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第79話 思った以上の値段がつきました。

 お待たせしました。

 会場に入りドオルククに案内されながら廊下を歩き階段の前で足を止める。


「さて、ここから階段を降りて下に行きます、ところで自己紹介が遅れました、私の名前はドオルククといいます、魔王陛下直属の近衛副隊長をしております、今は特別任務を受けこの会場の警備隊長もしております」


 ドオルククはそう話すと軽く頭を下げる。


「テンリ=エレノールです」

「・・・リリナ」

「もちろん存じております、魔王陛下の婚約者様であるテンリ様、そしてドラグニア王国五行天竜序列一位リリナ王女様」


 近衛副隊長なだけあって俺達の情報はちゃんと伝わっているようだ。


「ドオルクク様は近衛副隊長なんですよね、なぜこの会場の警備隊長をしているんですか?」

「それはですね、今回開かれるオークションで他国の重要人物を招くことになっておりまして、それにオークションの主催をしているのが兄ですので連携が取りやすいようにとクルウィル様から任命されたのです」


 他国の重要人物か、さっき馬車の中でクロナが話していたな。


「あの、魔王直属の近衛副隊長なのにクルウィル様から指示を受けても大丈夫なんですか?」

「はい、そこにおられる魔王陛下からクルウィル様は既に全ての魔王としての業務を引き継いでおり今後はクルウィル様の指示の下行動せよと言われていますので」


 俺はクロナを見る。


「そうなんですか?」

「うむ、そもそも我はテンリに嫁いで魔王を辞めるのだから面倒な事はさっさとクルウィルに押し付けてやればいい」


 それでいいのだろうか?


「そうですか」

「そうじゃ」


 まぁクロナが良いって言ってるのならいいのかな。


「時期を見て魔王陛下がクルウィル様に魔王を引き継ぐこととテンリ様との婚約を国民に伝えるだけになっております」

「そうなんだ」


 魔王の引き継ぎ準備は万全なんだな。


「それでは階段を降りて行きましょう」


 ドオルククを先頭に階段を降りる、階段を降りていると身体が重くなり少し圧力をかけられているかのような嫌な感じがした。


「なんだか嫌な感じがしますね」

「ん?あぁ、いい忘れていたがここは地下10階まであり下の階に降りる度にその感覚が増していくようになっているぞ、弱い者は頭がイカれ下手したら死ぬ」

「な!そういう事はもっと早く教えて欲しいです」

「忘れていた、きついか?」

「いえ、大丈夫ですけど」


 なにせ祖母であるカリナと祖父であるクロードにこの手の訓練も散々させられてきたのだ、とあるダンジョンに放り込まれた時は常に体力をうばわれ魔力も奪われ魔物に追いかけ回されていた、その時の事を考えれば可愛いものだ。


「テンリ様、辛いようなら我慢せず早めに仰ってください、兄がいるのは地下5階です、きついようでしたら上に戻り部屋で待っていていただいても大丈夫ですので」

「はい、お気遣いありがとうございます、無理なら声を掛けさせてもらいます」

「是非そうしてください」


 その後階段を降りる度に不快感が増してきたがそれだけで精神に異常をきたす程の事ではなかった、地下5階につくと少し辛そうな顔でドオルククは不思議そうに俺を見る。


「どうかしましたか?」

「正直テンリ様を侮っておりました、魔王陛下やリリナ様はその強さ故に何事もなく降りてこれますがまさかテンリ様が顔色一つ変えずここまで降りる事が出来るとは、案内をしている私の方がきついようです」

「そうなんですか?無理しないでくださいね」

「はい、兄の元に案内し次第すぐに上の階に戻らせて頂きたいと思います」


 ドオルククに案内され少し廊下を進むと立派な扉の前につく。


「ここが兄のいる仕事部屋になっております」


 コンコンっとノックをすると少し扉が開きマスクを着けた人物が顔をひょっこり出す。


 この人物に見覚えがある、たしか六天魔刻の序列六位のヘベルネルって人だ。


「誰?」

「ドオルククです、ヘベルネル様、魔王陛下とその婚約者であるテンリ様、そしてドラグニアの王女であるリリナ様をお連れしました」


 ヘベルネルは扉を開き少し驚いたように目を見開きその後手招きをする。


「おいで、おいで、キヒヒッ」


 この女性いろいろ怖いわ!


