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第42話 身分証がありませんでした。

 ゲートをくぐった先はエレノールの街から少し離れた場所だ、屋敷にそのまま行くよりも門で事情を話し屋敷の人達に連絡してもらった方がパニックにならないだろうと思ったからだ。


 リリナと共に街に向かって歩いていく、門は多くの人達が順番待ちをしていた。


「・・・凄い人」

「エレノールの街はデイステン王国の中でもかなり栄えているからね、少し距離はあるけど森があってその中心に棟のダンジョンがあるから冒険者が多いんだよ、そのお陰で商品も良く売れていて商人の出入りも多いんだ」

「・・・冒険者が多いなら治安が悪い?」

「治安は良いよ、現役の十二聖天が三人いるし元十二聖天がいるからね、それに彼等に鍛えられた兵がいるから並の冒険者ならすぐに取り押さえる事ができるよ、それにここで暴れたらすぐ街の外に追い出されるからね」

「・・・なるほど」


 リリナはコクりと頷いた。


 それから数分後、けっこうな人数が並んでいた筈だがすぐに俺達の番になった。


「ようこそ、身分証の提示をお願いします」


 門番は笑顔で俺達に話しかける、子供でもきちんと対応してくれる門番にやはりこの街はいい所だと思いふと考える、身分証なんて持っていたっけ?


 リリナを見る。


「・・・身分証、ない」

「俺も持ってない、どうしよう」


 困った顔を門番に向けると門番は苦笑いをする。


 さてどうしたものかと考えようとしたとき少し後ろから大きな声が聞こえた。


「いつまで待たせる気だ!」

「ちんたらやってんじゃねえぞ!」

「そうよ、私達はつかれているのよ」


 4人組の冒険者がずかずかと順番を抜かして近づいてくる。


「申し訳ありません」


 門番は柄の悪い冒険者達に頭を下げる。


 それを見た冒険者達は調子に乗り出した。


「こっちは長旅で疲れているんだ」

「だからさっさと中に入らせてもらうぜ」

「もうこのまま入っちゃいましょ」


 そう言って柄の悪い冒険者達は中に入ろうとするが門番がそれを止める。


「申し訳ありませんが列を離れた方は最後尾までならび直してください」


 門番のこの一言で冒険者達は武器を構えた。


「門番風情が俺達赤獅子の牙に楯突こうとはいい度胸だな!」

「俺達3人はCランクでうちのリーダーはBランクだぞ!」

「わかったらさっさとどきなさい!」


 順番待ちをしていた人達がざわざわとし始める。


「赤獅子の牙だって!」

「最近有名になったパーティーだよな」

「でもこの辺は活動範囲にはなかったはずだ」

「かなり評判が悪くて有名だぞ」


 順番待ちの人達が騒ぎ始めた。


 門番は苦笑いをする。


「申し訳ありませんが決まりですので」

「ふざけるな!」


 冒険者の一人が剣で斬りかかる。


 しかし門番はそれを一歩後ろに下がり避ける。


「今のはさすがに見過ごせません」 


 そして門番は剣を抜き素早く相手の剣を叩き落とした。


 この門番はなかなか腕がたつようだ、他の門番達は順番待ちの人達を誘導しながら手続きをしてどんどん中に人を入れていく。


「君達は巻き込まれないように少し離れた方がいいですよ」


 門番は笑顔で俺達を見る。


「少し見ていっていい?」


 俺はリリナを見ながら彼等を指差す。


「・・・ん」


 リリナは短く返事をする。


「すいません、少し見学していきます」


 門番は困った顔をするが駄目だとは言わなかった。


 門の前には既に順番待ちの人達は居なくなっていた、まだ多くの人達が並んでいたはずなんだが見事な手際だ、そして見学している人達がそこそこいる。


 俺とリリナは門の近くまで行きそこから見学した。


 剣を叩き落とされた冒険者は剣を拾い既に構えていた。


「この野郎、手加減してやったってのに」 

「言い訳だな」

「素直に認めないなんてダッサイはね」


 冒険者達は仲間どうしで少し揉めているようだ。


 だが警戒は怠ってない、柄が悪くてもCランク冒険者と言うだけあるのだろう。


 どうやら先に冒険者達が仕掛けたようだ、剣を持った冒険者は先程と違いフェイントを交えながら攻め立てる、しかし門番はそれを見事に捌いている。


 もう一人の冒険者は槍を使い加勢に入る、見事な連携を見せ少し門番が押され始めた。


「助けにいかなくていいんですか?」


 俺は近くにいた門番に聞く。


「この中で一番強いのが彼なので我々が行っても足手まといになるのですよ」


 そう言いながら門番は申し訳なさそうにする。


「今は応援を呼びに行っていますのでもう少しすれば来ると思います、それまでの時間を彼には稼いでもらっているのです」


 なるほど、だがさすがにCランク二人の相手はきついようだ、それにまだ二人控えている。


 お、どうやら3人目が動き始めたようだ、何やら呪文を唱えている。


 冒険者二人が距離をとり門番に魔法が放たれる、火の塊が門番に近づきそれを最小限の動きで素早く避け前に出ようと動いた直後火の玉は爆発した、火属性の爆発魔法フレアボムだろう、門番は背中に爆発をモロに受けて吹き飛ばされる。


 冒険者達はニヤリと笑い武器を構え門番に向かって行く、どうやら応援は間に合いそうもないな。


「ちょっと行ってくる」

「・・・ん」


 俺はリリナにそう言い身体強化をしてすぐさま門番の前に移動した。


「貴方達、やり過ぎではないですか?」


 俺がいきなり目の前に現れたのに驚き冒険者達はすぐに距離を取る。


「今貴方達はこの街の兵士を相手にしているんですよ、そんな人達が街に入れるとでも思っているんですか?」


 俺の言葉に冒険者達はニヤリと笑う。


「ガキがいきなり出てきてなに言い出すかと思えば」

「俺達は赤獅子の牙だぞ、怖いものなんかあるわけないだろ!」

「私達は何やったっていいのよ」


 なんだろうか、バカなのかこいつら?


