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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
10章.碩学の無能力者

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76.可能性

 見ず知らずの赤の他人が、他所の子を助ける為に、まとめサイトを作っていた。


 リアル知り合いじゃないから、直接「その人」を助ける力はない……物知りだけど、何もできない。

 でも、得た知識を(もと)に「その人」が、自分で色々な行動を起こして、未来を変える可能性を開くことなら、できる。


 見知らぬ人が集積した知恵と知識が、「その人」のその後の人生を守る【可能性の卵】になる。

 善意は魔法じゃないけど、ここの人達は、ある意味【碩学(せきがくの)無能力者(むのうりょくしゃ)】なんだ。


 児童虐待って、小さい子だけのことだと思ってたけど、そうじゃなかった。


 俺達くらいの大きい子も……

 いや、成人してからでも、就職しても、結婚しても、自分が親になっても、何歳になっても、親が死んでも、ずっとずっと、いつまでも……


 我が子に危害を加える親の呪縛を解いて、その支配から逃れられない限り、一生続くんだ。


 「この先ずっと、お母さんとお兄ちゃんに怯えて生きるなんて、絶対イヤだから」

 搾取用奴隷の姉ちゃんは、サンドバッグの俺の目を見て、力強く言った。


 サイトによると、愛玩用人形として歪められてしまった兄貴も、常識とか教えられなかったせいで、自分で気付かない限り、一生苦しむことになるらしい。


 でも、ただの子供でしかない俺達に兄貴を助けることはできない。

 自分の身を守るだけで、精一杯だ。


 それに、兄貴が自分の異常性を自覚しない限り、こっちが助けの手を差し伸べても、オカンと一緒になって、俺たちを攻撃するだけだ。


 敵を救うことはできない。


 まともな親でなければ、そもそも会話が成立しない。

 奴隷やサンドバッグは、「人間」と思われていないので、そんな「物」の言い分に耳を傾けることは、ないからだ。


 言われてみれば確かに、オカンもクソ兄貴も、一方的に命令したり、(けな)したりするだけで、俺たちの話を聞くことは、なかった。


 「血の繋がった家族なんだから、いつかきっと分かり合える日が来る」なんて幻想を早く捨てないと、その日が来る前に殺されてしまう。

 と言うか、こちらがいつまで我慢しても、そんな日は来ない。


 オカンもクソ兄貴も、誰かを踏みにじったり、自分が楽して得する為に誰かの人生を食い潰すことを当たり前だと思っている。

 そんな「人間の形をした別のイキモノ」とは、言葉が通じると思わない方が安全だ。


 こちらを人間扱いしないイキモノを、どうしてこちらだけが、人間扱いしなきゃいけないんだ。


 話し合いは(あきら)めて、全力で親と距離を取って、連絡手段を断って、二度と接触しないように、追跡されないように、探し出されないように、引越し先を知られないように、役所や周囲の友人知人に根回しして、とにかく逃げること。


 「まずは、生き延びることを最優先に考え……」


 魔法戦士の言葉を思い出した。

 逃げることは、戦術的にも正しいことなんだ。


 悪いことをして、親からコソコソ逃げ回るのとは違う。


 自分の生命と人生を守る為に、敵になった親の支配から、脱出するんだ。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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