69.お説教
巴の父ちゃんは、車を運転しながら、割とのんきに話してくれた。
俺も相手に合わせて「アハハ心配掛けてすみませ~ん」と、重くならないように返した。
部屋に行くと、巴先生は険しい顔で待ち構えていた。
「自分が持っている以上の力を扱うのは、君が思っている以上に危ないことなの。君、もう少しで死んじゃう所だったんだよ。わかってる?」
「は……はい! すみません! すみません! 申し訳ありません! 気をつけます!」
巴先生の声は女子小学生みたいなのに、気魄と言うか、何と言うか……威圧感がハンパない。
俺は土下座せんばかりの勢いで謝り倒した。
巴はおろおろして俺たちを交互に見ている。
「すみませんじゃなくって、もうそろそろ、その腕環は、お店に返したらどう?」
「えッ? 今……まだ決着ついてないし、これから……多分、もっと、ヤバくなるんで……あの……」
俺は焦った。しどろもどろで説明する。
先生は溜息を吐いた。
黒江さんと警備員さんは、無反応だ。
巴の父ちゃんがびっくりして、固まっている。
「力のない人がマジックアイテムを扱うのは、凄く危険なんだよ。生命を食い潰されたり、精神的に依存してしまったり、自分自身が強くなったと錯覚して無茶したり……最悪の場合、本人が身を滅ぼすだけでは、済まないこともあるんだよ」
ポケットから腕環を出し、掌に乗せる。
……依存? 俺はデーレヴォに頼り過ぎていたのか?
「決着がついたら、必ず返しに行きます」
「決着って?」
「それは……」
口を開きかけて躊躇する。
すぐに思い切って声に出した。
家の恥とかもうどうでもいい。
どうせ近所の人たちは、みんな知ってて、陰でヒソヒソ噂してるし。
「姉ちゃんと俺、オカンに虐待されてるんです。父ちゃんは単身赴任で、オカンは浮気しています。父ちゃんに離婚して、オカンを追い出してもらいたいから、デーレヴォに浮気の証拠を集めてもらってるんです。俺の指示がヘタで、二日連続稼働させてしまったから、こんなことになっただけなんです」
思った以上にすんなりと言えた。自分の口から出た【虐待】という言葉にギョッとする。
部屋に沈黙が降りた。
ドン引きされてる? そりゃそうか。
「……わかった。じゃあ、力を貸すよ。ちょっと腕環を貸してくれる?」
腕環を渡すと、先生は左の袖をまくった。
中坊の俺よりずっと細くて、折れそうな腕だ。
先生、服の上から見ても細かったけど、ここまでとは……
「ちょ……先生ヤバ……」
「アルセナール」
先生が言って、手首に腕環を通すと同時に、サファイアが青い光を放つ。
「取扱説明書、ちゃんと読んだ?」
「一応、一通り、目は通しました」
「体力と魔力の動力切替え。今、魔力を充填するから、ちょっと待ってて」




