46.有難う
「友田君、この間はありがとう」
「ん?」
「弁当……」
「あ、いや、俺、余計なコト……でしゃばっちゃって……」
「そんなコトないよ。ありがとう。助かった」
あれ以来、巴は腫れもの扱いと言うか、女子にやたら話し掛けられなくなった。
前みたいにキャーキャー騒がず、かと言って、明白な同情は失礼だと心得ているのか、それとも、どう接していいかわからないのか、女子同士で牽制しつつも、巴からそっと距離を置いて、静かに見守っている感じだ。
男子も、嫉妬が同情で緩和されたのか、教室のピリピリした空気は、かなり和らいでいた。
「えっあっあぁ……うん。ど……どうも……」
やべぇ……こう言う時、何て返せばいいんだ……
真っ直ぐな目で感謝を伝えられて、俺は狼狽えた。
こう言うの、初めてだ。
学校の奴とか、姉ちゃんや親戚を手伝って言われるお礼は、礼儀として当たり前の言葉で、割と軽いノリだ。
オカンとクソ兄貴は、俺と姉ちゃんが働くのは、当たり前だと思っているから、一言のお礼もない。遅い、不味い、これじゃない、と文句の類しか言われたことがない。
「もし、友田君が困っとったら必ず助ける。何かあったら絶対言うてな」
巴はそう言って手を差し出した。
こんな深くて重い感謝、生まれて初めてだ。
どうすりゃいいんだよ、これ……
「援助の手は、罠や後難の惧れがない限り、拒む物ではありません」
名前も知らない魔法戦士に諭された。
魔法の国には、本名を他人に教える習慣がなく、家の紋章で呼ぶ。
名前を尋ねるのは、プロポーズでない限り、失礼にあたるので、聞くこともできない。
俺は、おずおずと巴の手を握った。巴は俺の手を固く握り返してくれた。




