第49話 屍のようでした。
「ほらほら、へばってないでちゃんと走ってください」
「も、もう無理」
「少し、休ませて」
「お、お願いします」
「フラフラするぅ~」
フォルク、リュリュネ、トロネ、フォンの四人はもう動けないと地面に倒れてしまう。
「まったく、まだ話す体力はあるじゃないですか、ソーシャルさんを見習って欲しいですね」
そう言って皆がソーシャルを見る。
そこには無言で地面を這うソーシャルがいた。
「あなた達は甘えすぎです、ソーシャルさんはここに来る前に既に仕事をしてさらにあなた達よりも前から走っていたんです、それなのにゆっくりしていたあなた達は疲れたと文句を言い休憩するなんて、恥を知りなさい!」
俺の言葉に顔をひきつらせ何とか立ち上がる。
「ほら早く走ってください!」
トロネがゆっくり手を上げる。
「トロネさんどうかしましたか?」
「きゅ、休憩はいつできるんですか?」
「え?今したじゃないですか」
俺の言葉にフォルク達四人は絶句した。
「あ、ソーシャルさんが動かなくなりましたね」
その言葉でソーシャルに視線が集まる。
ソーシャルは屍のようだ。
「いいですか、本当にダメな時はああなります、あなた達はまだ話す事も立つこともできますよね、ならまだ余裕ですね、わかったらささっと走れ!」
威圧しながら言った俺の言葉にビクッと身体を反応させてノロノロとだが動き出した。
「まったく、たかだか3時間程全力で走らせただけなのに」
俺はやれやれと肩をすくめた。
今は訓練場の端をひたすら走らせている、この訓練場は当たり前だが今俺が見ている五人以外にも多くの人達が利用している。
「まったく、今日が初日なのでこの程度で済ませてあげているんです、あなた達は恵まれているんですよ、ここで訓練をしている人達はあなた達よりも努力をしているんですからね、明日からはもっと厳しくしますから」
俺の言葉に訓練をしている兵士達は顔をひきつらせる、彼等の訓練はかなり厳しい、しかし訓練初日からここまでの事をしたわけではない、しかも明日以降は訓練を厳しくするという発言に自分達ももっとやらなければと声をだしながら訓練をする。
「さすがはエレノール領の精鋭達です、さて」
俺はソーシャルに近づき魔法で水を出してソーシャルにかける。
「ソーシャルさん十分休憩しましたよね、走れ!」
ソーシャルは無言でまた走り出す。
兵士達は容赦のない対応にさらに気合いを入れる。
「活気があっていいですね」
兵士達はテンリに巻き込まれないように必死になっただけだったりするのだがそれを指摘する者はこの中にはいなかった。
30分程がたちフォルク達五人は倒れたまま動かなくなった、俺はそこに水をかける。
「さて屍のようになっている皆さん集まってください」
水をかけられ何とか意識が戻った彼らは俺の言葉に這いながらも集まる。
「今からお昼ご飯です、食堂に向かいましょう」
俺の言葉に何とか頷く。
「では行きますよ」
そして食堂に向うフォルク達を兵士達は哀れみ優しくしてやろうと思うのだった。
「それではしっかり食べてくださいね」
そこにはかなりの量の食事が用意されていた。
「普段なら嬉しいけど」
「この量はさすがに」
「多すぎる」
「動いたばかりで食欲が」
フォルク達四人は躊躇っているがソーシャルは黙々と食べ始めた。
それを見て四人はとりあえず一口食べる。
「うま!」
「これは」
「すごい」
「美味しい」
なんだかんだ言いながら黙々と食べ始めあっという間食べきってしまった。
「さて、それではこれを飲んでください」
俺はそう言って小瓶を5つとり一人ずつ手渡していく。
「これは俺のオリジナルポーションです」
ここでもソーシャルが最初に飲み始め少し不安な顔をしながらも他の四人はも口をつけた。
「うま!これはリンゴか?」
「私はミカンの味だ」
「桃の味がする」
「私は葡萄の味がするよ」
そこでソーシャルに視線が集まる。
「私はマンゴーの味です」
そこで今日初めてまともに話したソーシャルに四人はホッとした顔をする。
「さて、後一時間程休憩したら午後からはお勉強です、セバスにいろいろ教えて貰ってください、ソーシャルさん後はお願いしてもよろしいですか?」
「はい」
俺はそれを聞きこの場を後にした。
「テンリの訓練がこんなにきついと思わなかった」
「ホントね、体力作りって言われたけどまさかあんなにひたすら走らされるなんて」
「明日からもっと厳しくなるのか、テンリ君ってドSなのかな」
「テンリ君の威圧が凄かった」
四人の言葉を聞きソーシャルの目が鋭くなる。
「あなた達、ちゃんと様をつけなさい!」
ソーシャルに怒られ四人はびっくりする。
「あなた達は今後テンリ様直属の護衛になるのよ、普段の言葉遣いから気をつけておかないといざと言う時にミスをするわよ、あなた達のそのミスがテンリ様の評価に繋がるの、気を引き締めなさい!」
「「「「はい!」」」」
ソーシャルの言葉に条件反射で四人は返事をする。
「な、なぁ、ソーシャルの機嫌悪くないか?」
「どうしたんだろう?」
「わかんないよ」
「たぶん私達はテンリく、テンリ様の護衛だけどソーシャルちゃんはリリナちゃんのメイドだから」
「「「あ!」」」
