第19話 ドリュサス男爵領の街を案内してもらいました。
王都からドリュサス男爵の屋敷に戻り俺とカロンは母様達に陛下達と話した事を説明した。俺はその後にソリュアの部屋に向かっていた。
ソリュアの部屋の前に着きドアをノックする。
「テンリです、王都から戻って来」
「はい、今開けます」
ソリュアは俺が言い終わる前に返事をし勢いよくドアを開く。
「テンリ君、お帰りなさい!」
とても良い笑顔だ。
「ソリュア君、ただいま」
「どうぞ部屋に入ってください」
俺はソリュアに言われ部屋に入る。なかなか広い部屋だ。
「適当に座ってください、今彼女にお茶を淹れて貰いますから」
部屋の中にはソリュアと同じくらいの年齢の少女がいた。
「彼女は僕の専属のメイドです、名前をシャナナと言います」
「初めまして、シャナナと申します」
ソリュアに紹介されシャナナは軽く頭を下げた。
「初めまして、テンリ=エレノールです」
俺も笑顔で挨拶をして軽く頭を下げた。
「・・・あの、ソリュア様をよろしくお願いします」
シャナナは頬を軽く赤に染め今度は深く頭を下げた。
「はい、こちらこそ、これからも良い友達としてお付き合いさせていただきたいと思っています」
「・・・え?」
え?とは何だろう?
「あの、何か問題でもありましたか?」
俺は少し困った顔をしながら聞いてみる。
「いえ、その、てっきりいろいろ大人な感じの深い関係になっているのかと」
「な!」
「へ?」
シャナナの発言に俺とソリュアは顔をひきつらせた。
「ちょ、ちょっと待って、シャナナ、君は何でそんな風に思ったの!?」
ソリュアは焦りながらシャナナに確認をする。
「それはソリュア様が昨日迷宮から帰って来た後ずっとテンリ君がテンリ君がと嬉しそうに楽しそうに興奮しながらひたすら褒め称えていたので、それにテンリ様のあの愛らしい笑顔を見てしまったら、間違いが起きても仕方がなかったなと」
「誤解だよ、テンリ君は凄いけど、その、そういう対象じゃないよ!」
「そうなのですか?私の読んでいる本では出会ってすぐに関係をもったりと」
「どんな本を読んでるの!?」
「気になるならお貸ししましょうか?」
「借りませんよ!とにかくテンリ君とは健全な関係ですからね!」
ソリュアに言われシャナナはとても残念そうな顔をしてその残念そうな顔のままお茶の用意を始めた。
「テンリ君ごめんなさい、嫌な気分になったりしませんでしたか?」
ソリュアは実に申し訳なさそうに頭を下げる。
「気にしてないので大丈夫ですよ」
俺の事よりむしろシャナナが読んでいる本を気にして欲しい、この世界にいわゆるBL本があるのはまだわかる、趣味は人それぞれだからね。だがシャナナの年齢的にはダメだろう、教育上良くないと思う。しかしそれを言葉にするのは可哀想だ、前世と違いこの世界には娯楽物が少ないからね。
「テンリ君は明日の朝にはここを出ていってしまうんですよね」
「そうですね、洗礼の義を受けるために聖都まで行くことになりましたから、早くエレノール領に戻って父様が仕事を再開しないと皆が困ってしまいますので」
「そうですよね」
ソリュアはとても残念そうな顔をしている。
「ですが今日一日は自由にできますからね、せっかくなのでこの街を案内していただけませんか?」
「わかりました」
ソリュアは笑顔で答える。そんなソリュアの一喜一憂する姿を見てシャナナが少しニヤニヤしている。
「ソリュア様はテンリ様が大好きですよね、もしかしてこの後に・・・グフフッ」
小言で呟いているが俺には聞こえていた。きっとシャナナの妄想は酷いことになっているのだろう、それに女の子がしてはダメな笑い方をしている。
そのまま昼食の時間までソリュアと話しをして皆で昼食を食べた後にソリュアと護衛にセバスが着き街を案内してもらう。
