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第21話 スラムの本屋に行きました。

 着替えを終えて食堂に入るとすでにカロン、カレン、タリアの三人は疲れた顔をしながら椅子に座っていた。


「おはようございます、大丈夫ですか?」


 俺は三人に向け挨拶をする。


「おはよう、大丈夫だ」

「おはようテンリ」

「おはよう、テンリちゃんは今日も元気だね、私はもうダメだよ」


 目の前の三人はどうやら徹夜をしたのだろう、とても眠そうだ。


「無理はしないでくださいね」

「ああ、大丈夫だ」

「私の出来る仕事は終わったから後は二人で頑張ってね」

「うそ、カレンちゃん早すぎじゃない!」


 どうやらカレンに与えられた仕事は終わったらしい、それを聞きタリアはかなり驚いていた。


「父様、この後で街に行きたいのですが」

「わかった、護衛を二人ほどつけておく」

「ありがとうございます、せっかくなので街に詳しい方がいいです、お昼も街で済ませてきますね」

「わかった」


 あっさりと許可が出た。朝食を食べ終えた後は玄関前に行き護衛と挨拶をする。


「おはようございます、二人とも今日はよろしくお願いしますね」

「テンリ様おはようございます!私はシュルツと申します!本日はこの命に代えてもお守りいたします!」

「シュルツ先輩護衛任務もですけど街の案内も忘れないでくださいね、それに街の中で命を掛ける程の問題がそうそう起きてもらっても困りますし、何よりも声が大きいです、テンリ様が若干引いてますよ。テンリ様おはようございます、朝から申し訳ありません、私はベルニマです、今日1日よろしくお願いします」


 護衛の二人はどちらも女性だ。シュルツはとてもきっちりした性格のようだ、髪が短めだが背も高くスラッとしている、とても整った顔をしているカッコいい女性だ。若干声が大きくてびっくりした。ベルニマも同じくきっちりした性格のようだ、髪はお団子に結んでいるて背は普通ぐらいだ、こちらも整った顔をしている。


「お二人には護衛もですが街のお薦めなどもいろいろ教えてくださいね」

「おまかせください!この命に代えてもテンリ様を楽しませて見せます!」

「先輩、だからテンリ様が引いてますって、楽しむのに命をかけてどうするんですか、申し訳ありません」


 ベルニマの言うとおりだ、護衛をしっかりこなすのは仕事として大事だがお薦めを命懸けで伝えられても困る。


「では馬車に乗りましょうか」

「「はい」!」


 三人で馬車に乗り街に向かった。


「最初はどこに連れていってくれるんですか?」

「はい!テンリ様は本がお好きとお聞きしたのでお薦めの本屋に行ってみようかと!」


 シュルツは勢いよく答えた、ちょっとびっくりするからもう少し落ち着いて欲しい。しかし成る程、本屋か。


「先輩うるさいです。それにそのお店の店主はどんな本でも探してくれるのでもし欲しい本が見つからなければ相談してみるのも良いと思いますよ」

「成る程、どんな本でもですか」

「あ、普通の本はって事ですよ、禁書等は無理ですからね」


 俺がニヤリと笑ったのを見てすかさずベルニマは修正をした。 


「その辺は大丈夫ですよ」


 くっ、禁書は無理だったか。そう内心思いながらも当たり前の事に納得した。


「そろそろ着きますね」


 ベルニマがそう話し終えて馬車が止まった。


「なんか思っていたのと違う」


 馬車を降りるとそこは古びた一軒のお店だった。その周りには古ぼけた家、それに加え遠目から浮浪者や犯罪者のような者達がこちらを窺っている。


「ここってスラムですか?」

「はい!」

「最初のお薦めのお店がここですか?」

「そのとおりです!」


 シュルツが大きな声で肯定する。


 マジか!まさかスラムに来るとは予想していなかった。


「大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ」


 ベルニマは笑顔で答えそのまま二人の護衛はお店の中に入って行く。俺はその後ろを警戒しながらも着いていくことにした。


「え!」


 店の中は外観と違いかなり綺麗で本が整頓されながら並んでいた。


「ふふっ、ビックリしましたか?」

「はい」

「ここは知る人ぞ知る隠れた名店です」

「それにしてもなぜこのお店はスラムに?」

「それはですね」

「俺がこのスラムの元締めだからだ」


 俺とベルニマの会話に眼帯をした厳つい顔の男が入ってきた。


「あなたは?」

「俺はドルマンだ」

「そうですか、俺は」

「カロンの息子だろ、名前はテンリだったな」

「はい、俺の事を知っているのですか?」

「ああ」


 ドルマンは俺の頭を軽く撫でた。俺は状況がよくわかっていないので護衛の二人を見た。


「ドルマンさんはカロン様のご友人なのです!」

「そうなんですか!?」

「はい!昔冒険者で同じパーティーの仲間だったのです!それにカロン様が主役の話にはよく出てきます!」


 シュルツが説明するとドルマンは苦笑いをしながら頬をかいた。


「おい小娘、あんまり恥ずかしい話をするんじゃねえ!」


 俺は両親達が主役の物語や本の話しはあまり知らない、知っていてもリアナがいろいろ話してくれたのを断片的にくらいだ。屋敷にはそのような本はいっさい置いていなかったから自分の両親が有名だったのも最近までは知らなかった。


