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第32話 会談は無事に終了しました。

「戻って来ましたね」

「話はもうよいのか?」


 アルナとクロナは戻って来た俺を見て話しかける。


「はい」

「そうか、クルウィルに何かされなかったか?」

「大丈夫ですよ、ただ話しをしていただけなので」

「本当か?何の話をしていたのだ?」

「今後仲良くしましょうねって話しです」

「そうか、ならよい」


 クロナは頷く。


「ところでテンリよ、今後の事をロレンス王と話していたのだが近いうちにアガレス獣王と話をしようと思っておる、場所は機密性と安全面を考えこの聖都で行う予定だ」

「俺とクロナとの婚約の許可をもらうためですか?」

「そうだ、ただそれだけではない、我が国は今まであまり他国に干渉してこなかったが我とテンリが婚姻を結んだからな、今後国の中だけでなく外にも目を向けるようにしていこうと思っているのだ」

「なるほど」

「本来ならもっと早くにそうすべきだったのだが我が国では他の大陸より魔物の脅威が大きい、それに今は治まっているが魔人族至上主義者達がおってな少し前まで他国に侵略しようとしておる者達がいた、今は国を追われて身を潜めておるがな」

「それって話していいことなんですか?」

「隠していても良いことはない、それに奴等が大人しくしているうちにいろいろやっておかなくてはいざ奴等が行動を起こした時に対応が出来なくなるといけないからな」

「そうですか」

「ああ、その事をロレンス王にも話したがなかなか協力的でな、正直助かる今後デイステン王国とは良い関係が築けそうだ。もっとも頑張るのはクルウィルになる訳だがな」


 クロナは笑いながらクルウィルを見た。


 クルウィル、応援しかできないですが頑張ってください。


「それにロレンス王が話すにはアガレス獣王もいろいろと協力してくれるだろうと言っていた、実際話してみないとどうなるかわからんが何かあれば女神の神託を使ってどうとでもするつもりだがな」


