第24話 アトレイアと再会しました。
今現在本日最後の目的地である教会に着き馬車を降りた。
「ここがこの街の教会ですか」
とても立派な建物だ。産まれて直ぐに一度ここに来ているって聞いていたけどまだその頃は記憶が戻ってなかった事もあってやっぱり覚えていないな、それと洗礼の義をここで行う予定だったんだよな、わざわざ聖都まで行くはめになったけどここでも良かったと思うが、いや、それだとアルナとは出会えなかったしソリュアとも友達になれなかたったから聖都に行く意味はあったのか。ただ厄介な問題もついてきてしまったが。
教会の扉を開け中に入ると正面奥の祭壇に綺麗な女の象が建てられているのがわかった。
「あれ、あの像って何ですか?」
「わからないのですか!?」
「冗談ですよね?」
俺の素朴な疑問にシュルツとベルニマは驚いた顔をした。
「あの像はこの世界で唯一絶対の女神アトレイア様ですよ」
優しい声で説明をされ二人の護衛は声のする方に振り返る。
「「司教様」!」
優しい声と同じく優しい笑顔で司教と呼ばれた老人がゆっくりこちらに向かってくる。
「あなた方の格好を見るに、エレノール家の兵の方達ですね、本日はどうされまし」
司教は俺を見て言葉が止まった、その後はとても嬉しそうな顔になった。
「始めまして、テンリ=エレノールです、今日は聖都から無事に帰って来られた感謝をアトレイア様に報告と教会の見学を兼ねて来させていただきました」
とりあえず自己紹介をして頭を下げる。
「これはご丁寧に、申し遅れました私は司教を任されているロジーヌと申します、実は私はテンリ様に会うのは今日が初めてではないのですよ」
「そうなのですか!それは大変失礼いたしました」
「謝る事ではありませんよ、私がテンリ様とお会いしたのはまだあなたがお産まれになって間もないときですので」
「そうでしたか」
「はい、今でも鮮明に覚えております、何しろ私にとって人生で一番素晴らしい日でもありましたから」
「そうなのですか?」
司教は力強く頷いた。
「テンリ様が無事にお生まれになられたとカロン様とカレン様がこの教会に来てアトレイア様の像の前で感謝と今後健やかに成長されるようにとあなたをお連れしたのです」
成る程、そんなことが。カロンがそのような事をするのはわかるがまさかカレンがそんな事しに教会までくるとは思わなかった。
「私が祝福の言葉を告げようとしたときでした、声が聞こえたのです」
「声ですか?」
「はい、その声はとても慈愛に満ちたものでした」
「それはどのような?」
「あなたの名前をテンリと名付けるようにと」
「それって」
「私は瞬時に理解しました、これは女神アトレイア様のお声だと」
「なぜそのように思ったのですか?」
「なぜでしょうね、本来は天使様ですらその声を聞ける者達はかなり限られております、正直な話し私は天使様の声すらお聞きした事はないのですが、なぜか私はその声がアトレイア様のものだと確信がありました」
「そうですか」
「お疑いにならないのですか?」
「疑う必要がありますか?」
「いえ、その話を当時したら皆に笑われたり否定されてしまいましたから」
「ですが俺の名前がテンリって事は父様も母様も否定せずに受け入れたのですよね」
「はい」
「ならそれは事実なのでしょう」
司教は本当に嬉しそうに頷いた。
「あなたにそう言って頂けて嬉しく思います」
「こちらこそ、女神アトレイア様の声を父様と母様に伝えてくれてありがとうございます」
司教は一筋の涙を流した。
「こうしてまたあなたに会えて良かったです、あなたに会い言葉を交わし私の話を信じてもらい、報われたような気持ちです」
「大袈裟ですよ、所詮は洗礼の義を終えたばかりの子供です」