 とりあえず手招きされるまま部屋の中に入る。


 中ではゲオルククが恐ろしい笑顔を浮かべながら待っていた。


「魔王様ようこそお越しくださいました、それにテンリ様とリリナ様もこのような所までご足労いただきありがとうございます」


 そう言ってにこやかに頭を下げるが元の顔が怖いせいで笑顔をすると余計に怖い。


「ドオルククご苦労だったね」

「いえ、それでは私は上に戻ります」


 ゲオルククはそう言いドオルククは頭を下げ部屋を出ていった。


「それではどうぞお掛けください」


 その言葉に従い俺達はソファーに座る、するとぬいぐるみがお茶とお菓子を運んできた。


「美味し、い、よー、くふっ、キヒヒッ」

「これはこれは、ヘベルネル様がわざわざご用意してくださったんですか、ありがとうございます」

「キャヒ、クヒヒッ」


 恐ろしい笑顔で礼を言うゲオルククに壊れたように笑うヘベルネル、両方怖いわ!


「それにしても驚きました、リリナ様がここまで来ることは予想出来ましたがまさかテンリ様がここまで降りて来られるとわ」

「そうなんですか?」

「はい、ここまで降りて来られる者は限られておりますので」


 そうなのか、不快な感じはしたがただ階段を降りて来ただけなんだけどな。


「さて、テンリ様、魔王様から今回オークションに出品するためにメルテツシナ魔王国まで足を運んでくださったとお聞きしております」

「はい、その通りです」

「かしこまりました、ただ今回のオークションは他国の方々もお越しくださいます、ですのであまり下手なものを出すことが出来ないようになっておりまして、よろしければ一度どんな物を出すか見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「わかりました、ここで出しても大丈夫ですか?」

「いえ、上に戻ればオークションに出品する方専用の部屋を用意しておりますのでそちらに移動しましょう」


 ゲオルククはそう言い立ち上がる。


「上に行く必要はない」


 しかしそれをクロナは遮る。


「魔王様?」

「直接下にいけばよい」

「な!?正気ですか!」

「どうせ出品物は防犯上の為に会場の最下層まで下ろすのだからな、そこでやり取りすれば良い」

「最下層まで下ろすものは表に出せない危険な物ばかりです、オークションに出す物の保管場所は地下8階並びに9階です」

「どうせ8割はガラクタだろ」

「ガラクタではありません」

「なんだ、文句があるのか?」

「文句ではありません、それより私が言いたいのはテンリ様を下にお連れして本当に大丈夫かと言う事です、いくらここまで下がってこれたからと言ってここから下に行けば死ぬ危険も」