「まずは武器屋に行こうと思います」
馬車の中でソリュアが最初の行き先を告げる。
「武器屋ですか!いいですね」
俺は少し興奮しながら頷く。
「迷宮がある関係でなかなか良い物が多いんですよ」
「それは楽しみですね」
それからそこそこの距離を馬車で移動し武器屋についた。
「この町で一番大きくて上質な物を多く取り揃えてあるのがここです」
ソリュアに案内されて店の中に入る。
「いらっしゃ、ん、坊っちゃんか、今日はなにしに来たんだ?」
「ドドガンさんこんにちは、今日は彼にこの街で一番良い武器屋を紹介しようと思って」
「一番良い武器屋か、嬉しい事を言ってくれるじゃねえか。ドドガンだ、よろしくな坊主」
ドドガンは背は低いが筋肉質な身体で髭を生やしている、ドワーフだ。聖都ではリアナとアルナに指輪を作るために装飾職人のガルフにいろいろと世話になったのでその時の事を思い出す。
「こちらはテンリ君です」
「テンリ=エレノールです」
俺は笑顔で挨拶を返す。
「エレノール、エレノールって言えば今話題の!上客じゃねえか、坊っちゃんよく連れてきてくれたな!」
「それだけじゃありませんよ、こちらの方はセバス様です」
「ほほっ、ご紹介に与りましたセバスと申します」
ドドガンは目を見開きゆっくりセバスに近付いていく。
「あんたが、いえ、あなた様があの、十二聖天のセバス様ですか!?」
「ほほっ、元ですが」
「ちょ、ちょっと待っていてください」
ドドガンは走りながら店の奥に入って行く、ガシャンガシャンと何かをひっくり返す音がしその後に二本の剣を持って戻ってきた。
「セバス様、これはワシが今作れる最高傑作なんだが、良かったらこの剣を貰ってくれねえか?」
「ほほっ、良い剣ですね、頂いてしまってよろしいのですか?」
「ああ、ワシはあんた様の大ファンなんだ、一度でいいからワシの作った剣を使ってもらいたいと思っていたんだ」
「ほほっ、では使わさせて頂きます」
「ああ、ありがてぇ」
ドドガンは実に嬉しそうに二本の剣をセバスに渡した。
「おっと忘れてたぜ、坊っちゃん方自由に見ていってくれ」
完全に俺とソリュアを忘れて一人感動していたドドガンは俺達の存在を思いだしそう話した。
「オーダーメイドもやってるから気軽に声をかけてくれ」
言い終わるとドドガンはすぐにセバスとまた話し始めた。
「それでは見て回りましょうか」
「はい」
「ここは二階建てで一階は初心者から中級者向け、冒険者で言えばF~Cランクの武器や防具がメインになっています、値段的にもそこまで高くないものが多いです。二階は中級者から上級者向けです、冒険者で言えばCランク以上ですね、珍しい魔物や鉱石を使った武器や防具、魔法が付与された物が置いてあります」
ソリュアに説明してもらいながら店内を見て回る。何本か剣を手に取ると違和感を感じた。
「ここにある武器や防具って品質や作りてがバラバラに思えるんですけど」
「よく気づきましたね、さすがテンリ君です、一階に置いてある武器や防具は見習いや一流までいはいかない加治師の物を取り扱っているのです、なので値段が安いものが多いんですよ」
成る程、先程ドドガンがセバスに渡した剣と比べると全然違うな。
「では二階に上がってみましょう」
ソリュアに案内され二階に上がる。そのまま見て回りまた何本か剣を手に取る。
「二階の物も作り手が違うんですね、ただ一階に置いてある物に比べて凄く良い物ですね」
「はい、二階に置いてある物は全て一流の鍛冶師が作った物です」
「ドドガンさんが作った物は置い無さそうですね」
「そうですね、置いてないこともないんですけど、数があまりないですからね、出来てもすぐに売れてしまうんですよ」
