第74話 楽しそうに聞いていました。
明けましておめでとうございます。
九尾の狐か、長い年月を経て妖力がまし尾が増えていき最終的には9本まで尾が増えたとされる伝説の存在、獣人族の先祖と言われている者の1匹だ。
ステータスも異常なほど高い、守り神と崇められるのも納得だ、しかしかなり弱っているようだ、先程年老いた老人が寿命が近いと言っていた、そのせいだろう、ただそれでも俺を簡単に殺す事が出来るほどの実力は充分にある。
「強い反応があったので気になって見に来たんです」
俺は九尾の狐に素直にそう言った。
『では我等に害をなそうと思って来たわけではないのだな?』
そう言いながら俺の事をジッと見る、まるで品定めでもしているようだ。
「はい」
『そうか、ならよい、ここで会ったのも何かの縁だ、人の子よ良ければ我が家に来るか?』
「え!いいんですか?」
『構わん、それに我はそなたに興味があるのでな』
「じゃ、お邪魔します」
俺と九尾の狐の会話に膝をついていた獣人達は驚きの声をあげている。
「よ、よろしいのですか?」
たまらず声を上げたのは先程話しをしていた老人だ。
『かまわん、長よ我等は先に戻っている』
「か、畏まりました」
『人の子よ、我が背に乗るがいい』
その言葉にまた獣人達は驚きの声をあげる。
「いいんですか?」
九尾の狐は頷き俺が乗りやすいようにしゃがむ。
「それじゃ失礼します」
『では行くとしよう』
驚き困惑する獣人達をおいて九尾の狐は走り出した。
『ここが我が家だ』
そう言って九尾の狐は洞窟の中に入っていく、俺はその後ろをついて行った。
洞窟の中に入り奥に進むと広い空間に出た、そこには立派な神殿があった。
「凄い」
『なかなか立派であろう』
九尾の狐は俺の驚きに満足げな表情を浮かべる。
『ほれ、中に行くぞ』
九尾の狐に言われるがまま中に入る、神殿の中も立派で俺はキョロキョロと中を見ながら進んでいく、すると大きな扉の前に着いた。
「大きな扉ですね」
『その扉の中は空間がネジ曲がっておるゆえ入らぬようにな、無理に入れば空間の狭間に呑み込まれて消滅してしまう』
「そ、そうなんですか!」
『うむ、その扉の先を使う時は我等幻獣族が集まる時くらいだ』
「へー」
つまり九尾の狐以外にいる化け物レベルのステータスを持つ者達が集まる時って事か。
『我の部屋はこっちだ』
階段を上り先程よりは小さいがそれでも大きい扉があった。
『ここが我の部屋だ』
九尾の狐が近付くと自然と扉が開く、俺は後ろをついて部屋のなかに入って行った。
部屋の中は大きなソファーとテーブルが置かれ高そうな装飾品まで置かれている、貴族の屋敷にでも来たかのようだ。
『茶を入れるから座って待っておれ』
九尾の狐はそう言って奥に入って行った。
四足歩行なのにいったいどうやってお茶を運ぶのだろうか?そもそもこんな森の奥地にこんなところがあるなんて驚きだ。
「待たせたな」
そう言って声をかけられ顔を向けると白い髪に赤い目をしたとても綺麗な女性がお茶を運んできた、なんだか何処かで会った事がある気がする。
女性は慣れた手つきでテーブルにお茶とお菓子を置いていきソファーに座る。
「呆けた顔をしてどうかしたか?」
俺はハッとなり首を振る、どうやら見惚れてしまっていたようだ。
「なんでもありません、えっと、あなたは?」
「何を言っておる、先程まで一緒におったではないか」
「え?ひょっとして九尾の狐!」
「うむ、気づかなかったのか?」
「いえ、あの、はい、すいません」
九尾の狐はくすくすと笑う。
「気にしておらんよ、それより我の淹れた茶だ、口に合うとよいが」
そう言ってお茶を勧める。
「い、いただきます」
なんだかさっきから動揺してばかりだ、まさか人形になれるとは。俺は勧められたお茶を一口飲み目を見開き口の中に広がる心地のよい味にホッと一息ついた。
「とても美味しいですね」
「そうかそうか、口に合ったなら良かった」
嬉しそうに笑う九尾の狐の顔に少し照れてしまう。
「神の使徒様に満足して貰えて良かった」
