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第43話 リリナはぶれませんでした。

 なんとか復帰したライヘルドは俺達にここで待つように指示し部屋を慌てて出ていった。


 それから数分後ライヘルドは戻って来て頭を下げる。


「今至急確認を取っていますのでもう少々お待ちください」

「わかりました」 


 ライヘルドは椅子に座り改めて俺達を見る。


「あの、どうかしましたか?」


 俺はあまりにじっと見られるので少し困った顔をしながら訪ねる。


「い、いえ、その、本当にテンリ=エレノール様なのでしょうか?」

「そうですけど、なぜそう思うのですか?」

「その、噂では亡くなったと言う話が流れていまして」


 俺死んだ事になってるの!ちゃんと生きてるよ!


「ちゃんと生きてますよ、エレノールの家から無事だと情報が流れているはずなんですが」

「はい、そう聞いていたのですが3年近く誰もその姿を見ていなかった事でそのような噂が」

「しょせん噂ですよ」


 俺は苦笑いをしながら答えた。


「それと以前偽者が出まして」

「偽者?誰の?」

「テンリ様のです」

「そうなんですか!」


 まさか自分の偽者が現れるとは思わなかった。


 死んだ噂に自分の偽者とは、勘弁してほしい。


「直ぐにその子供が偽者だとわかったので捕らえましたが調べたところどうやら犯罪組織が関与していたようです、その偽者の子供はスラムで生活をしていてご飯を食べさせて貰ったからやったのだと話していたようなんです」


