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第33話 おやつで頭が一杯になりました。

「そんなことよりとりあえず座ったらどうだ?」


 ロレンスの言葉で俺とアルナは席に着く、それと同じくして料理も運ばれてきた。


「それにしても久しぶりね、貴女が洗礼の義で聖女に選ばれてからは会う機会が殆どなかったから、元気そうで良かったわ」


 イリクルシアは笑顔で話す。


「テンリ、説明をお願いするわ」


 アルナは少し驚きながらも俺に説明を求めた。


「ロレンス様にはアルナと王都を見て回りたいと言った時に最後は一緒に食事をしようと言われたので、イリクルシア様は昨日屋敷に帰った時には既にここでタリア母様とお話していました、アルナのお母様なのを知ったのでお誘いしました」

「お父様はわかりますがまさかお母様がいらっしゃるとは」


 イリクルシア=デイステン、アルナの母親でありロレンスの妻である、このデイステン王国の王妃様なのだが王都に居ることが滅多にないらしく護衛を連れて各地の教会や孤児院を回って支援しているそうだ。


「それにしてもアルナがいつの間にか婚約をしていたなんて、まったく知らなかったわ。昨日タリアに聞いて驚きました」

「私はお母様がこの場にいる方が驚きなのですが」

「そうなの?」

「はい、王都に住んでいる時も余りお会いになりませんでしたから」

「・・・寂しい思いをさせてしまいましたね」

「いえ、民のために頑張るお母様は私の誇りです」

「アルナ」


 イリクルシアは感動してハンカチで目元を拭った。


「ただ」

「ただ?」

「毎日手紙を出すのは止めて頂きたいんですが」

「ど、どうしてですか!?」

「私も忙しいのでなかなか読む時間がとれませんしお母様はいつも同じ所にいるわけではありませんから返信の催促をされても困ります」

「そ、そんな」

「お手紙のお返事は王都に出しているので手紙を受け取るならば一度王都で受け取ってください、それと手紙を送るのは月に一度にしてください、私も聖女としてのお勤めがあるので忙しいのです」

「ロレンスどうしましょう、アルナが反抗期ですよ」


 アルナの言葉にイリクルシアは涙目になりロレンスを見る。


「その、だな、イリクルシアよ、私も手紙はもう少し間を開けて貰えると助かるのだが、他の子供達もどうにかしてほしいと嘆いていた」

「そ、そんな!毎日手紙を送っているだけなのに」

「そのだな、手紙が送られてくるのは嬉しいのだがな、毎日百枚程あるのが、皆が時間がなくて読めない時の方が多いのだ」

「そんな、家族が寂しくないようにと思って送っていたのに」


 アルナは小さく溜め息を吐く。


「お母様、寂しくないようにと思うのならもう少し王都にいる時間を増やしたらいいのではないですか?それに今後は獣王国と魔王国の方々との話し合いも多くなります、その時に王妃であるお母様がいつもいないと印象が悪くなるかもしれませんよ」

「そうね、そうします」


 イリクルシアは力強く頷いた。


 その後は食事を楽しみながら話しをして迎えに来たミルと共にロレンスとイリクルシアは王都に帰り俺はアルナを聖都に送った。


 それから三ヶ月程たちその間にデイステン王国、ジュマ獣王国、メルテツシナ魔王国の話し合いが行われた。詳細は解らないがいい流れで話が纏まりつつあるとカロンに教えてもらった。


 そして俺は今何をしているかと言えば。


「あ、テ、テンリ助けて」


 教会が運営している孤児院に来ている、同年代の子供達と交流するのも良いことだとタリアに言われてここ最近頻繁に来るようになった。


「どうかしましたか?」


 またかと思いながらも助けを求めてきた少年、フォルクに顔をむけ訪ねた。


「あいつらがまた訳の解らない遊びをは」

「「「「見つけた!」」」」

「ひぃ」


 フォルクが言い終わる前に少女達の大きな声が聞こえその声に情けない声をあげる。


「待ちなさいフォルク」

「都合が悪くなるとテンリ君に泣きつくなんて」

「男の子の癖にすぐ逃げる」

「巻き込んでごめんねテンリ君、迷惑かけたフォルク君を後で教育しとくね」


 フォルクはアワアワしながら俺の後ろに隠れる、フォルクの方が背が高いので隠れきれてはいないが。


 リュリュネ、トロネ、フォン、ソーシャルの四人の少女はジリジリと間を詰めてくる、まるで獲物を刈る肉食獣のようだ、そしてこの光景が孤児院に通うようになって日常化しつつある光景だ。 


