第25話 リアナとアルナから手紙が届きました。
テンリがいなくなった後にアトレイアは後ろを振り返る。
「もう少しこの余韻に浸っていたいのだけど」
「あら気付いていたんですか?」
ノルンは笑顔で近付いてくる。
「気付くさ、私のこの幸せな気持ちを引き裂こうとする悪の気配に」
「あらあら、酷い言い方ですね、ですがお仕事をさぼるのはどうかと」
「ちょっとした休憩だよ、それにせっかくテンリが来てくれたんだそのくらいはいいでしょ」
ノルンは仕方がないと苦笑いをした。
「ですが意外ですね」
「何がだい?」
「貴女の事だから彼をもっと引き留めるかと」
「そんなことしないよ、私だってまだ自分の仕事が終わってないからね、それにまたすぐに来てくれるって言ってくれたからね、それまでにさっさと仕事を終わらせないと」
「なるほど」
アトレイアの言葉にノルンは納得した。
「それにしても貴女のその一途さと言えばいいのか執念と言えばいいのか、テンリ様も大変ですね」
「なにその言い方、酷いよ」
「事実を言っただけなのですが」
「まったく、自分は運命の相手がいないからって僻まないでほしいね」
その瞬間ノルンは物凄い殺気を放った。
「別に僻んでなんかいませんよ」
顔はとても笑顔なのだが押さえる気のない殺気で大気が震える。
「そうなのかい、てっきり相思相愛な私に嫉妬しているのかと思ったよ」
しかしアトレイアはそんなもの気にすることもなく笑顔で追い討ちをかけていく。
「ふふっ、ふふふっ」
「クックッ、クックック」
暗く黒く笑い合う二人の間で風が吹き荒れる。
「あ、あの、しゅしゅみませんが」
その二人の間に一人の女性が割って入る。
「「ん?」」
その声に気付いたアトレイアとノルンは殺気や圧力を霧散させ声の主である女性を見る。
「アルトリーゼ、いったいどうしたんだい?」
アトレイアの質問にアルトリーゼと呼ばれた女性は泣きながら紙の束をノルンに手渡した。
「うっぐ、ひっぐ、報告書が、ひっぐ、まとめ、お、終わったので、お持ちしました」
アルトリーゼがなぜ泣いているか、アトレイアとノルンの殺気を浴びたからである。彼女はアトレイアが作り出した天使であるのだが神であるアトレイアとアトレイアの母に作られたノルンの殺気を間接的にとはいえ浴びて平然としている事はできなかった、それでも根がとても真面目なので仕事をこなすために二人の間に割って入ったのだ。
「アルトリーゼ、ご苦労様、今日はもう大丈夫ですのでゆっくりしていなさい」
「は、はい」
「まったく、アトレイア様が威圧するからアルトリーゼが泣いてしまったじゃないですか、パワハラですよ」
アトレイアはジト目でノルンを見る。
「自分の事を棚に上げて何を言ってるんだまったく、ホントにいい性格しているね君は」
「何を言ってるのかわかりませんね、疲れましたから私も少し休憩させて頂きます」
「別に良いんじゃないかな、それじゃ私は仕事に戻ろうかな」
「何を言ってるんですか、私が休憩するのだからアトレイア様もご一緒していただかないと」
「いやいや、話し相手なら私じゃなくても、それにノルンは途中からお説教が始まるからな~」
「文句言わない」
「いつもは仕事をしろってうるさいのに、まったく、仕方ないな」
つい先程まで殺気のぶつかり合いがあったとは思えないほどの和やかさがある、しかしこれがアトレイアとノルンの日常茶飯事なのだが、それに戸惑いおろおろしながらアルトリーゼはアトレイアとノルンを交互に見る。
「そうだ、アルトリーゼ」
「は、はい、なんでしょうか」
「君も一緒にお茶をしていきなよ」
「え!わ、私がですか?」
「うん」
アルトリーゼはノルンを見る、ノルンも笑顔で頷いた。
「あの、よろしくお願いします」
3人は楽しくお茶をしたのだがこの後は休憩のし過ぎで仕事が溜まりアトレイアは泣きながら仕事をするはめになった。
その頃神界から戻ったテンリは。
「それでは司教様、またよらせていただきますね」
「はい、お待ちしております」
司教に挨拶をして馬車に乗り込む。
「お二人のお陰で今日は楽しめました、ありがとうございます」
屋敷に戻る馬車の中でシュルツとベルニマにお礼を言う。
「楽しんでいただけて光栄です!」
「護衛の立場でなんですが私達も楽しめました」
屋敷につくまで三人で談笑し俺は帰ってきたことをカロン達に報告しに、シュルツとベルニマは自分達の上司に報告に向かった。
俺はコンコンと扉をノックする。
「父様、テンリです」
「入れ」
カロンの許可がでたので扉を開け中に入る。
「父様、ただいま戻りました」
俺が入って来たのでカロンは一度ペンを置いた。
「お帰り、楽しめたか?」
「はい、いろいろ見て回れましたし発見もありました」