 犯罪組織か、その子供もご飯を食べる為に大変な目にあったものだな。


「その子供はどうなったんですか?」

「今も牢で過ごしています」

「そうですか」

「本当は貴族の名前を偽った犯罪なので死刑になってもおかしくはなかったんですがカレン様が釈放するようにと言われたので」

「釈放するように言われたのにまだ牢にいるのですか?」

「はい、その、牢の中に居着いてしまって」

「は?」

「牢の中は襲われる心配もないし食事も出てきますからね、スラムに戻るより牢の中がいいとしがみついているんですよ」

「そうなんですか」

「テンリ様の偽者はこの一度きりでそれ以降出てないですね」


 そうか、俺の偽者は一度だけか、しかしその言い方だと俺の偽者以外はいるみたいな感じだな。


 それにしてもスラムか、父様の元冒険者仲間で友達のドルマンが元締めだったな、なら父様達が何かしら手を打っていることだろう。


 俺が考えに耽っているとコンコンと扉をノックする音がする。


「はい」


 返事をしてライヘルドは扉を開ける、そこにはセバスが立っていた、俺を見ると安心したのかホッと息を吐く。


「テンリ様、よくぞご無事で」

「セバス、お久しぶりです、心配をお掛けしました」


 セバスは一度真面目な顔になり深く頭を下げる。


「申し訳ありませんでした!」


 セバスにいきなり謝られたので俺は驚いた。


「セバス、どうしたんですか?」

「私は黒竜に連れていかれるテンリ様になにもすることが出来ませんでした」

「それは仕方ないことです、相手が悪すぎますから」

「それでもです、罰はいかようにも」


 俺はどうしたものか考える。


「わかりました、では謝罪は受け入れます」

「はい」

「それと罰ですが」

「はい」

「ありません」

「ですが」

「そもそも今回の事態はカリナお婆様が元凶な訳ですからね、罰を受けるならセバスではなく周りを騒がせたカリナお婆様でしょう、この話はこれで終わりです、いいですね」

「・・・ありがとうございます」


 セバスはもう一度深く頭を下げた。


「えっと、それよりも身分証がないんですけど、セバスどうにかなりませんか?」

「は?」


 セバスは一瞬間の抜けた顔をする。


「えっと、身分証なんですが」

「ほほっ、大丈夫ですよ」


 どうやら普段のセバスに戻ってくれたようだ、セバスはライヘルドの方を向く。


「ほほっ、この方がテンリ=エレノール様ご本人であると私が保証いたします、何か手続きはございますか?」

「い、いえ、セバス様、テンリ様ご本人の確認が取れれば何もございません」


 ライヘルドはかなり緊張しながら背筋を伸ばしそう答えた。


 リリナは俺の服を引っ張る。


「・・・私、忘れられてる?」


 俺はそれに苦笑いをしながら大丈夫だと答える。


「セバス、この方も家に連れていきたいのですが」


 セバスはそこで初めてリリナに気付いたようでリリナを見て微笑む。


「ほほっ、かしこまりました、この少女も私が保証しましょう」


 チラッとセバスはライヘルドを見る。


「了解しました!」


 ライヘルドはあっさりと許可をだした。


「ほほっ、許可も出たことですし参りましょうか、外に馬車を待たせてあります」


 俺はライヘルドに軽く頭を下げセバスとリリナの3人で馬車に乗り込んだ。


「ほほっ、それでテンリ様、こちらのお連れ様とはどのようなご関係なのですか?」


 セバスは笑顔で聞いてくる。


「えっとですね」

「・・・私はリリナ、テンリの妻」


 俺がどう紹介しようかと考える前にリリナが答えた。


「ほほっ、テンリ様、お盛なのはいいですがそのうち刺されますよ?」

「セバス、これにはいろいろあるんです」

「ほほっ、冗談ですよ」


 セバス、冗談に聞こえないです。


「詳しい話は父様達を交えて話します」

「ほほっ、それが良さそうですね」


 家に着くまで馬車に揺られながらどんな理不尽な事があったかをセバスに話しセバスは泣きながら共感していた。


 屋敷に着き懐かしさを感じる暇もなく直ぐにカロン達がいる部屋に通された。


 俺が先に部屋に入りリリナとセバスが後に続く。


「ただいま戻りました」

「お帰りテンリ、よく戻ったな」


 俺の顔を見たカロンは安心したとホッと息をつき軽く頷く。


「テンリちゃん無事で良かった」


 タリアが泣きながら近付いてギュと抱きしめてくる。


「お帰りテンリ、それよりも」


 カレンはお茶を飲みながら一言言い俺の後ろをじっと見ている。


 カレンの態度でカロンとタリアは俺の後ろにいる人物に気づいた。


「テンリ、そちらのお嬢さんは?」


 リリナは自分の事に注目が集まったと一歩前に出る。


「・・・初めまして、私はリリナ、テンリの妻」

「「え?」」


 カロンとタリアは驚いた顔をしてカレンはクスクス笑っている。


「テンリ、一体どういう事だ」


 カロンの頬がひきつりながら俺に質問をしてくる。


「リリナ、お願いですからちゃんと自己紹介してください」

「・・・したのに」


 リリナは不満そうな顔で俺を見る。


「はぁ、えっとですね、彼女の名前はリリナ=ドラグニア、ドラグニア王国の五行天竜序列一位にして第一王女様です」

「・・・です」


 俺の説明にリリナは胸を張る、たいして胸があるわけではないんだけどね。


「・・・テンリ、今失礼な事考えた?」

「そんな事考えるわけないじゃないですか」


 俺は目を背けることなく真っ直ぐにリリナを見る、しかし内心冷や汗ものだ。


 リリナの事を聞いたカロンとタリア、そしてセバスが驚いた顔をする。


「あ、トリアーネーゼさんの娘ね」


 カレンだけは納得したかのように頷いた。


 リリナは腰に手をあてもう一度胸を張る。


「・・・そう、トリアーネーゼは私の母様、そして私はテンリの妻」


 リリナはぶれないな。


 トリアーネーゼ=ドラグニア、ドラグニア王国現女王にして五行天竜序列二位、そしてヴォルデリアの奥さんだ。


「テンリ、お前はなぜこう帰って来てそうそう問題を持って来るのだ」

「父様、いきなりそれはあまりに失礼です、謝ってください!」

「う、まぁその、すまん」

「仕方ないから許してあげます」

「テンリ、少し性格が変わったな」

「地獄に叩き落とされてもまともな精神保っているんですから少し性格がひねくれたぐらい問題にはなりません!」


 カロンは俺にそう言われ確かにカレンの母親であるカリナの修行を3年も耐えて性格が破綻したり精神が崩壊していないのは凄いと思った、何せカロンは一度カリナの修行を受けたことがあったが1週間ももたなかったのだ、その苛酷さを思い出すと震えが止まらない。


「テンリ、お前は凄いな」

「死ぬ気で頑張りましたから!」


 そう、本当に死ぬ気で頑張ったのだ!


「ところでテンリ、リリナ様が妻とは一体どういう事だ?」


 俺はリリナを見る、するとまた胸を張る。


「・・・神託があった、近いうちに聖都から連絡がある」


 神託、便利な言葉だ、何かあれば神託がって言えば大体の話が通る、しかもその神託を降すアトレイアとリリナは同一人物でもあり常に技能のリンクで繋がっているからこの場で考えた事でも後から神託にできてしまう、恐ろしい。


「そうか、わかった」 


 カロンは反論することなく頷く。


「いいんですか?」

「神託なら仕方がない、それに今さらだ」


 カロンはそう言って苦笑いをした。


 その後離れていた3年間の出来事や今後の事を話す、当然1日で話し尽くせるわけがないので重要な部分を切り取って話しそれでもあっという間に1日が過ぎるのだった。

 夏です、暑いです、体調管理には気をつけましょう。

 応援してくださる皆様いつもありがとうございます。

 初めまして読んでくださる方気にいってくれたら幸いです。

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