第44話 心が折れました。
エレノール領に帰って来た翌日、俺はリリナと二人でカロンの仕事部屋に来ていた。
「二人共準備は出来たか?」
「はい」
「・・・ん、大丈夫」
今からこの三人で王城に向かいそこで国王であるロレンスに俺が戻って来たことを伝える、そしてドラグニア王国の第一王女であり五行天竜序列一位であるリリナの事を報告する。
俺はゲートを開き王都にある屋敷に繋いだ、ここから馬車で王城に移動する事になっている。
あらかじめ屋敷の者達に話は通してあるので王都側の屋敷に行き軽く挨拶をした後で馬車に乗り込んだ。
今からいろいろと説明をしなければならない訳だが正直めんどくさい、せっかく帰って来たのだからゆっくりさせてほしい。
「父様、気分がすぐれませんので今すぐ帰っていいですか、陛下への説明は父様にお願いします」
「おい」
「冗談です」
「はぁ」
カロンは疲れた顔をしながら深いため息を吐く。
「今から陛下にテンリが帰って来た報告をするわけなんだが」
言葉を区切りカロンはリリナを見る、リリナは窓の外を眺めていたがその視線に気づきカロンを見て首を傾げた。
「リリナ様の事も話をしなければいけない」
リリナは興味がないとまた外を眺め始める。
「テンリ、お前だけならば疲れているだろうからと後日でも良かったんだが、さすがにリリナ様の事は至急連絡する必要がある、しかも神託がありお前の婚約者になると言う事ならなおのことだ」
「そうですね」
ドラグニアの第一王女が護衛も付けず何の連絡もせずにデイステンにいるのは問題だ、ましてそれが五行天竜の序列一位、何かの拍子に暴れれば街が、いや、国が滅びかねない程の実力を持っている、そしてそんな相手が俺の婚約者になる、どうせ後からわかることなら今のうちに片付けてしまった方が良い。
「その説明をするのに当の本人達が不在では困る、こんな状況で丸投げはホントにやめてくれ」
「え、困るだけですか?なら」
ギロリとカロンに睨まれ、俺は手を振る。
「冗談です」
「そんな冗談やめてくれ」
「緊張をほぐそうかと」
「疲れるだけだ、はぁ、家に帰りたい」
俺は苦笑いをしながらカロンを落ち着かさせる。
そんな事をしている間に王城の門に着き、手続きを終えた馬車は門をくぐって中に入る。
馬車を降りた俺、リリナ、カロンの三人は案内役のメイドに連れられて応接間に通された。
俺達は椅子に座り案内してくれたメイドがお茶とお茶菓子を出してくれた。
確かこのメイドはロレンスの弟で宰相をやっているドルメイン直属の部下だって人だったな。
そんな事を思い出しながらお茶を飲もうと口をつけた時にバンッと思い切り扉が開き俺はビックリしてお茶を溢してしまった。
「テンリ!よく帰って来た!」
ロレンスがそういいながら部屋の中に入ってくる。
「陛下、ご無沙汰しております、ただ勢いよく扉を開けるのはどうかと思います、お茶がこぼれてしまいました。」
「む、すまん」
メイドがタオルを渡してくれリリナがそれを受け取りてすぐに俺を拭いてくれる。
ロレンスの後ろからドルメインとミルの二人も入って来た。
「久しいな、無事で何よりだ」
「お久しぶりっす」
二人はリリナに拭かれている俺を見てニヤニヤしている。
「ご無沙汰しております、そしてその笑いをやめてください」
「おっと、これは失礼」
「なんとも仲が良さそうなことっすね」
ロレンス達は椅子に座る。
「あらかた連絡は受けているがテンリ、お前からも話を聞いておきたい」
「はい」
そして俺は自分がヴォルデリアに連れていかれてからの事を話せない内容を伏せながら話した、三人は難しい顔をしながらその話を聞いていた。
「以上です」
「なんとも信じられない話しではあるが、あのカリナ様が関わっている事だ、事実なのだろうな」
「まさか英雄クロードが生きていてしかもカリナ様と夫婦だったとは、それに過去多くの国を滅ぼした暗黒竜ヴォルデリアが生きていてそれが竜族の王だったとわ」
「それにその暗黒竜ヴォルデリアはドラグニア王国の王女様と結婚していてその娘がリリナ様なんすね、そしてリリナ様はテンリ君の婚約者っすか」
三人は揃って難しい顔をする。
「一応の確認だがリリナ王女が本物である証明はできるか?」
ドルメインはリリナを見た後に俺とカロンを見る。
「リリナ、これがあれば認めてもらえるって物持ってる?」
リリナは横に首をふる。
「・・・ない、ただ」
「ただ?」
「・・・本物だと証明する事はできる」
「どうするの?」
皆興味深く見る。
「・・・とても簡単、私一人で国を滅ぼす」
皆の顔が青くなる。
「それがどうして王女の証明になるの?」
俺の疑問に皆が頷く。
