第72話 ベッドが広く感じました。
ゲートを通りガルフを屋敷に連れて来た、住む場所については夜だった為明日探すことになり今日は屋敷に泊まってもらうことになった。
セバスを探しガルフの事を話すと驚いた顔をしてすぐにカロンに報告しに行き俺とガルフは今カロンと話をしている。
「まさか世界最高峰の技術を持つガルフ殿がこの街に来てくれるとは」
「勘違いされると困るから言っとくがこの街には一時的にいるだけだぞ、俺の技術をこの小僧にある程度教えたらまた聖都に戻る予定だからな」
「な!ガルフ殿の技術をテンリに学ばせるのですか!」
「まぁ貴族であり親のあんたからすれば気に入らねぇかもしれないがな、だが俺はどうしてもこの小僧に俺の技術を継承して欲しいと思っちまってな、ここまできて今更だが許可してもらいてぇ」
カロンは腕を組み目を閉じる。
「テンリ、お前はどうしたい?」
「俺ですか?俺は教えて貰えるなら教わりたいですが他にもいろいろとやりたいことがあります、なので一つに集中するつもりはありません、ガルフさんがそれでいいなら教えてもらいたいですけど」
「ガルフ殿、テンリはこう言っています、それでも構わなければ」
ガルフは溜め息をつく。
「坊主、ここにくる前にも言ったが時間がある時に教わりに来ればいいって言っただろ」
「あれ本気だったんですか!」
「じゃなきゃここまでこねぇよ」
「それならよろしくお願いします」
「おぅよ、ガハハハッ」
ガルフは豪快に笑う。
「ガルフ殿、滞在先は決まっていますか?」
「まだだな、明日にでも探しに行くつもりだ」
「そうですか、ならガルフ殿が良ければこの街に滞在している間はこの屋敷に泊まっていってはどうだろうか?勿論それ相応の部屋を用意するし工房は敷地内にある、そこを好きなように使ってもらって構わない」
「俺としちゃ何処でも構わねぇんだが、いいのか?」
「こちらとしてもテンリがガルフ殿の技術を教えて貰えるのだ」
「そんなたいしたことじゃねぇ」
「いやいや、凄いことです、数多の名だたる職人達が弟子入りを希望してその中でたった2人だけしか弟子を取らなかったあなたがテンリにその技術を教えてくださるわけですからね」
「見込みがねぇ奴に教えても習得出来なきゃ教える意味がねぇからな」
「まったくその通りです」
「よし、んじゃ世話になるかな」
「部屋もすぐに用意させましょう」
「早速で悪いんだが工房を見せて貰っていいか?」
「ええ、案内しましょう」
立ち上がったカロンに案内され工房に向かう。
「父様、この屋敷に工房なんてあったんですね」
「あぁ、昔ドルマンとテルルにせがまれて作ったんだ」
「せがまれてって」
このエレノールの街にあるスラムの元締めのドルマンに人気の魔道具店の店主のテルルか、あの夫婦はなんでここに作ったんだろう。
「まだ若い頃で冒険者になりたての頃だ、実際冒険者をやっていたときは便利だったぞ、それこそ爵位を継ぐ直前まで使っていたからな、思い出深くて取り壊さずにいたんだがまさかまた使うことになるとはな」
「思い出の場所なんですね」
「そうだな」
そんな思い出があったのか。
屋敷の裏手、あまり目立たないようにひっそりとその工房は建っていた。
中に入り灯りをつける。
ガルフは一通り中を確認し頷く。
「ほぅ、なかなか良いじゃねぇか、大事に使われていたんだな」
どうやらガルフはここが気に入ってくれたようだ。
「これなら明日にでも使える、おい坊主、いやテンリ、いつでも教わりに来いよ」
「はい、お願いします」
その翌日、俺が目を覚ますとベッドには当たり前のようにアトレイアとリリナ、そしてハクロウが入り込んでいた。
「起きてください」
俺は魔法で氷を作り3人の背中の中にそれぞれ氷を入れる。
「ひゃ!」
「・・・っ!」
「うっ!」
3人は驚きすぐに目が覚め俺をジト目で見る。
「おはようございます」
俺はそれに対して笑顔で挨拶を返しておいた。
「私達の扱いが酷くなってる気がする」
「気のせいですよ、それよりもアトレイア、本来なら昨日には神界に帰らないといけないんじゃなかったですか?」
「朝ご飯食べたら帰るよ」
「そうですか、なら服を着替えて食堂に行きましょうか」
俺は3人をさっさと部屋から追い出し服を着替えて食堂に向かった。
皆と朝食を食べその時にアトレイアとハクロウが神界に帰ると伝え朝食を終えた後は教会に向かった。
教会につき中に入るとロジーヌがアトレイアの像の前で祈りを捧げていた。
