第63話 安心しました。
クロードとカリナに連れられいつも皆が集まる大部屋の前に着いた。
扉の前には緊張した顔のセバスが立って待っていた。
セバスは俺達が立ち止まると深く頭を下げる。
「ようこそおいでくださいました、私はこの屋敷の執事長をしているセバスと申します、中に屋敷の主人がおります」
いつもとは違うセバスの雰囲気に少し緊張してしまう。
俺はクロードとカリナを見る。
「カロンとセバスにはアトレイア様の事を話しておいたよ、タリアは仕事でこの場にはいないからまた後でクロードとカレンに伝えてもらう予定だ」
「そしてカロンもセバスもいろいろ急過ぎて混乱してる最中だからあまりからかわないであげて、さっ、とりあえず中に入ろ」
セバスが扉を開けクロードとカリナが入りその後ろを俺とアトレイアがついていく、最後にセバスが中に入り扉を閉めた。
中に入ると緊張した顔のカロンとこちらも珍しく緊張した顔のカレンが立って待っていた。
「お初にお目にかかります、私はカロン=エレノール、この度は我がや」
「あぁ、そう言うかたっくるしいのいいから楽にしてよ、君の事はちゃんと知っているよ、なんせテンリの父親なんだからね」
アトレイアはそう言いながら勝手にソファーに座る。
「そんな所に突っ立てないで君達も座りなよ」
アトレイアに言われカロンとカレンはアトレイアの対面に座りセバスはその後ろで立つ、クロードとカリナはアトレイアから見て右側にあるソファーに座った。
「テンリは私の隣ね」
アトレイアはそう言いながら自分の隣をパンパンと叩く、俺はそれに従いアトレイアの隣に座った、とても嬉しそうだ。
「さて、クロード、私の、いや、私達の事は何処まで話しているんだい?」
「詳しい話しは何も話していませんよ、ただこの世界の創造主である女神アトレイア様がテンリと屋敷に来ると教えただけなので」
「そうなんだ」
「はい、どの程度話すかはアトレイア様が決めた方が良いと思いまして」
「うーん」
アトレイアは腕を組み考える。
「全部話しても良いよ、別に隠してる訳じゃないから」
「え!」
俺はそれを聞き驚いた顔をする。
「あれ、テンリは内緒にしたかった?」
「ええっと」
ここで隠すやら内緒やら言わないで欲しかった、そもそも全部話すってカロンやセバスが話しについていけるかわからない、そもそも今現状俺が話しについていけていない、そう思いながら俺はカロンとセバスを見る、カロンもセバスも真剣な顔で俺を見ている、今さら隠すのもダメだろうなと思い俺は小さく溜め息をついた。
「全部話そう」
正直気は進まない、得体の知れない者を見る目をされるだろう、きっとここにも要られなくなる、アトレイアを家に連れて来ただけで家を出ていかねばならない状態になるとは思いもしなかった。
アトレイアが指を鳴らすと一瞬で紅茶とお茶菓子が現れカロンとセバスは驚いた顔をする。
「それではワシが話をするとしようか」
「そうだね、よろしく」
アトレイアの許可にクロードは頷き話を始める。
アトレイアがなぜこの世界を作ったのか、俺とアトレイアがどういう関係なのか、俺には前世の記憶があるとか、そして俺の婚約者がアトレイアの存在を分けて地上に産まれた事、その他にもいろいろな話をしていく。
「以上だよ」
クロードはかなり簡潔に話してはいたがそこそこの時間が立っていた。
話を聞き終えたカロンとセバスは少し疲れた顔をしていた、当然と言えば当然である、なんせこの世界で絶対の存在が目の前にいる状況で世界の成り立ちや俺の秘密を一気に聞かされたのだから。
「さて、君達はいろいろと聞いた訳だが何か質問はあるかい?」
処理がきちんと出来ていない状況でいきなり質問と言われても困ってしまうだろう。
「一つよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「テンリは、私の息子で間違いないですか」
俺はカロンの言葉に緊張した、そしてアトレイアを見る。
「テンリはカロンとカレンの子供であるのは間違いないよ」
「そうですか」
カロンはホッと息を吐く、俺もその言葉に少し安心した。
「そもそも君達が死んだらその魂は輪廻の輪を通り新しく産まれ変わるようになっているからね、善行を積めば来世で良い人生が、悪行を積めば来世で悪い人生がってね、だから産まれ変わったら別人だよ」
アトレイアはカップを手に取る。
「テンリは君達の子供だ、ただテンリは私にとって特別な存在なだけだよ」
そう言って一口飲んだ。
「それと、リリナ、隠れてないで出てきなさい」
するとゆっくり物陰からリリナが現れる。
「・・・見つかった」
「むしろ見つからないと思ったのかい?」
リリナはアトレイアとは逆の俺の隣に座る。
「さっき少し話しがあったけどリリナや他のテンリの婚約者達は私の存在を分けてこの世界に産まれた訳だけど、普通に接してくれて構わないよ、もちろん私もね、なにせ君達はテンリの親だ、私にとっても義父、義母になるんだから」
カロンはどうするべきか悩む顔をする、それを見てアトレイアは言葉を付け足す。
「まぁ無理に強要する訳じゃないからどう接するかは任せるよ」
「ありがとうございます」
そう言ってカロンは頭を下げた。
「それじゃ話しも終わった事だし食事にしよう」
カリナはそう言って立ち上がる。
皆で食堂に移動し食事をする、その際にいろいろと今後の話をしておくために人払いをして配膳などは全てセバスに任せる事になった。
そして食事の後カロンに呼ばれ2人で話しをすることになった。
対面でソファーに座る。
「テンリ」
名前を呼ばれ俺はピクッと反応する。
「なんでしょうか?」
出来るだけ普段通りに聞き返す、内心心臓がバクバクである。
「先程の話しの他に何か話さなければならない事や隠している事はあるか?」
「いえ、ありません」
「そうか」
少しの間静寂に包まれる、何か話しをしないとと思うが何も思い浮かばない、するとカロンが口を開いた。
「いろいろ急な話で俺自身頭の中で処理しきれていないが、これだけは言っておく」
俺は少し身構える。
「なんでしょうか?」
「お前は俺の息子なのだから、何かあれば溜め込まずに言いに来なさい」
「へ?それだけですか?」
「それ以上何かあるか?」
「いろいろとありそうな気がするんですが」
「勿論いろいろと言いたいことはある、だがテンリだし今さらだろうと思っているよ」
「なんですかそれは」
俺はそう言いながら肩の荷が少し降りた気がした、ちゃんと家族として受け入れられた、それがとても安心できた。
「それと何かするときやあるときは予め教えておいてくれ、正直ついていけないからな」
「出来るだけ知らせます」
「頼むぞ」
その後はお互いに笑い合いながら話をすることが出来た。
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