第22話 魔道具作りを体験しました。
ドルマンの店を後にし馬車に揺られながら次のお薦めのお店に向かう。
「次はどこに向かっているんですか?」
「今は魔道具屋に向かっています!」
「魔道具などにも興味がおありとお聞きしましたので」
「はい、生活に関するものから戦闘に使えるものまでいろいろ便利なので興味がありますね」
「今向かっている魔道具屋は簡単な魔道具を作る体験もできるのです!」
「もし興味がおありでしたら作ってみてはいかがですか?」
魔道具作りの体験か、なかなか面白そうだな。魔道具を作るには魔物の核、魔核が必要と言われているんだっけ、その魔核に魔力を注ぎ込みながらどのような物にするかイメージを付与して道具の核を作るんだよな、それと弱い魔物は魔核が小さく輝きが薄く強い魔物は魔核が大きく濃い輝きを放っているんだっけ。そして魔核によって必要な魔力量や付与できるイメージが違うんだよな、魔核が小さく輝きが薄いものは魔力もあまり要らず複雑なイメージを付与することができないが魔核が大きく濃い輝きを放つ物はかなりの魔力が必要になるが複雑なイメージを付与することができる。
「俺にも作れると思いますか?」
「はい!簡単な物を作るだけなので比較的誰にでも作れます!」
「でもどうして魔道具作りの体験をしているのですか?」
「そこの店主は気軽に魔道具作りを体験してもらい皆に興味を持ってもらいたいそうですよ、もともと魔道具作りは才能の有るも人でないと複雑な物は作れませんでしたが簡単な者なら誰でも作れる物らしいのです、それに物作りの体験をしていろいろな人に魔道具作りに興味を示してもらいそれを目指す人達が増えればもっと豊かな環境を作れるのではないかと始められたそうですよ」
とても夢のある話だな。
「そろそろ到着します!」
馬車のスピードが落ちゆっくりと止まった。
「では降りましょうか」
馬車を降りて周りを見るととても賑やかな光景が見れた。内心スラムのような場所じゃなくて良かったと安堵した。
「テンリ様中に入りましょう!」
俺は店を見上げる、店の外観は4階建てと普通の店よりも大きく立派だった。しかし店の出入口を見て少し不安になる。
「・・・そうですね」
「どうかされましたか?」
「店の前に積み上がっているのは」
「ああ、いつもの事なので、気にしたら負けですよ」
「わ、わかりました」
店の正面にはボコボコにされた男達の山が積み重なっていた。俺は護衛二人の何事もないような態度にこの店はきっとこれが普通なんだと思い首を振って見なかった事にして店に入っていった。
「いらっしゃいませ、魔道具屋テルルにようこそ」
お店に入ると綺麗な定員さんが笑顔で出迎えてくれた。
「今日はどのようなご用件でしょうか?ってシュルツさんとベルニマさんじゃないですか」
「ルンナさんこんにちは!店主のテルル殿はいらっしゃいるでしょうか!」
「はい、おりますが、どのよなご用件か窺ってもよろしいですか?」
「エレノール家の次男であるテンリ様を連れてきたとお伝えしていただければ」
ルンナと呼ばれた定員はちらりと俺を見たがすぐに二人の護衛に向き直った。
「畏まりました」
ルンナと護衛二人の話が終わり、ルンナは奥の部屋に入って行った。少しして先程のルンナと共に別の女性が歩いてきた。
「ようこそおいでくださいました、私はこの店の店主を勤めるテルルと申します」
俺の前で丁寧に頭を下げた。この人がこの店の店主なのか。
「初めまして、テンリ=エレノールです」
「ふふっ、もちろん存じておりますとも」
ルンナはテルルの服を軽く引っ張った。
「それとこの子は娘のルンナと言います」
「初めまして、ルンナです」
「それで今日は街の探索でお薦めのお店などを見てまわっていると伺っております」
何でそんな事を知っているんだ?