そこでソーシャルが不機嫌な理由がわかりどうしたものかと頭を悩ませる。
「あなた達が気にすることじゃありません!」
それにばつが悪そうにソーシャルは答えた。
これは少しの間機嫌が悪そうだと四人は苦笑いを浮かべるのだった。
一月程がたちテンリは朝早くにカロンに呼ばれ部屋を訪れる。
扉をノックし返事の後に中に入る。
「父様お呼びでしょうか?」
「聖都での会談の日時が決まった」
「いつの予定ですか?」
「今日だ」
「えぇ!どうしてまたそんな急に」
「心配を掛けさせた仕返しだそうだ、会談の日程事態はかなり早い段階で決まっていたのだが伝える事を止められていた、しかも今回の発案者は教皇様だそうだ、三ヵ国の王達はそれを快諾している」
「それは国として大丈夫何ですか」
「そこは大丈夫だ、迷惑がかかるのはテンリだけだしな」
「酷い!」
「どうやら迎えが来たようだ」
空間が歪みゲートが開きミルが顔を覗かせる。
「カロンさん、テンリ君、おはようっす、ささっ皆さんお待ちかねっすよ」
カロンは苦笑いをしながら俺は不満を顔にだしながらゲートを潜った。
ゲートを潜った先には既に椅子に座りニヤニヤしながらこちらを見ている三ヵ国の王と教皇、側には諦めた顔をして見ている数人の側近達がいた。
「おぅ、久しぶりだなテンリ」
笑いを堪えながらそう声をかけてきたのはアガレスだ。
「ずいぶん不満そうな顔だな」
次にロレンスがニヤリと笑い声をかける。
「私は提案をしただけで決定はしてないですからね」
さりげに自分は悪くないと罪を擦り付けるステーラ、良いのかそれで。
「最初は止めたんだが、流れてきにな、すまん」
最後にクロナが苦笑いをしながらそう答えた。
俺は素直に諦めた顔をしすぐに真面目な顔をする。
「皆さんお久しぶりです、私の事で皆様にご迷惑をおかけしました」
俺はその場で素直に深く頭を下げた。
「報告は受けているからな、今回の事は仕方がない、何せ相手があの方だ」
「災害に合って無事に生還できたと思うしかない事だ」
アガレスとロレンスはそう言いながら少し青い顔をする。
「我は無事に戻って来てくれて嬉しい、それに国としても早い段階で動いたため特に問題はない、唯一問題があるとすればドラグニアの事になるが」
アルナはステーラに視線を向ける。
「先日新たな神託がございました、ドラグニア王国第一王女リリナ=ドラグニアとテンリ=エレノールの結婚を認めるようにと」
そこで皆が頷く。
「あれ、良いんですか?」
俺の言葉に皆が苦笑いをする。
「神託に拒否権はないからな」
「それに今さらだろ」
「テンリだし」
ロレンス、アガレス、クロナの順でそう言われて何も言えなくなった。
「だがこの事で友好同盟にドラグニア王国の参加を呼び掛けることになるのだが、いったいどうなるかはまだわからん」
ロレンスは肩を竦める。
「まぁ何だ、その事は今後だな、いろいろ報告を受けては入るんだがとりあえず今日集まったのはテンリ本人から直接話を聞くためだ、お前が連れて行かれた時から戻って来るまでの話を聞かせてくれ」
アガレスの言葉に頷き当時の事を思い出しながら俺は話始めた。
それから数時間がたち話を終えた俺はクロナと共にアルナの部屋に向かっていた。
「まったく、帰ってたならすぐに連絡が欲しかったものだ」
「申し訳ない」
「それにリリナだ、あやつリンクを切っておったからまさかこんな事態になると思わなかったぞ」
「こんな事態?」
「いいかテンリ本来ならリリナは5番目に会うはずだったのだ」
「それは4人いる婚約者の状態からさらにもう一人は確定って事だよね」
「そうだ、そして本来4番目に会うはずだった相手は自分のことでもあるから言いにくいが、かなりめんどくさいのだ、いいかテンリ、その相手に合ったらできるだけ優しくしてやるのだぞ!」
アルナの勢いに負けコクコクと頷くことしかできなかった。
「本来ドラグニアと同盟を結ぶのももう少し先になるはずだったと言うのにあの馬鹿者め」
クロナはブツブツ言いながらも扉の前で立ち止まる。
「っと、ついたな」
クロナと話しているとすぐにアルナの部屋の前についた、途中クロナの独り言になっていたのだけど。
俺は扉をノックする。
「はい」
そう言って扉が開かれそこには少し背が伸び綺麗になったアルナが姿を現した。
「ふふっ、テンリ久しぶりね」
「えぇ、お久しぶりです」
「あら、言うことはそれだけ?」
「みない間に凄く綺麗になりましたね、アルナに会えなくてとても寂しかったです」
「ありがとう、ふふっ、さぁ、中にどうぞ」
俺とアルナのやり取りにクロナは不満そうな顔をする。
「テンリ、我の時と偉い違いだな」
「クロナは再会したときがあんなでしたから」
そこでクロナはふと再会した時の事を思いだしあぁ確かにと納得した。
「クロナに会えなかったのも寂しかったですよ、またこうして会えて嬉しいです」
不意にそう言ってクロナの頬に触れる、すると少し恥ずかしそうに視線を反らした。
「二人ともイチャついてないで早く部屋に入りなさい」
「そんなつもりじゃ」
「べ、別にイチャついてなど」
アルナはニヤリと笑い俺とクロナはあわてて部屋に入った。
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