官としてメルテツシナ魔王国に越させていただきました、魔王陛下、リリナ王女、そしてテンリ様、どうぞよろしくお願いします」
シャイールは眼鏡をクイッと上げ先程の事がなかったかのように挨拶をする。
「よ、よろしくお願いします」
「うむ、それにしても中々に愉快な奴だな」
リリナはシャイールに近づく。
「どうかなさいましたか?」
「・・・とう」
リリナは素早くシャイールから眼鏡を取る。
「ウヒャイィィィィ!」
「・・・面白い」
リリナはおもちゃを見つけたように眼鏡をかけたり外したりを繰り返す。
「シャイール、リリナ王女に気に入られて良かったな」
「よくないですぅー!眼鏡をかえしてくださぁ~い!」
その後リリナが何度かシャイールで遊び満足したようで次の部屋に移動することにした。
「次はジュマ獣王国の方々がいるお部屋になります」
次に案内された扉の前には男女6人の騎士が立っていた。
完全に獣の容姿をした者や人に耳や尻尾が生えた者と容姿はバラバラだ。
「魔王陛下、リリナ王女、テンリ様をお連れ致しました」
それを聞くと1人の女性獣人が前に出る、猫の獣人のようだ。
「男の子が2人いるけどどっちがテンリ様なのかにゃ~?」
俺が一歩前に出る。
「私がテンリ=エレノールです」
「ふ~ん、君がリアナ様のお気に入りにかにゃ~」
猫獣人の女性は俺に近づき匂いを嗅ぐ。
「えっと貴女は?」
「私かにゃ?私はアーシャにゃ、今回の使節団の総隊長だにゃ!ちなみに八天幻獣の序列7位にゃ!とっても強いにゃ!最強にゃー!」
やたらテンションが高い、いろいろ大丈夫なのだろうか?騎士達を見ると呆れていたり頭を抱えている。
「にゃー!」
テンションが上がりすぎたのか抱き付いて来た、しかしそれを見たクロナとリリナから物凄い殺気が辺りを多いこの場にいた全員が顔を青くさせた。
「おい、小娘、テンリから離れろ」
「・・・死ぬ?」
クロナとリリナの底冷えする声にフォルク、ナユユそして獣人騎士達は身体をガクガクさせる、ソーシャルはかなり辛そうだがギリギリ何とか耐えておりゲルナは青い顔をして何とか止めようと二人の前に立つ、 肝心のアーシャは一瞬で距離をとり回転しながら土下座の姿勢をとる。
「調子にのってすいませんでしたー!」
すごい勢いで謝った。
「どうか命だけはご勘弁ください!」
「小娘」
「はいぃぃー」
「我等は寛大だ、なぜ調子にのったか聞いてやる、我等の納得いく釈明をしてみろ、無理なら跡形もなく消し去る」
「ひゃい、先程ゲルナ殿からのご好意で頂いた物の中にマタタビが入っておりまして、後で頂こうと思っていたのですがとても薦められそれを口にして少しテンションがおかしくなっておりました、申し訳ございませんでした」
その時全員の目がゲルナに向く、しかしその場に立っていたはずのゲルナは消えていた。
「逃げたか」
「・・・チッ」
どうするつもりだこの状況と誰もが思っていた時扉が開く。
「な、何事ですか!?今しがたとてつもない殺気が」
女性が顔を出し騎士の1人に声をかける。
「気にするな、なんの問題もない」
それを見たクロナがすぐに答える。
「問題がないように思えないのですが、中でも先程の殺気で何人か倒れてしまっていますし」
「安心しろ、なにもなかった、なぁ」
扉の外にいる者達は首を思い切り縦に降った。
「なんだか無理矢理な気がしますが、ところであなた達は?」
女性の疑問にハッとなりいち早く行動したのはアーシャであった。
「この方達は魔王陛下、リリナ王女、テンリ様ですにゃ」
「そうでしたか、ここではなんですので中にお入りください」
女性に言われるがまま俺達は部屋の中に入っていった。
「申し訳ありません、先程殺気に当てられたものが何人かおりまして、私が対応させていただきます、私はルトアーナ=ジュマ、ジュマ獣王国の第一王女であり今回の使節団の総責任者です、この度はお招きいただきありがとうございます」
ジュマ獣王国の第一王女、リアナのお姉さんか、あんまり似てないな、それにリアナは狐の獣人だったけどこの人はなんだろうか?耳や尻尾を見ると猫科だと思うけど、わかんないな。
とりあえず自分達の自己紹介を済ませたあと当たり障りのない話をしていた、話しているのは主にクロナで俺は話しを降られたときに答える程度、リリナは目の前にあるお菓子をひたすら食べていた。
「テンリさん、お聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」
「はい?」
不意に話を降られなんだろうかと首をかしげる。
「王族の血を引くリリナを娶るにあたり私達の国である儀式をしていただくのですが、その事を父である獣王陛下からお聞きになられていますか?」
「儀式ですか?なにも聞いていないですね」
「そうですか」
「その儀式とはどのようなものか聞いても?」
「はい、私達獣王国の中から10人の実力者を選びその者達と闘技場で1人づつ戦ってもらいます、これはお祭りとしても行われますので闘技場に観客も大勢来る事になります、10人全員を倒すか認めさせる事が出来れば結婚を認めるというものです」
