第51話 思い出しました。
お待たせしました。
一方馬車から素早く抜け出しフォルクの隣を歩くテンリ。
「なぁ、付いてきて良かったのか?」
「仕方がないじゃないですか、こんな面白そうなことが起きてるんですから」
「面白そうってお前なぁ」
フォルクは口でそう言いながら嬉しそうな顔をする。
その直後ソーシャルが「フォルクは後でしばく」と一言呟いたのと同時にフォルクは身体を震わせた。
「どうかしましたか?」
「何かゾクッとしたんだけど!」
「きっと気のせいですよ」
「な、ならいいんだけどさ」
実は帰った後にフォルクはソーシャルに叩きのめされる事になる、しかしそんな事になるとまったく思っていないテンリはそれを気のせいと言い揉めている冒険者達を見る。
「さて、一体何が、ん?」
こんな道の真ん中で何を揉めているんだろう、そう思って近づいてきた訳なのだが女性冒険者2人組の事を見た時になんとなくではあるが見たことがある気がした。
「う~ん?」
「テンリ、どうかしたのか?」
急に止まった事でフォルクは不思議そうに訪ねる。
「女性の冒険者の方なんですが、どこかで見たことがある気がして、ただまったく思い出せないんですけどね」
思い出そうと頑張ってみたもののしかし一向に思い出せない、一体何処で彼女達を見かけたんだろうか?
「思い出せないものは仕方ないですね、何かあったらそのうち思い出すでしょう、ほら、何をボサッとしているんですか、さっさと行きますよ」
「止まってたのはテンリじゃないか」
「はて、なんのことですか?」
俺は惚けながら歩くのを再開しフォルクは苦笑いしながら後に続いた。
「なぁいいじゃねぇか」
「俺達がパーティー組んでやるからよ」
「そうそう、女二人じゃ危ないからな」
「俺達優しいからな、見返りは身体で払ってくれればいいぜ」
「わかったら俺達とパーティー組めよ」
冒険者達に近づくと男5人組はパーティーの勧誘をしていたようだ、ただその内容は下心丸見えで品がまったく無かった訳だが。
「嫌だって言ってるじゃないですか!」
「しつこくしないでください!」
当たり前ではあるがとても嫌そうな顔で男達の勧誘を断っている二人の女性冒険者、しかし男達は逃げられないように囲んでいるため女性達の方は動くに動けない。
「優しく言ってやってるうちにさっさと、ん、何だてめぇら?」
一人の冒険者が俺達に気付き声をかけると他の冒険者達が一斉に俺とフォルクに視線を向ける。
「道の真ん中で何をしているのかと、それになにより邪魔なので退いてもらおうと思いましてね」
俺の言葉に男達はピクッと反応する。
「おい、何だてめぇ!」
「喧嘩売ってんのか!」
「調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」
「ガキが生意気なんだよ!」
「どうやら痛い目にあいたいようだな!」
男達は敵意剥き出しで武器を手に取る、フォルクは一歩前に出て素早く俺と男達の間に入る。
「おい、こんな所で武器を手に取ってなに考えてるんだ?」
フォルクは剣に手をかけ何時でも抜けるように構える。
「まったく、街の外とは言ってもエレノールの領内ですよ、そう言う迷惑行為はやめてもらいたいですね」
男達はニヤリと笑う。
「俺達がなにしようがいいんだよ」
「なにせ俺達はあの大手クラン、黄金の獅子に所属しているんだからな」
「どうだ、ビビって声も出せないだろ?」
「ま、うちは有名だからなビビっても仕方ねぇよ」
「わかったらとっとと消えろ」
黄金の獅子、その言葉を聞き女性冒険者二人は焦った顔をする。
「そんな、あの黄金の獅子のメンバーなの!」
「ヤバイんじゃん!」
二人の女冒険者が焦り初め男達はニヤニヤと嫌な笑を見せる。
「お前ら二人がさっさと俺らの言うとうりにしないからこのガキ達が酷い目に合うんだぜ」
「可哀想になぁ」
「まぁ仕方がないよな、俺達黄金の獅子に喧嘩吹っ掛けたんだ」
「ガキだからって甘やかしたらいけねぇしな、これも教育だ」
「可哀想になぁ、どうやら逃がして貰えなくなったな」
そう言って男達は大笑いをする。
「フォルク君、黄金の獅子ってなに?」
「えっ、知らない」
そこで男達は笑を止める。
「ちょっとあなた達黄金の獅子を知らないの!」
「黄金の獅子は500人程の大手クラン、クランマスターはAランク冒険者でその他にも何人かAランク冒険者がいるの、それに彼等は横暴でしつこいんだよ!」
