第45話 リリナが決闘しました。
2日続けての投稿です。
「まさか彼等が冒険者になっていたなんて」
「まだ冒険者に成り立てですけど頑張っているんですよ」
「なんて羨ましい!」
俺は無性に悔しい気持ちで一杯だった。
「テンリ様も後二年もかからずに冒険者の登録ができるじゃないですか」
「その時間がもどかしいんじゃないですか!」
俺は机をバンバンと叩き対面に座っているハーフィルに悔しさを訴える。
ハーフィルは少し困った顔をしながらどうしたものかと頭を悩ませた。
今は教会が運営している孤児院に来ている、タリアが視察をすると言う名目で来ているのだが実際はタリアが孤児院の子供達と遊ぶためのである、そしてせっかくだからと俺とリリナも誘われて、数名の護衛達と来たわけなのだ。
「悔しいです、なぜ冒険者になるのに年齢制限なんてあるのでしょうか!どうしてですか!」
「それは私に言われても」
かなりハーフィルは戸惑っていた、以前のテンリはもっと余裕があり大人びていた、しかし黒竜に拐われたと話が広がり姿を見せなくなって三年ほど、もしや亡くなったのではと噂がされていたのだがタリアの視察と共にひょっこりと現れたのだ、そしてかなり我が儘になっている気がした。
そしてもう一つ問題があるとすればテンリの隣でジッとハーフィルを見ている少女リリナだ。
「あの、テンリ様、お連れのお嬢様に凄い見られているのですけど」
「そんな事はいいんです、そんなことより彼等が、フォルク君達が冒険者になった事のが重要です、いつもいじられてビクビクしていた残念なフォルク君や毒を吐き間違った方に進んでいたチョロい感じのリュリュネさん、トロネさん、フォンさん、ソーシャルさんがパーティーを組んで冒険者やっているなんて」
「この子物凄い毒吐いた!」
ハーフィルは顔をひきつかせながら俺を見ている。
「悔しいです!すごく悔しいです!」
悔しいと机をバンバン叩いているテンリ、そのお陰なのかジッと見られていたリリナの視線が外れた。
「・・・テンリ、落ち着いて」
「ですが!」
「・・・良いものがある」
リリナは何処からかカードを取り出しテンリに見せる。
「・・・私も昔冒険者に登録した」
リリナの冒険者カードを見せられテンリの額は机に吸い込まれるようにゴンッとぶつかり静かになるのだった。
それから数分後何とか復活を果たした。
「取り乱しました、ごめんなさい」
「いえ、大丈夫ですよ」
ハーフィルはそう言いながら苦笑いを浮かべる。
「そうだ、久しぶりに来たお土産にケーキを持って来たんでした、後で皆さんで食べてください」
俺はケーキの箱を何段か取り出す。
「日持ちしませんからなるべく早めに、出来ればフォルク君達が帰って来る前に食べきってしまってくださいね、彼等ならきっとケーキが食べたければ自分で買って食べるはずです、別に嫌がらせじゃないですからね」
「どう考えても嫌がらせだろ!」
俺がケーキの説明をしていると後ろから声が聞こえ振り返る。
「誰ですか?」
そこには扉を開けてこちらを見ている少年がいた。
「まったく、久しぶりに会ったと思えば」
「誰ですか?」
「本気で言ってるのか?」
「初めましてテンリ=エレノールと」
「わかってるよ、俺だよ、フォルクだ」
「いやいや、フォルク君はもっと自信が無さそうな女の子に追いかけ回されて泣きながら助けを求めてくる哀れな」
「やめてください、勘弁してください」
フォルクと名乗った少年は四つん這いになり力なくうなだれた。
「フォルク邪魔なんだけど」
「扉の前にいたら中に入れないよ」
「フォルク君早くどいて」
「フォルク君、シメるよ」
「なんだ、フォルク君か」
「おい!」
なんとか立ち上がりフォルクは後ろの人達が入れるように扉の横にずれた。
「テンリ君がいる!」
「ホントだ!」
「じゃあ奴隷にされて変態貴族に売られたって話は嘘だったんだね」
「お久しぶりです、また会えて嬉しいです」
死んだ以外にも変な噂が流れているな、聞かなかった事にしよう。
「リュリュネさん、トロネさん、フォンさん、ソーシャルさんお久しぶりです」
「久しぶり、また会えて嬉しいよ」
「三年も何してたの?」
「みんな寂しがってたんだよ」
「フォルク君の落ち込みは酷かったんだから、そんなことよりそこの女の子は誰?」
「俺はそんなこと呼ばわりなのか」
ソーシャルの言葉で軽く精神的ダメージを受けたフォルクであったが彼等は俺の隣にいたリリナに視線を向ける。
注目されたリリナは立ち上がりフォルク達の前に一歩踏み出す。
「・・・私はテンリの妻、リリナ=エレノール」
「いやいや、まだ結婚してないでしょ、勝手に家名を使ったらダメです」
「・・・私は結婚できる」
「俺がまだ結婚できる年齢じゃないんですから」
「・・・そうだった!」
俺達のやり取りを聞きフォルク達が驚いている。
「テンリ、結婚するのか?」
「まだしませんからね」
「まだって事はいずれ結婚するの?」
