第23話 冒険者ギルドにつきました。
少し長めになりました。
「次はどこに連れて行ってくれるんですか?」
「そろそろお昼時なので昼食を取りましょう!」
「ただ騒がし所なので問題があれば言ってください、すぐ場所を変えますので」
「騒がしい場所ですか?いったいどこに?」
「「冒険者ギルドです」!」
なんとも想像のつかない場所に連れて行ってくれるものだ、スラムの本屋に戦う魔道具屋、昼食を冒険者ギルドでとは。
「なんとも想像していた所と違うからビックリです」
「な、何か問題がありましたか!?」
「行きたい所ではありませんでしたか?」
俺の言葉にシュルツとベルニマは慌てだした、それを見て笑ってしまった。
「いえ、お薦めの場所を聞いたのは俺ですが、こんなに楽しめるとは思わなかったので」
「よ、良かったです!」
「テンリ様はどのような所を想像していたのですか?」
シュルツとベルニマは俺の言葉に安堵した、そして俺がどのような所を想像していたのかが気になったのか質問をした。
「てっきり音楽を聴いたり劇を見たりするのかと思ってました」
「そうでしたか!最初は私達もそうしようかと思っていました!貴族の方々が行くような場所を考えていたのです!」
「しかしテンリ様を待っているときにセバス様に私達が普段していることや楽しめる所に連れていった方がテンリ様も満足してくれるとおっしゃいっていましたので」
成る程、セバスの助言か、この場に居なくても俺が楽しめる場所に連れていくようにできるとは、素晴らしい執事だな。
「もし音楽や劇だったら隙を見て逃げ出そうと思っていたので良かったです」
俺の答えに護衛の二人は顔を青くさせた。
((セバス様の意見にしたがっておいて良かった)!)
そんな話をしながら目的地に着き馬車が止まった。
「ここがこの街の冒険者ギルドですか」
三階建てでかなりの大きさだな、ただ人の出入りは思ったより多くない気がする。
「はい、ここが冒険者ギルドになります!」
「ここの地下に冒険者ギルドの食堂があるんですがそこが隠れた名店でもあるんですよ」
「ですが冒険者だけあってマナーが悪い者や絡んでくるタチの悪い連中もいます!」
「ただ皆が悪いわけじゃないんです、良い人達も一杯いますから」
「もし絡まれても私達がお守りしますので安心してください!」
「では中に入りましょうか」
さも何かあると言わんばかりの発言だな、これはいわゆるフラグか?護衛の二人について冒険者ギルドの中に入って行った。視線が集まるのを感じたがこの場には冒険者が10人ほどかがいるだけだった。そのまま地下に降りる階段で下に進む。
「ここが冒険者ギルドの食堂になります!」
何事もなく地下に降りるとそこそこの賑わいを見せていた、賑わってはいるのだが。
「冒険者ギルドの食堂なのに思ったより冒険者が少ないですね?」
お客さんは多く賑わっているのだが明らかに冒険者が少ない、その代わりにお年寄りから子供まで幅広くいる。
「今の時間は冒険者はほとんど出払っていますからね、今の時間は一般の人達が多いのです、夜になると冒険者ばかりで一般の方はいなくなりますよ」
成る程、時間帯で客層が変わるのか。
「こっちです!」
シュルツの後ろについてカウンターの奥の席に座る。
「いらっしゃい!おっ、シュルツとベルニマか、今日は仕事は休みなのか?」
熊のような大柄の男がカウンター越しに話してくる。
「いえ!今は仕事中です!」
「おいおい、仕事中にここに来ても大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫ですよ、今は護衛の仕事をしていますから」
「護衛の仕事だぁ~?」
俺の存在に気づいたようでじっくりと観察するように見られた。
「おいおい、この坊主が護衛の対象か?」
「はい!」
「馬鹿かお前ら?」
「酷いですね、いきなり馬鹿とは何ですか」
馬鹿呼ばわりされてベルニマは顔をしかめる。
「護衛ってのは相手を守ることだろ」
「そうですけど」
「その坊主はお前らより強いぞ」
その言葉にシュルツとベルニマは困惑した顔になる。
「いったい何を言ってるんですか!」
「さすがにそれはあり得ないでしょ」
「見たままを言ってるんだが、まぁいいか、それよりも坊主、名前は?」
熊のような男は俺を警戒しながら名前を訪ねる。
「テンリ=エレノールです」
「エレノール、エレノールか、カロンの息子か、そうか、母親はカレンだな、あいつの面影がある」
