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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第08章.作戦

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49.お手本

 昨夜は、作戦会議の途中から、デーレヴォにも参加してもらった。

 機器類の扱い方は教えたけど、動いている人物を撮るのはぶっつけ本番だ。どんな動作を撮るのか、姉ちゃんが俺を使って一応、見本は示してある。


 姉ちゃんは、真剣な表情でデーレヴォに説明した。

 「食べ物と食器の種類は問わないけど、こうやって【異性に何か食べさせる】のは、親密な動作なの。いい? 今からやるのをよく見て覚えてね」


 そう言うと、豚の生姜焼きをスプーンに乗せて、俺に「はい、あーんして」と言った。

 バカップルの演技だから、姉ちゃんは超・笑顔だ。


 ……これは見本。模範演技なんだ。


 俺は、自分に何度も言い聞かせながら、目をつぶって「あーん」した。

 口に入れられた生姜焼きをよく噛んで飲み下す。

 味はよくわからなかった。


 デーレヴォは「その動作ですね。記憶しました」と、何の感慨もなく言っただけだった。

 拍子抜けしたが、キャーキャー騒がれるよりは、マシかも知れない。


 「次は、これ」

 姉ちゃんは、牛乳を注いだグラスにストローを二本挿した。

 俺の隣に座って、二人の間にグラスを置く。


 「まさか……」

 「そう。そのまさか。【一杯の飲み物を二人で分かち合う】よ」

 姉ちゃんは、飽くまで真剣そのものだ。

 さっきのもそうだけど、今時、こんなベタなコトするカップル、居るのかッ?


 ……いや、あのオカン(帝都在住、主婦、44歳)ならやりかねん。


 つーか、やる。実際、【はい、あーんして】は、たまにクソ兄貴にやる。

 奴も機嫌のいい時は「ママ、おいちいね」とか言ってノッてるし。


 「飲み物の種類と、グラスとストローの形状は問わないけど、こうやって、異性と一杯の飲み物を一緒に飲むのは、親密な動作なの。これも覚えて」

 俺と姉ちゃんは、無言で視線を交わし、同時にストローに口を付けた。

 デーレヴォは、向かいの席で俺たちが牛乳を飲み干すのをじっと見守る。


 何この羞恥プレイ。


 姉ちゃんの顔が近い。

 全力で牛乳を吸いこんで、ストローから口を離し、息を吐く。


 「その動作ですね。記憶しました」

 デーレヴォは、さっきと変わらない。顔色ひとつ変えず冷静に言った。

 「さ、どんどん説明するよ」

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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