47.説明書
その日は、取扱説明書の日之本語訳だけで、帰る羽目になった。
俺が余計なことを言わなければ、他の話もできたのに……俺のバカ。
姉ちゃんはまだ帰っていなかった。
部屋で取扱説明書を読む。
概ね、先生の予想と、デーレヴォが自分で説明してくれた通りだった。
新しくわかった機能はふたつ。
通常兵器による攻撃は無効。
緊急停止には、使用者から腕環を奪うか、ゴーレムを魔法か魔法の武器で攻撃し、破壊すること。
合言葉で動力源の切替えが可能。
体力から魔力への切替えは【アルセナール】、魔力から体力へは【アルハイブ】と唱える。
体力で使用する場合は、使用者が過労で死亡する恐れがある為、用のない時は腕環を外すこと。
……ひょっとして、俺、かなりヤバかった?
心配するから、これは姉ちゃんに見せないでおこう。
晩ご飯の支度をしていると、姉ちゃんが帰ってきた。
今夜の賄いは豚の生姜焼き。ご飯と味噌汁とサラダを足して完成。
今夜も、ご飯を食べながら作戦会議だ。
「一昨日までのメールと写真、動画、音声をDVD‐R一枚にまとめて保存しといた」
「うん、ありがとう」
俺が寝てる間にも、姉ちゃんは色々やってくれていた。
「で、証拠を北斗星の金庫で預かってもらえた。もし、家で何かあっても心配しないで」
北斗星は姉ちゃんがバイトしてる食堂だ。
証拠の保護は、どれだけ念入りにしてもいい。
毎日の地味で地道な情報収集が、俺たち姉弟の未来を守ってくれる。
「お母さんね、二股で浮気してる。お父さん入れて三股」
俺は味噌汁が鼻に入ってむせた。
姉ちゃんは、俺が落ち着くのを待って続けた。
「今日、ライブやってるバンドのギターの人に、メール送りまくってる。その人は無視してるみたいで、レスなし。その内、ライブ出禁になるんじゃないかな」
「オカンの片思いってこと?」
「多分ね。っていうか、ストーカー? 無視されてるのに毎日何十通もメールしてんの」
「うわぁ……でも、よく送り先、特定できたなぁ。姉ちゃんスゲー」
「そんなの簡単よ。今日のライブが何時までか、ファイアバードのサイトで調べてたら、メールに何回も出てきたバンド名が載っててね。バンドのブログにリンクしてあったから、見てみたら、メールに出てきた芸名が載ってたの。ファイアバードのサイトには、楽屋押しかけ禁止とか、打ち上げ乱入禁止とか、トップの目立つ所に載ってた」
まぁ、熱心すぎるファンって、どこにでもいるからなぁ……
「もう一人の現在進行形で付き合ってる人は、明日のお昼からデートみたい」
「それって……」
「浮気の決定的な証拠を押さえるチャンスよ」
体の芯が熱くなり、箸を持つ手が震える。
姉ちゃんは、声をひそめて明日の作戦を説明した。




