第30話 友好同盟が締結されました。
誤字報告などありがとうございます。
「ここで一度休憩を挟みたいと思います」
ステーラの言葉に皆が同意して一端この場を離れ最初に待機していた部屋に移動した。
「テンリ、大丈夫か」
カロンは心配そうに話しかける。
「大丈夫です」
俺は遠い目をしながらそれに答える。
「とても大丈夫そうには見えないわね」
カレンは可哀想な者を見る目でそう呟く。
「アルナやリアナに続いて魔王まで婚約者にするとは、しかも神命とあれば拒否権はない、テンリには悪いがこれは我々にとってとても有益な話だ」
ロレンスは申し訳なさそうにしながらも今後の国の利益になりそうな話に期待をした顔をする。
「ほほっ、ただ魔王様がテンリ様の婚約者になった事でエレノール家がいろいろな所から目をつけられるのは間違いないですね、一貴族に力が集中し過ぎる訳ですから」
セバスは今後エレノール家に寄生しようとする輩が増えるのをどう押さえるか頭を悩ませる。
「エレノール家ってすでにいろいろなところから目をつけられてなかったっすか?」
ミルは今さらではと苦笑いだ。
「目をつけようが手を出す愚か者は我が国にはいないだろう、そんな輩は既にこの世を去っているからな、ただ他国はわからんが」
少し顔を青くさせてセルベールは話す。これは実体験に基づくことなんだろうな。ただ他国の話が出たのは何かのフラグなのか、いや気にしたら負けだ、聞かなかった事にしよう。
30分ほど休憩をした後また会談をしていた部屋に戻った。
「では再開したいと思います」
ステーラの一言で話が再開した。
俺は心ここにあらずの状態でただひたすらに現実逃避をしていた。
「ーですので」
「ーそれは了承しよう」
「ーそれに関しては」
「ーそれを踏まえての」
「ーでは以上で終了させていただきます」
気づけばロレンスと魔王が握手を交わしていた。正直話の内容はまったく聞いていない、俺は完全に上の空だ、途中何か話を振られた気がするが全てを受け入れなければいけないのでとりあえず頷いていたと思う。
「では皆様もう少ししたら食事の準備が整いますのでそれまではこの部屋か最初に案内した部屋、もしくは隣の休憩室でお過ごしください」
最後にそう言ってステーラは部屋を出ていった。
「皆様、少しの間私と魔王様、テンリ様とでお話ししたいと思いますので席を外させていただいます」
アルナは皆にそう言って俺の手を取り素早く部屋を出る、そのまま三人で使われていない部屋に入った。
「おーい、テンリ、大丈夫?」
「大丈夫ですよ、あの空のように晴れ渡っています」
「空のようにって、ここ窓ないんだけど」
「大丈夫です、俺には見えます、あの晴れ渡った空が、ふふっ」
「テンリが壊れた!」
俺が現実逃避をしているとバチーンと両頬に衝撃が走った、両手で頬を捕まれたまま魔王がグイッっと顔を近づける。
「しっかりせぬかバカ者め!」
俺はハッとなり現実に引き戻された。
「ここは?・・・あれ会談は?」
「まったく、やっと正気に戻ったか」
「えっと、魔王様ですか?」
「そうじゃ」
「なぜ魔王様と二人でここに?」
「おーい、私を忘れてるんだけど」
「アルナ!えっと状況が呑み込めてないんだけど?」
俺を見ながらアルナと魔王が溜め息を吐いた。
「デイステンとメルテツシナは無事に友好国として同盟を結びました」
「それは良かった」
俺はホッと息を吐く。
「まぁ神託で婚姻が決まったので当然だね、互いに利益があるし」
「むしろあの状況で同盟を結ばない奴はただのアホじゃな」
この世界でのアトレイアの言葉の力は絶大だな。
「それで何で三人で部屋にいるの?」
「改めて我の自己紹介のためじゃ!」
「自己紹介ですか?」
「そうじゃ」
「えっと、俺は」
「お主の紹介は必要ない、わかっておるからな」
「そうなんですか?」
「うむ、では改めて、我はメルテツシナ魔王国の魔王じゃ」
「・・・えっ、それだけ?」
「ダメか?」
「いや、えーと、そう、魔王様の名前は?」
「我の名か、我が名はクロナ、クロナ=メルテツシナじゃ」
「・・・クロナ、様?」
「様はいらぬ、クロナでよい、何せ我はお前に嫁ぐのだからの」
「えっと、クロナ」
「うむ、それにしてもテンリ、お主は我に神眼を使わないのかの?」
「神眼ですか?」
「そうじゃ、初見の相手に神眼を使うのは当たり前じゃろうに」
「そうなんですか?」
「そうじゃぞ、それに使わないと成長しないだろう、試しに我を見てみろ」
「わかりました」
俺はクロナに言われるがまま神眼を発動させた。
名前:クロナ=メルテツシナ
年齢:?
性別:女
種族:魔人族 神族
称号:魔王 六天魔刻序列一位 冒険者SSSランク 神の一欠片
HP:?
MP:?
攻撃:?
防御:?
魔力:?
敏速:?
幸運:?