「テンリ、お前はカロン達の本や物語など知らないだろう」

「はい、屋敷には置いてなかったので」

「だろうな、あの屋敷の本はほとんど俺が手にいれたもんだが物語のような本はいっさい頼まれなかったからな」


 俺とドルマンの話を聞きシュルツとベルニマは驚いた顔をしていた。


「そうなんですか!」

「あんなにも有名なのに!」

「そりゃ仕方がねぇよ、あいつらは恥ずかしいから屋敷に持ち込むなって言ってたからな」


 護衛の二人にドルマンは笑いなが話した。


「それよりも今日は何しにきたんだ?」


 ドルマンは本題に入る。その顔はかなり真剣だ。なので俺も真剣な顔で答えた。


「この街でお薦めな場所を教えて貰ってます」

「はぁ?」

「俺は街の事をあまり知らないので今日は二人に護衛をしてもらいながら街のお薦めのお店や場所を教えてもらってるのです、そしてここが最初の一軒目です」

「・・・おい小娘共、街のお薦めでいきなりスラムにあるこの店に連れてくるのはどうかと思うぞ」


 ドルマンは呆れた顔で護衛の二人を見た。


「テンリ様は本が好きだとのことです!なので街で一番の書店を紹介するべきだと思いつれてきました!」

「そう言ってくれるのはありがたいが、うるせぇからもう少し静かに話しやがれ」

「先輩、ホントにうるさいです。ここにきたのはこのお店を紹介するのもそうですがトラブルに巻き込まれないようにするためでもあるんです」

「ああ、成る程な、それじゃ部下達に問題が起きないように対処させておくか」


 ベルニマの話しに納得したのかドルマンは頷いて奥の部屋に入って行った。


「ここに来るとトラブル防止になるんですか?」

「そうですね、ドルマンさんに話を通しておけばある程度のトラブルは回避できますよ」

「スラムの元締めって言ってましたけどその関係でですか?」

「そうですね、それ以外にもいろいろあるみたいですけど詳しくは私達も知らないんですよ、ただエレノール家に仕えるときに絶対にドルマンさんを紹介されます、困った時には頼るようにと」

「なら家の使用人達も全員ドルマンさんを知っているって事ですか?」

「そのはずですよ、なぜ紹介されるのかは理由を知っているわけではないんですけど、噂はいろいろありますね」

「噂ですか?」

「はい、噂の内容はドルマンさんがカロン様に仕えていてスラムの情報収集しているとか、スラムをわざと作って危険な人達を監視するためとか、後は表に出せないような後ろめたい事を専門でやっているってのもありましたね、他にもいろいろな噂がありますよ」


 成る程な、噂が本当かわからないけどドルマンはこの街のスラムでなにかしろの役割があるのだろう。


「この話しは置いといてここは本屋ですからね、せっかくなので気になる本を探してみてはいかがですか?」


 確かに、ここには本を見にきたのだ。ドルマンが何者なのか考えても仕方がない。


「ではそうさせてもらいます、お二人も自由に本を見ていてください」

「「はい」!」


 シュルツとベルニマは嬉しそうに本を見に行った。俺は本を見ながら気になるタイトルがあれば一度手に取り中を軽く読んで気にいった本を片っ端からカウンターに積み上げていった。


「おい、何だこの本は!?」


 カウンターに積み上げられた本を戻ってきたドルマンは驚いた顔で見ている。


「これは全部テンリ様がお買いになる本のようですよ」

「・・・そうか」


 カウンターの近くにきたベルニマの言葉にドルマンは呆れながら頷いた。 


「こんな物ですね、全部でいくらですか?」


 俺は店内を一通り見終わりカウンターにいるドルマンに話しかける。


「全部で金貨3枚でいいぞ」

「わかりました」


 俺はマジックバックから袋を取り出し金貨3枚を手渡した。


「・・・普通はそんなにあっさり出せる金額じゃないんだがな」


 ドルマンはそう呟いて金貨を受け取った。俺は買った本を全てマジックバックにしまっていく。


「いい買い物ができました」

「そうか、もし欲しい本があれば連絡をくれ、探しといてやるから」

「ありがとうございます」


 俺はドルマンにお礼をいい頭を下げた。


「「私達はこれを買います」!」


 シュルツとベルニマはかなり興奮しながら1冊ずつ同じ本をカウンターに置いた。


「それなら大銅貨1枚ずつだな、それにしてもお前らの趣味は、いや、何も言うまい」


 ドルマンは呆れながら二人から大銅貨を1枚ずつ受け取った。


「お二人は何の本を買ったんですか?」

「「これです」!」


 見せられた本のタイトルで俺は興味本意で聞くべきじゃなかったと思い苦笑いを浮かべた、まさかソリュアの専属メイドであるシャナナと同類がこんなところにいるとは思わなかった。

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