「予定ではそうですね」
「つまり婚約者って事だよね」
「そうですね」
「ここに来なかったのは女漁りに忙しかったから?」
「違います、修行してました」
「リリナさん、決闘しませんか?」
「ソーシャルさんなに言ってるんですか!」
リリナはソーシャルをジッと見る。
「・・・ん、いいよ、小娘に実力の違いを見せてあげる」
「な!あなた私より少し上くらいの年齢じゃないですか!小娘呼ばわりしないでください」
「・・・フッ、小娘」
「ついてきなさい!」
ソーシャルは勢いよく外に飛び出す、その後ろをリリナはついていった。
二人の迫力に俺達は見ている事しかできなかたがハッと我に帰りリリナとソーシャルの二人を追って外に出た。
外に出ると二人は少し離れた位置で対峙している。
「・・・小娘、いつでもかかってくるがいい」
「小娘って言うな!私にはソーシャルって名前が」
「・・・怖じ気づいてこれない?」
「うるさい!」
「・・・魔法でも何でも使うといい、それでも勝負にすらならないから」
「バカにして!」
ソーシャルは杖を構えて詠唱を始めた、リリナはそれをただ見ている。
「なぁテンリ、あのリリナって子大丈夫なのか」
「大丈夫ですよ、むしろソーシャルさんが心配ですね」
ソーシャルは詠唱が終わったようで初級魔法のファイアをリリナに向けて飛ばした、しかしリリナはそれを手を軽く振って消し去った。
「な!」
ソーシャルは一歩も動くことなく軽く手を振っただけで自分の魔法が消されたのに驚いている。
「・・・これだけ?」
「ま、まだよ!」
ソーシャルは次の詠唱を始めリリナはまたそれを眺めている、そして魔法を放ち手を軽く振って打ち消すのを何度か繰り返しソーシャルは膝をついた。
「はぁはぁ」
「・・・魔力切れ、私の勝ち」
「くっ、私はまだ負けてない」
ソーシャルはリリナに向かって行き杖で攻撃しようとしたがこれも軽く手を振って後ろに転ばせた。
「ソーシャルの奴が手も足もでないなんて」
フォルク達は驚いた顔をしていた、彼等のパーティーの中で一番強いのはソーシャルであったのだがそのソーシャルが手も足もでなかったからだ。
リリナは笑顔でソーシャルに近づきポンポンと頭を叩く。
「・・・なかなか筋は良いと思う」
「うぅ」
「・・・だけど今は全然だめ」
「はい」
「・・・私が鍛えてあげてもいい」
「え!」
「・・・ただし条件がある」
「じょ、条件、ですか」
「・・・私の専属メイドになる事」
「それは、でもパーティーが」
「・・・冒険者としての活動もさせてあげる、給料も私がちゃんと出してあげる、ただ休みはなくて覚えることや修行がきつい、どうする?」
ソーシャルは少し考えた後リリナを見る。
「や、やります!」
「・・・ん」
リリナは満足そうに頷く。
「なんだか上手く纏まったようだね」
二人のやり取りをいつの間にか俺の隣で見ていたタリアがうんうんと頷いていた。
「問題はないですか?」
「大丈夫でしょ、リリナちゃんの専属メイドどうしようか悩んでたから、教育もセバスにしてもらえば良いしね、カロン君には私が言っておくよ、お給料もエレノールの家が持つからリリナちゃんが払う必要はないからね」
「なら後の事はお願いします」
「タリアお母様に任せなさい」
タリアはそういって胸を張った。
この後はいつメイドとして働くのか冒険者としていつ活動するのかなどいろいろな話を決めてハーフィル達に見送られながら孤児院を後にした。
その夜の孤児院でわ。
「ねぇソーシャル、ホントにメイドやりながら冒険者もするの?」
「そうだよ」
「専属メイドなんでしょ、冒険者やらなくても良いんじゃない?」
「私がやりたいから良いの」
「無理しちゃダメだよ」
「うん」
リュリュネ、トロネ、フォンの三人はソーシャルを見ながらニヤニヤし始めた。
「それにしてもリリナちゃんか、凄かったね」
「そうだね」
「リリナちゃん可愛かったね」
「う、うん」
「テンリ君もきっとメロメロだね」
「グフッ」
三人の言葉にソーシャルはかなりのダメージをおった。
「これは負けてられないね」
「でも正妻にはなれなくなっちゃったね」
「なら第二婦人かな」
「私は妾でもいいわ!」
「「「え!」」」
「きっとテンリ君はいろいろな人達が結婚を申し込んでくると思うの、それも私なんかよりも綺麗で頭の良い人や大商人や貴族様達の娘が大勢、だから妾でもいいわ」
「それはちょっと」
「自分を下に見すぎだと思うよ」
「ソーシャルちゃん凄く可愛いよ」
「みんなありがと、でもね、今日リリナちゃ、リリナ様に会って確信したわ、きっと妾になる事すら難しいんだって、だから私は頑張って妾を目指すわ」
リュリュネ、トロネ、フォンの三人は顔をひきつらせながらソーシャルを見る。
「「「頑張ってね」」」
「私、頑張るわ!」
妾を目指すソーシャルを三人は見つめたまま苦笑いをするのだった。
読んでくださる皆様ありがとうございます。




