77.父帰宅
オカンは連休三日目、日曜の朝に帰ってきた。
二連泊で朝帰りだ。今は部屋着に着替えて、居間でゴロゴロして、テレビを視ている。
昼前にクソ兄貴も帰ってきた。
俺と姉ちゃんはこの時期は毎年、父ちゃんが帰ってくるまで、トイレ以外、部屋から出ないと決めている。
父ちゃんが何時に帰るかわからないから、オカンは一応、家事するフリをしている。
ご飯は炊くけど、料理の仕方を忘れたのか、面倒なのか、おかずはスーパーのお総菜。姉ちゃんと俺の分はない。
オカンは、父ちゃんが見ていない時は、俺達の分のご飯は用意しない。
俺たちは、オカンがテレビを視ている間におにぎりを作って、部屋で食べた。
昼過ぎに玄関が開く音が聞こえた。姉ちゃんと顔を見合わせて耳を澄ます。
「ただいま」
「あなた~お帰りなさ~い。疲れたでしょ?」
父ちゃんだ。
オカンが甘ったるい声で出迎えている。
「みんな~! パパ帰ってきたわよ~! 降りてらっしゃ~い」
オカンが、明るい声で階段の下から呼んでいる。
姉ちゃんは俺を手で制し、クソ兄貴の動きを待った。
足音が台所に向かったのを確認してから、俺たちも動く。
姉ちゃんのポケットには、ICレコーダ、俺のポケットには、腕環を隠し持って、階段を降りた。
台所に行くと、オカンが五人分の珈琲を淹れていた。
父ちゃんは、テーブルのお誕生日席、壁側。オカンはその向かいの窓側。クソ兄貴は、オカンの左手側に座っていた。
姉ちゃんがカウンターキッチンを背に、父ちゃんの左手側に座ったので、俺は姉ちゃんの隣、オカンの右手側に座る。クソ兄貴の真正面だ。
クソ兄貴の左隣は、祖父ちゃんの定位置だったが、現在は空席になっている。
父ちゃんは、おもむろに分厚い封筒をテーブルに出した。
「あら、それ、なぁに? お土産?」
父ちゃんは、封筒の中身をテーブルにぶちまけることで、オカンの質問に答えた。オカンが龍寿といちゃいちゃしている大量の写真と、数枚のDVDだ。
オカンの顔から表情が消えた。
クソ兄貴は顔を引き攣らせて、父ちゃんとオカンの顔を交互に見ている。
姉ちゃんは、写真を見て首を横に振った。
姉ちゃんたちが撮ったのと、知らない写真が混じっていた。
デーレヴォとプロの写真だった。良い子が見てはいけないシーンの写真も、何枚か混ざっている。
「な……何よこれ? 合成? ドッキリ?」
「しらばっくれるな。相手の住所も割り出してある」