「ふふっ、それでもです。少し話し込んでしまいましたね、どうぞごゆっくり見学していってください」
「はい」
司教は頭を下げてさって行った。
「テンリ様の名前の由来はこの教会だったのですね!」
「女神様から名前を授かるなんて凄いですね」
シュルツもベルニマも今の話しに興奮していた。
「ではお祈りしましょうか」
「「はい」!」
俺は苦笑いしながらもアトレイアの像の前で膝をつき手を組んで目を瞑った。
「終わらない終わらない、ぜ・ん・ぜ・ん・し・ご・と・が終わらなーい!」
大声が聞こえ目を開けると机の前に山積みの紙の束がが見えた。ここは神界なのか?少なくとも先程いた教会ではないな。
「なんでこんなに紙が多いの!なんで今時紙なの!パソコンでいいじゃん!データ化してよ!ってか神なんだからこんな必要ないじゃん!もう嫌だー!」
姿は見えないが聞き覚えのある声が机の反対側から聞こえる。
「え~と、ちょっとよろしいですか?」
「よろしくないわよ!仕事のじゃま、し、な、あれ?な、なんで君がここにいるの!?」
アトレイアは俺の顔を見て驚いていた。彼女がいるのならどうやら神界なのだろう。
「聖都から無事にエレノールの街に着いたので教会に来てその報告をしようと?」
「何故疑問なの!」
「とりあえず忙しそうなので帰ります」
「いや、待って!大丈夫だから!」
「え、さっき仕事の邪魔だって」
「大丈夫だから、だからお願い」
アトレイアは泣きながらすがり付いてきた。
「わ、わかりましたから」
「ありがと、それじゃちょっと場所を変えようか」
アトレイアは指を鳴らすと一瞬にして空間が変わった。
そこは草原で雲一つない、そして二人分の椅子とテーブル、そのテーブルの上にはお菓子と飲み物が置いてあった。
「凄い」
「ふふん、私にかかればこの程度造作もないさ、さっ、座って」
アトレイアに促されるまま椅子に座る。
「さて、君は無事に帰って来たんだね」
「ええ、なかなか楽しい旅でした」
「うんうん、そうか、それは何よりだ」
「その報告をするために教会に来たのです」
「ちゃんと報告しに来るなんて偉いね」
アトレイアは笑顔で俺の頭を撫でた。
「ふふっ、ふふふっ」
アトレイアの目がどんどん危険な目になってきた。
「ぐふふっ」
「そろそろやめてください、それにちょっと恐いんですけど」
「はっ!ごめんごめん」
「それといろいろ聞きたい事があるんですけど良いですか?」
「うん、いいよ、なんでも聞いてくれたまえ」
アトレイアは笑顔で頷いた。
「まずは俺の名前の事なんですが」
「ああ、前世の名前のがいいと思ってね、君の今の両親が君と一緒に教会に来たからちょうど近くにいた司教に名前を伝えたんだよ」
やっぱりあの司教は事実を言っていたんだな。
「そもそも君が君として世界に産まれてから何度転生してもずっと一緒の名前だよ」
「え!そうなの?」
「うん」
何度転生しても同じ名前とはビックリだな。
「俺はなぜエレノールの家に産まれたのですか?」
「それは君の祖母が関係しているよ」
「祖母ですか?」
「そう、ちなみに今の母方の方ね」
「それはどういう事ですか?」
「君の前世の知識や能力、さらには産まれてからそれを生かしつつさらに上を目指すには必要な事だったからだね」
つまり転生するにあたって良い環境を整えてくれたのか。
「ではステータスについて教えてください」
「ステータスね、強さを数値化したものだよ、ただあれは目安みたいなもので、決して絶対じゃないんだよ」
確かにステータスは絶対ではないな、もしステータスの通りなら俺が今まで戦ってきた魔物に俺は何度も殺されている事になる、武器や防具、疲労や怪我、作戦や人数等そういった影響で全然変わってくる。
