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第57話 逃げました。

 目を開ければ目の前にはアトレイアの像が立っている、無事に戻ってこられたようだ。


「それにしても」


 俺は石像を凝視する、石像はアトレイア本人よりも美化されて作られているように思える、アトレイアは確かに超絶美少女だ、誰に聞いても絶対にそう答えが帰ってくるだろう、しかしこの目の前の石像はそれに加えて身長も高く大人びているように見える、更にはでるところはでて絞まるところは絞まっている、本人はつるペタ少女なのだけど、ちょっとしたサギな気がする。


 そもそもの話しアトレイアを見た人物がいるのか疑問である、何故なら下界との仲介役を天使がしているからだ、しかし現にアトレイアの像が在るのだから誰か見たことのある者が作ったのだろう、一体それはどんな人物だったのだろうか?


「・・・像をじっと見てどうかした?」


 像を見ていたのが不思議だったのかリリナは首を傾げいる。


「この像は誰が作ったんだろうと思って」

「その像は彫刻家が作った複製品になります」


 俺の疑問に答えたのはこの教会の司教のロジーヌだった。


「司教様、こんにちわ、挨拶をしようと思ったのですが見当たらなかったので先にお祈りをさせていただきました」

「申し訳ありません、少し用事で出ておりました」

「いえ、大丈夫ですよ、それよりこの像は複製なんですか?」

「はい、アトレイア様の像の原作は聖都にある一体だけで他の教会等にある像は全て複製品になります、聖都にあるアトレイア様の像は天使様が持ち込んだと言われております」


 なるほどね、原作を元に多くの像が作られ教会に配備されたのか、しかしアトレイア本人はとは思えないな、もしアトレイアが大人の姿をしていたらこんな感じにはなりそうだけど、何千年何万年と生きてきても今がロリっ子だからきっとあれ以上の成長はしないのだろう。


 ロジーヌ司教と少し話をし教会を出て孤児院に向かう。


 孤児院につきシスターのハーフィルに挨拶をする。


「こんにちはシスター」

「これはこれは、テンリ様にリリナ様、それにソーシャルも、こんにちは、今日はどうなさったんですか?」

「教会に用事があったので、せっかくなのでお邪魔させていただきました」

「そうですか、よろしければ皆に会ってあげてください、喜びますので」

「はい」


 俺達はハーフィルの後ろをついていき外で遊んでいる子供達の元に案内される。


「ソーシャルお姉ちゃんだ」

「テンリ様もいる」

「リリナお姉ちゃんもいるよ」


 子供達の元に行くとすぐに俺達に気付き囲まれた。


「ソーシャルお姉ちゃん今日はお仕事お休みなの?」

「リリナお姉ちゃん一緒に遊ぼ」

「テンリ様今日のおやつはなんですか?」

「フォルク兄ちゃん達はお仕事?」


 あまりの勢いに俺とリリナはお互いの顔を見て笑ってしまった。


「貴方達、そんないっぺんに話しかけても答えられないでしょ」


 ソーシャルは子供達にそう言いながらも嬉しそうだ、連れてきて良かった。


 子供達の質問に答えた後皆をテーブルに着かせて手土産のおやつを配る、それを幸せそうに食べる子供達を見てとても微笑ましかった。


 おやつを食べた後ハーフィルと話すために孤児院内の部屋に移動した。


「孤児院の経営はどうですか?」

「お陰様で子供達に不自由ない暮らしをさせる事ができています」

「そうですか、それはよかった」

「それにソーシャル達も休みの日などに子供達の服や食べ物等を買って持って来てくださいますし、ここに来たら子供達の勉強も教えてくれますのでとても助かっております」


 ハーフィルはソーシャルを見て微笑みソーシャルは少し照れた顔をした、そこそこの時間を話し孤児院を後にした。


 孤児院から帰る時には皆が見送りをしてくれた。


 そのまま屋敷に戻りリリナとソーシャルの2人といったん別れセバスを探す、セバスを見つけたので新しく雇い鍛える事になったコークルダ、ユナナ、ヘイトットの3人の事を話しておいた。


「ほほっ、その者達でしたら先程フォルク達に紹介されました」


 どうやらフォルク達に連れられ挨拶に来ていたようで既に知っていた、セバスに話を聞くとフォルク達はコークルダ達3人の宿に行き荷物などを取った後今後必要になる物等をいろいろ買っていたのだそうだ、そしてついさっき戻って来たばかりで荷物を部屋に置きすぐセバスに挨拶にきたとの事、フォルク達は先輩としていろいろ説明や施設の案内、他の者達の紹介をおこなっているとの事だ。