「それは良かったな」
「はい」
カロンは笑顔で答えてくれるがとても疲れた顔をしている。
「父様大丈夫ですか?」
「なんとかな、タリアとカレンのお陰で目処はついたからもう少しで終わるよ」
「そうですか、無理はしないでくださいね、ではお忙しそうなので俺は失礼しますね」
「ああ、すまないな」
「いえ、お仕事頑張ってください」
「ああ、ありがとう」
カロンは頷いてからまたペンを持ち書類にペンを走らせていった。
次に母様達がいる部屋に向かう、扉をノックするとセバスが開けてくれた。
「ほほっ、テンリ様お帰りなさいませ」
「ただいまセバス」
中に入るとカレンとタリアが寛いでいた。
「カレン母様、タリア母様ただいま戻りました」
「あらテンリ、お帰り」
「テンリちゃんお帰りなさい」
俺はそのまま椅子に座るとセバスがすぐにお茶を出してくれた。
「セバスのお陰でとても楽しめました」
「ほほっ、私は何もしておりませんが?」
「あの二人に助言をしてくれたのでしょ」
「ほほっ、実際に案内をしたのはあのお二人なので楽しめたのならやはりあのお二人のお陰でしょうね」
「それはそうですが、セバスの助言があったからこそですよ、だからありがとう」
セバスは笑顔で頭を下げた。
母様達と少し会話をしすぐに夕食の時間になったので食堂に向かいカロン達と夕食を食べながら今日の出来事を話す。
「そうか、あいつらに会ったのか」
カロンは当時の仲間の事を思い出しているのか懐かしいと嬉しそうに話を聞いていた。
「お前が困った事があればあいつらに協力を頼むと良い、いろいろと顔が広いからな」
「わかりました、そうさせてもらいます」
明日からはどうしようかと考えながら今日の出来事の続きをカロン達に話した。
それから一週間程がたった、朝はセバスに修行をつけてもらい昼はカレンとタリアが教師をしてくれて勉強をした、夜はドルマンの店で買い漁った本を読みふける。こんな感じのサイクルができつつあった。
「ほほっ、今日はこの辺にしておきましょうか」
「はい、ありがとうございました」
セバスとの朝の修行に区切りがついたので切り上げた。
「ほほっ、テンリ様は日毎に成長されていきますな、成長と言うよりまるでもともとあった強さを取り戻しているみたいです」
「あ、あはは、そんな事ないですよ」
セバスの言葉に焦って目が泳いでしまった。しかしセバスは気にすることはなかった。
「ほほっ、何はともあれ今のまま成長していけばあと半年程で私が教える事はほとんどなくなるでしょう」
「そうなのですか?」
「ほほっ、はい、それだけテンリ様の才能は素晴らしいのです、しかし慢心してはいけませんよ」
「はい」
朝食をとりカレンとタリアの授業を受ける。
「今日はこのあたりで終わりにしましょうか」
「はい」
授業も一段落しメイドがすぐにお茶の用意を始めた。
「それにしてもテンリちゃんの覚えが早いね、レイン君とマインちゃんにも教えていたけどもっと苦戦してたのに」
「私の子だもの当然よ」
「む~その言い方だとレイン君もマインちゃんもダメな子みたいじゃん」
「そんなことないわよ、あの子達は十分天才よ、同年代の子達と比べれば天と地の差があるんじゃないかしら、ただテンリがそれ以上に異常なのよ」
「確かにうちの子は二人共天才だもんね、ただテンリちゃんが異常なだけだね」
話だけ聞くとカレンとタリアは親バカなのではないかと思う、実際親バカではあるのだが兄のレインも姉のマインもとても頭がよく運動能力にも優れ魔法の才能も頭一つ抜き出ているそうだ。なので話の内容は決して間違いではない。ただ俺を異常者扱いはやめてほしい。
自分の部屋に戻り本を読んでいると扉がノックされる。
「ほほっ、セバスです、テンリ様よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「ほほっ、失礼します、テンリ様にお手紙が届いております」
「手紙ですか?誰から?」
「ほほっ、リアナ様とアルナ様からです」
「ありがとうございます」
セバスは手紙を俺に渡し部屋から出ていく、椅子に座り手紙をすぐに読み始める。どうやら二人共元気でいるようで安心した。
俺はすぐに返信の手紙を書き始め聖都から今日までの事を簡単に書いていく、手紙を書き終えセバスを探がそうと部屋を出たらちょうどセバスにあったので手紙を渡した。
「これをリアナとアルナに届けてください」
「ほほっ、かしこまりました。ところでテンリ様、カロン様がお呼びです」
「わかりました」
俺はセバスと共にカロンのいる部屋に向かう。
読んでいただきありがとうございます。
近いうちにタイトルを変えるかもしれません。




