第17話 昔話を聞きました。
「ほほっ、私が魔王にあったのは一度だけなので詳しく知っている訳ではないのですが、あれは最後の修行の時の事です、私は師に連れられてドロテシア大陸でもっとも過酷で危険とされているディスピアマウンテンに連れていかれました、そこは最弱の魔物でもSランク、そして最高位のSSSランクの魔物までいる常人ではまず近付く事さえしない場所です、そこで最低でもSランクの魔物を一体でも倒せたら修行が終わると言われていました」
何とも厳しい卒業試験だな、Sランク一体と簡単に言うがその一体を倒すのに国が総力をあげてやっと討伐できるかどうかなのに、それをたった一人で討伐しろだなんて無茶にも程がある。
ただその師匠が俺の祖母なのだと思うと申し訳がない気持ちになった。
「ほほっ、しかしディスピアマウンテンに入ってもまったく魔物の気配がありませんでした、師も何度も来ているが今までこんな事はなかったと言っていました。そこで急遽予定を変更してディスピアマウンテンの調査を始めることになりました。初めはSランクが多くいる山の下層を回っていたのですが魔物がまったく見つかりませんでした、そこでSSランクがいる中層まで行きましたがそこでもまったく魔物が見つかりませんでした、これはいよいよ異常だとSSSランクがいる上層にまで登ってみるとそこにはベヒモスと言われるSSSランクの巨大な魔物と一人の少女が対峙していました」
ベヒモスって旧約聖書にでてくる怪物だよな、この世界にもいるんだな。大地にはベヒモスだから海にはリヴァイアサン、空にはジズなんかがいるのかな?
「ほほっ、その少女こそ現在のメルテツシナ魔王国で魔王を名乗っている歴代最強と言われる魔王でした。私は両者が対峙しているのを見ているだけで心臓が止まる思いでした。私は師にこの場から離れようと提案しようとしたのですが・・・」
「どうなったんですか?」
セバスは苦笑いを浮かべる。
「ほほっ、師は事もあろうにその両者に近付き戦うなら自分も混ぜろと言い出しました」
「・・・セバスの師匠は頭がイカれてるんですか?」
自分の祖母だが話を聞くと頭のイカれた人としか思えない。
「ほほっ、否定はできませんな、結局のとこベヒモスも魔王も話をしていただけのようで戦うつもりはなかったようです。ベヒモスは呆れて自分の寝床に戻ってしまいました」
魔物に呆れられるって事があるんだな、それよりも。
「ベヒモスって話しができるの?」
「ほほっ、魔物によって言葉が通じる者もおりますよ」
なるほど、ならそのうち俺も言葉がわかる魔物に出逢うかな。
「ほほっ、それで師なのですが行きよいよく出ていったもののベヒモスが呆れていなくなってしまったために恥ずかしくて拗ねてしまって膝を抱えて座り込んでしまいました」
「子供かよ!」
「ほほっ、それも否定できませんな、それを見た魔王は可哀想になったみたいで、自分が相手になるから落ち込むなと慰めていました」
どんな慰められ方だよ。
「ほほっ、それで機嫌の直った私の師と魔王が戦う事になったのです、その時に魔王が取り出した剣がコクロウでした。鞘から抜き放たれたその剣は実に美しくそして禍々しく恐怖したものです、その後両者が戦ったのですが、大地は割れるは雲が吹き飛ぶはとこの世の者とは思えない程の戦いでした、私はいつ巻き込まれて死んでしまうのかとビクビク震えていましたよ」
何とも可哀想な。
「それでどうなったんですか?」
「ほほっ、師は半日程戦って満足したようで両者共に武器を納めました。我が師と対等に戦える相手がいたことに正直驚きを隠せませんでしたな」
「セバスの師匠はそんなに強かったんですか!」
「ほほっ、それはもう強かったですよ、天使と戦っても負けるとは思えないほどに、ですから師と同等の力を持つその少女はとても恐ろしく思えました。その戦いの後でその少女が新たに魔王に就任した事、代々魔王に受け継がれる国宝の話を聞いたのです、話しを終えた魔王はそのまま国に戻って行きました」
成る程、そんな壮絶な戦いを見れば何かしら印象に残るのもわかる気がする。
「それで結局セバスの修行はどうなったの?」
「ほほっ、その戦いで死ななかったので卒業となりました」
「そんなんで良かったの?」
「ほほっ、あの戦いを見た後にSランクの魔物と戦いましたがちゃんと倒せましたので」
ちゃんと戦って倒したんだ。
「ほほっ、私が知っているのはこんな所です、あまり参考にはならなかったでしょう、年よりの昔話です」
「いえ、ありがとうございます」
「ほほっ、それにしても今思い出しただけでも身震いしてしまいましたな」
よくトラウマにならなかったな。
「ほほっ、明日は忙しくなりそうですな」
「そうですね、さて、明日に備えてそろそろ寝ますね」
「ほほっ、おやすみなさいませ」
「おやすみなさい」
セバスの昔話しを聞き部屋に戻った。
「結局魔王がどんな人なのかはわかんなかったな、ただ凄く強いってのはわかった」
さて、明日は朝早くから王都まで行かなきゃ行けないのか、さてどうなる事やら、そう思いながら意識が遠のいていった。
翌朝、準備を終えてた俺、カロン、カレンの三人は王都にあるエレノール家の屋敷にゲートで訪れていた。
屋敷の管理を任されている使用人達は急に主が来た事に驚く事はなくテキパキと仕事をこなしていた。セバスの指導を受けていただけあってとても優秀だ。
「昨日のうちに手紙を出しておいたから陛下には直ぐに会えるはずだ、すぐに馬車に乗り城まで向かう」
一体いつの間に手紙なんて出したんだろうか?いや、カレンがゲートを使えるから何時でも手紙くらい出せるのか。
カレンと別れて俺とカロンは馬車に乗り込んだ。
「行ってらっしゃい」
カレンは眠そうにしながら手を振って使用人達と見送った。
「とりあえず今日の所は説明をしたら終わるだろう、その後は陛下達が話し合いをしていろいろ決まってから連絡が来るはずだ」
「どうなるのでしょう?」
「わからん、無事に事が済めばいいんだがな」
何も起こらなければいいと思いながらきっと何かが起こるんだろうなと諦めている。
俺とカロンは近付いていく王城を見ながら溜め息を吐くのだった。
仕事が忙しくなかなか話が進みません。