俺達が黄金の獅子を知らないと言ったら二人の女性冒険者は驚き、説明までしてくれた。
「わかったかガキ共」
女性冒険者達の説明に男達は気を良くしたのかまた笑い始める。
「なるほど、つまり人数が多いから気も大きくなってるんですね」
俺の言葉で男達はまた笑を止め武器を抜く。
「死にてぇらしいなぁ!」
「舐めた口聞きやがって!」
「生かしちゃおかねぇぞ!」
「ぶっ殺してやる!」
「死ね!」
男冒険者達は俺とフォルクに叫びながら襲いかかって来る。
「っ、フェシュタ!」
「わかってる!あなた達、私とポリャナが時間を稼ぐから逃げなさい!」
女冒険者二人もすぐに武器を手にして構える。
「おい、テンリどうするんだ!」
フォルクはどうすればいいか迷い俺を見る。
「フォルク君、落ち着いてください、とりあえず見学しますよ」
「えぇ!」
俺とフォルクが話しているとすぐに金属がぶつかる音が聞こえその方を見る。
「5対2だとやっぱりきつそうですね」
「そんな呑気な事言ってないで助けないと!」
「フォルク君はそんなに焦らないでしっかり皆さんの立ち回りを見てください、いい勉強になるはずですよ」
俺とフォルクの会話に女冒険者、ポリャナと言われていた人物が大きな声で怒鳴る。
「何してるの!早く逃げなさい!」
「ポリャナ危ない!」
「っ、くっ」
もう一人の女冒険者、こちらはフェシュタと呼ばれていた方が危険を察知しポリャナに教えることで何とか危険を回避した。
何とか戦ってはいるものの人数差により徐々に押されていく、もしこれが1対1だったら勝てたかもしれないが今はそんな状況でもない。
「フォルク君、よく見学できましたか?」
「う、うん」
戸惑いながらも頷くフォルク。
「じゃそろそろあの二人に加勢してきてください」
「わかった」
俺の許可が出て急いで女性冒険者達の加勢に向かう。
「くらえ!」
「きゃ!」
ポリャナは思い切り剣で押しきられ尻餅をつく。
「後で可愛がってやるからな」
冒険者の一人がそう言いながらポリャナに襲いかかろうと動く。
「ポリャナ!」
フェシュタがその状況を見て叫ぶ。
「うりゃ!」
「ちっ」
しかしポリャナに襲い掛かった冒険者は間に入ったフォルクに押し返された。
「大丈夫か?」
「ちょっと、逃げろって行ったじゃない!だけど今のは助かったわ」
ポリャナは文句を言いつつも助けられた事に感謝を述べた。
そこからフォルクが参戦し5対3になったものの個人の実力が拮抗している為かやはり人数差で押されている。
そこから数分経過しフォルク達は押されながらも何とか耐えている。
「頑張ってはいますけど、そろそろ押しきられそうかな」
俺がそう言った時にフォルクはバランスを崩す。
「死ねやくそガキ!」
「くっ!」
冒険者の剣がフォルクに襲い掛かりそれを避けようとしたが間に合わない。
「ゲート」
冒険者は斬りかかった勢いのまま突如目の前に現れたゲートに飛び込んでしまう。
フォルクに斬りかかった冒険者だけでなく残りの4人の男冒険者の足元にもゲートを開きその中に落ちていく。
急にいなくなった男冒険者達に驚きフェシュタとポリャナはキョロキョロと辺りを見回す、フォルクは俺の方を見て苦笑いをしていた。
そこから少しして上空から叫び声が聞こえてくる。
「た、助けてくれー!」
「死ぬ、死ぬー!」
「ぎゃー!」
「誰か、誰かー!」
「死にたくない!」
その声に気付き皆で上を見上げると空から落下してくる男冒険者達が見える。
「な、なんで空から」
「わかんないよ」
フェシュタとポリャナはただ唖然として落ちてくる男冒険者達を見ている。
「けっこうなスピードで落ちてきますね」
俺はそう言ってもう一度今度は上空と俺の真横にゲートを開く、男冒険者達が上空に開いたゲートの中に入り俺の真横に開いたゲートから出てくる、落ちてきた勢いのままゲートの外に放り出されてかなりの距離を地面に身体をぶつけて転げ回る。
俺は男冒険者達に近付き見下ろしながら口を開く。
「優しい俺からの提案です、あなた達の今持っているお金や武器や道具で見逃して上げます、どうします?」
男冒険者達は何とかこちらに顔を向ける。
「ふ、ふざけるな!」
一人がそう言った瞬間彼等の足元にゲートを開きまたその中に落ちていった。
また上空から叫び声が聞こえ先程と同じように落下途中でゲートを開き地面に転がす。