「危ないですから逃げてください」


 何とか立ち上がる門番は無理やり笑顔を作り俺の前に立とうとする。


 何とも素晴らしい門番だ、こんなボロボロになりながらも笑顔を作り俺の前に出て守ろうとするなんて。


「だけど邪魔です」


 俺は門番の足下にゲートを開く。


「へ?」


 そのまま門番はゲートに落ちていき門の前に落ちた。


 門番達は驚いた顔をしている、俺はそれを確認した後に冒険者達を見る。


「さて、貴方達の相手は代わりに私がしてあげますよ、どうせなら4人同時に相手してあげるからかかって来てください」


 俺の言葉に冒険者達はキレた。


「ふざけんなよ糞ガキ!」

「今さら泣いて謝っても許されねえからな!」

「でも可愛いから許せるわ!」

「「おい!」」


 なんだろうコント集団なのか?


「くくっ、この俺もご指名とはな、小僧、そんなに死にたいのか?」


 今まで黙っていたこのパーティーのリーダーの男がゆっくりと前に出る。


「貴方達程度で私を殺す?何の冗談ですか?」


 リーダーの男が殺気を込めて睨み付ける。


 仲間の冒険者達はビクッと身体を震わせて冷や汗を流す。


「ほぅ、俺の殺気をくらってもなんともないのか、小僧名前は?」

「礼儀もない獣にわざわざ名乗るとでも?」


 リーダーの男は顔を鬼のようにして大剣を構える。


「そうか、なら死ね小僧」


 物凄い勢いで大剣が横になぎ払われそれを見ていた門の方から悲鳴が聞こえてくる。


「な、に!」


 俺はなぎ払われた大剣を片手で掴む。


「バ、バカ、な!」


 リーダーの男が驚愕しその仲間の冒険者達も驚いた顔をしている。


「この程度ですか?」


 俺は掴んだ大剣に力を加える、するとバキッと音がなり大剣が折れた。


「な、こ、こんな事、俺の剣が」


 俺は冒険者達に殺気を放ちそこからリーダーの男にゆっくり近く。


 冒険者達は殺気を受けて身体が震え物凄い汗を流している。


「さて、いくら街に入る前とはいえ回りに迷惑をかけさらには門番に怪我をさせたのだからきちんと罪は償って貰いますよ」


 俺はさらに殺気を込めてリーダーの男の前に立つ。


 腰を抜かしている冒険者のリーダーの肩に触れ笑顔を向ける。


「わかりましたね?」

「わ、わかった」

「ではついてきてください、あ、それと逃げられると思わないように」


 冒険者達は首がもげるんじゃないかと思うほど首を縦に振り震えながら俺の後ろをついてくる。


「・・・ん、お疲れ様」

「疲れるような相手でもないですよ」


 俺は門番に話をして今しがたついた応援の者達に冒険者達を引き渡した、応援に来た者達は状況がよく呑み込めてない様子だったがきちんと冒険者達を連れていった。


 門の前では歓声が上がり大騒ぎをしている。


 俺はその様子を見て苦笑いをした。


「さて、それよりも」


 俺は一人で冒険者達と戦っていた門番に近づく、応急手当てをしてもらっている最中のようだ、背中に火傷をおっているが意識がはっきりしていた。


「ちょっといいですか」

「ちょっ、子供が何を!」


 傷の手当てをしていた人はいきなり近づいた俺に驚く。


 俺はそれを無視して傷の具合を見る。


「うん、これなら、ヒール」


 俺は門番に手をかざし魔法を発動させる、すると門番の火傷が一瞬で治った、治療をしていた人は驚いた顔をして固まってしまった。


「今の見たか?」

「もう治ったぞ!」

「しかも無詠唱じゃなかったか!」

「凄い」

「あの子は何者何だ!?」


 など野次馬をしていた人達の騒ぎが大きくなった。


「あ、ありがとうございます」


 門番は深く頭を下げる。


「いえ、大したことではありませんから、ところで先程の続きなのですが、今自分達の身分証がないので家の方に連絡を入れていただきたいのです」

「わかりました、ではここではなんですので詳しい話は一度詰所の方に来ていただいてからでよろしいですか」

「はい」


 門番に連れられて詰所に移動し個室に通される。


「では少しお話を聞かさせていただきます、あ、自己紹介がまだでしたね、私はライヘルドと言います、お名前をお聞きしても?」

「はい、テンリです、テンリ=エレノール」

「・・・リリナ」

「テンリ君とリリナちゃんですね、ん、テンリ=エレノール?それって3年前に黒竜に拐われた」


 確かにあの時の状況を考えると拐われたと言われても間違いはないが幻惑の森の家にカレンがやって来たので事情は話してある、さすがにカレンが来たときは驚いたがカリナに娘が実家に帰って来ただけと言われたので納得できた。


 なのでカレンがカロンに説明をしている筈でその情報は広まっていると思ったんだが?


 門番改めライヘルドを見ると俺の名前を聞き驚きのあまり固まっていた。

 本日台風です、自然災害は恐ろしいです。

 毎度見てくださる皆様本当にありがとうございます、初めて見る皆様これからよろしくお願いします。

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