「そうなんですか?」
「はい、今この店に置いてある全ての武器や防具はドドガンさんの弟子の物がほとんどですね」
一通り見て回りセバスとドドガンがいる場所に戻った。
「坊っちゃん方どうだった?」
「はい、いろいろ見て回れて楽しかったです」
「そうか、気に入った物は在ったか?」
「一つありました」
「ほぅ、これだけ見て気になったのが一つか、一体どんな物だ」
「二階に在った刀です」
「刀か、この大陸には珍しいだろ、何本か置いて在ったがどれだ」
「飾ってあるのとは別で隠すような位置に置いてあった赤色の鞘の刀です」
「な!マジか!」
「はい」
「ちょっと待ってろ」
ドドガンは二階に行き一本の刀を持ってきた。
「気になる刀ってのはコイツで合ってるか?」
「はい」
「そうか、これは灼熱刀って言って俺が作ったんだが、使い手がなかなかいなくてな、ただでさえ刀を使える奴が少ないのにこれはさらに人を選ぶときた」
「人を選ぶんですか?」
「そうだ、威力は申し分ないんだがかなりの魔力を喰うんでな、使える奴が限られてくるんだ」
「そうなんですか」
「ああ、それでな、この刀は素質がある奴だけがわかるように少し細工をして置いてあったんだ、良かったら使ってみるか?」
俺は少し考える、剣は昨日折ってしまったし、コクロウは気軽に扱えないならば代わりの物が欲しい。
「そうですね、ではその刀を買います」
「そうか、それは良かった、金は要らねえ、どうせ使い手がほとんどいないんだ、そのままやるよ」
「ありがとうございます」
俺は素直にその刀を受け取った。そしてそれをソリュアは羨ましそうに観ていた。それに気づいたドドガンは苦笑いをする。
「坊っちゃんは今使ってる剣をきちんと使いきってくれよ」
「そうですね」
「その頃にはまともに剣を扱えるようになってるだろうから俺が坊っちゃん用に新しく用意してやるよ」
「ほ、本当ですか、約束ですよ」
「ああ、任せときな」
その後少し話しをしてドドガンの店を出た。
「次は魔道具屋に行きましょう」
ソリュアに着いていきドドガンの店のすぐ近くの店に入って行く。
「いらっしゃいませ、あら、ソリュア様、今日は何をお求めですか?」
「こんにちはミュルマルさん、今日はお友達にお店を案内しているんですよ」
「あら、そうなんですか」
「テンリ君、こちらはこのお店の店主のミュルマルさんです」
「初めましてミュルマルです」
ミュルマルと名乗った女性は実におっとりした優しそうな顔をしている、種族は人族だ。
「ミュルマルさんこちらはテンリ君です」
「初めまして、テンリ=エレノールです」
俺も笑顔で挨拶をする。ミュルマルは頬を染めた。
「そう、テンリ=エレノール君ね、エレノール、エレノール!」
ミュルマルはエレノールの家名に驚きながら俺の両肩をがっちり掴む。
「エレノールってことは今話題の、タリア様、タリア様は!」
俺を揺さぶりながらタリアの名前を叫ぶ。
「ちょ、ちょっと落ち着いてください、タリア母様はドリュサス男爵のお屋敷です」
「そ、そうですか」
この場にいない事がわかるとかなり落ち込んだ。
「それとこちらの方はセバス様です」
「ほほっ、初めましてセバスと申します」
「元十二聖天のセバス様ですか、ミュルマルです、お会いできて光栄です!」
タリアに対しての反応程ではないがセバスにも少し興奮しながら挨拶をする。
「それでは見て回りましょうか」
「はい」
「ここには生活に役立魔道具や魔道書、ポーションなのど回復薬等が置いてあるんですよ」
ソリュアに説明されながら店内を案内される。一通り見て回った後に気になる魔道書を何冊か手に取り見ていく。
「何か気になる物がありましたか?」
