表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第05章.腕環

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/95

28.諜報用

 「大丈夫。成功してるよ」

 先生に声を掛けられて、デーレヴォを見る。


 さっきの服を着ていた。先生にお礼を言ってから、デーレヴォに質問する。

 腕環のゴーレムであるデーレヴォは、機械的に答えた。

 「姿を消すこと、壁を通り抜けること、空を飛ぶことができます。ご主人様」


 「あれっ? 家事用かと思ったんだけど、諜報用だったのかな?」

 先生が首を(かし)げた。


 何それ怖い。


 「まぁ、どんな機能でも使う人次第だからね」

 「使う人次第……」


 「例えば、ボールペンは筆記具だけど、使い方によっては物理的に人を殺す凶器にもなるからね。どんな道具も知識も、使う人によって良いことにも悪いことにも使える。この腕環を凶器にしないように気を付けて使ってね」


 俺は、巴と家の人たちに何度もお礼を言って、家路についた。

 隣には、透明化したデーレヴォが空中を歩いている……筈だ。見えないけど。


 瀬戸川公園を通って近道する。

 フリマは終了間際だった。あちこちで撤収作業が始まり、占い師の爺さんの姿は、既になかった。


 一般ブースに寄って、デーレヴォにこっそり靴のサイズを確認させる。二十五センチ。姉ちゃんよりでかい。

 俺は残金二百円で、足首丈のブーツっぽい靴を買って帰った。


 まだ、誰も帰宅していない。

 コンビニ袋に入れられたデーレヴォの靴は、取敢えず、自室の押し入れに片付けた。


 豪邸から帰ってきたせいか、自分の家が凄く狭く感じる。

 一階は狭い風呂・洗面所・トイレが、ひとつずつ。六畳の居間だけが和室、カウンターキッチンの台所、台所の隣の洋間は両親の部屋。

 二階は姉ちゃん&俺の部屋、オカンの衣裳部屋と、クソ兄貴の部屋。

 一応、猫の額程度の庭がついている。

 三十年ローンの一戸建てだ。


 父ちゃん、こんな家のローンの為に必死こいて働いてるんだ……


 歯痒いような、悲しいような気持ちを振り払って、デーレヴォに命令する。

 「デーレヴォ、姿を見せて下さい」

 デーレヴォはすぐに現れた。

 年上っぽいビジュアルだし、命令とか苦手だし、敬語で通すことにした。


 「デーレヴォ、もし人間みたいにできるのなら、感情を持って表情を出して下さい」

 帰る道々、考えていた言葉を口に出すと、デーレヴォの頬が少し緩んだ……ような気がした。相変わらず無表情だ。

 でも、マネキンのそれではなく、人間のポーカーフェイスに近い。


 そして、もうひとつ。

 「デーレヴォ、俺を『ご主人様』と呼ばないで下さい」

 「では、何とお呼びしましょう……」

 しまった。それはまだ考えてない。


 名前で呼ばれるのだけは、絶対嫌だ。

 でも、姉ちゃんみたいに「あんた」って呼ばせるのは……何か違う気がする。

 後で考えよう。


 「えーっと……保留。デーレヴォ、着いて来て下さい」

 「かしこまりました」

 デーレヴォは、自動音声よりも、生身の人間のアナウンスに近い抑揚で答えた。


 台所に連れて行く。

 「デーレヴォ、今からご飯の炊き方を説明します。覚えて『ご飯を炊いて下さい』って命令された時に実行して下さい」

 先生が教えてくれた「ゴーレムへの命令のコツ」を思い出しながら言う。


 知らないことは、実行できない。

 人間みたいに察したり、自分で考えたり、自己判断で行動する事もできない。

 新しい事をさせる時は、先に教えてから。

 動作は、ひとつずつ、具体的に指示する。


 俺は、ひとつひとつの動作を丁寧に説明しながら、ご飯を炊いた。

 ひとつの説明が終わる度に、デーレヴォは「記憶しました」と無表情に言った。

 記憶喪失の人に物事を教えているみたいで、変な気分だ。


 記憶喪失の人間なら、何か教えてもらったら、お礼を言うんだろうけど、ゴーレムは「覚えろ」と言う命令を実行しているだけだから、お礼なんて言わない。

 感情を動かすこともなく、淡々と記憶するだけだ。


 体がだるい。


 掃除は今朝、済ませてる。

 姉ちゃんが帰るまで、する事ないし、ちょっと休憩しよう。

 デーレヴォを腕環に戻し、部屋に戻った。

 二段ベッドの下段に倒れ込み、腕環を外したところで、記憶が途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