第38話 緊急で会議をしました。
今回はテンリ視点ではありません、そして短いです。
テンリが黒竜に拐われた数日後、デイステン、ジュマ、メルテツシナの三ヵ国の王達は秘密裏に急遽聖徒に集まり話し合いをする事となった、この友好同盟の鍵を握るのが他ならぬテンリだ、何せ各種族の王族と婚約したわけでもしテンリに何かあれば今後どうなってしまうのかわからない、下手したら友好同盟事態を破棄せざるおえない状況になるかもしれない、なぜなら昔各種族同士で戦争をしていたからなのだ、人族と獣人族は特に根が深い、それに加え魔人族は世界そのものを手に入れようと全ての種族を敵に回し侵略したこともある、そしてその時代から生きている者達もまだ多く生きている、なのでテンリ本人は何も知らないところでとても重要な役を担っていた、そして本日その会議をするのだが今聖都にいるのはロレンスとアガレス、そして彼等が信頼できる側近の数名だった。
「ロレンス、テンリはまだ見つからないのか?」
アガレスはロレンスにそう問いかける。
「全力で捜索しておるがまだ見つからん、テンリを拐っていった黒竜はかなり大きかったと聞くがどこに向かったのか、その情報すらも全く掴めていない」
ロレンスは悔しそうにグッと拳を握った。
「セバスが身動きできないほどの相手か、そんなのに目をつけられるとは、一体何をやらかしたんだか」
実際はテンリが何かをやらかしているはわけではないのだが彼らからの共通認識は気づけば問題を起こす少年となっている、テンリ本人からすればいい迷惑である。
「SSランク以上は確定だ、知能もかなり高いらしい、セバスが動けないほどの相手、下手したら国が滅んでいただろうな」
「だがなぜテンリを連れていったのだ?」
「わからん」
「そうか、カロン達の様子はどうだ?」
「カロンは自分の領地で捜索や対策に追われている、タリアはセバスと共に黒竜の移動ルート等を調べている、三人共かなり参っているそうだ」
「そうか、カレンはどうしたのだ?」
「それなんだが、テンリが拐われた翌日にカレンもいなくなったそうだ」
「なに!?」
「部屋に書き置きがあり少し出掛けてくると書いてあったと報告を受けている」
「アイツは何か知っているのか?」
「わからん、聞きたくても本人がいないからな」
ロレンスとアガレスはどうしたものかと考える。すると扉が開いた。
「もう集まっておったか、すまんな少し遅れたようだ」
入って来たのは魔王ことクロナとその弟であり時期魔王になるクルウィルだ。
「遅れてなどおらんよ、それにしても魔人族は二人だけなのか?」
「何か問題か?」
「いや」
「そうか」
これで三ヵ国の王達が揃った。
「皆様お揃いになりましたから会議を始めようと思います」
いきなり声が聞こえそちらに目を向けると教皇であるステーラが椅子に座り微笑んでいた、その突然現れた存在にクロナ以外の全員が驚いた顔をする、そんなことを気にするでもなくステーラはクロナとクルウィルに椅子に座るように促す。
「さて、今回の黒竜が現れた事やテンリ様が連れていかれた件に関してなのですが、それぞれの国としての対応はどのような事になっているのか、そして今後どのようになるのかを話し合いをすると言うことでした、聖都側としましては中立という立場であることにかわりありませんので対応は変わりません」
いきなり現れたステーラは一方的に話し更にはこの場の主導権を握る、クロナはそんなステーラに対しやれやれと思いながらも話す。
「我がメルテツシナは政策に関して今までと同じように進めていきたいと思っておる、それと黒竜に対してはこちらでも捜しておるが情報はないな、わかり次第すぐ報せる、それとテンリの事だが、連れていかれたからと言って慌てるような事でもないだろう、そのうち普通に戻って来る」
クロナの言葉を聞きロレンスとアガレスは互いを見合い笑った。
「魔王殿はよほどテンリを信じておいでなのだな」
「当たり前だ、我の夫になるのだぞ、妻になる者としてこの程度の事態でいちいち慌てるようなことではない」
「ふふっ、そうか、ならばデイステンも政策に特に何かを変更するつもりもない、黒竜は情報が入り次第すぐ報せるつもりだ、テンリに関しては引き続き捜索するが何事もなく帰って来そうだな」
先程までどうなるか不安に思っていたがクロナの言葉を聞きどうにかなるように思えてきた、いや、何か起きてもどうとでもしてやるとロレンスはそう思い笑いながら話を終えた。
ロレンスの側近達は何も言わずそれに頷くだけである、予めそのまま話を進める方向で決まっていたからだ、勿論別の案も幾つか考えている訳ではある。
「まったく、お前たちは楽観視し過ぎじゃないか?」
アガレス渋い顔をしながらそう答えた。
「ならばジュマはどのような対応をするのだ?」
ロレンスはアガレスを見ながら聞く。
「そんなことは決まっている、俺の国もこれまで通りだ」
それを聞きロレンスは笑う。
「な、獣王様!」
アガレスの言葉に側近達は驚いた顔をする、その中で年老いた狐の獣人が代表で話を始める。
「獣王様、この友好同盟はテンリ=エレノールと言う人族が各国の王族と結ばれるからなんとか体裁が保てているのです、本来人族との同盟を反対する意見もかなりの数おります、もしその者がいなくなれば」
「わかっておる、しかしあの小僧は戻って来るぞ」
「なぜ、そう思われるのですか?」
「俺の勘だ」
「そんな理由で、はぁ」
アガレスの側近達はいろいろ諦めた顔をしたり額を押さえたりする。
「まったく、今は一国の王なのだから勘だの気分だので動くのを辞めて頂きたいですな、毎度フォローするこちらの身にもなって頂きたい」
「なに、優秀なお前達の事だ、文句を言いながらもどうにかしてくれるのだろう?」
「どうにかしてくれるのだろう?じゃないですよ、まったく、また仕事を増やして」
アガレスの側近達は文句を言いつつもそれに同意した。
そのやり取りを聞きロレンスは苦笑いをしていた。
無事に会議が終わった後ロレンスとクルウィルはアガレスの側近達に近づいていった、側近達は少し警戒していたがロレンスとクルウィルの話を聞くなり固く手を取り合っていた。
何故ならロレンスもまた修行時代にアガレスに振り回されていたから彼等の気持ちが理解でき、クルウィルは姉の自由な行いに苦労していたからだ、彼等は種族は違えど同じ境遇を生きる同志なのだとこの友好同盟を成功させようと力強く手を取り合ったのだった。
そしてそれを面白くなさそうにクロナとアガレスは見ていた。
緊急で会議をしたのだが結果としては何も変わらず現状維持のままで収まった、むしろ良い方に向かっていたのだった。
2日連続で投稿させてもらいました。




