第29話 可哀想な目を向けられました。
俺は子供達と遊んで満足したタリアと屋敷に戻った。
屋敷に戻るとすぐにメイドからカロンが呼んでいると聞き部屋に向かう。
「父様、テンリです」
「入ってくれ」
「失礼します」
「さっそくだが日にちが決まった」
「会談のですか?」
「そうだ」
もう決まったのか、早いな。
「いつなのですか?」
「それなんだが、明日だ」
「はい?」
「明日の昼ごろに聖都で会談することになった」
「いやいや、ちょっと急すぎませんか」
「急すぎると俺も思う」
「そうですよね」
「しかし決まった事はどうしようもない、明日朝食を取ったらすぐに王都に向かう、そこで簡単に打ち合わせをしてから聖都にすぐ移動する」
「わかりました、それにしてもどうしてこんなに急なんでしょうか?」
「わからん、本来ならありえんことだ。夕食を食べたら今日は早めに休んでおけ、明日は忙しいぞ」
「はい」
その後は食事を食べすぐに眠りについた。
翌日はとても慌ただしかった、朝起きて準備をしすぐに朝食を食べ王都にゲートで向かう。
ゲートの先は部屋に繋がっていてすでにロレンスを始め今日会談に向かうメンバーと会談に向けて準備をしてくれていたであろう人達が揃っていた。
「お前達待っていたぞ」
「申し訳ありません、遅れてしまいましたか」
「いや、我々が早く集まりすぎた、何しろいろいろなことが前代未聞だ」
ロレンスは苦笑いをする。
「お久しぶりですな」
「セルベール侯爵、今日はよろしくお願いします」
「最善を尽くすつもりだ」
関係者の者達が挨拶ををする。
「皆さっそくで悪いが時間がない、話を始める」
ロレンスの言葉で挨拶もそこそこに魔王国との会談に向けて話が始まった、ある程度話が纏まり移動のため聖都に向かうメンバーがミルのゲートを潜っていく行く。
ゲートを潜った先は以前俺とリアナが洗礼の義を受けた時に親達が待っていた待合室だった、そしてそこにはアトレイア教団の最高責任者である教皇のステーラが待っていた。
「デイステン王国の皆様、お待ちしておりました」
「ステーラ様、この度我が国と魔王国の会談の場を提供していただき感謝する」
「全ては女神アトレイア様のお導きです、私達はそれにしたがったまでですわ」
ロレンスとステーラが挨拶を交わす。
「では時間になりましたら会談する部屋に案内をさせますのでそれまではこの部屋でお寛ぎください」
「感謝する」
「忘れるところでした、アルナは今休憩中で自室におりますよ、テンリ様にとても会いたがっていました」
俺を見ながらステーラは微笑み教えてくれた。
「会談までまだ時間がある、アルナの所に顔を出して来てもいいぞ」
「むしろ今のは会いに行けってフリっすよね」
「なかなか会えないんだから行って来なさい」
「ほほっ、手ぶらでは駄目ですね、こちらの花束をお持ちください」
ロレンスを始めミル、カレン、セバスは会いに行くように促す、ってかなぜ花束が手元にあるんだ!?