「・・・一人で国を滅ぼせる実力があるのは天の称号を与えられた各種族の序列一位、または序列二位くらいだから、その実力があれば五行天竜の序列一位と認められる、と思う、そうすれば私がドラグニアの王女だと認められる、はず、たぶん」
なんて物騒な証明の仕方だ、しかも確実に証明できる訳じゃないときた。
「やめとこうか」
「・・・なんで?」
「国に住めなくなるのはみんな困るから」
「・・・ん、わかった」
さてどうしたものか。
「この後自分が確認に行ってくるっす」
ミルがそう言い皆がそれに同意した。
「それと友好同盟を結んでいる各国にもテンリ君が帰って来た連絡をしておくっす」
「テンリ、近いうちに聖都で各国の王達が集まる、その時はまた今日の話をしてもらうことになる」
「わかりました」
話を終えロレンス達に挨拶をして王城を後にする。
帰りの馬車に揺られながら外を見る、朝早くに家を出たがすでにお昼をだいぶ過ぎている。
「お腹すきましたね」
「・・・ん」
リリナは短く返事をして俺の髪をいじり始めた。
「テンリ、今さらなんだが髪がかなり長いな」
カロンに指摘され確かに今さらではあるのだが三年も髪を整えずにそのまま放置していたためだいぶ伸びてしまっている、今は後ろで縛っている状態だ。
「屋敷に帰ったらセバスに髪を切ってもらいます」
「それが良いだろう」
そうカロンは頷いた。
さて、次は聖都に出向き友好同盟を結んでいる国の王達の前で今日話したことをもう一度話さなければならない、こう言うめんどくさい事は一度に終わらせて欲しいものだ。
王都にある屋敷に着き使用人達にエレノール領の屋敷に戻ると伝えゲートを開きそれをくぐってカロンの仕事部屋に帰って来た。
「同盟国との話し合いは決まり次第伝える、今日は以上だ」
「わかりました」
「・・・ん」
カロンに返事をした後俺とリリナは部屋から出る。
俺はとりあえずこの長くなった髪を切ってもらうためセバスを捜すことにした。
「俺はセバスを捜して髪を切ってもらうけどリリナはどうする?」
「・・・ならそれを見てる」
「面白いものでもないと思うけど」
「・・・大丈夫」
「わかった、ならまずはセバスを探そうか」
リリナは頷き二人でセバスを探し始める。
セバスを捜す、これが思ったよりも大変だった。
広間、食堂、厨房、中庭と探してもまったく会わない。
お腹が空いていたので厨房に寄った時に賄いのサンドイッチを分けてもらい今は中庭の木の下でリリナと遅めのお昼を食べている。
「なかなか見つかりませんね」
「・・・ん、なかなか手強い」
「メイド達に話を聞く限り敷地内にはいるはずなんですが」
「・・・ここはかなり広い、普通は貴族といえどここまで広くはない」
「そうなんですか?」
リリナはコクりと頷く。
「・・・この家はちょっとおかしい」
「リリナ、失礼ですよ」
「・・・なら異常?」
「なぜ疑問系に、しかもさっきより酷いです」
俺は苦笑いをする。
「とりあえず広いのは認めます」
「・・・ん」
「さて、どうしましょうか、リリナは疲れてないですか」
「・・・大丈夫、それにちょっと楽しい」
「楽しいですか?」
「・・・ん、テンリと一緒になにかをするのが楽しい」
俺はそれを聞き少し恥ずかしくなり少し顔を反らし最後の一口を口に入れた。
「ほほっ、テンリ様、捜しておりましたよ」
ちょうど食べ終わったタイミングでセバスが話しかけてくる。
「奇遇ですね、俺もセバスを捜していたんですよ」
「ほほっ、そのようですね、メイド達がテンリ様が捜していると言っていまして、どうかされましたか?」
「髪を切ってもらいたくて」
「ほほっ、なるほど、では今から切りますかな?」
「お願いします」
「ほほっ、かしこまりました」
セバスは準備をするため屋敷の中に入っていく、俺はここで待つように言われリリナとまた二人になった。
「捜しても見つからなかったけど座ってたら見つかりましたね」
「・・・ん」
「なんだか負けた気分です」
「・・・でも楽しかった」
「そうですね」
俺はリリナと笑い戻って来たセバスに髪を切って貰った。
その後俺が髪を切ったのを知ったカレンとタリアに怒られた、どうやら俺の髪をいじって女物のドレスなどを着せたかったようだ、髪を切って正解だったと思っていたが「せっかく用意したし顔が可愛いから女の子の服を着せちゃえばいっか」とタリアが言い初めそこから全力で逃げようとしたのだが呆気なく待機していたメイド達に捕まりされるがままの状態になった、ステータスは俺の方が遥かに上のはずなのになぜ逃げ切れなかったのか不明である。
カレンとタリアとリリナ、そしてメイド達は俺を着せ替え人形にしてとても満足そうにしていた。
代わりに俺の心が折れたのだった。
暑い日が続いています、熱中症に気をつけて生活しましょう。
読んでくださる皆様いつもありがとうございます。