 そうやってクロナはニヤリと笑った。


 なんとも悪い顔をしていることだ。


「それとテンリ、お主はゲートが使えるか?」

「いえ、使えませんけど」

「ならすぐに使えるようにしておけ、今後必要になるからな」

「すぐ使えるようにって言いますけどゲートって覚えるのに適正とかなりの才能それに時間が必要なんですよね?」

「適正と才能は何の問題もない、技能に全魔法習得可と載っておるだろうに」

「そう言えばそうでしたね」

「それにゲートなんぞ簡単に言えばイメージだ、行った事がある場所を思い浮かべればできる、テンリには詠唱の必要もない」

「そうなんですか?」

「試しに自分の部屋でも思い浮かべてやってみたらどうだ?」

「そうですね」


 俺は自分の部屋をイメージする。


「ゲート」


 すると目の前の空間が歪み自分の部屋が現れた。


「ホントにできた!」

「うむ、魔力も安定しておる、成功だな」

「この世界に来て初めて魔法を使いました」

「なんだ、今まで試してなかったのか?」

「はい、今まで本はそれなりに読んでいたけど修行では武器や身体の動かしかたの技術ばかりやっていました」

「なら次からは魔法の練習も一緒にするようにすればよいな」

「そうします」


 ふと視線に気付き周りを見ると驚いた顔や呆れた顔をしている。


 カロンは俺に近づき肩をグッと掴む。


「テンリいつの間にゲートを使えるようになったんだ?」

「今?」

「何故疑問系なんだ」


 カロンは頭を押さえた。


「とりあえず、ゲートが使えるようになりました」

「うん、そうだな」


 カロンは溜め息を吐く。


「テンリ、魔法を使うなとは言わないが使うのなら出来るだけ人目を避けて使ってくれ」

「何故ですか?」

「お前は異常過ぎるからだ」

「異常って、普通ですよ」

「普通な訳がないだろう、安心しろ、私が保証する」

「酷い!」


 アルナとクロナに助けを求めたが苦笑いされた、クロナがすぐに使えるようにしておけって言ったのに。


 そんな事がありながらも無事にデイステン王国とメルテツシナ魔王国の会談は無事終了した。


 その翌日。


「アルナおはようございます、今からデートをしましょう」

「!いきなりね」


 俺はアルナの部屋を訪れていた。


 昨日の会談が終わった後に皆がゲートで自国に帰宅したわけだがその時にステーラがアルナが今日丸一日お休みなのを教えてくれた。


「嫌ですか?」

「嫌なわけないじゃない、もちろん行くわ」


 アルナの準備が終わりゲートを開く。


「それでどこにいくの?」

「アルナの里帰りも兼ねてデイステン王国の王都に行こうかと、聖女になってから戻った事がないと聞きましたから」

「そう、わかったわ」


 アルナは笑顔で頷いた。


 俺は手を差しのべる。


「ではいきましょうか」


 アルナは少しだけ恥ずかしそうにその手を握る。


「はい」


 そうしてゲートを潜った。


 ゲートを潜った先は王都にあるエレノール家の屋敷だ、勿論事前に話を通してある。


 本来は聖女であるアルナを聖都から連れ出すことはいろいろな手続きをしないと許されることではないがそこはステーラがあっさりと許可をしてくれた、お願いした身としてはとてもありがたいがそんなんで大丈夫なのだろうか?


 王都をアルナと見て回りたいとロレンスに言えばこれまたあっさり許可をくれた、ただお忍びでバレないようにと制限はあるが。


 そして王都の屋敷の人達には昨日の夜にゲートで遊びに来ると伝えてある、ただ婚約者であるアルナの事を知っているのは執事長とメイド長だけである、なので屋敷の人達のほとんどは俺が友達と遊びに来たくらいの認識だろう。


 屋敷の者に軽く挨拶をして外に用意して貰った馬車に乗る。


「そうそう、アルナこれを着けてください」

「これは?」

「認識阻害用のブレスレットです、万が一正体がバレないようにステーラ様から手渡されました」

「わかったわ」


 アルナはブレスレットを受け取り腕に着けた。


「ではお願いします」


 御者の人は頷くと馬車は動き出した。


「それにしてもさすが王都ですね、人がとても多い」


 屋敷を出て店が多く並ぶ大通りに着き俺とアルナは馬車を降りる、そこは多くの人達が歩き賑わいを見せていた。


「まぁ国の首都だから当然ね」

「はぐれないように気をつけないと行けませんね」


 俺はアルナに手を差し出しアルナは笑顔で俺の手を取る。


「では行きましょうか」

「そうね」


 アルナの手をしっかりっと握り二人で歩き出した。


 特に目的があるわけじゃないのでぶらぶらと見て回る、屋台で歩きながら食べれるようなものを買い露店を覗く、その他にも本屋に装飾品店、服屋を見る。


「王都に住んでた時はお城から眺めていたけど歩いて見て回る事はなかったから新鮮な気分ね」

「楽しんで貰えてるようで何よりです」

「ありがと」


 とてもいい笑顔でお礼を言われ少し気恥ずかしくなってしまった。


「けっこう歩きましたが疲れていませんか?」

「そうね、少し休みたいかも」

「ならあそこのお店に入りましょう、ケーキが美味しくて有名なんだそうですよ」

「ふふっ、貴方は相変わらず甘い物が好きなのね」

「そうなんですか?」

「ええ、昔の貴方もお菓子を食べるときが一番楽しそうだったのよ」


 俺がこの世界、いや前世よりももっと前の世界の話し、アルナと共に過ごしていた世界の話し、その世界の俺もどうやら甘い物が好きだったようだ、自分の知らない自分を知っている、何だか少し気恥ずかしい。