「まったく、緊張感がないな」
カロンは遠い目をしながら呟く。
「陛下がアルナ様にお会いになるのではないのですか?」
「私も会いたいが仕方がない、ドルイットよ、わかるな」
「なるほど、お二人はそのような関係に」
「これは内密に頼むぞ」
「承知いたしました」
状況を理解したセルベールは力強く頷いた。
「では少し会いに行ってきます」
「アルナの自室は関係者でも入れない特別なところにあるから私が案内しますね」
俺は苦笑いを浮かべ皆からの生暖かい眼差しに見送られながら部屋を出る、そしてステーラにアルナのいる部屋まで案内してもらった。
「会談の時間になったら呼びに来るので、それでまでごゆっくり」
ステーラはそう言って来た道を戻って行った。
俺は扉をノックして返事をまつ。
「テンリ待っていたわ」
そう言って扉が勢いよく開かれた。
「アルナお久しぶりです」
「ホントよ、私がどれだけ会いたかったか」
「あはは、あ、これを」
俺はセバスから受け取った花束を手渡す。
「ん、ありがと、さっ、中に入って」
アルナに手を引かれ部屋の中に入った。
「さっそくで悪いけど今日の会談の話をするわ」
「ホントいきなりですね」
「時間があまりないからね、とは言え解決方法は簡単だけど」
「そうなんですか?」
「そうよ、テンリはただ全部受け入れれば良いだけだからね」
「受け入れるって、その内容は?」
「会談の時に話すわ」
「アルナも会談に参加するの?」
「そうよ、それとステーラ様も同席するわ、後一人同席する人がいるけど」
「いるけど?」
「会ってからのお楽しみね」
「わかりました」
「うん、もう一度言うけどテンリに出された条件は全て受け入れなきゃダメよ」
「もし受け入れなかったらどうなるんですか?」
「確実に戦争になるわ」
「わ、わかりました」
「ちゃんとテンリが受け入れれば戦争も回避できて全て上手くいくから安心して」
「安心出来ないんですけど」
この後は会談に呼ばれるまで聖都から別れた後の話をした。
程よく時間がたったころドアをノックする音が聞こえたのでアルナはドアを開ける。
「お喋りは楽しめましたか?」
「はい、ステーラ様、いろいろと御配慮いただきありがとうございます」
「では参りましょうか」
俺とアルナはステーラに案内され会談をする部屋まで行く。
「ここが会談場所となります」
俺達は部屋に入る。
「きたかテンリ」
「父様、魔王国の方達はまだ来ていないのですね」
「もうじき着くだろう」
俺が座ったすぐ後に扉が開き六名の人物が入って来た。
「なっ!」
入って来た人物達を見てアルナ、ステーラ以外が驚いた顔をする。
「まさか六天魔刻が勢揃いとは」
「さすがに予想外だわ」
カロンの呟きにカレンは頷く。カレンが驚く顔を見るなんてほとんどないがそのお陰で相手がとんでもない人物達なのがわかった。
「遅れてすまないな」
そう言ったのは一番前にいる小柄な少女だった、肌は軽く日に焼けて髪は銀髪、目は赤く幼い顔立ちをしているがとても大人びている。それとどこかで聞いた事がある声なような?
「思ったより聖天の称号を持つものが少ないな」
少女の隣にいる青年がこちらをみてそう呟いた、少女と同じく日に焼けた肌、こちらも銀髪で目が赤いが物凄くイケメンだ、少女に似ているが兄妹なのだろうか?
「フォフォ、これは懐かしい顔がおるな、もう引退したかと思ったがいまだに現役なのかなセバスよ」
「ほほっ、現役などとうに終えておりますともゲルナ殿」
ゲルナと呼ばれたのは肌が紫色の肌をして金色の髪をオールバックにした老人だ、老人と言っても背筋が伸びており執事服を着ている、セバスと同類なのか?