「そうですか、実力者が出るということは八天幻獣の方々が出るということですか?」
「いえ、そこは年齢等を考慮して選らばれます、婚約の話はもう少し後になると思いますがこの事を忘れないように覚えておいてください」
「わかりました」
「簡単な挨拶だけのつもりでしたが時間をとってしまいました」
俺達は挨拶を交わし部屋をでる。
「それではまた後程」
「はい」
「うむ」
「・・・ん」
ルトアーナ達に見送られ廊下を進む。
「次はドラグニア王国ですね、場所はこっちで合ってるんですか?」
「わからん」
「えー」
「だからわかる奴に案内させる、おい、出てこい」
クロナの言葉でいつの間にかゲルナが側に控えていた。
「ドラグニア王国の部屋はこっちでいいのか?」
「はい、このまま進んで行きます」
先程騒動を起こした事を無かったかのように当たり前のようにゲルナは先導する。
「ゲルナ」
「なんでしょうか?」
「・・・後で絞める」
クロナとリリナに睨まれゲルナは笑顔のまま顔を青くし冷や汗を流す。
そして竜人族にあてがわれた部屋の前についた。
「魔王陛下、リリナ王女、テンリ様をお連れしました」
ゲルナが竜人族の騎士達にそう伝えると扉を開け中に案内してくれる。
部屋の中には5人が椅子に座っている。
「よーきたよーきた、まぁ座んなさい」
1人の老人がソファーに座るよう促し俺達は座った。
「これは予想外な人選だな」
「・・・驚き」
クロナとリリナは驚いている、俺も同じく驚いていた、何せ5人いる中の3人は知っている人物だからだ。
「来ちゃいました」
そう言って微笑んでいるのはドラグニア王国女王でありリリナの母親でもあるトリアネーゼだ。
「顔を見に来てやったぞ」
そう言いながら腕を組んでいるのは竜王でありリリナの父親であるヴォルデリア。
「わしはヴォルデリアの付き添いだから気にするな」
そしてなぜか俺の祖父であるクロード、完全に部外者である。
「そこの3人だけでも過剰戦力だがまさか五行天竜の序列四位のソイファ、そして序列五位のゲンオウ老まで来るとは」
後の2人の正体を聞き俺はまた驚いた、まさか五行天竜がこのメルテツシナ魔王国に4人も揃うなんて。
「この国に戦争でも仕掛けにきたのか?」
「昔ならそうしたが今はそんな時代じゃないじゃろ、今回は友好国の招きできただけじゃて」
「そうは言うがな、ドラグニアの最高戦力で象徴でもある五行天竜の者達がこの場に4人おるのがおかしいだろう」
「なんじゃ嬢ちゃん、頭が固いのぅ、昔は常識なんぞ知った事かと大暴れしとったのにの、婚約者候補を血祭りに上げた話しなんぞわしらの国にまで話がきとったぞ」
「う、うるさい!」
「それにわしらになにか言う前にリリナの嬢ちゃんに言うべきじゃろ、ドラグニア王国の五行天竜序列一位にして第一王女、本来なら次期女王にも関わらず結界を張ってずっと居眠りを続けわしらの話しに聞く耳持たん、しかもあんまりにも表に出ないものだから国民から存在自体が疑われている程だぞ、しかも起きたかと思えば竜王様と出掛けてそのまま帰って来ない、さらには神託で婚約が決まったと後から話しを聞かされるとか、ありえんじゃろ」
皆の視線がリリナに向くが手を耳に当て決して目を合わせない。
それを見るクロナは大きな溜め息をつく。
「過ぎた話はまぁよい、ただわしとソイファの嬢ちゃんは外交要員として来ているからその辺はちゃんとしておる、そこの3人はいきなり押し掛けてきたが」
そこで今度はトリアネーゼ、ヴォルデリア、クロードに視線が集まる。
「さっきも言ったがわしはヴォルデリアの付き添いだ、ここに来る事も知らんかった」
「我はクロードと魔物狩りをしている時にトリアネーゼに呼ばれて乗せてきたのだ」
「お仕事に飽きたので息子達に仕事を押し付けて、お願いして息抜きに来たの」
今完全に押し付けてって言ったよ。
「・・・母様の仕事を押し付けるなんて可哀想に」
「あらあら?リリナが代わりにやっても良いのよ?」
「・・・彼等は優秀、母様の采配は素晴らしい」
リリナは素早く変わり身をした。
「さて、今更だがテンリ殿とそこの坊主や嬢ちゃんに自己紹介だ、わしはゲンオウ、そっちの無口の嬢ちゃんはソイファだ、そんでそこにいるのがドラグニアの女王であるトリアネーゼ様、そして竜王ヴォルデリア様だ、よろしくな」
ゲンオウは笑いソイファは小さく頭を下げる。
「テンリ=エレノールです、後ろの者達は護衛のソーシャル、フォルク、ナユユです」
ソーシャル達も頭を下げる。
そこから話しをしているとゲルナが声をかけオークション会場に向かうことになり外に出て各国毎に馬車に乗り移動する。
オークション会場に着き各国毎に用意されたVIPルームに通され主催者であるゲオルククの挨拶と共にオークションが始まった。
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