「はい、カレンは俺の母様です」
「クックッ、そうか」
「えっと、あなたのお名前を伺っても?」
「おお、俺はこの食堂の料理長をしてるゼンスだ、ついでにここのギルドマスターもやってる」
ゼンスは笑いながらそう答えた。
「ギルドマスターなんですか!」
「おうよ、冒険者ギルドで困った事があったら気軽にいいな、まぁお前のような化け物染みた奴にはあまり関係なさそうだけどな」
ゼンスは笑いながら俺を化け物呼ばわりする。化け物呼ばわりはやめてほしい。
「あの、ゼンスさんはステータスを覗けるんですか?」
「ん?そんなもんはできねぇぞ、ただ相手を見ればどれくらいの強さかわかる、戦いに身を置いてる奴なら誰でも出来ることだ」
俺はシュルツとベルニマを見る。
「私にはわかりません!」
「私も無理です、ゼンスさんが異常なだけです」
ゼンスは笑いながら料理を並べる。サラダにスープ、パンにステーキと魚の煮込みだ。
「あの、まだ注文してませんけど」
「今の時間は二種類のランチだけだ、肉か魚だ、なら両方食っとけ」
物凄く豪快な人だな。
「んで今日は何しに来たんだ?」
「今日は街のお薦めのお店をお二人に連れていってもらっています」
「ほぅ、それで俺の作った飯を食いにここに来たと、シュルツもベルニマもよくわかってるじゃないか、まぁゆっくりしていきな」
そう言いながらゼンスはどんどん調理をしていく、回りを見れば先程降りてきた階段にまで人が並んでいる状態だ。
「すごい人気ですね」
「はい!商人等もよく食べにくるのでそれが他の街にも広がってこの街に来たら一度は食べにくるほど有名になったそうです!」
「私達も休みの時にはよく食べに来るんですよ」
食後の予定を話ながら美味しく完食させてもらった。
「ゼンスさん、ご馳走さまです」
「旨かったか?」
「はい、肉も魚も下処理がきちんとしていて変な臭みもありませんでしたし肉は柔らかく特性のソースと絡めて食べると絶品でした魚は身がプリプリで一緒に煮てあった出汁も最後まで飲みきってしまいました」
「がははっ、そうかそうか、また何時でも来てくれよ」
「はい」
食事を終え一階に上がるとカウンターで騒いでいる3人の男達がいた。
「ふざけるな、何でこんなに少ないんだ!」
「ですから素材が傷んでしまっているので合わせても大銅貨1枚分です」
「俺達が悪いってのかよ」
どうやら素材の鑑定に文句をつけているようだ。すると奥の方から優しそうな女性が出てきた。
「いったいなんの騒ぎですか?」
「フェリナさん!この人達が素材の鑑定に納得できないって」
「そうですか、いくらの金額で鑑定したのですか?」
「この素材を大銅貨1枚分です」
「確かにこれでは釣り合いませんね」
冒険者達はニヤリと笑い頷く。
「だから言っただろ」
「ちゃんと査定しなおせよ」
「銀貨1枚分にはなるよな」
「私の見立てでは銅貨3枚もあれば十分だと思いますよ」
フェリナと呼ばれた女性はとても良い笑顔でさらに低い金額を言い一瞬冒険者達の目が点になった。
「甘やかさずにきちんとした査定をしなければいけませんよ」
「は、はい」
ハッと我にかえった冒険者達は大声で怒鳴り始める。
「ふざけんじゃねえぞ!」
「受付程度が偉そうに!」
「もっと上の奴を呼んでこい!」
フェリナは困った顔をしながら頬に手を当てため息をつく。
「ギルドマスターは今忙しく手を放せられない状態ですので」
「なら他の奴を」
「ですから代わりにサブギルドマスターである私が来てきちんとした査定をさせて頂いたのですが」
「「「な!」」」
「あなた達はこの街に始めてくる方達ですね、見た限りでは田舎で冒険者をして自分が強いと思い込んで都会に出たら自分達よりも強い人達が多くいてそれにショックを受け田舎に帰るような根性のない残念な感じですね」
散々な言われようだな。
フェリナは物凄く残念な人達を見るような顔で彼等の肩に手を置く。
「ですがあなた達のような落ちぶれた最底辺のFランク冒険者でもここで頑張ればきっとEランクの底辺までなら上がれますよ、諦めずに頑張ってくださいね」
サブギルドマスターであるフェリナはとても酷い事を素敵な笑顔で言いきった。黙って聞いていた冒険者達は肩がプルプルと震えている。
「な、な、ナメるなよクソアマァー!」
冒険者達は顔を真っ赤にしながら腰の剣を抜いた。
「黙って聞いてりゃふざけた事ぬかしやがって!」
