第70話 おもいっきりつねりました。
2日目の投稿です。
何事もなければ次は土曜日に投稿予定です。
再びお店巡りをしているとハクロウは装飾品を扱うお店を指差す。
「パパ様、あそこが気になります、あそこに行きましょう!」
そこは以前リアナとアルナの婚約指輪を作った所だ、世界最高峰の腕を持つと言われるドワーフのガルフがいる店であり工房だ。
「そうですね、行って見ましょう」
俺はハクロウと共にその工房に入る。
「お邪魔しまーす」
「邪魔するなら帰んな」
カウンターで酒を飲みながら手をパタパタとあおぐガルフがいた。
「お客さんにそんなこと言うと帰っちゃいますよ?」
「大金を積む客なんざ腐るほどいる、もうこれ以上は必要ねぇ」
「お客じゃなきゃいいですか」
「んぁあ、んじゃ弟子入りか?俺は弟子も取ってねぇぞ」
「でもガルフさんが何時でも弟子にするって言ったんですよ」
「んなこと言った覚え、わ、ん?」
酒をカウンターの上に置き俺を見る。
「んぁ?見たことがある顔だな」
「以前ガルフさんに婚約指輪を作るのを教えてもらいました」
「あぁそうだ、確かテンリって言ったか、なんだ久しぶりじゃねぇか!おぅ、まぁ入れや」
「では改めてお邪魔します」
「おぅ!ん?前に来た時と違う嬢ちゃんを連れてるな、確かあの時2つ指輪を作ってたな、その子がもう1人の婚約者か?」
「いえ、この子はそう言った間柄じゃありませんよ」
「おいおいその年で浮気か?」
「違います!」
クイクイっとハクロウに服を引っ張られる。
「どうかした?」
「パパ様、あんまりあたしが可愛いからって娘を愛人にしようとしちゃダメですよ」
俺は笑顔でハクロウの両頬をおもいっきりつねっておいた。
「い、いひゃいれす!」
俺は涙目になったハクロウの頬を放しガルフに向き直る。
「なにやってんだ?まぁいいけどよ、それでどうした、弟子になりに来たか?」
「そういう訳でもないんです、この子がここを見たいって言ったので」
「そりゃ残念だ、まぁ好きに見ていきな」
「はい」
中に入り置いてある装飾品を見ていく、するとまたもクイクイっとハクロウが服を引っ張る。
「どうかした?」
「ママ様達の婚約指輪をここで作ったのですか?」
「そうだよ、でもリアナとアルナの分しか作ってなかったな」
「せっかくなので渡してないママ様達の分を作ったらどうですか」
「そうだね、でもハクロウはいいの?暇になっちゃうんじゃないか?」
「大丈夫です、パパ様の作業を見学するので」
「面白くないと思うよ」
「そんなことないですよ、あたしは装飾品などを見るのも作るのも好きですから」
「そうなの?」
「はい!」
せっかくだから作らせてもらおうかな。
「ガルフさん、また工房をお借りしてもいいですか?」
「あぁ、構わねぇ、何を作るんだ?」
「婚約指輪を作ろうと」
「あ?前に作ったじゃねぇか」
「婚約者が増えたので」
「はぁ?お前そのうち刺されるんじゃねぇか?」
「その辺は大丈夫だと思います、多分」
「まぁいいけどよ」
「それじゃ貸していただきますね」
ガルフの許可を貰った俺は作業場に移動して作業を始める。
「お前かなり手慣れてるな、誰かに教わったのか?」
「いえ、前にここで教わっただけですよ、後はたまに自己流でちょこっと触ったくらいですね」
「なに!それでこの手際か、お前やっぱり俺の弟子にならねぇか?今から鍛えれば5年いや3年で俺を越える事が出来るぞ!」
「いやいや、煽ててもダメですよ、俺なんかがガルフさんを越えるなんて出来ないですって」
「んなことぁねぇ、俺の勘がそう言ってる!」
「勘って、そう言ってるくれるのは嬉しいですけど、俺も色々とありますからね」
「くっ、勿体ねぇ!」
「それじゃ準備もできましたし、始めていきます」
そう言って俺は作業に取りかかる、一個目を作っているとハクロウとガルフが真剣な目でそれを見ている、そんなにマジマジ見られると恥ずかしいんだけど。
「よし、こんなもんかな」
俺は出来た指輪を確認する、それを見たガルフは頷いた後作業場から急いで離れていった。
