第15話 貰い物の剣はとても貴重な物でした。
「お前は一体何を言っているんだ?」
カロンは訝しみながら話す。
「任せてください、いい考えがあります」
「何をするきだ?」
「取り敢えず見ていてください」
カロンと言葉を交わした直後に俺はデスウルフに向かって真っ直ぐ走り出した。
「テンリ!」
カロンの焦った声が聞こえる、しかし俺は気にせずにデスウルフに向かい走る。
「ガルルッ」
デスウルフはニヤリと笑い鋭い爪を振り下ろすが俺はその直後縮地を使い後ろに回り込んで剣で切りかかる、それを読んでいたらしく振り下ろした爪を途中で止め振り返りざまに横からその鋭い爪で剣を弾き飛ばす。しかし剣が弾き飛ばされただけでそこに俺の姿はない。
「ガルッ?」
「後ろですよ」
俺は剣を手放し更に縮地でデスウルフの後ろに回り込んでいる。しかし先程剣を弾き飛ばされていたので手元に武器はない、それがわかっているのか勝ち誇った顔をしながら俺に攻撃しようと身体の向きを変え振り向いた。
「その勝ち誇った顔は無性に腹が立ちますね」
俺はアイテムボックスにしまってあった剣、コクロウを取り出しそのまま横一線に切り裂いた。デスウルフは上半身と下半身が真っ二つに別れて絶命した。
「切る時にまったく抵抗を感じない何て、凄まじい切れ味ですね」
真っ黒な刀身はとても綺麗で吸い込まれそうな程だがやはり禍々しいほどの力も感じる。
「テンリ、お前は何を考えているんだ!それにその剣は」
カロンは怒りながら近くが俺はそれに待ったをかけた。
「父様、まだレッドウルフが残っています、気を抜かないでください」
俺は話しを負えるとまたも走り出す。どうやらまだデスウルフが倒された事に気づいていないようで′夢を掴む者′達に夢中だ。
俺は縮地を使い一番近くにいたレッドウルフの胴を真っ二つに切り裂く。一匹を仕留めた事で他の奴等も気付いたがその頃には二匹目の首を切り落とす。一匹が向かって来たが切り伏せる。レッドウルフ達は距離を取ろうと走り出すがその前に更に一匹を仕留めた。これで五匹。
「残りは五匹ですか」
残りのレッドウルフは距離を取ったのはいいがあわてていたために陣形が崩れてバラバラだ、それを見逃すほど甘くはない。俺は二匹に正面から突っ込む、二匹のレッドウルフが慌てて向かって来たが剣で二匹を切り裂いた。
「残りは三匹ですね」
かなり警戒をしているらしく威嚇はしているが向かって来ない。
「グルルッ」
「向かって来ないんですか?まったく情けないですね、こんな子供に手も足もでないなんて、数がいなければこの程度ですか?」
俺は肩をすくめる、言葉が通じているとは思っていないがどうやらバカにされたのはわかったらしく怒りを顕にして三匹が同時に襲ってきた、俺はそれを何事もなく切り伏せた。
「これで片付きましたね、いい肩慣らしができました」
俺はとても満足だ、思った以上に身体が動けた、それにリアナとアルナもこの状況をわかっているみたいだったし少しは良いところを見せることができたかな。
そんなことを思い振り返ると皆が何とも言えない表情をしていた。
「どうかしたんですか?」
「よくそんなことが聞けるな、まったく、怒るよりも呆れてしまう」
カロンが返事をしてくれたがなぜか呆れられてしまった。
「そこの冒険者の二人は大丈夫だったのですか?」
「ほほっ、大丈夫ですよ、ポーションを飲ませたので直ぐに回復しました」
「そうですか、良かった」
俺はホッと胸を撫で下ろす、この人達は俺に巻き込まれたようなものだからな。
「あ、あの、助けていただいてありがとうございます、私の名前はポリャナといいます」
「私はフェシュタです、もうダメかと思いました」
「二人共無事で何よりです」
女性の冒険者は深く頭を下げる。
「ソリュア君も大丈夫でしたか?」
「はい、見ていただけでしたので、それよりもテンリ君は凄いですね、あんなに強い魔物を簡単に倒してしまうなんて」
ソリュアは萎縮すろどころか大興奮していた。そのテンションの高さに俺は若干引いてしまう。
「′夢を掴む者′のメンバーも無事で良かったです」
「正直かなり危なかったです」
「ホントですよ、レッドウルフ一匹倒すのにもやっとって相手なのが十匹ですからね」
「それにデスウルフをあんな簡単に倒してしまうなんて」
「自分達の不甲斐なさを痛感いたしました」
どうやら′夢を掴む者′達は落ち込んでしまったようだ。
