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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
10章.碩学の無能力者

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69.お説教

 (ともえ)の父ちゃんは、車を運転しながら、割とのんきに話してくれた。

 俺も相手に合わせて「アハハ心配掛けてすみませ~ん」と、重くならないように返した。


 部屋に行くと、巴先生は険しい顔で待ち構えていた。

 「自分が持っている以上の力を扱うのは、君が思っている以上に危ないことなの。君、もう少しで死んじゃう所だったんだよ。わかってる?」

 「は……はい! すみません! すみません! 申し訳ありません! 気をつけます!」


 巴先生の声は女子小学生みたいなのに、気魄(きはく)と言うか、何と言うか……威圧感がハンパない。


 俺は土下座せんばかりの勢いで謝り倒した。

 巴はおろおろして俺たちを交互に見ている。


 「すみませんじゃなくって、もうそろそろ、その腕環は、お店に返したらどう?」

 「えッ? 今……まだ決着ついてないし、これから……多分、もっと、ヤバくなるんで……あの……」

 俺は焦った。しどろもどろで説明する。


 先生は溜息を()いた。

 黒江さんと警備員さんは、無反応だ。

 巴の父ちゃんがびっくりして、固まっている。


 「力のない人がマジックアイテムを扱うのは、凄く危険なんだよ。生命を食い潰されたり、精神的に依存してしまったり、自分自身が強くなったと錯覚して無茶したり……最悪の場合、本人が身を滅ぼすだけでは、済まないこともあるんだよ」

 ポケットから腕環を出し、(てのひら)に乗せる。


 ……依存? 俺はデーレヴォに頼り過ぎていたのか?


 「決着がついたら、必ず返しに行きます」

 「決着って?」

 「それは……」

 口を開きかけて躊躇する。


 すぐに思い切って声に出した。

 家の恥とかもうどうでもいい。

 どうせ近所の人たちは、みんな知ってて、陰でヒソヒソ噂してるし。


 「姉ちゃんと俺、オカンに虐待されてるんです。父ちゃんは単身赴任で、オカンは浮気しています。父ちゃんに離婚して、オカンを追い出してもらいたいから、デーレヴォに浮気の証拠を集めてもらってるんです。俺の指示がヘタで、二日連続稼働させてしまったから、こんなことになっただけなんです」

 思った以上にすんなりと言えた。自分の口から出た【虐待】という言葉にギョッとする。


 部屋に沈黙が降りた。


 ドン引きされてる? そりゃそうか。


 「……わかった。じゃあ、力を貸すよ。ちょっと腕環を貸してくれる?」

 腕環を渡すと、先生は左の(そで)をまくった。

 中坊の俺よりずっと細くて、折れそうな腕だ。


 先生、服の上から見ても細かったけど、ここまでとは……


 「ちょ……先生ヤバ……」

 「アルセナール」

 先生が言って、手首に腕環を通すと同時に、サファイアが青い光を放つ。


 「取扱説明書、ちゃんと読んだ?」

 「一応、一通り、目は通しました」

 「体力と魔力の動力切替え。今、魔力を充填するから、ちょっと待ってて」

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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