「もう一度言いますね、あなた達の全財産で見逃して上げます、どうしますか?」
男冒険者達はプルプル震えながらこちらを見る
「さっきと言ってる事が違う」
「バカ、余計なことを言うな」
「た、助けてください」
「は、払いますから」
「命だけはどうか」
俺は満足そうに頷く。
「まったく、最初からそう言えばいいんですよ、これは手間を取らせた罰です」
俺はそう言ってゲートを開き男冒険者達がまたもその中に落ちていった。
「お、鬼だ」
「こ、怖いよぅ」
フェシュタとポリャナは顔を青くさせお互いに抱きつきプルプル震えている。
「ごめんテンリ、手間を取らせた」
「いいですよ、ただ気にはしてくださいね」
「はい」
フォルクはそう言ってもう一度頭を下げる。
俺はその後空を見る、先程よりも高い位置にゲートを開いたので落ちてくる時間が長い、そして男冒険者達が見えて来たのでゲートを開き地面に転がす。
男冒険者達は顔を青くさせただプルプルと震えている。
「さて、これが帰りなら良かったんですけど今は塔に向かっている最中なんです、なので後であなた達のクラン、確か黄金の獅子って言いましたっけ、そこに冒険者ギルド経由でいろいろ請求させてもらいます」
男達はコクコクとただ頷く。
「あ、そうそう、自己紹介がまだでしたね、俺の名前はテンリ=エレノールです、請求者は俺の名前でおくりますから、もし出し渋ったり逃げ出せば後でどうなるかわかりますよね?」
エレノールの名前を聞き男冒険者達は顔を青くさせる。
フェシュタとポリャナも驚いた顔をした。
「ではもう行っていいですよ」
俺の言葉で男冒険者達は走って逃げ出した。
「まだ走る力を残してたんですね、感心します」
俺は驚きながら彼等を見送った。
「テンリ、あいつらの名前を聞かなくて良かったのか?」
「なんでですか?」
「クランに請求するって言ったけどあいつらの名前がわからないと」
「そんなのはいいんですよ、もし出し渋ればそのクランごと潰してしまえばいいんですから」
「潰すって、相手は500人程の規模って話なんだぞ」
「雑魚がたかだか500人でしょ、どうとでも出来ますよ」
俺の言葉にフォルクは顔をひきつらせる。
まぁこちらを離れた位置から見ている護衛達がこのやり取りを確認しているから冒険者達の事は彼等が調べてくれるだろう。
「あ、あの」
俺とフォルクが話しているとポリャナが声をかけてきた。
「なんですか?」
「た、助けてくれてありがとうございます」
「それに数々の無礼をお許しください」
フェシュタとポリャナは深く頭を下げる。
「こうして助けて頂いたのは2度目になります」
「覚えていないかもしれませんが以前シュレフェット迷宮でも助けて頂いたんです」
俺はそこでこの二人に見覚えがあったのがわかった。
「思い出しました、なるほど、道理で見覚えがあったんですね」
「あの時はありがとうございます」
「お陰で今も冒険者を続けることが出来ています」
シュレフェット迷宮か、懐かしいな。
そこでステータスのPSに載っていたアトレイアの言葉を思い出し巻き込んでしまった事も思い出す、申し訳無いと心のなかで謝罪し彼女達に話しかける。
「元気そうでなによりです、お二人は今から塔に向かうんですか?」
「いえ、さっきまで塔にいてその帰りです」
「ここで少し休憩してから街に戻ろうと思います」
「そうですか、気をつけてくださいね」
「「はい」」
そこで二人と別れ俺とフォルクは馬車に戻る、馬車に戻るととても不機嫌そうなソーシャルが俺達を見る。
「テンリ様なんで行っちゃうんですか!」
「フォルク君だけだと危なそうだからね」
「フォルク君なんてどうなってもいいんですよ、テンリ様に何かあったらその方が一大事です」
ソーシャルの言葉にフォルクは精神的ダメージをおって四つん這いになる。
その後さらに追い討ちを掛けるがごとくソーシャルはフォルクに精神的ダメージを与え続け最後にはフォルクは脱け殻のようになってしまった。
そしてなんとかソーシャルを落ち着かせ再び馬車に揺られながら塔に向かうのであった。
読んでくださる皆様ありがとうございます。
お盆休み中にできるだけ投稿させてもらい最後の投稿日にはその日1日のアクセス数で1300人を超える事が出来ました。
仕事が始まりまた投稿ペースが戻ってしまいますが今後もよろしくお願いいたします。