「ほほっ、あなた達はよくやってくれましたよ、相手は集団のレッドウルフ、今のあなた達が戦って勝てる相手ではありません、下手すれば全滅していてもおかしくはありませんでした、そんな相手にここまで善戦出来たのはあなた方が優秀だからですよ、自信を持ちなさい」
セバスの言葉に′夢を掴む者′達は笑顔になった。
「「「「ありがとうございます」」」」
セバスに誉められて元気になったようで良かった。
「今日はこれで切り上げて戻るぞ、こんな浅い層でAランクとBランク、しかも他大陸の魔物が出たんだ冒険者ギルドに報告もしなければな」
カロンの言葉に皆が頷く。
「あの、私達もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「ほほっ、もちろんですとも」
ポリャナの願いにセバスは快く答えた。
「「ありがとうございます」」
二人は頭を下げる。
「では行こうか」
その後俺達は迷宮を出て冒険者ギルドのギルドマスターに迷宮での出来事を話した。
「そんな事が、正直な話し信じたくありませんな」
「ほほっ、しかし事実ですので」
「わかっています、魔物も実際に見せて頂きましたから、一度迷宮を封鎖しAランク以上の冒険者達を調査に向かわせます」
「ほほっ、ドドリアス様お願い致します」
ドドリアスと呼ばれた男は苦笑いだ、彼がドリュサス領の冒険者ギルドのギルドマスターである。
「ほほっ、私達は屋敷に戻りましょうか」
冒険者ギルドで報告を終えドリュサス男爵の屋敷に戻った。
そして今はドリュサス男爵から借りた一室にいる俺の正面にテーブルを挟んでカロンが座りその後ろにはセバスが立つ、俺の両隣にはカレンにタリアがいる。
「テンリ、今更お前の行いにとやかく言うつもりはない、ただいくつか質問に答えてくれ」
「はい」
「では最初の質問だ、どこで戦い方を覚えた?」
カロンの質問に前世ですとは流石に言えない、しかし嘘をつくつもりもない。
「本を読んで覚えました」
「本気で言っているのか?」
「はい、後は道中の騎士や魔物、盗賊などの戦いを見て覚えました」
嘘ではない、肝心な事は言っていないが。
「戦闘は初めてか?」
「はい、今日が初めてです」
「どうやってあそこまでの動きを」
「何となく出来そうな気がしたからです」
これも嘘ではない、転生してから戦闘したのは初めてだ、肝心な事を言っていないだけ。
「嘘はないな?」
「はい」
嘘はついていない、全部本当の事だ、ただ肝心な事は言っていないだけ。
「そうか、では次だ、あの禍々しい力を持つ剣はどこで手に入れた?」
「聖都で開かれていた蚤の市です」
「聖都でか!」
「はい」
「そうか、剣を使って何か異変は感じるか?」
「特には、とても手に馴染みます」
「危険は感じるか?」
「刃物なので気をつけています」
「いや、そうじゃなくてだな、呪われていたりしないかと」
「それは大丈夫だと思います」
「根拠はなんだ?」
「感です」
「そうか、はぁ」
「父様、大丈夫ですか?」
「お前がそれを聞くのか、まったく」
カロンは疲れた顔をしながら盛大に溜め息を吐く。
「少し見せてもっていいか」
「わかりました」
俺はアイテムボックスからコクロウを取り出しテーブルの上に置いた。
「持ってもいいか?」
「はい」
カロンはコクロウに手を伸ばす、剣に触れようとした瞬間カロンは吹き飛んで壁に叩きつけられた。
「父様!」
「カロン!」
「カロン君!」
俺と母様達は焦って立ち上がる。
「大丈夫だ」
その声を聞き少し安心した。
「凄まじいな」
どうやら壁に叩きつけられる直前に魔法を使った用で無事だ、壁にぶつからなかったようだ。
セバスだけが剣を注意深く見ている。
「テンリ様、剣を抜いて頂けますか」
セバスはかなり真剣な顔だ、いつもの笑いがまったくない。
「危険じゃないのか?」
「大丈夫です」
カロンの答にも普通に答えている。
「では抜きますよ」
俺は鞘から剣を抜く。
「この剣の名前はご存じですか?」
「剣の名前ですか、コクロウです」
「やはりそうでしたか」
「知っているのですか?」
セバスは真剣な顔で頷く。
「私がまだ師に着いているときに一度だけ見ました。この剣、コクロウはドロテシア大陸にある唯一の国、メルテツシナ魔王国の魔王に代々受け継がれる国宝のひとつです」
それを聞き皆が固まった。
少しずつですが読んでくれている人が増えているので嬉しい限りです。