「ガルフさんはどうしたんだろう?」
「さぁ、パパ様の腕が良すぎて逃げたんですかね」
「それはないでしょ」
「いえいえ、パパ様は覚えていないでしょうがあたしやコクロウが産まれた世界ではパパ様の腕の良さに弟子入りを懇願したり余りの実力の違いに姿を消す者達が多かったですからね」
「そんな事があったんだ!」
「はい、記憶が無くてもちゃんと魂に刻まれているのですね」
「そんなものなのかな」
「そんなものです」
そして2つ目を作り始める、俺が作業を始めるとまたハクロウは静かに真剣な目をしながら作業を見ていた。
「よし、これで2つ目だ」
そう言って最初に作った指輪の隣に2つ目を置く。
「さすがですね、ここまでの物を作れるなんて」
「褒められると素直に嬉しいね、さて3つ目を作ろうかな」
俺はそう言って作業を再開した、するとハクロウも道具を手に取り何かを作り始める。
「ハクロウ、何か作るの?」
「はい、パパ様の作業を見ていて触発されました」
ハクロウは真剣な目で作業を始めた。
3つ目の指輪が完成したと同じくハクロウも完成したのかやりきった顔をしている。
「ハクロウは何を作ったの?」
「あたしはブレスレットを作りました」
そう言って俺の前にブレスレットを差し出す、俺はそれを受け取り確認する。
そのブレスレットは素人目でもわかる程とても良い物だった。
「凄いね」
「当然です、なんせあたしが作ったのですから」
俺達が話しているとガルフが戻って来た。
「お、どうやら作り終わったみたいだな」
そう言って俺が作った指輪を確認していく。
「まったく、坊主は年の割に良い仕事しやがる」
「あたしも良い仕事しましたよ」
ハクロウは作ったばかりのブレスレットをガルフに見せた。
「な!これを嬢ちゃんが作ったのか?」
ガルフは渡されたブレスレットを見ながら驚いた顔をする。
「そうです、このあたしが作りました」
「かー、マジか、おめぇら2人共すげぇな」
「当たり前です、何せ天才ですからね」
まったく、ハクロウは何を言っているんだ。
「おい坊主、これから俺は坊主の住む街に引っ越しする事にした!」
「え!?」
「だからどこに住んでるか教えてくれ、それと貴族なのはわかってるが家名はしらなかったな、なんで家名も教えてくれや」
「えっと、住んでるのはエレノールの街です、俺の名前はテンリ=エレノールです」
「あぁ!エレノールだぁ?って事は坊主は十二聖天のカロン=エレノールの息子って事か!」
「はい、ちなみに母様はカレン=エレノールって言います」
「マジか!カレンってのは十二聖天の序列二位のだよな!?」
「はい」
「そうか、よし、とりあえず俺はエレノールの街に住むからよ、暇なときでいいから俺のところに来い、そしたら俺の技術を教えてやるからよ」
「え!いいんですか?」
「あぁ、小僧に教える為にエレノールの街に住むんだからな」
「でも仕事は?」
「今は仕事を受けてないからな、それにこれは俺の自己満足だ、だから小僧が気にすることじゃない」
「えっと、ありがとうございます」
「気にすんな、それと嬢ちゃんもいつでも来てくれて構わねぇからな」
そう言ってガルフは笑った。
「ところで坊主はいつエレノールの街に帰るんだ?」
「今日中には帰りますよ」
「おぅ、なら俺も一緒に連れてってくれると助かるんだが、なんせエレノールの街まで護衛やらを頼むのは今日明日じゃすぐに用意できねぇからな」
「わかりました、もういい時間なんでそろそろ帰ろうと思ってましたし、でもガルフさん荷物はどうするんですか?」
「荷物ならここに全部入ってる」
ガルフはそう言ってカバンを叩く。
「なるほど、マジックバックですか?」
「おぅよ、小僧が指輪を作ってる間に準備は済ませたからな」
さっき工房から離れたのはその為か。
「わかりました、では行きましょうか」
ガルフの店を出て3人で大聖堂に向かった。
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