78.離婚届
狼狽えて、何とか誤魔化そうとするオカンに、父ちゃんは一枚の紙を突きつけた。
離婚届
「家族全員のDNA鑑定をする。子供たちをどうするかは、その結果で決める」
「ちょ……オヤジ、マジかよッ?」
クソ兄貴が腰を浮かす。
「お前はもう、二十歳越えてるから、関係ない」
父ちゃんは、養育費的な意味で言ったんだと思うが、クソ兄貴は、何を勘違いしたのか、ホッとした顔で座り直した。
もし、俺が父ちゃんの子じゃなかったら……
新聞屋でも、児童養護施設でもいい。オカンの居ない所へ行かせて欲しい。
「使い込んだ生活費と貯金の弁済、お前のせいで発生して、私が立替えた賠償金等の返還、慰謝料については、連休明けに弁護士に……」
「慰謝料? 幾らくれるの? 弁護士代はあんたが出しなさいよ」
父ちゃんを遮って、オカンはニヤニヤしながら言った。
「何を言ってるんだ? お前が私に支払うんだぞ?」
「は? 頭オカシイの? 何で女の私が、あんたみたいな不細工な男に払うのよ!」
オカンは、取り繕いもせず、本音をぶちまけた。
「私の若くて一番キレイな時代を食い潰した癖に! 仕事仕事で家事も育児も丸投げだったじゃない! そっちこそ、慰謝料払いなさいよ! ATMの分際で、生意気な!」
「お前は、家事も育児も俺の両親に丸投げで、母さんが病気になった時も、介護しないで、いびって追い出したじゃないか」
祖父ちゃんと祖母ちゃんが、愛子叔母さんの家に引越したのって、オカンのせいだったのか。
逆ギレで喚き散らすオカンに対して、父ちゃんは冷静に話している。
「尼崎譲、西九条健、今津光星、西宮龍輝、北口玲、大物陽紀、野田龍寿。お前の結婚後から今までの交際相手七人で間違いないな?」
「あらあら、懐かしい名前ね~。みんな元気かしら~」
父ちゃんがリストを読み上げると、オカンは父ちゃんを睨みつけながら笑った。
七人って……龍寿だけじゃなかったのかよ……プロの探偵スゲー……
「以前、キャバ嬢の営業トークを真に受けた部下を笑ったことがあるが、俺も同じだった。お前の正体を見抜けなかった。もっと早くに気付いていれば……」
「ふっふふっ……今頃気付いたの? 鈍感よねー。元々、あんたみたいなつまんない男、好きでも何でもないのよ。金がなかったら、もっと早くこっちから切ってたの! 今まであんたに不釣り合いな美人の妻を自慢できて、イイ思いしてきたんでしょ? 所詮は見合いなんだから、愛なんていらないじゃない。お互いスペックだけで選んだのに、たかが浮気くらいで、離婚だ慰謝料だって大騒ぎして、バッカみたい。ちょっと頭冷やしなさいよ」
バカって言う奴がバカの法則発動。
ここまで酷いと、何か変な笑いが込み上げて来て、別な意味で辛い。
笑ってはいけない離婚協議。