「ふん、わざわざ六天魔刻の全員が来る必要があったのか?」
不満そうに呟いたのは背の高い肌の色が焦げ茶色に染まった我が儘ボディを持つ女性だ、髪は赤く目は片方眼帯を着けている。一瞬見とれたがアルナと魔族側の少女に睨まれ直ぐに目を反らした。
「まぁまぁベルディナ様、そういわないで、普段好きなようにさせてくださる魔王様が珍しく強制したのですから」
真っ赤で筋肉質な身体、紫の髪、さらには頭に二本の角が生えた恐ろしい顔をした男は恐ろしい笑顔を浮かべながら我が儘ボディの女性もといベルディナにそう言った。
「クスクス、新しいオモチャ、クスクス」
最後に肌は青白く髪は黒、気味の悪いマスクにより顔が覆われているが声から女だとわかる女性が訳のわからない事を言いながら人形をなでまわしてる。
カロンは小声で俺に魔族側の説明をしてくれる。
「あの見た目少女が現代の魔王であり六天魔刻の序列一位だ、そしてその隣の青年は魔王の弟でクルウィル、序列二位になる」
俺はビックリした、少女が姉で青年が弟なのか。
「あの執事の老人はゲルナ序列三位、背の高い女性はベルディナ序列四位、二本角の男はゲオルクク序列五位、最後にあの人形を持った女性はヘベルネル序列六位だ」
椅子に座ったのは魔族の少女、魔王とイケメン青年のクルウィルの二人だけで後はその後ろに控えている。
「挨拶は今さら不要だろう」
ステーラは一度ロレンスを見てロレンスが頷きを返す。
「ではさっそく始めさせていただきます」
ステーラはそう言って話を始めた。
あれ?アルナの話ではもう一人同席する人物がいると言っていたけどいいのかな?
「では今回の会談の素である剣を出してください」
ロレンスは頷き俺に視線を向ける。
「テンリ、剣をここに」
「はい」
俺は言われるがままコクロウを取り出す。その瞬間魔王国側は驚いた顔をして俺を見た。
「確かに我が魔王国の国宝であるコクロウに間違いはない、しかしそれを手に取る事ができるとは」
クルウィルは魔王を見る、魔王は満足そうに頷く。
「少年、たしか名をテンリと言ったな、コクロウを手にいれた経緯を話してくれ」
俺はカロンの顔を一度みて頷かれてから姿勢をただしコクロウを手にいれた経緯を話した。
「以上がコクロウを手にいれた経緯になります」
「そうか」
「そういえばコクロウをくれた人物から名前を聞いたんですが、たしかクロナって名乗ってました」
「ぶふっ」
クロナと名を出した瞬間魔王から変な声が出た。
「そうですか」
クルウィルは魔王をチラリと横目に見て溜め息を吐いた。
「コクロウを手にいれた経緯はわかりました」
「信じて頂けるんですか」
「嘘をついても仕方がないですからね、それで今回の件に関してなのですが、コクロウ事態はそのままテンリ、君が持っていて構わない」
その言葉に俺達は驚いた顔をする。
「こちらにもいろいろと事情があるのだよ、ただそれは我が国の国宝であり他国に渡って貰っては困るものでもある、なので条件がある」
「その条件とは?」
「魔王である我が姉と、その、テンリ=エレノールの婚約を認めて貰う」
クルウィルは気まずそうに、とても言いにくそうに告げた。
俺達は今日何度めかの驚きをしたがこれには魔王国側も驚いた顔をしていた。
「・・・その、大変申し訳ないのだが、テンリには既に婚約者が二人おりその一人は今この場にいる聖女アルナ様でもう一人はジュマ獣王国の第三王女なのだが」
カロンの言葉に魔王国側の魔王姉弟以外が驚く。
「その事なのだが、聖女様よろしいか」
「はい」
アルナは立ち上がり頭を下げる。
「聖女をさせていただいているアルナと申します、神託の義でアトレイア様からお告げがありました」
ああ、このパターンは俺の意志が無いところで全て決まっている感じだな、やたらとアトレイアやアルナが受け入れろと言ってたから何となくそんな気はしていたんだけどさ。
「この婚約を妨げてはならないと、もし婚約を妨げれば戦争が起き世界は破滅に近づくのだと」
「なので認めて貰わなければ困る、と言うよりもお前達にも我々にも拒否権はない」
皆が俺に視線を集中させる。
「・・・全てを受け入れます」
アルナと魔王以外は可哀想な目を向けて俺を見る、お願いだからそんな目で俺を見ないで。
平成から令和になりましたが特に代わり映えのない日々です。
強いて言うなら風をひきました、皆さん体調には気を付けてください。