「ほほっ、フォルク達は後輩ができて張り切っておりましたよ、紹介された3人も真面目に話を聞いておりましたな」

「揉めてないならよかった、ここではフォルク君達のが先輩だけど年齢ははコークルダ君達のが上だったからね」

「ほほっ、その辺んは問題なさそうですよ」


 俺はその話を聞き良かったと頷いた。


 翌日訓練場に集まったフォルク、リュリュネ、トロネ、フォン、ソーシャルの5人に加え新しく入ったコークルダ、ユナナ、ヘイトットの3人、合計8人になった彼等に俺は訓練を施す。


「さて、今日は新たに3人が入った訳ですが、やることはいつもとかわりません、俺がいいと言うまでひたすら走ってください」


 俺の言葉に素直に頷き8人は走り始めた、そして走り始めること30分、最初に地面に膝をついたのはヘイトットだった。


「ヘイトットさん、俺はまだ休んで良いなんて言ってませんよ」

「はぁはぁ、すいません、少し、休憩を、させて、貰えないですか」

「何を寝惚けた事を言ってるんですか?まだ会話をする元気があるじゃないですか」

「え!?」

「いいからさっさと走れ!」


 軽く威圧するとヘイトットは涙目になりながら走ることを再開した。


 そこから更に30分、ヘイトットは地面に倒れてピクリとも動かなくなっていた、まるで屍のようだ。コークルダは地面に倒れてはいるが辛うじて動いて前に進んでいる、うん、走れなくても少しでも動けるなら前に進もうと頑張るのは良いことだ。そしてユナナだが予想以上に頑張っている、走ってるとは言えない、歩きよりも遅い速度ではあるがまだ立って動いている、先の2人よりも体力はある、なかなか見所がありそうだ。


 そしてフォルク、リュリュネ、トロネ、フォン、ソーシャルの5人だが彼等はまだまだ余裕がありそうだ、何せ一番最初に体力を強化するためにひたすら走らせたのだ、寧ろ新人達に劣っていてはお仕置きが必要になるところだ。


 さらに2時間程走らせさすがの5人も息が上がって来た、新人3人は倒れたまま動かなくなっている。 


 俺は新人3人に魔法で水をかけ強制的に意識を覚醒させた後に手をパンッパンッと叩き注目を集める。


「新人3人はそのまま走り続けてください」

「あ、あの、休憩は?」


 俺の言葉にヘイトットは休憩が無いかを聞いてくる。


「休憩なら散々寝転がってしていたじゃないですか」

「あれが、休憩、なのか」


 コークルダは口を震えさせながら話す。


「皆から話を聞いていたけどここまでスパルタだなんて」


 ユナナは少し泣いていた。


「グダグダ言ってないでさっさと走れ!」

「「「ひゃい!」」」


 威圧しながらそう言ってやると身体をビクッとさせて大きな返事をし走りだした。


 フォルク、リュリュネ、トロネ、フォンの4人は自分達もああだったんだなと新人3人を暖かく見守っていた。


「テンリ様に口答えするなんて、後で個人的にお話をする必要がるわ」


 ソーシャルはそう言いながら新人3人を睨む、視線を感じたのか新人3人は身体を震わせその言葉を聞いたフォルク達4人は今度は新人3人に同情の目を向けた。


「それでは貴方達5人は武器を持ってください、得意な武器で構いませんよ」


 俺の言葉に従い自分が得意な武器をそれぞれ手に取る。


「さて、今からは実践型式の訓練です、俺が相手になるので向かって来てください、何をしても構いません、制限時間は2時間、ですがその前に誰か一人でも俺に一撃でも入れたらそこで終了です、そうですね、もし一撃でも入れることができたら何かご褒美を差し上げましょう、俺は身体強化等は一切しないでおきますね」


 その言葉にフォルクはすぐに襲い掛かって来て大剣を突き刺す。


 俺はそれを横にずれてかわす。


「いきなりですね」

「何をしてもいいんだろ?なら奇襲してもいいよな」

「ええ、勿論ですよ」


 フォルクの言葉に頷き素早く距離をとる、しかし離れた途端に矢が向かってくる、俺は矢を腰に着けていた剣を抜いて弾く、今使っている剣は何の変哲もないただの鉄の剣だ、コクロウを使うと勝手にいろいろ強化してくれるが今は訓練なので使っていない。