「はい、そうです、ですがなぜそれを知っているんですか?」
「先程夫から連絡がきていましたので」
夫からの連絡?俺はシュルツとベルニマを見る。
「テルルさんはドルマンさんの奥様です!」
「ちなみにテルルさんも冒険者でカロン様と同じパーティーを組んでいたんですよ」
「懐かしいですね、あの頃はいろんな事がありました」
成る程、この人もカロンの旧友なのか。
「ではテルルさんも父様の物語に出てくるんですか?」
「・・・ふふっ、どうだったかしら、そんな事よりもせっかく私のお店に来ていただいたのだし案内させてもらうわね」
テルルは少し間があいた後に笑ってごまかし案内役を買って出た。そこでこっそりとベルニマに聞く事にした。
「結局テルルさんは父様の物語に出てくるのですか?」
「出てきますよ、ただ」
「ただ?」
「何を話しているのかしら?」
テルルは俺とベルニマはの間に一瞬で割って入ってきた。
「な、何でもありません」
「そうですか、なら良いんですよ」
テルルに近付かれた事に全く気づかなかった、回りに気を配っていたのにあっさりと自分の目の前に現れるなんて。もしこれが戦闘だったら確実に死んでいた。これがかつてカロンとパーティーを組んでいた冒険者の実力なのか。
「では一階から案内させて頂きますね」
そう話しテルルは一階から三階までお店を案内してくれた。ちなみに四階は事務所と居住スペースだそうだ。
「以上がこのお店の説明になります、何かわからないことがありましたか?」
「いえ、とてもわかりやすかったです、ありがとうございます」
とても丁寧に店の中を案内してくれこちらの質問にも滞りなく答えてくれ大満足だ。
「そう言えば馬車の中で教えてもらったんですがここで魔道具作りの体験をさせてくれるって聞いたのですが」
「はい、簡単な物になりますが魔道具作り体験をしていますよ、テンリ様は魔道具作りに興味がありますか?」
「はい、是非やってみたいです」
「なら一階の奥に工房があるのでそこで作ってみましょうか」
「はい、やらせてください」
「ではこちらになります」
テルルに案内され俺達は一階の奥にある工房に向かった。案内された場所はそこそこな広さの部屋だった、そこにいろいろな道具類が整頓されて置いてある。
「ここで魔道具作りを体験してもらいます、今ある物で初心者が簡単に作れる物となると光を灯す道具と火を灯す道具、飲み物を暖めておけるコップと冷やしておけるコップかな、見本はこれね」
テルルは今言った4つの完成品を並べた。俺は一個づつ手に取り魔核に魔力を通す、光を灯す道具は懐中電灯で火を灯す物はチャカマンだな、それと飲み物を暖めておけるコップに冷やしておけるコップ、これは寒い時や暑いときにいいな。
「このコップを作ってみたいです」
「どっちのコップを作るか決まってますか」
「両方でお願いします」
「ふふっ、それじゃ材料をまとめるわね」
テルルは慣れた手つきでどんどん材料と道具を集めてきた。
「それじゃ作ってみましょうか」
テルルに説明されながらまず薄い銅を丸く切りヤスリで削る、熱を加え薄すめた酸に浸し水洗いをする、木槌で叩いて形を作り持ち手を着けてコップは完成だ、それを二回繰り返し二つのコップを作った。
「次に魔核の欠片に魔力を通すのだけどきちんとイメージをしながら魔力を少し通せば大丈夫よ、ただイメージが不安定だと失敗したりこの大きさの魔核の欠片に魔力を多く通し過ぎると魔核が砕けてしまうから気をつけてね」
テルルに注意されたことを踏まえながら俺は火属性の魔物の核の欠片に温めるイメージを描きながら少量魔力を注ぎコップの底に魔核を取り付ける、もうひとつのコップには氷属性の魔物の核の欠片に冷やすイメージを描き少量の魔力を注ぎ同じようにコップの底に魔核を取り付けた。
