閑話 アルナは充実した1日を過ごせました。
今回は閑話になります。
忙しくなかなか続きが書けていません、なので本編はもう少しお待ちください。
申し訳ありません。
朝起きて窓を開ける、外から入ってくる風がとても気持ちがいい。
こんな日は外に出掛けていろいろ見て回ったり買い物したりしたいものだがそんな事は今の立場が許さない、私はアルナ、洗礼の儀で聖女に選ばれ国を離れて今はアトレイア教団の本拠地である聖都に住んでいる。
もっとも国を離れる前でも気軽に外に出られる立場かと言えばそんな事はなかった、もともとはデイステン王国の第3王女という立場だったからだ、アルナ=デイステン、それが私の本当の名だ。
本当の名と言っても別に家名を捨てたわけではないし、国を捨てた訳でもない、ただ国の王女が聖女として選ばれたので家名を名乗ることを控えているにすぎない、これは他国から贔屓をしていると思われないようにするために自主的にやっている、とはいえ私がデイステン王国の王女なのは周知の事実であったりする。
要は平等に接していますよとアピールするためにあえて家名を名乗っていないのだ。
そして私が聖女に選らばれた理由、それは私がこの世界の創造主であり唯一絶対の存在、女神アトレイアの一部だからだ。
女神の一部と言っても普段は特別な力や権限を持っている訳ではない、この世界の人族として産まれたのでそれ以上の事はできない、勿論例外はある、女神アトレイアが力の解放を許可したときは神としての力と権限を行使できる、もっとも神の一部でしかない以上は女神アトレイアよりもすべてにおいて劣っている。
それにしても今日は本当にいい天気だ、ここ聖都は1年中過ごしやすい気候なのだがその中でも実に気持ちが良い、しかしそんな日に大聖堂に閉じ籠り仕事だと思うと憂鬱になる。
「働きたくないなー」
そもそも何故私がこんな事をしなければならないのか、正直私じゃ無くてもいい仕事がほとんどだ、朝と昼の2回に分けて大聖堂に集まる人達に女神と天使がいかに素晴らしいかを話して聴かせる、正直誰でもいいだろう、それなりの立場の者達にやらせればいいじゃないかといつも思う。
そしてその話の合間は貴族や大商家の者達の話を聞いたり重病人の治療をしたりだ、この時に私が相手をするのは大金を寄付できる者達だけなのだがこれが厄介で後ろ楯になってもらいたいだの子供と婚約しないかだのといろいろ言ってくるのだ。
正直鬱陶しくて仕方がない、アトレイア教団は基本どこの誰にでも平等に接するという事にしているので個人の後ろ楯になるなんて事はまずない、実際は平等ではない、結局多くのお金を出せる人の対応が優先になるからだ、だがそこは体裁を保つために平等と言っている。
私がなによりも鬱陶しく思うのは婚姻を結ぼうとする者達だ、自分の息子はいかに優秀であるかを延々と話す、正直まったく興味がない。
私には既に婚約者がいるしその相手を愛しているのだ。
塵芥の話なんて時間の無駄でしかない、私は声を大きくして言いたい、下らない事で私の貴重な時間を奪うなクズ共が、と。
文句をいくら言おうがやることは変わらないので仕方なく着替えて準備をする。
そして部屋を出て今日の仕事をこなしていくのだった。
午前の仕事を終えて部屋で一息ついていると扉をノックする音が聞こえる、ノックはすれども名乗らない、正直出たくない、ゆっくりしていたい、そう思うもののついつい返事をしてしまった。
「はい」
すると勢いよく扉が開かれる。
「お邪魔しまーす」
扉を開いて現れたのはこのアトレイア教団の最高責任者である教皇のステーラだった。
「ステーラ様、どうかなされましたか?」
私は普段と変わらない態度で訪問の件を聞く。
「ちょとは驚いてくれても良いのではないですか」
「十分驚いていますよ、ノックをするだけで名乗らないだけでなく教団のトップが仕事もせずに聖女の部屋に入ってきたのですから」
「今日のアルナは機嫌が悪いですね、こんなに良い日なのに」