ミュルマルは近くに来て話しかけてきた。
「魔道書や魔法薬の本が気になりますね」
「その年で魔道書や魔法薬の本に興味が、それでしたらこちらの本はどうですか?」
ミュルマルは一冊の古い本を持ってきた。
「これは?」
「これはかなり古い物になりますが、ここに書かれている物は一般では手に入らないような材料を使って作る魔法薬や魔道具が書かれた本になります」
その本を受け取り中を軽く見てみた。
「フェンリルの毛や龍神の鱗、フェニックスの羽、どれもこれもSSSランク並の素材が必要なものばかりが書かれていますね」
「はい、まず手に入りません」
「ですが面白い本ですね」
俺が興味をもった事でミュルマルは笑顔になった。
「ここに書かれているもので実在する道具もあるらしいのです、そういった物は国が管理していると聞いたことがあります」
そのまま最後までめくった後に俺はミュルマルを見る。
「この本を買わせて頂いても?」
「はい」
「おいくらですか?」
「大金貨5枚です」
その値段を聞いたソリュアは固まった。
「大金貨5枚ですか、さすがにそれほどの金額は持ち合わせていませんね」
「はい、なので一つご提案が」
「提案ですか?」
「タリア様にお会いしたいのです、それが叶えばこの本はお譲りします」
ミュルマルの発言にソリュアは大慌てで割って入った。
「ミュルマルさんそんな無茶な事は」
「わかりました、もう少し街を回ってからお屋敷に戻りますのでその時にお迎えに上がります」
「テンリ君!」
俺の言葉にソリュアはさらに慌てた。
「セ、セバス様よろしいんですか!?」
「ほほっ、さすがにドリュサス男爵の屋敷に無断ではつれていけませんな」
「そ、そうですよね」
「ほほっ、なので入れなければタリア様に屋敷から出てもらわないと行けませんな」
「な!」
それで良いのかとソリュアは唖然としている。
「では店内は一通り見て回りましたのでまた街を案内してもらって来ますね、後で迎えに来ます」
「はい、お待ちしております」
話しを勝手に進めてミュルマルの店を後にした。
「テンリ君、あんな約束してホントに良かったんですか?」
「大丈夫ですよ、セバスもそう思いますよね」
「ほほっ、そうですね」
「なので他を見て回りましょう」
「わ、わかりました」
ソリュアは無理矢理にでも納得して街の案内を再開した。その後一通り街を案内してもらい暗くなって来たのでミュルマルを店に迎えに行き馬車で屋敷に戻った。
「っと言う訳なのでタリア母様、是非会って頂けませんか?」
俺はタリアにミュルマルとの約束事を話し会って貰えないか尋ねる。ソリュアは自分が紹介した店の事なので申し訳なさそうにしていた。
「いいよ」
タリアはあっさりと会うことを承諾した。
「だけど場所はどうしようか?」
「あの、僕が許可を出しますから屋敷の中で大丈夫です」
「あら、ありがとねソリュア君」
その後はミュルマルを部屋に通してタリアと会わせた、ミュルマルはかなり興奮しながらタリアと話をし始めタリアもミュルマルの話しに食い付いた。ある程度話をした二人は厚く握手を交わしていた。
「テンリ様ありがとうございました、とても有意義な時間を過ごせました、これは約束の本です」
俺は手渡された本を受け取り笑顔で頷いた。
「こちらこそありがとうございます」
最後にタリアとミュルマルはもう一度握手を交わし馬車で帰っていった。
「タリア母様、ありがとうございました」
「私も楽しかったよ、私の助手に欲しいくらいだったよ」
タリアはよほどミュルマルが気に入ったみたいだ。
その後は夕食を食べソリュアと遅くまで話をして眠りについた。
いつも読んでくださる方ありがとうございます。
初めて読む方は気に入ってもらえると嬉しいです。




