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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第05章.腕環

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29.迷露茶

 「ちょっと、そんなカッコで寝たら風邪引くじゃない」

 姉ちゃんの声で起き上る。

 窓の外は真っ暗だった。


 「今日はね、店長がトンカツ分けてくれたから、カツカレー。早く食べよっ」

 姉ちゃんは、食堂でバイトしている。

 高校の最寄り駅の前で、客は大学生やサラリーマンがメイン。


 店長は、話の分かるおばちゃんだ。

 姉ちゃんが、オカンにバイト代を巻き上げられる事を言ったら、研修期間終了後の時給UP分は、口座に振り込まず、現金払いにしてくれた。


 姉ちゃん用に手提(てさ)げ金庫を用意して、店の金庫の中で別保管してくれている。

 姉ちゃんの金庫には、この二年ちょっとで、大卒の初任給くらい貯まっていて、寮付きの会社に就職できたら、最初の給料が出るまで、余裕で(しの)げるらしい。


 おまけに、(まかな)いをテイクアウトさせてくれるから、食費と栄養も助かっていた。店長には、どれだけ感謝しても足りない。

 俺達姉弟の命の恩人だ。


 体に力が入らない。のろのろした動作で、ベッドから這い出る。

 何か落ちた。


 銀の腕環……


 一気に目が覚めた。腕環を拾い上げる。


 夢じゃなかった!


 「キレイね。それ、どうしたの?」

 「腹減った……食べながら説明するよ」


 俺は、順を追って説明した。

 (ただ)し、デーレヴォが裸で出現した件は、内緒だ。

 話している内に昼間の感動と興奮が蘇ってきて、胸が熱くなる。


 姉ちゃんは、驚いたり、喜んだり、神妙な顔をしたり、くるくる表情を変えて、相槌を打ちながら、最後まで聞いてくれた。


 「改名の条件は、法務省とか家庭裁判所のサイトで、ちゃんと調べようね」

 姉ちゃんは慎重に言った。

 一応、学校の課題や宿題で使うから、クソ兄貴と姉ちゃん&俺に一台ずつ、ノートパソコンが与えられている。回線もそれぞれの部屋に引いてある。


 父ちゃんとオカンの部屋にも一台ある。

 オカンはメカ音痴だから、俺達のパソコンには触らない。せいぜい、ネット通販するくらいだ。


 説明の最後に、俺は腕環を着けた。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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