「さっ、行きましょ」


 アルナは俺の手を引いてお店の中に入って行く。


「いらっしゃいませ、お好きなお席にどうぞ」


 お店に入ると定員の元気な声が聞こえる。


 俺達はテラス席に据わりメニューを開く。


「シフォンケーキにガトーショコラ、レアチーズケーキ、あ、季節限定フルーツタルトも捨てがたい、いっそ全部頼もうかな」

「はぁ、私のを半分交換してあげるから二つ選びなさい」

「ほんとですか」

「ええ」

「苦手な物とかありますか?」

「特にないわ、だから好きな物を選んでいいわ」

「ありがとうございます、アルナ大好きです!」


 アルナは微笑みながら俺が選ぶのを見ている。


「このシフォンケーキと季節限定フルーツタルトにしようと思いますいいですか?」

「ええ、いいわよ」

「すいませーん」


 俺はアルナの同意を得てからすぐに定員を呼ぶ。


「アイスティーを二つ、後はシフォンケーキと季節限定フルーツタルトを一つづつ」

「アイスティーをお二つとシフォンケーキ、季節限定フルーツタルトをお一つづつですね」

「はい、二つともホールでお願いします」

「え?」

「かしこまりました」


 定員が頭を下げて去って行く。


「テンリ、普通は一切れづつよ」

「え?」


 アルナの言葉に俺は驚いた顔をする。


「それにそんなに食べれるの?」

「大丈夫です、甘い物は別腹といいますし」

「・・・私はそんなに食べれないわ」


 俺は真剣な表情で顎に手を当てる。


「なら半分は持帰りにしましょう、幸いアイテムボックスやマジックバックがあるのでかさばりませんし」


 そんな俺を見て半分はこの場で食べるのかとアルナは苦笑いをした。


 ケーキとお茶を美味しくいただき店を出る、アルナは結局ケーキを一切れ分食べただけだ、俺は勿論半ホール分は食べた。


「それにしても広いですね、けっこう歩きましたが何日かかけないと見て回りきれませんね」

「そうね、でもとても楽しいわ」


 日が落ちていき空が茜色に染まるまで二人でいろいろな所を見て回った。


「暗くなって来ましたね」

「そうね」

「では一旦屋敷に帰りましょうか」

「そうね」


 行きは馬車で来たが帰りは徒歩で帰ると伝えてある。俺とアルナは帰り道も楽しみながら屋敷に戻った。


「さて、そろそろいい時間ですね」

「そうね、今日はありがと、とても楽しかったわ」

「俺もですよ、さて移動しましょうか」


 俺とアルナは一度執事長に挨拶をし朝ゲートを開いた部屋に入った。


「ゲート」


 俺は手を前にかざしそう呟いた、人が通れるほどの空間が歪む。


「行きましょうか」


 俺は今日何度目かわからないアルナの手を取り開いたゲートの中に入って行く。


「あれ?ここは私の部屋じゃないわ」


 ゲートを潜った先は見慣れぬ部屋だったようでアルナは少し困惑している。


「ここは俺の部屋ですよ」

「え?」

「どうしたんですか?」

「私はてっきり聖都の私の部屋に行くものとばかり」

「そうなんですか?帰りたかったですか?」

「そうじゃないけど」

「なら良かった、今日の最後に夕食を一緒に食べようかと」

「そうなんだ」

「あれ?言ってなかったですか」

「聞いてないわ」

「じゃあ今言いました」

「はぁ、まったく」


 アルナは溜め息をつきながらも笑っていた。


「ではご案内しますね」

「ええ」


 俺はアルナの手を引きながら食堂に向かった。


「待っておったぞ二人共」

「お父様!」

「あら随分遅かったわね」

「お母様まで!」


 食堂に入るとロレンス陛下とその妻でありアルナの母親でもあるイリクルシア=デイステン王妃が声をかけてきた、それと同じくカロンとカレン、そしてタリアの三人もこちらを向く。


「お二人とも一体何をしているのですか!?」

「何をしてるかで言えばお喋り?」


 アルナの質問にイリクルシアそう答えた。


「いえ、そう言う事ではなくてですね、どうしてここに?」

「わかっているわ、私達が何故ここにいるか、でしょ?」

「そうです」


 アルナは本当にびっくりした顔をしている。


「そんな事は決まっておるではないか」

「ここにいるならばする事は限られてるわ」


 アルナは真面目な顔でその答えを待つ


「「食事」」


 ロレンスとイリクルシアはハモりながらそう答えた。

 もう6月です、1日がとても早く感じます。


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