「危ない危ない、身体強化をしないとなかなか大変ですね」

「全然大変そうに見えないんだけど」


 俺の言葉にフォンは苦笑いをしながら答えた。


「いやいや、なかなか大変ですよ、っと」


 フォンの言葉に応えている最中に真横からまた矢が飛んでくる。


「今のを避けちゃうんだ!」


 そう言いながらトロネは走って近付き矢を放ってくる。


「動きながらよくそんな正確に矢を射れますね」

「かなりスパルタな人達だけど先生が凄く優秀だからね」

「なるほど、優秀なんですか、是非うちで雇いたいですね」


 トロネは苦笑いをしながら至近距離で矢を放ちそれと同時に弓を手放して腰に着けている短剣を抜き斬りかかってくる。


 俺は剣で矢を弾きトロネの短剣を右に受け流す、その瞬間左側に気配を感じ剣を思い切り横に振るとフォンにガントレットで受け止められる。


「さっきまで距離が離れていたのにいつの間にここまで来たんですか?」

「私達は皆バッチリ身体強化してるからね」


 なるほど。


「フッ!」

「おっと!」


 トロネに剣を受け止められている間に体勢を整えたトロネが短剣を突き刺してくる。


 左右をフォンとトロネに囲まれた状況だ、しかもそこから気配が増える。


「ハッ!」


 素早く目の前に移動してきたリュリュネからメイスが振り下ろされる。


「おっと!」


 何とか後ろに移動して避けるがその直後真後ろから大剣が振り下ろされる。 


「貰った!」

「まだまだですね」


 俺は振り下ろされた大剣を剣で流す、大剣は勢いそのまま思い切り地面を切り裂く。


「な!マジかよ!」

「今のは肝が冷えましたね。」

「嘘つけ!」


 俺はその場から離れようとしたがこの状況を逃さまいと4人は俺を囲み連携をとりながら上手く攻撃を繰り出す。


「ちょっとなんでこの状況でかすりもしないの!」

「そんなの知るかよ!」

「2人共口じゃなくて手と身体と動かして!」

「この状況を逃しちゃダメだよ、絶対ご褒美貰うんだから!」


 リュリュネは驚きながら愚痴りフォルクはそれに応える、そんな2人をトロネが注意しフォンはご褒美欲しさに全力で攻撃を繰り出す。


 なんだかんだ言いながらも見事に連携しているのはさすがだ、そして絶対に逃がしはしまいと猛攻撃を仕掛けてくる。


 4人のその猛攻撃に加えソーシャルがかなり離れた位置で何やらひたすら呪文を唱えている、しかも魔力量が尋常じゃない、ソーシャルだけの魔力量では到底賄いきれない程の魔力だ、一体どこから魔力の供給を受けているのか?


 魔力の元をたどるとそこにいたのは、リリナだった。


「え~」


 そりゃ尋常じゃない程の魔力な訳だ、なんせ五行天竜序列1位であり竜人族最強が力を貸している訳なのだから、なんでもありとは言ったがまさかリリナが協力するとは思わなかった。


 唯一の救いは魔法を行使するソーシャルがまだまだ未熟であることだ、魔力の供給を絶ちきって仕舞えば膨れ上がった魔力が維持できずに一気に萎む事だろう、爆発は多分しない、と思う、しないよな?


 若干不安ではあるがこのまま魔法を放たれるよりましだろう(俺が)。


 俺はソーシャルに近付く為に移動しようとするがフォルク達がそれをさせまいと全力で攻撃してくる。


「これは困りましたね」


 俺は苦笑いを浮かべながら何とか攻撃を凌ぐ。


「そんなに全力で動いているのにまだ体力が残っているとは」

「なに言ってるんだテンリ、体力なんてのはもうほとんどないに決まってるだろ!」

「そう言いながらも全然動きが落ちてませんよ」

「当たり前だ、どれだけお前にしごかれてると思ってるんだ、体力が限界を迎えてからが本番だろ!」


 まったく、なんて脳筋な考えなのか、第一そこまで追い詰めたつもりは更々無いのに。


「毎日どれだけ泣きながら訓練していたのか、その成果をしっかりとその身に刻んであげるわ」


 リュリュネはメイスを手放して腰の双剣に武器を切り替える、メイスが地面にゴトッと音をたてて落ちる、どうやらそこそこの重さの武器を振り回していたようだ、双剣に武器を切り替えたリュリュネの動きが一段早くなった。