「誰が落ちぶれFランクだ!」
「確かに今はFランクだがいずれ知らない奴がいないほどになるんだよ、俺達の実力をみせてやる!」
ハァ、とフェリナは溜め息吐く。
「ギルド内で剣を抜いてはダメだと教わらなかったんですか?しかも職員である私に剣を向けるなんて、ギルドカードを没収して冒険者登録の抹消になりますよ」
「うるせぇ!そんなこと知ったことか!」
「今さら謝ってももうおせぇんだよ!」
「後悔しろ!」
冒険者達は叫びながらフェリナに襲いかかるがフェリナが一瞬ぶれたかと思えば冒険者達がその場に倒れた。よく見ると冒険者達が身に付けている防具壊れている。
「グッ、な、なにしやがった」
冒険者達は辛うじて意識を保っている、どうやら意識を飛ばさないように配慮したのだろう。
「気づかなかったんですか?一発づつ鳩尾に入れただけなんですが」
回りを見た限りでは今の動きに気付けた者はこの場にはいないだろう、フェリナ本人はゆっくり動いたつもりなんだろうけど。
俺はシュルツとベルニマに今の動きについて質問をした。
「お二人は今の動き見えましたか?」
「まったくわかりませんでした!」
「私も一瞬ぶれたと思ったら三人の冒険者が倒れたのしかわからなかったです」
「そうですか、今サブギルドマスターの女性は右から順番で鳩尾にパンチをしただけです、ただ女性がパンチをしただけではあのプレートを壊すことはできないでしょう、拳がプレートに当たる瞬間に手の甲だけを身体強化したのでしょう、しかし動き事態はあの人の素の身体能力でしょうね、何かをした痕跡がありませんでしたから」
シュルツとベルニマは口を開けたまま俺を見ていた。
「二人共どうかしましたか?」
「テンリ様今の動き見えていたんですか!?」
「まぁ一応は」
「・・・ゼンスさんが化け物呼ばわりしたのがわかった気がします」
「人を化け物呼ばわりしないでください!」
視線をフェリナと冒険者達に戻す。
「今日の所は私の采配で剣を抜いた事は許してあげますが、次はありませんよ」
「「「は、はい!申し訳ありませんでした!」」」
冒険者達は顔を真っ青にうずくまりながらも大きな声で謝った。
「それと素材の金額ですが、銅貨三枚でよろしいですね?」
「「「勿論です!」」」
「では銅貨三枚になります」
フェリナは銅貨三枚を冒険者に手渡した。
「ここで倒れていると他の方の邪魔になるので隅によってくださいね」
「「「はい!」」」
冒険者達はゆっくりと隅によってどうやら力尽きたようで意識をなくした。
「なかなか面白いもの見れましたね」
俺が笑顔で答えるとシュルツとベルニマは引きつった顔をしていた。
フェリナはこちらに気付くとゆっくり近付いてくる。
「シュルツさんにベルニマさんこんにちは」
「「こんにちは」!」
「お昼のこの時間に来てるって事は地下の食堂にお昼を食べに来たんですね」
「はい!」
「先程食べ終わって一階に上がって来たら揉めていたので」
「ふふっ、お見苦しい処を見せちゃたわね、それでこちらの方は?」
フェリナは俺を見て微笑んでいる、しかし目は一切笑ってない品定めをしているようだ。
「こちらの方はエレノール家の次男様です!」
「エレノール、カロン様の、お母様はカレン様であっていますか」
「はい、カレン様です」
「成る程、どうりで」
俺は一歩前に出る。
「テンリ=エレノールです、先程のお手前お見事でした」
俺はいつものように笑顔で挨拶をする。
「ふふっ、ありがとうございます。ご紹介が遅れました、この街で冒険者ギルドのサブギルドマスターをしているフェリナと申します、テンリ様よろしくお願いします」
フェリナも同じく笑顔で挨拶を返してくれる、どうやら品定めは終わったようだ。
「テンリ様の情報はこの街の有力者にしか出回っていませんでしたからお目にかかれて光栄です」
「そうなんですか?」
「はい、カレン様は目立つのがお嫌いなので、また本や劇にされたくはないのでしょう、タリア様の時は直ぐに本や劇が作られていましたし」
カレンが情報操作をした理由がなんとなくわかった気がした。
「せっかくなので冒険者ギルドの事を聞いてみたいのですが」
「でしたら私が対応いたします、三階の部屋に行きましょうか、あそこならゆっくり座ってお話ができますので」
「良いんですか?」
「はい」
「ではお願いします」
「では参りましょうか」
フェリナに案内され俺とシュルツにベルニマは三階に上がり部屋に入った。