「ええ、ここまで美味しいのは初め、え、神の使徒!?」
俺はその言葉を聞き一気に警戒を強める。
「そう警戒することもなかろう、我に敵意はない」
そうは言うが俺のステータス、しかも改竄しているにもかかわらず称号にある神の使徒という言葉が出たと言う事は本来のステータスを見られたと言うことだ、充分警戒するにあたいする。
「神の使徒様も我のステータスを見たであろうに」
「それは、そうですけど」
そんな事を言われればその通りなのでなにも言えない。
「しかしそこそこ長く生きているがこの年にもなって新たな発見があるとは思わなんだ」
「どういう事ですか?」
「神の使徒などという存在は眉唾の話しだと思っておったからな」
「そうなんですか?」
「うむ、なんせ遥か昔から話しに出てくるだけで1度もその存在は確認されておらんかったからな」
「なら使徒は存在したって証明されたわけですね」
「その通りだ、今度皆に自慢しよう」
九尾の狐はとても楽しそうに笑った。
「さて、それで使徒様よ、ここに来た本当の訳を聞かせてもらえるか?」
「本当の訳ですか?」
「よもやこんな所にたまたま来た訳ではないであろう?」
「たまたまですよ」
「何か話せぬ事情がおありか?」
「いえ、本当にたまたまです、しいて言えばお小遣い稼ぎで魔物を狩っていただけですよ」
「ならなぜ我の元に近付いて来たのだ?」
「探索魔法で強い反応があったから気になって」
「それだけなのか?」
「はい」
「そ、そうか、てっきり何か目的があるのかと」
「大層な目的はありません、先程も言いましたがお金を稼ごうと魔物を狩っていただけなので」
「ふむ、なら我の毛を少し別けるか」
「え?」
「獣王国で我の毛を売ればかなりの大金になると子孫らから聞いてな」
「そうなんですか!」
って子孫らからって、いやでも年齢が9000歳なら寧ろいて当然か、見た目が若いから違和感がある。
「我等幻獣族は獣人族の祖でもある、なので幻獣族の物は縁起が良いものと高額で取引されておるそうだ」
「そうなんですか」
「うむ、その子孫の中の1人が今の獣王に嫁いだそうだ、名前はなんでったか?」
「それって、もしかしてエリンさん?」
「おぉ、そうエリンだ、よく知っておったの」
「えっと、その、獣王陛下とエリンさんに娘が居るのは知っていますか?」
「うむ、確か、リアナと言ったか、なんじゃ知り合いなのか?」
成る程、さっき会った事がある気がしたのはリアナに似ていたからか。
「知り合いと言いますか、婚約者です」
「は?」
俺は苦笑いをしながら頬を掻く。
「リアナは俺の婚約者なんですよ」
「なんと!まさか我が子孫が使徒様とそのような関係になっていたとわ!」
「えっと、その使徒様って止めて貰いたいんですけど、テンリでいいですから、あと出来れば俺が使徒であることも内緒で」
「ん?そうなのか、神の使徒という立場である以上いろいろ事情があるのだろう、皆に自慢したかったが仕方がない」
九尾の狐は残念そうに肩を落とした。
「ありがとうございます」
俺は深く頭を下げた。
実は特に理由と言う理由はなかったりする、あえて理由を考えるなら気軽に出歩く事が出来なさそうだからかな、聖女の立場であるアルナが良い例だ、仮に聖女でなくても一国の王女だから気軽に出歩く事は出来なかっただろうが。まぁ俺がたまに連れ出していたりするのだけどね。
「せっかくなので子孫達の話を聞かせて欲しいのだが」
「俺が知っているのはリアナの事くらいですよ、それに住んでいる国が違うからたまにしか会えないですし」
「それでよい」
「それじゃ」
俺はリアナに会った時を思い出しながら話を始め九尾の狐はそれを楽しそうに聞くのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字の報告助かります。
さて年が明けて初めての投稿です、本当は年末に書いて投稿したかったですが家の事で忙しく出来ませんでした、申し訳ない。
それでは皆様今年もよろしくお願いいたします。