「この状況でまだ早くなるんですか!」


 これは予想以上だ、俺はどうにか避けるが余裕が余りない。


 更に4人の連携は見事なものだ、一切強化していない状態では正直きつい。


 そしてどうやらソーシャルの魔法が完成したようだ、一瞬で俺は球体の中に閉じ込められその上空に魔力の塊が大量に現れた、俺が球体に閉じ込められた瞬間にフォルク達は全速力でその場を離れる。


 上空に浮かぶ大量の魔力の塊は一つ一つが赤く高熱を帯びている、そしてそれが俺めがけて降り注ぐ、魔力の塊が触れたところから凄い音をたてて爆発が起こり砂煙が舞う。


「なぁ、これはやりすぎじゃないか」

「これで無傷だったら化け物でしょ」

「これ私だったら消し飛んでる自信あるよ」

「うん、むしろテンリ君大丈夫かな?」

「貴方達何を油断しているの武器を構えなさい」


 フォルク、リュリュネ、トロネ、フォンは顔をひきつらせているがソーシャルだけは回りを警戒している。


 爆発が収まり視界が晴れていけばそこにはクーレターが出来ていた。 


「テンリの姿が無いんだけど」

「ひょっとして消し飛ばしちゃった?」

「どうしよう、私達やり過ぎちゃったんだよ」

「これじゃご褒美が貰えなくなっちゃう」


 フォンの言葉にフォルク、リュリュネ、トロネはひきつった顔をする。


「おいおい、ご褒美どころの話じゃ」

「ふざけてないで早く武器を構えなさい!」


 フォルクの言葉を遮りソーシャルは武器を構えさせる。


「流石にこれはやりすぎでしょ、きっと父様に怒られますね」

「・・・怒られるのはソーシャル達、私は悪くない」

「いやいやリリナも皆怒られますよ、まぁ俺もですが」


 クーレターの方に武器を向けていたフォルク達は慌てて後ろを振り返る。


「マジ!」

「うそ!」

「やっぱり化け物だよ」

「ご褒美が」

「やはりあの程度では無理でしたか」


 驚いたり残念がったりと5人がそれぞれの表情を浮かべる、その視線の先には何事もなかったように歩く無傷のテンリとどう言い訳しようか考えているリリナがいた。


 フォルク、リュリュネ、トロネ、フォンはその場に座り込んでしまう。


「どうやってあの包囲網を抜けたんですか?」

「ゲートを使ってだけど」


 それを聞いたソーシャルも成る程と頷き座り込んでしまった。


「何を休んでいるんですか?」

「もう動けない」

「私も」

「同じく」

「無理」

「私もちょっと立てないです」


 5人はホントに動けないようで身体に力が入いらないようだ。


「まだ制限時間は残っていますよね?」

「「「「「はい」」」」」

「では続けましょう、と言いたいところですが今日はもう終了でいいですよ」

「「「「「え!?」」」」」

「予想以上に動けてましたし今日は合格としましょう、なので今日の俺の訓練はお終いです、動けるようになったらあそこで腰を抜かしながら気を失った3人組を介抱してくさいね」


 俺が指差した方を皆が見る、そこにはコークルダ、ユナナ、ヘイトットの新人3人組が気絶していた。


「俺はこの後用事がありますから先に行きます、午後のセバスの勉強もしっかりとしてくださいそれでは解散です」


 俺はリリナと共に訓練場を離れた。


「・・・あの穴どうするの?」

「そうですね、後で考えます、報告も後にしましょう、今報告して時間をとられるのは嫌なので、先にカリナお婆様とクロードお爺様に会いに行って塔のダンジョンの調査協力をお願いしましょう」

「・・・それが良い、少しでも言い訳を考える時間が欲しかった」

「では見つかる前にさっさと行きましょうか」


 俺の言葉にリリナは頷きゲートを開き逃げるようにしてその場を後にした。

 ちょっと長いです。

 いつも読んでいただきありがとうございます。

 週一のゆっくりした投稿ではありますが今後もよろしくお願いします。

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