「どうぞそちらにお座りください、私はお茶を淹れてきますね」
フェリナに薦められソファーに座る。
「あれ、二人共座らないんですか?」
「一応は護衛ですので!」
「でもさっきご飯の時は座って一緒に食べましたよね?」
「あの時は場所的な事もありましたから」
台車に人数分お茶を乗せてフェリナが戻って来た。
「せっかくですからお二人も座ったらいかがですか?」
「フェリナさんも人数分お茶を用意してくださったので座ってください」
俺とフェリナに促され二人は椅子に座った。
「食後と聞きましたからカモミールティーを用意しました」
カモミールは消化機能を正常にしてくれ消化促進の効果があるんだよな。
「いただきます」
一口飲み口の中にほんのり優しい甘味が広がった。
「美味しいです」
「ありがとうございます」
フェリナは笑顔で頭を下げた。
「こんな良い部屋を使わせてもらって、ありがとうございます」
「良い部屋だなんて、ただのギルドマスターの仕事部屋ですよ」
紅茶に口をつけたシュルツとベルニマは‛ごほっ’とむせた。
「ギルドマスターのお部屋を使わせてもらって大丈夫なんですか?」
「何も問題ありませんよ、私が事務仕事で使うだけですから」
フェリナは笑顔で答えた。
それはそれで問題なのでは、ギルドマスターは何をしているんだろうか・・・あ、料理か!
「ではテンリ様はどのような事がお聞きになりたいですか?」
フェリナの話に気を取り直し質問をし始める。
「そうですね、まずは冒険者ギルドの登録は10歳からですがそれよりも早く登録する事はできますか?」
「ギルド本部の規定で厳しく決まっておりますのでどんなに優秀で実力があっても10歳未満では登録はできないようになっていますね、もしそれを可能にしようと思えばギルドの規定を変えなければいけなくなります、その時には国や各街町の冒険者ギルドで過半数の支持を得なければいけません、それを行うには莫大な金額と時間が必要になるでしょう、ですので現実的ではないと思います」
「そうですか」
そんなことをやっている間に登録できる年齢になっているんだろうな。
「では次に冒険者でなくとも冒険者ギルドの依頼を受ける事ができますか?」
「できません、冒険者ギルドの依頼は冒険者ギルドに登録してある人達を対象に依頼をしているので冒険者ギルドに登録していない人には依頼を受ける事ができません、ただし冒険者ギルドを通してでなく個人で依頼を受ける場合は問題がありません、ただその場合は依頼を達成してもその分の報酬額が貰えるかはわかりません、冒険者ギルドの依頼書の額は冒険者ギルドが仲介に入りますので金銭のトラブルが起きないようになっています、ただ仲介料として1割をギルド側が徴収させて頂いております、これに関しては冒険者ギルドの維持や職員達の給金にあてがわれます」
「成る程」
前世でもいろいろな事に仲介業者が入っていたものな。
「魔物の素材や魔核等は冒険者でなくとも冒険者ギルドに売る事はできますか?」
「できます、ただしここでも仲介料が発生します、冒険者ギルドに登録していてる場合買い取りする金額の1割を、冒険者ギルドに登録していない場合は3割を徴収させて頂いております、これも解体や在庫の管理、お店に卸したりと仲介するための費用に宛がわれます、さらに素材の状態によって同じものでも値段が代わりますし在庫が多いものや少ないものでも値段の変動があります」
この後もいろいろと質問をしていきそれにフェリナは丁寧に答えてくれた。
「いろいろと勉強になりました、ありがとうございます」
「お役に立てなによりです」
「長い時間拘束してしまい申し訳ありません」
「好きでしている事なのでお気になさらずに」
「ではそろそろ失礼させていただきます」
「はい、またいつでも気軽にお越しくださいね」
「ありがとうございます」
フェリナにお礼を言い俺達はギルドを出て馬車に乗り込んだ。
「満足できました」
「それは良かったです!」
「しかし思った以上に時間が過ぎていますね、予定していた場所には行けそうもありませんが」
「それは次回のお楽しみにしておきます」
「ではお屋敷にお帰りになりますか?」
「いえ、最後に教会に寄ってください、その後に家に帰りましょう」
「了解しました!」
馬車は本日最後の目的地である教会に向かった。
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