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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第07章.取り説

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47.説明書

 その日は、取扱説明書の日之本語訳だけで、帰る羽目(ハメ)になった。

 俺が余計なことを言わなければ、他の話もできたのに……俺のバカ。


 姉ちゃんはまだ帰っていなかった。


 部屋で取扱説明書を読む。

 (おおむ)ね、先生の予想と、デーレヴォが自分で説明してくれた通りだった。


 新しくわかった機能はふたつ。


 通常兵器による攻撃は無効。

 緊急停止には、使用者から腕環を奪うか、ゴーレムを魔法か魔法の武器で攻撃し、破壊すること。


 合言葉で動力源の切替えが可能。

 体力から魔力への切替えは【アルセナール】、魔力から体力へは【アルハイブ】と唱える。

 体力で使用する場合は、使用者が過労で死亡する恐れがある為、用のない時は腕環を外すこと。


 ……ひょっとして、俺、かなりヤバかった?

 心配するから、これは姉ちゃんに見せないでおこう。


 晩ご飯の支度をしていると、姉ちゃんが帰ってきた。

 今夜の(まかな)いは豚の生姜焼き。ご飯と味噌汁とサラダを足して完成。


 今夜も、ご飯を食べながら作戦会議だ。

 「一昨日までのメールと写真、動画、音声をDVD‐R一枚にまとめて保存しといた」

 「うん、ありがとう」

 俺が寝てる間にも、姉ちゃんは色々やってくれていた。


 「で、証拠を北斗星の金庫で預かってもらえた。もし、家で何かあっても心配しないで」

 北斗星は姉ちゃんがバイトしてる食堂だ。


 証拠の保護は、どれだけ念入りにしてもいい。

 毎日の地味で地道な情報収集が、俺たち姉弟の未来を守ってくれる。


 「お母さんね、二股で浮気してる。お父さん入れて三股」

 俺は味噌汁が鼻に入ってむせた。


 姉ちゃんは、俺が落ち着くのを待って続けた。

 「今日、ライブやってるバンドのギターの人に、メール送りまくってる。その人は無視してるみたいで、レスなし。その内、ライブ出禁(できん)になるんじゃないかな」


 「オカンの片思いってこと?」

 「多分ね。っていうか、ストーカー? 無視されてるのに毎日何十通もメールしてんの」

 「うわぁ……でも、よく送り先、特定できたなぁ。姉ちゃんスゲー」


 「そんなの簡単よ。今日のライブが何時までか、ファイアバードのサイトで調べてたら、メールに何回も出てきたバンド名が載っててね。バンドのブログにリンクしてあったから、見てみたら、メールに出てきた芸名が載ってたの。ファイアバードのサイトには、楽屋押しかけ禁止とか、打ち上げ乱入禁止とか、トップの目立つ所に載ってた」


 まぁ、熱心すぎるファンって、どこにでもいるからなぁ……


 「もう一人の現在進行形で付き合ってる人は、明日のお昼からデートみたい」

 「それって……」

 「浮気の決定的な証拠を押さえるチャンスよ」

 体の芯が熱くなり、箸を持つ手が震える。

 姉ちゃんは、声をひそめて明日の作戦を説明した。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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