こちらに気付きロジーヌは近づいてくる。
「おはようございます」
「司教様おはようございます」
挨拶を交わす。
「朝の祈りとは感心だね」
「当然の事でございます、日々の生活が出来ているのは全てアトレイア様のお陰です」
「うんうん、まったくもってその通りだね」
「はい、感謝しております」
「ロジーヌ、君は大司教、いや、枢機卿になりたくはないかな?」
「え!」
「君がもしなりたいのであれば任命してあげるけど」
「そんな、私のなんぞ今の地位でも十分でございます」
「そう、もしなりたいならテンリにでも言ってよ、私が枢機卿までならしてあげるから」
「アトレイア様にそう言って頂けるだけで十分でございます」
ロジーヌはそう言って膝をつき両手を組んで涙している、一通りロジーヌが感動したあとゆっくり立ち上がる。
「アトレイア様、今日はどうなさったのですか?」
「そろそろ神界に帰らないといけないからね」
「なんと!」
「この世界のどこからでも帰れるんだけど神聖な場所の方が帰るときに力が少なくてすむからここに来たんだよ」
「そうでしたか」
「そうなんだ」
「それでは私はこの場を離れましょう」
ロジーヌは俺とアトレイアを見て微笑む。
「お邪魔してはいけませんから、それでは失礼いたします」
そう言ってロジーヌは外に出ていく。
「彼はよくわかっているね、司教にしておくのが勿体ない」
アトレイアは満足そうに頷く。
「それよりもハクロウが見当たらないですがいいんですか?」
「それなら心配ないよ」
そう言ってアトレイアは剣を取り出した。
「さっき逃げようとしたから無理矢理剣にしておいたんだ」
「パパ様助けて!」
俺はニヤリと笑うアトレイアと必死の声で助けを求める剣になったハクロウを見て苦笑いをした。
「さて、名残惜しいけどそろそろ行くよ」
「うん、気をつけてね」
「あれ、あたしの事は無視ですか!」
「ハクロウ」
「な、なんですか?」
「アトレイアをよろしくね」
「う~、ふぅ、わかりました、ママ様はお任せください、パパ様もお身体には気をつけてくださいね」
「うん、ありがとう」
「それじゃ行くね」
「パパ様行って来ます」
「またすぐに会いに行くよ」
アトレイアとハクロウの2人は光に包まれその場からいなくなった。
「さて、俺も帰るかな」
その日、アトレイアとハクロウが帰ったと皆に伝えた。
翌日、朝起きるととてもベッドが広く感じた。
「なんだろう、ちょっと寂しく感じるな」
俺はそう言いながら着替え食堂に向かった。
「・・・テンリ、おはよ」
「リリナ、おはよう、今日はベッドに潜り込まなかったんだね」
「・・・寂しかった?」
「そんな事はないよ」
内心寂しく思ったが言ったら負けた気分になるので言うのはやめておいた。
「・・・そう、寂しかったんだ」
「寂しくないって言ったんだけど」
「・・・大丈夫、わかってるから」
言葉にしなくても心を読まれ結果負けた気分になった。
「・・・ホントは毎日でも一緒に寝たいけど、抜け駆けしたと後で酷い目にあわされるから恐くて行けなかった」
「そ、そうですか」
俺はそれを聞き苦笑いをしながら朝食を食べ終え訓練場に向かった。
それからはフォルク達と訓練をしそれが終わると勉強、そしてガルフのもとに行き技術を教わり最後にカリナとクロードに修行をつけて貰う、こういったサイクルが1年ほど続く事になった。
そして気づけばもうすぐ10歳になる、10歳になればエレノールを離れ学園都市であるラウスヴェル学園に入学する事になる、今現在兄であるレインと姉であるマインが通っている、ちなみに兄であるレインはラウスヴェル学園を卒業してエレノールに帰って来るが俺は入れ違いでラウスヴェル学園に入学する事になる。
レインもマインも会うことがあまりなかったが会えばとても可愛がってくれたのは覚えている、ただそれも俺が5歳くらいまでの話で洗礼の義を受け1年しないうちにヴォルデリアに連れられてカリナとクロードのもとに連れていかれたのでその後は会っていない。
たまにカロンやタリアから話を聞く分では元気にしているらしい。
さて、もうすぐ学園生活が始まるけどどうなることやら。
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字の報告助かっております。
風邪を引き咳がとまらず辛いです、皆さん病気にならないように気をつけてください。