「後は上手く作動するかコップに水を入れて確認をしてみましょう」
作り終えたコップに水を入れて少し魔力を流してやると一つは程よい温かさでもう一つは程よい冷たさになった。
「うん、ちゃんと動作してるわね、これで完成です」
「良い勉強になりました」
「ふふっ、そう言ってもらえて良かったわ」
「一から何かを作るのは楽しいですね」
「そうね、これで少しでも魔道具作りに興味を持ってもらえれば嬉しいわ」
俺は作り終わった二つのコップをマジックバックにしまった。
「二人共退屈じゃなかったですか?」
俺はシュルツとベルニマに声をかける。
「見学していたので退屈ではありませんでした!」
「それに私達は護衛と案内で来ているのでテンリ様が満足してくださればそれが何よりです」
護衛の二人は笑顔で答えてくれた。そしてテルルとルンナにお礼を言い店を出ようとしたとき10人ほどの男達が店の前にいるのに気付いた。
「あの、この方達は?」
俺の問いかけにベルニマが答えた。
「ルンナさんに求婚をしてる方達です」
ルンナを見ると男達にとても冷たい目を向けていた。
「ルンナさん今日こそは俺と」
「おい、抜け駆けするなよ!」
「貴女こそ俺の運命の人だ」
「愛しています、俺と結婚を」
等と男達は人目も憚らず店前で騒いでいる。
「あらあら、いつもルンナはモテモテね」
テルルはその光景を見ながら笑っている。
「毎日お店の前に来られても困ります!それに私はまだ結婚するつもりはありません!」
大きな声でそんなやりとりをしていればどんどんと野次馬が集まってくる。
「お、今日はこれで3回目だ」
「なら今日はこれで最後だね」
「相変わらずルンナちゃんは人気だね~」
「私もあんなにモテてみたいわ」
野次馬達は輪になってそれを暖かく見守っている。
「何よりも私は自分より弱い人と結婚をするつもりはありません!」
野次馬達は興奮しながら今か今かと期待しながら見ている。
「私に認めてもらいたいのなら最低限私よりも強い事を証明してください」
ルンナは構えた、それを見て回りの興奮もヒートアップした。
「纏めてかかってきなさい!」
その言葉で男達はルンナに襲いかかる。そしてそれを見事に返り討ちにしていく、気がつけばあっという間に男達の山が出来上がっていた。
「いつ見ても華麗な技だ」
「相変わらず情けない男達だね」
「ルンナちゃんカッコイイ!」
「明日も期待してるよ」
男達を積み上げたルンナに回りから拍手が巻き起こった。
「ご迷惑を御掛けしました、今後とも魔道具屋テルルをよろしくお願いします」
ワァーと皆が喝采をあげテルルとルンナは頭を下げた。少しすると何事もなかったように皆が離れて行き、何人かはお店の中に入って行った。
「これは客寄せのパフォーマンスなんですか?」
俺は気になったので聞いてみた。
「今はパフォーマンスみたいになっていますけど男達は皆本気で求婚にきています!」
「最初は大変だったらしいですが今では良い客寄せになっているとテルルさんが言ってました、ルンナさんは本気で嫌がってますけど」
「ドルマンさんは何も言わないんですか?」
「客寄せになって良いと言ってました!」
「それにルンナさんが負けても結婚するわけじゃないですし万が一怪我をさせるような相手は後悔させると言っていました」
成る程、ルンナさんは余程信頼されてるんだな。
「テンリ様、お騒がせしました」
テルルとルンナが近付き頭を下げる。
「いえ、とても面白かったです」
「そう言っていただければ良かったです」
テルルは笑っていたがルンナは苦笑いをしていた。
「それではまた寄らせてもらいますね」
「「はい、またのご来店を心よりお待ちしております」」
テルルとルンナは頭を下げた。