「いつもと変わりませんよ」
「そんな事はありません、いつもは笑顔を張り付けて本音を隠して内心は嫌々ながらも歓迎の言葉を言ってくれるじゃないですか、今日は露骨に本音が出ていますよ」
ステーラは私を見てそう言いながらニッコリと笑い対面のソファーに座る。
「それで、今日はどうなさったんですか?」
「そうそう、今日はとても大事な話があって来ました」
ステーラは佇まいを直しとても真剣な目で私を見つめる。
「休憩が終わった後は大事なお客様が来ます、ですのでアルナ、貴女にその対応をお願いしたいと思います」
「わかりました、どのような方なのですか?」
「それは、あ!用事が残っていました、直ぐに戻らないと、申し訳ないのですが後はお願いしますね」
「え!ちょっとま」
話を途中で切り上げステーラは急いで部屋を出ていってしまった。
「まったく、なんなのよ、もう」
どこにいけば良いかも告げずにステーラは部屋を出ていってしまいどうしようか悩む、大事なお客と言っていたので関係者には話が通っているはずだ誰かすれ違った人にでも聞けば解るだろうと思いもう少しゆっくりしてからにしようとカップを手にした。
休憩を終え部屋を出る為に立ち上がろうとしたらまた扉をノックする音が聞こえる、しかしノックをするが名乗ろうとしない、どうせまたステーラだろうと思い扉を開け目を見開く。
「アルナ、こんにちは」
そこにいたのは婚約者である最愛の人物であるテンリ=エレノールだった。
「テンリ!どうしてここに!?」
「どうしてって今日はステーラに会いに来たんだけど」
「それは嬉しいけど、ごめんなさい、今から仕事なの、今から大切なお客様の接待をするようにステーラ様に言われてて」
私はせっかく来てくれたテンリに申し訳ないと頭を下げる。
「あれ?おかしいな、前にステーラ様に今日の午後からアルナがお休みだって聞いてさっきもステーラ様に挨拶に行ったらアルナが部屋で待ってるって言ってたんだけど」
「へ?」
「ん?」
私は少し思考が停止したが直ぐに復帰させる。
ステーラの大事なお客様、確かにステーラにとってテンリは大事なお客様だ、何せ私の本体であるアトレイア様の大事な人でありこの世界において何よりも優先される人物だ。
そして私にとっても大切な人である。
そしてその人物の対応に聖都でもっとも適しているのは私である、仮に私より適任がいたらどんな手段を使っても排除するのだが、これはあり得ないだろう。
成る程、あの性悪女め、私の部屋に来てここまでが仕掛けだった訳だ。
一人でそう納得した。
「忙しいなら仕方ないですね、今日はアルナと話せた事ですし素直に帰ります」
私はテンリの言葉にハッとして急いで彼の服を掴み彼を止める。
「大丈夫、なんの問題もないわ」
「でも仕事なのでしょ」
「そうよ、大事な仕事だわ、他の誰かに任せることが出来ない大事なね」
「それなら急いで行かないと」
「大丈夫よ、もう目の前にいるから」
「へ?」
テンリは後ろを振り返るしかしそこに誰かがいるわけでもなく。
「ちゃんと教えてあげるから一旦部屋に入りましょうか」
テンリは頷き部屋に入る、ソファーに座らせ私はお茶を用意しテンリの横に座った、そしてステーラが仕掛けたイタズラを説明した。
テンリはそれを聞き面白そうに笑う。
「そう言う事ね」
「まったく困った人だわ」
私はそう言いつつも感謝をしていた、今まで忙しく自分の時間を取れなかったがこうして時間を作ってテンリに会わせてくれたのだ、きっと本来私がこなさなきゃ行けない仕事をステーラが肩代わりしてくれてるのだろう。
「せっかくだからデートしに行こうか、今日は久し振りの聖都だからここを見て回りたいんだけど」
「そうね、せっかく良い天気だから部屋にいるよりか外にいきたいわ」
その日はとても充実した1日になったのは言うまでもない。
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