「皆さん落ち着いてください、そしてフォルク君はいちいち俺の後ろに逃げないでください」

「わ、悪い」


 俺の言葉でフォルクは隣にたった。


「それで、今日はおままごとじゃない遊びをするのではなかったですか?」


 俺は四人の少女達に質問をする、この少女達がするおままごとは普通のおままごととは少し違う、男が浮気をしてそれがバレたときの修羅場という設定が好きなのだそうだ、少女達の将来が不安である。


「今日はおままごとじゃないよ」

「そうだよ、この間ハーフィルお姉ちゃんに聞いた遊びだよ」

「そうそう、それにフォルク君のためなんだから」

「フォルク君をしっかりした大人に育てるには良いことだと思います」

「一体どんな遊びですか?」

「「「「お姑ごっこ」」」」


 少女達は口を揃えてそう言った。


 俺はあのシスターの話でまた変な影響を受けたのかと溜め息を吐いた。


 ハーフィル、この孤児院を運営しているシスターの一人でとても優しく良い人だ、読書が好きでよく子供達に話している、本の内容を聞かせるのは良いことだと思うし子供達も楽しそうに話を聞いている、おとぎ話や伝説、神話など誰もが楽しめる話しだ、しかしたまに少女達だけを集めて物語を話すときがある、その内容が修羅場や束縛、嫉妬にいびりさらには百合系やBL系と子供の教育上余りよろしくない話までするのだ、しかし少女達はそれを食い入るように真剣に聞いている、俺は少し前にハーフィルに教育上よろしくないのではと言った所それを聞いた少女達に猛反発を食らってしまった、それ以来その話しに口を出すのは辞めたのだ、少女達の将来が不安である。


「いいですか、フォルク君は嫌がっているじゃないですか、相手が嫌がっていることをしてはダメだといつも言われているでしょ」

「そこは大丈夫、フォルクは口では嫌がってても本気で嫌がってる訳じゃないから」

「嫌よ嫌よも好きのうちって言うし」

「そうそう、フォルク君はドMなんだよ」

「むしろご褒美?」


 俺はフォルクの顔を見るが首をふるふると横に振る、目が涙目だ。


 俺はもう一度溜め息を吐いた。


「そんなことより皆さんそろそろおやつの時間では、今日のおやつはアップルパイを持って来ましたよ」


 俺は説得を諦めあからさまに話を剃らすことにした。


「「「「「アップルパイ!」」」」」


 どうやらおやつで頭が一杯になったようだ、追い詰められ泣きそうになっていたフォルクもすでに笑顔である。


 まったく、この子達は、チョロいな。


「そうです、準備が遅くなるとその分食べる時間が遅くなってしまいますね」

「皆に教えてあげないと」

「急いで準備しなくちゃ」

「お皿とフォーク」

「その前にテーブルの準備しないと」

「食べる前に手洗いもしないとな」


 五人は顔を見合せ頷くとおやつを食べるために協力して準備をしだした、とても単純で年相応と言ったところか。


 あっという間準備を終わらせた子供達がテーブルに付く、皆おやつに大興奮だ。


 俺はアップルパイを切り分けてお皿に載せ子供達に配って行く、皆に行き渡ったのを確認しているとまだかまだか皆がとこちら見ているので笑ってしまう。


「それでは皆さん手を合わせてください、頂きます」

「「「「「頂きます!」」」」」


 頂きます、この言葉を合図に皆が一斉におやつに食らいつく。


 とても美味しそうに食べる子供達に自然と笑顔になる。


「いつもありがとうございます」


 隣に座るハーフィルは俺に頭を下げる。


「たいした事はしていませんよ」

「そんな事はありません、本来ならこの子達におやつなど食べさせてあげる余裕はありませんから」


 やはり孤児院を運営するのは大変なんだなと苦笑いをする。


 おやつを食べ終わり子供達はその余韻に浸っている、俺は満足そうな子供達を見た後に屋敷に戻ると伝え孤児院を後にした、俺が帰るときは皆が見送ってくれた。


 屋敷に着いた頃に天気が崩れ雲が太陽を隠していた。


「ほほっ、テンリ様お帰りなさいませ」

「セバス、ただいま戻りました、雨が降りそうですね」

「ほほっ、そうですな、降られる前に帰って来れて良かったですね」

「そうですね、ッ」


 屋敷に帰り中庭でセバスと話をし二人で今にも雨が降りそうな空を眺めていると急に背筋が凍る感覚に襲われた。


 俺は身構えながらセバスに視線を向ける、セバスは怖い顔をしながら空を睨み付ける。


「何か来ます!」


 セバスはいつもの柔らかな声とは違い緊張が入り交じる声を張り上げた。


 そして空から巨大な一匹の黒い竜が表れた。

 文章が抜けていたので修正しました。

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