技能:言語理解 アイテムボックス 神眼 全魔法習得可 全技能習得可 状態異常無効 リンク
PS:新たな嫁をゲット。
「ステータスの数値だけ見えないようにしたがどうかの?」
「数値はわかりませんでしたそれと年齢も」
「女性に年齢を聞くのはダメじゃろう」
「そうですね」
「とにかく今は数値が見えないようにしてあるが神眼を使い続ければそのうち隠していても見抜く事が出来るようになる、戦闘をするのにも有利になる、なので率先して使った方がよいぞ」
「わかりました」
今まであまり戦闘になるような事が起きなかったので使っていなかったがこれからは小まめに使おう、決して忘れていたわけではない、そう、忘れていたわけではない、大事なことなので二回言った。
「リアナやアルナでわかっているだろうが我のこの姿はお主と出会った4番目の姿だ、ステータスの称号に神の一欠片があるのが証拠じゃな、この称号がある相手は全てお主と婚約する事になる」
なるほど、ステータスを見ることで今後の婚約する相手がわかるようになるのか、以前アルナとの話のさいにまだいそうな感じだったがクロナの話でまだいることが確定したな。
「その、一体何人と婚約をする予定なんですか?」
「それを言ったら面白くないから秘密じゃ」
「そうですか」
俺は溜め息を吐く、結婚する事事態が俺の中では大事なのに相手は一人じゃなく複数人、いろいろ今後に不安が募る、しかし今考えても答えはでない事だし、全部未来の自分に丸投げして任せよう、頑張れ未来の俺。
それはさておき。
「ところでクロナ、コクロウを俺に渡したのは君だよね」
サッとクロナは素早く目を反らした、何て分かりやすい反応だろう。
「コクロウを手にいれた経緯を話したときにコクロウを譲ってくれた相手の話をしたよね、その名前はクロナ、その名前を出した時噴きましたよね、それに声も聞き覚えがありましたし」
「な、何の事か」
「クルウィル様も反応してましたよ」
「・・・あのバカ者」
「何でコクロウを俺に渡したんですか?」
「・・・はぁ、テンリ、お主にコクロウを渡したのはお主を守るためじゃ」
「守るですか?」
「そうじゃ、お主は一般的には強い部類には入るがそれは人の枠でじゃ、それに強いとは言っても年齢のわりにそこそこ強い程度、それに引き換えこの世界には人の身ではどうする事も出来ぬ相手が多い」
「魔物ですか?」
「魔物もそうじゃな」
「その言い方からすると魔物以外でもいるんですか?」
「おる、だが今は魔物以外は関係ないからそこまで気にすることはない」
気になるけど今は取り敢えず頭の片隅に置いておくか。
「取り敢えずじゃ、テンリ、お主はまだ弱い、だから今後鍛えていくから覚悟することじゃ」
「鍛えるってクロナが?」
「そうしたいのは山々なんだが我はテンリに嫁ぐから弟に王位を引き継ぐので今後忙しくなる、その代わりテンリを鍛えるのに打ってつけの人物がおる」
「今セバスに鍛えて貰ってはいるんですが」
「あ奴ではダメじゃな、時間が掛かりすぎる」
「そうなんですか?」
「うむ、だが今後お主を鍛える者は数年でかなりの実力をつけてくれるだろう」
「どんな人なんですか?」
「それは会ってからのお楽しみじゃな」
後のお楽しみか、一体どんな人なんだろう。
「それにしても本来はこんな大事になる予定ではなかったんじゃがな」
「・・・え!、そうなんですか?」
「そもそもコクロウをテンリに渡したのは我だ、我が何も言わなければ何も問題は起きないはずだったんだが、セバスの小僧め、余計な事をしおって、まさか昔一度だけ見たコクロウをまだ覚えておったとは、お陰で予定が狂ってしまった」
なんだろうか、良かれと思って動いたのに自分の首を締める感じだな、それにセバスを小僧呼ばわり、魔人族は人族よりも長命らしいが一体クロナって何歳なのだろうか?
「そろそろ戻りましょうか、食事の準備が終わる頃です」
アルナの言葉でこの場での話を切り上げ会談をしていた部屋に戻る、するとステーラが食事の準備が出来たと呼びに来てさらにそこから別の部屋に移動する。
移動した部屋には各テーブルにいろいろな料理が置かれている、どうやら立食形式のようだ。ただちゃんと座れるように椅子も用意されている。
給仕係が飲み物を渡してくれる。
「それでは皆様この度は無事デイステン王国とメルテツシナ魔王国の友好同盟が締結されました、それを祝いささやかですがお食事を用意させて頂きました」
ステーラはささやかと言ったがまったくそんなことはない、この場にいる十数人に対してかなりの種類と量が用意されている。
「それでは二国の繁栄を願いまして、カンパーイ!」
「「「「「「カンパイ!」」」」」」
食事が始まり料理を取りに向かう、いろいろな種類の料理があるなかで一番目を引いたのは米だった、俺はすかさずそれを皿に乗せる。
米の皿の隣にはタレがかかった蒸した鶏肉が置いてありそれをよそった米の上に乗せる、鶏肉を一口食べそのまま米を口に運ぶ、これがめちゃくちゃ旨い、鶏肉はジンジャーソースに絡めてあり米は鶏肉の出汁で炊いてある、これはハイナンジーファンと呼ばれる料理にそっくり、いやそのままだ。
「まったく、我らよりも料理に夢中とは」
「何とも悲しいですね」
俺が米に感動しているとクロナとアルナが近いて来た。
「どうしてもこれが気になってしまって」
「まぁよい」
「それはお米ですね、エルリンド王国で主食とされている食べ物です」
エルリンド王国か、素晴らしい国だな。今まで米料理を見た事がなかったのでどうにか流通させたい。
「少年少し話がしたいのだがよろしいか?」
そう声を掛けられ俺はその相手を見る、そこにはクルウィルがおりその後ろにはゲルナとベルディナが興味深そうに俺を見ていた。
いつも読んでくださる皆様、新たに読んでくださる皆様、ありがとうございます。
今後も頑張って書いて行きます。