「ゲオルクク、貴様はバカなのか?テンリは我の夫になるのだぞ、その程度で死ぬはずなかろう」

「ですが!」


 いやいや、下の階に降りるだけで死ぬかもしれないの!ゲオルククもっと反論してやって。


「ゲオルクク、テンリの実力がどの程度かわかる良い機会だと思わんか?」

「そうかもしれませんが、しかし」

「テンリが辛そうなら直ぐに引き上げてこればよかろう」

「わかりました」


 なにあっさり納得してるの、断ろうよ。


「テンリもよいな?」

「嫌です」

「下の階に行けばオークションで出品される物がいち早く見る事が出来るぞ、テンリにとってお宝があるかもしれん」

「でも死ぬかもしれないんでしょ?」

「大丈夫だ、テンリの修行よりはるかにましだ」

「そうなんですか?」

「うむ」

「うーん、ならまぁいいですけど」


 俺は渋々ながら了承した。


「我はここで待っているからゆっくり見てくるといい」

「えっ、クロナ行かないんですか?」

「興味がないからな」

「リリナは?」

「・・・私は行く」

「それでは参りましょうか」


 ゲオルククと共に部屋を出た俺とリリナは案内され階段を降りて行く。


 地下8階に降り部屋に入る。


「驚きました、リリナ様はさすが五行天竜序列一位ですな、自然体のままです」

「・・・当然」


 リリナは腰に手を当て胸を張る。


「そしてテンリ様がここまで来れるとは思いませんでした」

「俺ですか?」

「はい、天の称号を持つ者以外でここまで降りられる方はそれについだ実力を持っているものくらいでしょう、テンリ様は近いうち天の称号を授かるでしょうな」


 ゲオルククは俺の肩に手を置きにっこりと笑う。


 きっとゲオルクク本人は優しく笑いかけているつもりなのだろう、だがその笑顔があまりにも恐い。


「それではオークションに出す物を見せていただいてもいいですかな」

「あ、はい」


 俺はアイテムボックスから出品するものを次々に取り出していく、馬車の中で話していた武器、防具、魔道具類を30個程取り出す。


「これはなんと!」


 ゲオルククは一つ手に取り驚いた顔をしながらまじまじと見つめる。


「これは素晴らしい、しかしこれ程の物をこの数いったいどうやって手にいれたのですか?」

「自分で作りました」

「なんですと!」


 ゲオルククは俺の両肩をガシッと掴み驚いた顔をおもいっきり近付けてくる、恐すぎるから是非やめてほしい。


「本当にご自分で作られたのですか!」

「は、はい、他にもありますけど」

「な、なんと、是非見せていただいても」

「わ、わかりましたから少し離れて欲しいです」

「こ、これは失礼いたしました、少し興奮してしまって」

「とりあえず出していきますね」


 俺はアイテムボックスから次々出していく、先程と同じく30個程取り出した。


「す、素晴らしい、テンリ様、こちら何点か私めに売って頂けないでしょうか?勿論それなりの値で買わせていただくつもりでおります」

「良いですよ、どれが良いですか?」

「ありがとうございます、ではこれとこれと」


 ゲオルククはそう言って20個程自分が買い取る用に分ける、思ったよりも多く取った物だ。


「それで金額なのですが、全部で白金貨3枚ほどでどうでしょうか」

「え!?」

「おや、たりないですか、なら白金貨3枚と大金貨2枚」

「いえ、あの」

「白金貨3枚と大金貨5枚」

「な!?」

「いいでしょう、なら白金貨4枚、流石にこれ以上は無理です」


 マジですか!俺はあくまでフォルク達の学費分が払える額が稼げればいいと思っていたけど思った以上の値段がついた。


「是非それでお願いします」

「交渉成立ですな」


 俺は出された白金貨をアイテムボックスにしまいドオルククは買い取った物をアイテムバックにしまった。


「実にいい取引でした」

「その通りですね」


 じつはドオルククはもう一枚白金貨を出しても良いと思っていたが思った以上に俺が引き下がるのが早く内心ガッツポーズをしていた。


 俺はと言えば中の上程度の物でここまでの金額になると思わずかなり驚いていた、そしてこの程度の物ならまだまだ在庫がたくさん在る、絶対に返品は受け付けないぞと思っていた。


「さて、では残りの物は全て出品されますか?」

「はい」


 そしてゲオルククは出品するものを全部確認し1枚の用紙を渡す。


「確認してサインをお願いします」


 俺一通り読み確認のサインをすると用紙が光り2枚に別れた。


「1枚はこちらで保管しもう1枚はテンリ様の控えになりますのでお持ちください」


 俺は用紙を受け取りアイテムボックスにしまう。


「それでは以上になります、魔王様が言っていましたがオークションに出品する物を見て回りますか?」

「はい」

「ではこの階から見て参りましょう」


 俺とリリナはゲオルククの案内でオークションで出品される物を見せてもらうのだった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字の報告助かっております。

 ここ最近新型コロナウイルスが猛威をふるっております、皆さん大丈夫でしょうか?私めは新型コロナウイルスの影響を受けて仕事がピンチです、何とか働く事はできていますが長く続くと困ってしまいます。

 早く良くなる事を祈っているしだいです。

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