「HPに関しては0になれば死んでしまうよ。MPは使い過ぎると気分が悪くなったりするけど0になっても死なないよ、ただ気絶するかな。攻撃、防御、魔力、敏捷、に関しての数値は毎回その威力等が出せる訳じゃないよ、ステータスに書かれてる数値は今出せる限界の数値が書いてあるだけであって常にその数値よりも低いから、ただ幸運は常にその数値の通りになってるけどね」
「技能に関しては?」
「技能ね、習得した技や魔法が技能の欄に追加されるんだよ、ただなんでも練習すれば覚えれるって訳ではないからね、その人その人で相性があるから適正がないとどんなに努力しても無駄になるよ。まぁ君には関係がないことだけどね」
確かに俺のステータスの技能欄には全魔法習得可、全技術取得可と表示されていた。
「悪いようにはしないってちゃんと言ってあったでしょ」
むしろ待遇がよく能力までチートだとちょっと恐い気もする。ただお礼はちゃんと言っておかないとね。
「ありがとうございます」
「どういたしまして、他には何かあるかい?」
アトレイアの言葉に頷く、むしろこれが一番大事な話だ。
「俺とアトレイア様の関係が知りたいです」
「様はいらないよ」
「わかりました、アトレイア」
「うん。それで私と君の関係か、洗礼の義の後にリアナから話があったよね、あの子から聞いた通りだよ」
「それはその・・・一緒に暮らしてました的な」
「歯切れの悪い言い方だね」
アトレイアは机をバンっと叩き机越しのまま俺の顔の前までアトレイアの顔が近く。
「いいかい、私は君の妻で君は私の夫!つまり夫婦だよ!昔も今もこれからも!ね」
はっきり言いきったアトレイアの言葉にどう反応したらいいか解らずに困ってしまう。
「まったく、まぁ今はまだ深くは考えなくてもいいよ」
「・・・そうします」
「た・だ・し、私以外の女に目がいかないようにね!」
物凄い圧力をかけられ冷や汗が止まらない。
「あの、リアナやアルナは」
「あの子達は私だから問題ないよ、なんせ私の存在を切り離して下界に誕生させた存在が彼女達だからね」
「そう言えばリアナがアトレイアの魂の一部と記憶を受け継いでいるって」
「そうだよ、見た目も性格も当時の私そのものだよ」
「・・・はい?」
「え?どうしたの?」
「見た目も性格もアトレイアと一緒ってどういう事?全然似てないよね」
「そのままの意味だよ、君は死を迎える度に毎度違う世界に行ってたから私も君を追っていろんな世界に行ったんだけどその時の下界に降りた時の姿が人族だったり獣人だったりしたわけだよ」
なんと!
「もしそうだとしても性格は」
「性格も含めて当時のままだって言ったじゃないか」
昔のアトレイアはリアナやアルナのような性格だったのか?かなり疑問が残るがとりあえず飲み込む事にしよう。
「今聞きたい事はとりあえず以上です」
「もういいのかい?」
「はい、いや、もう一つ、いえ、二つほど、今さらですがどうやったらまたアトレイアと会えるんですか?」
「私に会う方法かい、教会に来て私に祈ってくれればいつでも会えるよ」
「わかりました」
教会に行けばいつでも会えるのか、ならいつでも来れそうだな。
「後はどうやったら戻れるんですか?」
「戻ろうと思えばいつでも戻れるよ」
そんな事でいいのか。
「もう行くのかい?」
「ええ、アトレイアも忙しいでしょうし、それにいつでも会える事がわかりましたから」
「そうか」
アトレイアは寂しそうな顔をする。
「またすぐに会いに来ますよ」
その言葉を聞きアトレイアの頬が緩んだ。
「絶対だよ」
「はい、約束します、ではまた」
「うん、またね」
俺は手を振りその場から姿を消した。
読んでくださりありがとうございます。
なかなか仕事が忙しいですが頑張って投稿して行きたいと思います。
ブックマークや評価をしてくださると励みになります。




